社労士 社会保険一般常識 問25:社会保険に関する一般常識(社一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
介護保険法に規定する地域支援事業に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
- ア地域支援事業は、要介護状態や要支援状態になることを防ぐため、または要介護状態等の軽減・悪化防止のために市町村が実施する事業であり、「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」「包括的支援事業」「任意事業」の3つから構成される。
- イ介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)は、第1号被保険者(65歳以上の者)に対して介護予防サービス・日常生活支援を提供する事業であり、要介護・要支援認定を受けていない一般高齢者も対象となる介護予防事業が含まれる。
- ウ包括的支援事業の中核を担う地域包括支援センターは、市町村が直営または委託(社会福祉法人・社会福祉協議会・医療法人・公益法人等)によって設置・運営される機関であり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種を配置することが義務付けられている。
- エ任意事業は、地域の実情に応じて市町村が任意に実施できる事業であり、介護給付等費用適正化事業・家族介護支援事業・その他の事業(成年後見制度利用支援・福祉用具点検・認知症対応型共同生活介護等)が含まれる。任意事業の実施に際しては、厚生労働大臣の個別承認が必要である。正答
- オ地域支援事業の財源は、介護保険の保険料(第1号被保険者分・第2号被保険者分)と国・都道府県・市町村の公費(税財源)が組み合わされており、介護給付・予防給付とは別に、地域支援事業専用の財源配分が定められている。
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正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「任意事業の実施に際しては、厚生労働大臣の個別承認が必要」という部分です。任意事業は、市町村が地域の実情に応じて独自の判断で実施できる事業であり、厚生労働大臣の個別承認は必要ありません(介護保険法第115条の45第3項)。実施する場合は市町村の地域支援事業計画に位置付けることで対応します。
地域支援事業の3構成(ア)は「①介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」「②包括的支援事業」「③任意事業」であり、すべて市町村が実施主体です。地域包括支援センター(ウ)には保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種を置くことが義務付けられており、市町村直営または委託によって設置されます。
地域支援事業の3区分(アの根拠):
| 区分 | 主な内容 | 対象者 |
|---|---|---|
| 介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業) | 訪問型/通所型サービス・一般介護予防事業 | 要支援1・2(旧予防給付移行)+一般高齢者 |
| 包括的支援事業 | 地域包括支援センターの運営・在宅医療介護連携・認知症施策・生活支援体制整備 | 全高齢者 |
| 任意事業 | 介護給付等費用適正化・家族介護支援・成年後見支援等 | 地域の実情に応じた対象者 |
任意事業の承認不要(エの誤りの核心):
任意事業は介護保険法第115条の45第3項で「市町村は、…次に掲げる事業(任意事業)を行うことができる」と定められており、実施するかどうかは市町村の裁量です。厚生労働大臣の個別承認は不要です。
ただし、任意事業の財源(国・都道府県・市町村の公費負担割合)は法令で定められており、市町村が独自に全費用を負担する事業とは異なります。任意事業として列挙されている事業例:
- 介護給付等費用適正化事業(ケアプラン点検等)
- 家族介護支援事業(家族介護者の負担軽減)
- 成年後見制度利用支援事業
- 認知症サポーター養成講座
- 地域自立生活支援事業
地域包括支援センターの設置・3職種(ウの根拠):
地域包括支援センターは、市町村が直営または委託(社会福祉法人・医療法人・公益法人・社会福祉協議会等)で設置します。
| 配置専門職 | 主な役割 |
|---|---|
| 保健師(または経験ある看護師) | 介護予防ケアマネジメント |
| 社会福祉士 | 総合相談・権利擁護 |
| 主任介護支援専門員(主任ケアマネ) | 包括的・継続的ケアマネジメント支援 |
3職種の配置義務は介護保険法第115条の46第4項に規定されており、市区町村の規模によって配置人数(担当圏域の第1号被保険者数)が決まります。
【地域支援事業の「地域包括ケアシステム」における位置付け】
地域支援事業は、2025年問題(団塊の世代がすべて75歳以上になる年)に向けた「地域包括ケアシステム」構築の実施手段として2006年の介護保険法改正で創設されました。
