問題
高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)に規定する特定健康診査および特定保健指導に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウ(誤っている記述)です。
ウの誤りは「20歳以上75歳未満」という対象年齢の部分です。高齢者医療確保法第20条では、保険者は「40歳以上の加入者」に対し特定健康診査を行うとされ、75歳以上は後期高齢者医療に移るため、対象は40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者です。20歳からではなく、40歳から実施義務が生じます。メタボリックシンドロームのリスクが顕著になる年齢層に焦点を当てた制度です。
ア(正しい): 医療保険者が実施義務を負い、対象は40歳以上75歳未満。高齢者医療確保法第20条の通りです。
イ(正しい): 特定保健指導は「積極的支援」と「動機付け支援」の2段階で、いずれも初回面接と実績評価を行い、積極的支援ではさらに継続的な支援を行います。
エ(正しい): 事業者は労働安全衛生法の健康診断の実施を保険者に委託でき、その場合は費用を保険者に支払います(高齢者医療確保法第21条第2項)。
オ(正しい): 実施率等が低い医療保険者は後期高齢者支援金が加算(ペナルティ)、高い保険者は減算(インセンティブ)という制度です(高齢者医療確保法第120条第2項)。
特定健康診査の実施体制(アの根拠・対象年齢の確認):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施義務者 | 医療保険者(健保組合・協会けんぽ・国保等) |
| 対象者 | 被保険者・被扶養者のうち40歳以上75歳未満 |
| 目的 | 内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の該当者・予備群の減少 |
| 根拠法 | 高齢者医療確保法第20条(定義は第18条第1項) |
ウの誤りの核心(「20歳以上」→「40歳以上」):
高齢者医療確保法第20条は「保険者は、…四十歳以上の加入者に対し、特定健康診査を行うものとする」と規定しています(75歳以上は後期高齢者医療の被保険者となり保険者の加入者でなくなる)。20歳からの健診は労働安全衛生法(就業者対象)や学校保健安全法(学生対象)の領域であり、特定健康診査の対象ではありません。「20歳以上」とする誤りは、年齢基準の混同を誘う典型的な引っかけです。
なお、75歳以上の後期高齢者については、後期高齢者医療広域連合が健康診査等の高齢者保健事業を行うように努めなければならないとされています(高齢者医療確保法第125条第1項・努力義務)。
特定保健指導の2段階(イの根拠):
| 区分 | 対象 | 支援内容 |
|---|---|---|
| 動機付け支援 | 生活習慣改善の動機付けが必要なリスク保有者 | 初回面接+実績評価(継続的な支援は行わない) |
| 積極的支援 | より高いリスクを有し、継続的支援が必要な者 | 初回面接+継続的な支援+実績評価 |
※区分と支援内容の詳細は厚生労働省令(特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準)と実施の手引きで定められている(期間等の数値は受験年度の手引きで確認)。
後期高齢者支援金の加算・減算(オの根拠):
高齢者医療確保法第120条第2項では、概算後期高齢者支援金調整率を、特定健康診査等の実施及びその成果に係る目標(第18条第2項第2号・第19条第2項第2号)の達成状況等を勘案して100分の90から100分の110の範囲内で定めるとしており、実施率等に応じて後期高齢者支援金の額を加算・減算する仕組みが設けられています。
| 実施率の状況 | 支援金への影響 | 効果 |
|---|---|---|
| 実施率が低い(目標未達成) | 後期高齢者支援金が加算(増額) | ペナルティ(負担増) |
| 実施率が高い(目標達成・超過) | 後期高齢者支援金が減算(減額) | インセンティブ(負担減) |
この仕組みにより、医療保険者が積極的に特定健診・特定保健指導を実施することへの財政的インセンティブが付けられています。
他の法令に基づく健康診断との関係(エの根拠):
- 加入者が労働安全衛生法その他の法令に基づく特定健康診査に相当する健康診断を受けた場合(受けることができる場合)は、保険者は特定健康診査の全部又は一部を行ったものとする(高齢者医療確保法第21条第1項)
- 事業者等は、その健康診断の実施を保険者に委託することができ、この場合、必要な費用を保険者に支払わなければならない(同条第2項)
実施計画:
医療保険者は特定健康診査等基本指針に即して、6年ごとに6年を1期として特定健康診査等実施計画を定め、定めたとき・変更したときは遅滞なく公表しなければなりません(高齢者医療確保法第19条第1項・第3項)。
【特定健診制度の「メタボ対策」としての政策的背景と評価】
特定健康診査・特定保健指導は2008年の高齢者医療確保法施行に合わせて導入されました。メタボリックシンドロームの定義(腹囲:男性85cm以上・女性90cm以上+脂質・血圧・血糖の複合リスク)に基づく健診で、2008年当時は「生活習慣病対策の切り札」として大きく注目されました。
