社労士 社会保険一般常識 問28:社会保険に関する一般常識(社一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)に規定する特定健康診査および特定保健指導に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
- ア特定健康診査は、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の該当者およびその予備群を減少させることを目的として、医療保険者が行うことが義務付けられている健康診査である。実施義務者は「医療保険者」であり、被保険者・被扶養者のうち40歳以上75歳未満の者が対象となる。
- イ特定保健指導は、特定健康診査の結果に基づき、生活習慣病の発症リスクが高い者に対して行われる保健指導であり、リスクの程度に応じて「積極的支援」と「動機付け支援」の2段階に区分される。いずれの区分も初回面接と一定の継続支援が含まれる。
- ウ特定健康診査の対象年齢は、高齢者医療確保法の規定により、被保険者・被扶養者のうち**20歳以上75歳未満**の者とされており、若年層からの生活習慣病予防を重視した制度設計となっている。正答
- エ特定健康診査の実施に要する費用は、医療保険者が原則として負担する。健康保険組合が実施する場合は費用の一部を事業主が負担する仕組みはなく、保険料財源のみから賄われる。
- オ特定健康診査の実施率・特定保健指導の実施率が低い医療保険者に対しては、後期高齢者医療制度への「後期高齢者支援金」の加算制度(実績が低い保険者は支援金の加算・高い保険者は減算)が設けられており、医療保険者に対するインセンティブ付けが行われている。
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正答はウ(誤っている記述)です。
ウの誤りは「20歳以上75歳未満」という対象年齢の部分です。高齢者医療確保法第18条第1項では、特定健康診査の対象は「40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者」と明定されています。20歳からではなく、40歳から実施義務が生じます。メタボリックシンドロームのリスクが顕著になる年齢層に焦点を当てた制度です。
ア(正しい): 医療保険者が実施義務を負い、対象は40歳以上75歳未満。高齢者医療確保法第18条の通りです。
イ(正しい): 特定保健指導は「積極的支援」と「動機付け支援」の2段階で、いずれも初回面接を含みます。
エ(正しい): 特定健診費用は保険料財源から賄われ、事業主が直接負担する仕組みはありません。
オ(正しい): 実施率が低い医療保険者は後期高齢者支援金が加算(ペナルティ)、高い保険者は減算(インセンティブ)という制度です(高齢者医療確保法第29条)。
特定健康診査の実施体制(アの根拠・対象年齢の確認):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施義務者 | 医療保険者(健保組合・協会けんぽ・国保等) |
| 対象者 | 被保険者・被扶養者のうち40歳以上75歳未満 |
| 目的 | 内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の該当者・予備群の減少 |
| 根拠法 | 高齢者医療確保法第18条第1項 |
ウの誤りの核心(「20歳以上」→「40歳以上」):
高齢者医療確保法第18条第1項は明確に「40歳以上の者であって75歳未満のもの」を対象者として規定しています。20歳からの健診は労働安全衛生法(就業者対象)や学校保健安全法(学生対象)の領域であり、特定健康診査の対象ではありません。「20歳以上」とする誤りは、年齢基準の混同を誘う典型的な引っかけです。
なお、75歳以上の後期高齢者については、後期高齢者医療広域連合が同様の健康診査を実施する義務を負います(高齢者医療確保法第125条)。
特定保健指導の2段階(イの根拠):
| 区分 | 対象 | 支援内容 |
|---|---|---|
| 動機付け支援 | 生活習慣改善の動機付けが必要なリスク保有者 | 初回面接(個別・グループ・電話等)+アウトカム評価 |
| 積極的支援 | より高いリスクを有し、継続的支援が必要な者 | 初回面接+継続的支援(3か月以上)+アウトカム評価 |
後期高齢者支援金の加算・減算(オの根拠):
高齢者医療確保法第29条では、特定健康診査等実施計画の達成状況(実施率)に応じて、後期高齢者支援金の額を加算・減算する仕組みが設けられています。
| 実施率の状況 | 支援金への影響 | 効果 |
|---|---|---|
| 実施率が低い(目標未達成) | 後期高齢者支援金が加算(増額) | ペナルティ(負担増) |
| 実施率が高い(目標達成・超過) | 後期高齢者支援金が減算(減額) | インセンティブ(負担減) |
この仕組みにより、医療保険者が積極的に特定健診・特定保健指導を実施することへの財政的インセンティブが付けられています。
実施計画の内容(エの関連):
医療保険者は特定健康診査等実施計画を策定し、厚生労働大臣に届け出ることが義務付けられています(高齢者医療確保法第19条・第22条)。費用は保険料財源(事業主負担分含む保険料全体)から賄われます。
【特定健診制度の「メタボ対策」としての政策的背景と評価】
特定健康診査・特定保健指導は2008年の高齢者医療確保法施行に合わせて導入されました。メタボリックシンドロームの定義(腹囲:男性85cm以上・女性90cm以上+脂質・血圧・血糖の複合リスク)に基づく健診で、2008年当時は「生活習慣病対策の切り札」として大きく注目されました。
