宅建士 権利関係 問39:民法債権
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-11)
宅地建物取引業者Aが媒介した不動産売買において相殺が問題となる場面に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
- ア売主BがAに対して媒介報酬500万円の支払義務を負い、AがBに対して別の不動産売却代金500万円の請求権を持っている場合、双方の債権が弁済期に達していれば、いずれの当事者も相殺を主張することができる。正答
- イ不法行為による損害賠償債権を受働債権(相殺される側)として相殺することは、いかなる場合も認められない。
- ウ賃借人Bが賃貸人Aに対して修繕費の立替払い請求権(必要費償還請求権)を有する場合、Bは賃料債務と修繕費償還請求権を相殺することができる。
- エ弁済期未到来の債権は、他の条件を満たしていても自働債権(相殺する側)として相殺に供することができない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・国土交通省ガイドライン・RETIO通達も明記。
相殺は互いに同種の債務を持つ場合に一方的な意思表示で双方の債務を消滅させる制度です(民法505条)。双方の弁済期が到来していれば、どちらの当事者も相殺の意思表示ができます。よってアが正答です。
相殺の要件(民法505条)は①相殺適状(同種の目的・双方の弁済期到来)、②相殺禁止の規定がないこと、③当事者の一方の意思表示です。アは相殺適状(双方弁済期到来)の条件を正確に述べており正答。イについて、不法行為による損害賠償債権については、「加害者が相殺(不法行為によって生じた損害賠償債務を自働債権として相殺すること)」は禁止されますが(民法509条:故意による不法行為の場合)、被害者が逆に相殺することは禁止されていません(最判昭和42.11.30等)。「いかなる場合も認められない」とするイは誤り。ウについて、賃借人の修繕費立替払いによる必要費償還請求権(民法608条1項)と賃料債務は「同種の給付を目的とする債権」(いずれも金銭)ですが、賃料は賃貸人に対する金銭債務であり、賃借人の必要費償還請求権と相殺することは可能です(民法505条の要件を満たす場合)。ウは正しい方向性の記述ですが「相殺できる」と断言するためには弁済期等の条件確認が必要であり、本問の最も適切な正答はアです。エについて、自働債権(相殺する側)の弁済期が未到来の場合でも、相殺の意思表示で対抗することはできません(民法505条1項:自働債権の弁済期到来が要件)。Eの「自働債権の弁済期未到来は相殺不可」の部分は正確ですが、受働債権(相殺される側)は弁済期前でも期限の利益放棄で相殺できる点を加味するとエは不完全な表現で誤り。
相殺(民法505条〜512条の2)は金融取引・不動産取引で頻繁に使われる制度です。相殺禁止事由(民法509条)は改正民法で整理され、①悪意の不法行為(故意不法行為)による損害賠償債権を受働債権とする場合、②人の生命・身体侵害による損害賠償債権を受働債権とする場合、に相殺が禁止されます(加害者が相殺の意思表示をする場合)。これは不法行為被害者の実際の損害賠償金受取りを保護するための政策規定です(被害者が自ら相殺することは可能)。相殺適状(民法505条1項)の要件として①双方が互いに金銭その他同種の給付を目的とする債務を負担していること、②双方の弁済期が到来していること(自働債権の弁済期到来が必要・受働債権は期限の利益放棄で可)、③双方の債権が同種の目的を有すること、があります。差押えと相殺の関係(民法511条)については改正民法で「差押え後に取得した債権による相殺禁止」が明確化されました(受働債権が差押えを受けた後に他から取得した自働債権での相殺は原則禁止)。ただし差押え前から自働債権を有する場合は差押え後でも相殺可能(最大判昭和45.6.24の法理の明文化)。宅建実務では、テナントとの賃料滞納交渉において「修繕費用との相殺」を求められる場面があり、要件充足かどうかの判断が必要です。令和2年民法改正で差押えと相殺の関係(民法511条)が明文化され、「差押え前から自働債権を有する場合は差押え後でも相殺可」という最大判昭和45年の法理が条文化されました。行政書士・司法書士試験では相殺適状・禁止事由・差押え後の相殺可否を組み合わせた多論点問題が頻出です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:出典:不動産適正取引推進機構(RETIO)公表の出題範囲(宅地建物取引士試験)を参照した合格ナビ独自作成 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-11)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般財団法人 不動産適正取引推進機構(RETIO)・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトはRETIOと一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 宅地建物取引業法・改正民法・借地借家法・建築基準法・都市計画法・盛土規制法(R5)・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。