地域包括ケアシステムの定義:「高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステム」(厚生労働省)
地域支援事業が地域包括ケアシステムの中で果たす役割:
- 総合事業: 要介護・要支援手前の「フレイル予防」を担う(住民主体のサービスも包含)
- 包括的支援事業: 在宅医療介護連携・認知症施策・生活支援コーディネーター配置で「医療と介護の垣根を越える」
- 任意事業: 地域の課題に応じた柔軟な対応(認知症サポーター養成・介護ロボット導入支援等)
【2015年改正による「総合事業」への移行と「多様なサービス提供者」】
2015年(平成27年)介護保険法改正で、予防給付(要支援1・2向け訪問介護・通所介護)が順次「総合事業」に移行しました。この移行の意義:
1. サービス提供者の多様化: NPO・社会福祉法人に加え、住民ボランティアやシルバー人材センターもサービス提供者となれる(単価・基準が緩和)
2. 費用の抑制: 従来の予防給付より低い単価のサービスを組み合わせることで、財政持続性を確保
3. 批判と課題: 「緩い基準のサービスで要支援者のニーズが充足されるか」という質の問題、専門職確保の課題が指摘されている
【地域包括支援センターの「権利擁護業務」と社労士の連携】
地域包括支援センターの社会福祉士が担う「権利擁護業務」には、成年後見制度の活用支援・高齢者虐待防止・消費者被害防止が含まれます。
社労士との連携が生まれる場面:
1. 雇用問題との複合案件: 高齢者が就労中に認知機能が低下した場合の退職・傷病手当金・労災の判断で社労士が関与
2. 要介護認定と傷病手当金: 健康保険の傷病手当金受給中に介護保険の認定を受けた場合の給付調整について相談を受けることがある
3. 介護休業の活用: 家族が要介護状態になった場合の介護休業(雇用保険・介護休業給付)について、地域包括支援センターと連携して家族に情報提供する機会がある
【社労士試験における介護保険の出題パターンと対策】
社労士試験で介護保険が出題される際の頻出論点:
- 保険者(市町村・特別区)と国・都道府県の役割分担
- 第1号・第2号被保険者の要件・保険料の徴収方法(年金天引き・普通徴収)
- 要介護認定プロセス(申請→一次判定→介護認定審査会→二次判定→認定)
- 給付の種類(居宅サービス・地域密着型サービス・施設サービス・予防給付)
- 財源構成(保険料50%・公費50%の構成比と国・都道府県・市町村の内訳)
- 地域支援事業の3区分(本問の論点): 包括的支援事業・総合事業・任意事業の区分と実施主体
今後の出題傾向:認知症施策基本法(2024年施行)・共生社会の実現のための認知症基本計画(2025年閣議決定)を踏まえた「認知症の人への支援」が新しい出題軸として浮上しています。包括的支援事業の「認知症施策推進事業」に関する細目論点は今後の注目領域です。
【FP・ケアマネジャー資格との接続】
FP2級では「介護保険の仕組み・介護費用の試算・民間介護保険との組み合わせ」が出題されます。ケアマネジャー(介護支援専門員)資格では「地域支援事業の実施体制・ケアプランの作成方法・地域ケア会議への参加」が詳細に問われます。社労士は介護保険の「手続き・届出・各種申請」を1号業務として代行することはできませんが(介護保険手続きは社労士業務の範囲外)、企業の従業員が介護休業を取得する際のサポートや、企業の「介護離職ゼロ」施策の設計という形で間接的に介護保険制度と関わります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 介護保険法第115条の45(地域支援事業)・第115条の46(地域包括支援センター)・第115条の47(委託)・地域支援事業実施要綱(厚生労働省) 任意事業の実施: 介護保険法第115条の45第3項(市町村の判断で実施・厚生労働大臣の個別承認不要) 地域包括支援センターの3職種: 介護保険法第115条の46第4項(保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員) 一次ソース: 厚生労働省 地域支援事業の概要 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/ ・e-Gov 介護保険法第115条の45 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): ア正しい(地域支援事業の3区分・総合事業/包括的支援事業/任意事業)。イ正しい(総合事業は65歳以上・要認定不要の一般高齢者も対象)。ウ正しい(地域包括支援センターの設置主体・3職種配置義務)。エ誤り(任意事業の実施は市町村の判断で行うことができ、厚生労働大臣の個別承認は不要。介護保険法第115条の45第3項では「市町村は…任意事業を行うことができる」と規定されており、個別承認制は採用されていない。実施する場合は地域支援事業計画に盛り込むことで対応)。オ正しい(財源は保険料+公費・地域支援事業専用の財源配分あり)。正答エ確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。