なぜ対象が「40歳以上」なのか(制度設計の根拠):
40歳という基準年齢には医学的・政策的な根拠があります:
1. 内臓脂肪蓄積のリスクが高まる年代: 基礎代謝の低下・運動不足・食習慣の固定化が重なる40代からメタボのリスクが顕著に増加
2. 医療費の急増ポイント: 厚生労働省のデータでは医療費が40代から急増する傾向があり、40歳時点での介入が費用対効果が最も高いとされる
3. 後期高齢者医療制度との接続: 特定健診の対象上限75歳と後期高齢者医療制度の加入下限75歳が一致しており、「74歳まで特定健診→75歳から後期高齢者医療の健診」という制度的連続性が設計されている
この「40歳以上75歳未満」という年齢設定は社労士試験の最頻出論点の一つであり、「20歳以上」「35歳以上」「65歳未満」といった誤った数値との識別が必ず問われます。
【第4期特定健康診査等実施計画(令和6〜11年度)の重点目標】
厚生労働省は令和6年度から開始の第4期計画で以下の数値目標を設定しています:
- 特定健康診査実施率:70%以上(令和11年度までに)
- 特定保健指導実施率:45%以上
- 特定保健指導によるメタボ該当者・予備群の減少率:25%以上(平成20年度比)
特に「特定保健指導の実施率」は低迷しており(令和4年度時点で約25%程度)、第4期では行動変容を促す支援の質的向上と、ICT・アプリを活用した継続支援の充実が重点施策とされています。
【特定健診と職場健診(労働安全衛生法)の関係と「二重実施の回避」】
事業主(企業)は労働安全衛生法第66条により、常時使用する労働者に対して年1回の定期健康診断を実施する義務があります。この「事業主健診」と「特定健康診査」は対象が重複する場合があります。
重複回避の仕組み:
- 高齢者医療確保法第20条の「委託実施」規定により、事業主が実施する定期健診が特定健診の基準を満たす場合、その結果を医療保険者が特定健診の実績として活用できる(「事業主健診の結果の利用」制度)
- 具体的には、事業主から健診結果データを取得した医療保険者が特定健診の実施とみなすことができる
社労士の実務上の役割:
1. 企業の定期健診を特定健診として活用する「データ提供スキーム」の構築支援(協会けんぽ・健保組合との契約締結支援)
2. 特定保健指導の受診率向上策の提案(業務時間中の保健指導受講を就業規則で認める等)
3. 40〜74歳の事業主・役員の特定健診受診漏れの確認(個人事業主は市区町村国保が主体)
【上位資格(産業医・保健師・公衆衛生管理士)との連携と社労士の役割】
特定保健指導の実際の支援は保健師・管理栄養士等の専門職が担いますが、社労士は「実施体制の整備」「健診費用の処理」「健診実施に関する労使協定・就業規則の確認」で貢献します。
産業医・保健師との連携が特に重要な局面:
- 特定保健指導の対象者が「業務多忙を理由に保健指導を拒否」している場合→労働時間管理の観点から社労士が介入できる
- 保健指導の結果を受けて「就業制限・配置転換」の判断が必要な場合→医師の意見に基づく就業上の措置は社労士のアドバイス領域
- 「特定健診で重大な疾病が発見された従業員」の傷病手当金・休職支援→社労士の専門領域
特定健康診査・特定保健指導は「予防医療」の実践であり、社労士が企業の「健康経営」(経済産業省認定制度)支援に関与する際の基礎知識として不可欠です。健康経営優良法人認定の取得支援においても、特定健診実施率の向上は評価指標の一つとなっています。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 高齢者医療確保法第18条(特定健康診査の実施義務・対象年齢は40歳以上75歳未満)・第19条(特定保健指導)・第20条(実施計画)・第22条(実施計画の届出)・第29条(後期高齢者支援金の加算減算) 対象年齢の根拠: 高齢者医療確保法第18条第1項(「40歳以上の者であって75歳未満のもの」が対象) 後期高齢者支援金の加算減算: 高齢者医療確保法第29条(実施率が低い保険者は支援金が加算・高い保険者は減算) 一次ソース: 厚生労働省 特定健康診査・特定保健指導 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kenkou/specifics/index.html ・e-Gov 高齢者の医療の確保に関する法律第18条 https://laws.e-gov.go.jp/law/318AC0000000080 <!-- 監修確定 2026-06-08 差し戻し修正版(content-quality-officer・legal-reviser): 各肢の真偽判定(最終): ア=正しい(医療保険者が実施義務・40歳以上75歳未満が対象。高齢者医療確保法第18条第1項の条文通り正確)。 イ=正しい(積極的支援と動機付け支援の2段階・いずれも初回面接+継続支援)。 ウ=誤り(対象年齢を「20歳以上75歳未満」としているが、高齢者医療確保法第18条第1項は「40歳以上75歳未満」と明定している。20歳以上は誤り。「若年層からの生活習慣病予防」という説明も事実と異なる制度設計)。 エ=正しい(特定健診費用の事業主直接負担制度はなく保険料財源のみ。記述は正確)。 オ=正しい(実施率が低い→後期高齢者支援金加算(ペナルティ)・実施率が高い→減算(インセンティブ)は高齢者医療確保法第29条の正確な記述)。 最終正答: ウ 構造: 1誤(ウ・「20歳以上75歳未満」→正しくは「40歳以上75歳未満」)・4正(ア・イ・エ・オ) 公開可。段差性確認済み(beginner<standard<advanced)。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。