なぜ対象が「40歳以上」なのか(制度設計の根拠):
40歳という基準年齢には医学的・政策的な根拠があります:
1. 内臓脂肪蓄積のリスクが高まる年代: 基礎代謝の低下・運動不足・食習慣の固定化が重なる40代からメタボのリスクが顕著に増加
2. 医療費の増加ポイント: 生活習慣病による医療費は中高年期から増加するため、40歳時点からの早期介入で重症化予防を図る考え方
3. 後期高齢者医療制度との接続: 特定健診の対象上限75歳と後期高齢者医療制度の加入下限75歳が一致しており、「74歳まで特定健診→75歳から後期高齢者医療の健診」という制度的連続性が設計されている
この「40歳以上75歳未満」という年齢設定は社労士試験の最頻出論点の一つであり、「20歳以上」「35歳以上」「65歳未満」といった誤った数値との識別が必ず問われます。
【第4期特定健康診査等実施計画(令和6〜11年度)の重点目標】
令和6年度から第4期(6年1期・高齢者医療確保法第19条第1項)が始まっており、特定健康診査等基本指針(厚生労働大臣告示・第18条)で全国目標が定められています(目標値の例:特定健康診査実施率70%以上・特定保健指導実施率45%以上。最新の値は告示で確認)。
特に「特定保健指導の実施率」は目標を大きく下回っており(最新の実績は厚生労働省の公表で確認)、第4期では行動変容を促す支援の質的向上と、ICT・アプリを活用した継続支援の充実が重点施策とされています。
【特定健診と職場健診(労働安全衛生法)の関係と「二重実施の回避」】
事業主(企業)は労働安全衛生法第66条により、常時使用する労働者に対して年1回の定期健康診断を実施する義務があります。この「事業主健診」と「特定健康診査」は対象が重複する場合があります。
重複回避の仕組み:
- 高齢者医療確保法第21条第1項により、加入者が労働安全衛生法その他の法令に基づく特定健康診査に相当する健康診断を受けた場合は、保険者は特定健康診査の全部又は一部を行ったものとする(「事業主健診の結果の利用」)
- 同条第2項により、事業者は定期健康診断の実施を保険者に委託することができ、その場合は必要な費用を保険者に支払う
社労士の実務上の役割:
1. 企業の定期健診を特定健診として活用する「データ提供スキーム」の構築支援(協会けんぽ・健保組合との契約締結支援)
2. 特定保健指導の受診率向上策の提案(業務時間中の保健指導受講を就業規則で認める等)
3. 40〜74歳の事業主・役員の特定健診受診漏れの確認(個人事業主は市区町村国保が主体)
【専門職(産業医・保健師・管理栄養士)との連携と社労士の役割】
特定保健指導の実際の支援は保健師・管理栄養士等の専門職が担いますが、社労士は「実施体制の整備」「健診費用の処理」「健診実施に関する労使協定・就業規則の確認」で貢献します。
産業医・保健師との連携が特に重要な局面:
- 特定保健指導の対象者が「業務多忙を理由に保健指導を拒否」している場合→労働時間管理の観点から社労士が介入できる
- 保健指導の結果を受けて「就業制限・配置転換」の判断が必要な場合→医師の意見に基づく就業上の措置は社労士のアドバイス領域
- 「特定健診で重大な疾病が発見された従業員」の傷病手当金・休職支援→社労士の専門領域
特定健康診査・特定保健指導は「予防医療」の実践であり、社労士が企業の「健康経営」(経済産業省の健康経営優良法人認定制度)の支援に関与する際の基礎知識としても役立ちます。
- 高齢者の医療の確保に関する法律第20条・第21条・第120条・第125条・第19条e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生法第66条e-Govで原文を読む
- 学校保健安全法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 高齢者医療確保法第18条(特定健康診査等基本指針・特定健康診査と特定保健指導の定義)・第19条(特定健康診査等実施計画=6年1期・公表)・第20条(特定健康診査=保険者が40歳以上の加入者に対し行う)・第21条(他の法令に基づく健康診断との関係・事業者等の委託と費用の支払)・第24条(特定保健指導)・第120条第2項(概算後期高齢者支援金調整率=特定健康診査等の目標の達成状況等を勘案し100分の90〜100分の110) 対象年齢の根拠: 高齢者医療確保法第20条(「四十歳以上の加入者」)。75歳以上は後期高齢者医療の被保険者となり保険者の加入者でなくなるため、実際の対象は40歳以上75歳未満 後期高齢者支援金の加算減算: 高齢者医療確保法第120条第2項(実施率等が低い保険者は支援金が加算・高い保険者は減算) 一次ソース: 厚生労働省 特定健康診査・特定保健指導 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kenkou/specifics/index.html ・e-Gov 高齢者の医療の確保に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/357AC0000000080 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

