宅建士 権利関係 問34:民法債権
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-11)
宅地建物取引業者Aが媒介する建物賃貸借において、賃借人Bが退去する際の原状回復義務および敷金に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
- ア賃借人Bの通常使用による経年劣化(クロスの日焼け・フローリングの軽微な傷等)は、Bが原状回復義務を負う損耗に含まれる。
- イ賃貸人Aが敷金から賃借人Bの原状回復費用を差し引く場合、Bが明け渡しを完了するまで差し引いた後の残金を返還する必要はない。
- ウ賃借人Bが賃貸借終了前に退去し賃料を支払わない場合、賃貸人Aは敷金を賃料未払分に当然に充当することができるが、Bは賃料支払いに代えて敷金充当を主張することはできない。正答
- エ敷金は賃貸借契約が終了し建物の明渡しが完了した後に、賃貸人が原状回復費用等を差し引いて返還する義務があるが、契約終了前でも Bが請求すれば返還しなければならない。
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敷金は「賃料不払い等の債務の担保」として差し入れるものです(民法622条の2第1項)。賃貸人は敷金を賃料未払分に充当することができますが、賃借人から「敷金を充当してください」と請求する権利はありません。よってウが正答です。
民法622条の2(2020年施行・明文化)は敷金制度を規定します。敷金は「いかなる名目であるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」です。ウについて、賃貸人が賃料未払分に敷金を充当することはできますが(民法622条の2第2項:「賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる」)、賃借人から「敷金で賃料を払いたい」と主張する権利はありません(民法622条の2第2項ただし書)。ウは正確であり正答。アについて、通常使用による経年劣化・自然損耗(クロスの日焼け・フローリングの経年劣化等)は賃料に含まれる使用収益のコストであり、賃借人の原状回復義務の対象外です(民法621条・国土交通省ガイドライン)。「原状回復義務に含まれる」とするアは誤り。イについて、敷金返還義務は賃貸借終了後かつ明渡し完了後に生じます(民法622条の2第1項1号)。明渡し「完了まで」返還不要という意味でイは部分的に正しいですが、「明渡し完了後は当然返還義務が生じる」という前提を忘れた表現で誤り方向性を示しています。エについて、敷金返還義務は賃貸借終了後・明渡し完了後に発生し(民法622条の2第1項)、契約終了前にBが請求しても賃貸人は返還義務を負いません。「契約終了前でも請求すれば返還」とするエは誤り。
原状回復義務(民法621条)と敷金(民法622条の2)は2020年施行改正民法で明文化されました。改正前は判例・国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によって実務運用されていましたが、改正後は民法に明文規定が設けられました。原状回復義務の範囲は「賃借人の責めに帰すべき事由による損耗」のみです(民法621条)。具体的には①通常使用による損耗・経年変化:賃借人の負担なし(アは誤りの典型)、②賃借人の故意・過失による損耗・毀損:賃借人の負担あり(壁への釘穴・ペットによる傷等)です。国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は改正民法とほぼ整合しており、民法改正後も実務の参照文書として機能しています。敷金の法的性質については①金銭消費寄託(大判昭和17.9.10)ではなく特別な担保寄託として、②明渡しまで返還拒絶できる担保的機能(最判昭和48.2.2)を持ちます。賃貸人の地位の移転(民法605条の3)において、建物所有権移転とともに敷金返還義務も新賃貸人(取得者)に引き継がれます(最判昭和44.7.17の判例法理が明文化)。宅建実務では、売買に伴う賃貸人地位の移転(敷金引継ぎ確認)と原状回復トラブルの未然防止(入退去時の写真記録・チェックリスト作成)が重要業務です。令和2年改正民法(民法621条・622条の2)で明文化された原状回復・敷金規定は、国交省ガイドラインとほぼ整合していますが、借主・貸主双方の認識齟齬が依然として退去時紛争の主因であり、マンション管理士・賃貸不動産経営管理士試験でも敷金清算プロセスの実務知識が問われます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:出典:不動産適正取引推進機構(RETIO)公表の出題範囲(宅地建物取引士試験)を参照した合格ナビ独自作成 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-11)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般財団法人 不動産適正取引推進機構(RETIO)・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトはRETIOと一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 宅地建物取引業法・改正民法・借地借家法・建築基準法・都市計画法・盛土規制法(R5)・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。