問題
宅地建物取引業者Aが媒介した不動産売買・賃貸借において相殺が問題となる場面に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
キーボード:1〜4で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
相殺は、お互いに同じ種類の債務を負っている場合に、一方の意思表示で両方の債務を消し合う制度です(民法505条1項)。双方の債務が弁済期に達していれば相殺できます。ウはこの条文どおりで正答です。賃借人が支出した必要費は、賃貸借の終了を待たずに直ちに償還請求できます(608条1項)ので、イは誤りです。
民法505条1項は「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない」と定めます。ウはこの条文どおりで正答です。イは、608条1項が「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる」と定めており、賃貸借の終了を待つ必要はないため誤りです。アは、505条2項が「当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる」と定めており、常に対抗できるわけではないため誤りです。エは、608条2項が「賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に…その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる」と定めており、期限の許与を請求できるのは賃借人ではなく賃貸人であるため誤りです。
相殺(民法505条〜512条の2)は、対立する債権債務を簡易に決済する制度であり、金融取引・不動産取引の実務で頻繁に利用されます。相殺の要件(相殺適状、505条1項)は、①双方が互いに金銭その他同種の給付を目的とする債務を負担していること、②双方の債務が弁済期にあること、③債務の性質が相殺を許すものであることです。弁済期の要件については、相殺の意思表示をする側の債権(自働債権)は弁済期が到来している必要がありますが、相殺される側の債権(受働債権)は期限の利益を放棄することで弁済期前でも相殺に供することができるとされています。相殺禁止・制限の特約(505条2項)は、当事者間では有効ですが、第三者に対抗できるのはその第三者が特約の存在を知り、又は重大な過失によって知らなかった場合に限られます。相殺が禁止される場合として、民法509条は、悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務、及び人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務を受働債権とする相殺を禁止しています(加害者側からの相殺の禁止であり、被害者側からの相殺は妨げられません)。賃貸借における費用償還請求権については、必要費(608条1項)は支出後直ちに償還を請求できるのに対し、有益費(同条2項)は賃貸借終了時に償還すればよく、裁判所は賃貸人の請求によりその支払について相当の期限を許与できます。宅建実務では、賃料滞納の交渉において賃借人から修繕費用等との相殺を主張される場面があり、必要費・有益費のいずれに該当するか、相殺適状を満たすかの確認が必要です。差押えと相殺の関係については、民法511条1項が、差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができると定めており、担保・保証実務で重要な論点です。
- 民法第505条・第509条・第511条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。根拠・出典:出典:不動産適正取引推進機構(RETIO)公表の出題範囲(宅地建物取引士試験)を参照した合格ナビ独自作成各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映しています(数値確認日 2026-10-12)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般財団法人 不動産適正取引推進機構(RETIO)・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトはRETIOと一切関係ありません。
執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。宅地建物取引業法・改正民法・借地借家法・建築基準法・都市計画法・盛土規制法(R5)・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

