社労士 労働基準法 問11:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働基準法に規定する労働基準監督官の権限に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア労働基準監督官は、事業場に立ち入り、帳簿や書類を検査したり、使用者や労働者に尋問することができるが、この臨検・尋問権は、使用者の同意がなければ行使できない。
- イ労働基準監督官は、労働基準法または同法に基づいて発する命令の違反に関する罪について、刑事訴訟法の定める司法警察員として職務を行うことができる。正答
- ウ労働基準監督官が使用者に対して行う是正勧告は、行政処分の一種であり、使用者はこれに対して行政不服申立てを行うことができる。
- エ労働基準監督署長は、事業場の労働基準法違反について告発権限を持つが、個々の労働基準監督官は告発を行うことができず、必ず監督署長の名義で行わなければならない。
- オ労働基準監督官は、労働基準法違反に加え、最低賃金法・職業安定法・男女雇用機会均等法の違反についても、当然に司法警察員として職務を行うことができる。
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正答はイ(正しい記述)です。
労働基準監督官は、労働基準法または同法に基づいて発する命令の違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察員として職務を行う権限を持っています(労基法第102条)。これは、労働基準監督官が警察官と同様に捜査権・逮捕権等を行使できることを意味します。
アは誤りです。臨検・尋問権(第101条)は、使用者の同意なく行使できる行政上の強制権限です。ウは誤りです。是正勧告は行政指導の一形態であり、行政処分ではないため、行政不服申立ての対象にはなりません。エは誤りです。労働基準監督官も個人として告発権限を持ちます(第102条)。オは誤りです。司法警察員権限は各法律ごとに個別に付与されており、労基法の違反に限定されます(他法律の違反については別途規定が必要です)。
労働基準監督官の権限体系(労基法第100条〜第106条):
| 権限 | 根拠条文 | 内容 | 使用者の同意 |
|---|---|---|---|
| 事業場の臨検 | 第101条第1項 | 事業場・寄宿舎への立入検査 | 不要(行政権限) |
| 帳簿・書類の検査 | 第101条第1項 | 帳簿・書類の検査 | 不要 |
| 使用者・労働者への尋問 | 第101条第1項 | 関係者への質問 | 不要 |
| 危険・有害業務停止命令 | 第101条第2項 | 行政命令として発令可 | 不要 |
| 司法警察員権限 | 第102条 | 捜査・逮捕(刑事訴訟法適用) | 不要 |
是正勧告の法的性格:
是正勧告は「行政指導」(行政手続法第2条第6号)の一種であり、法的な拘束力を持たない勧告・指導です。行政処分(許認可・命令等)とは異なるため、行政不服申立て(審査請求)・行政訴訟の対象にはなりません。ただし実務上、監督官が是正勧告を無視した事業場に対しては、司法警察員権限を行使して検察庁への送検が行われることもあります。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 臨検・尋問は行政上の強制権限であり、使用者の同意は不要(第101条第1項)。
- イ(正): 労基法102条が労働基準監督官に司法警察員権限を付与。捜査・逮捕等の刑事手続きを行使できる。
- ウ(誤): 是正勧告は行政指導であり行政処分ではない。行政不服申立ての対象外。
- エ(誤): 労働基準監督官は個人として告発権限を持つ(第102条)。監督署長名義限定ではない。
- オ(誤): 司法警察員権限は各法律ごとに個別付与。労基法の権限は労基法違反に限る。
【労働基準監督官制度の立法趣旨と司法警察員権限の意義】
労働基準監督官制度(労基法第97条〜第105条の2)は、労働基準法の実効性を担保するために設けられた特別な行政機関です。通常の行政機関が勧告・指導にとどまるのに対し、労働基準監督官は行政的権限(臨検・尋問・停止命令)と司法的権限(司法警察員・逮捕・送検)を一体として持つ点が最大の特徴です。この設計は、1947年の労基法制定時に、使用者が行政指導を無視した場合でも刑事手続きで直接対抗できるようにするという立法者の意図を反映しています。
【司法警察員権限の詳細構造】
労基法第102条が付与する司法警察員権限の範囲は「労働基準法または同法に基づいて発する命令の違反の罪」に限定されます。具体的には:
1. 捜査権: 証拠収集・事情聴取(任意・強制捜査の双方)
2. 逮捕権: 現行犯逮捕・令状による逮捕
3. 送検: 検察庁への告発・告訴の受理・送致
重要なのは、司法警察員権限は「法律ごとに個別付与」という原則です。最低賃金法(第34条)・労働安全衛生法(第94条)等は、それぞれの法律で個別に監督官への司法警察員権限付与を規定しています。したがって、「労基法の権限があれば全労働法令に及ぶ」という理解は誤りです。社労士試験では「どの法律の司法警察員権限か」を問うひっかけ問題が出題されます。
【是正勧告から送検までの実務フロー】
労働基準監督官の実務での権限行使フローを整理すると:
1. 任意立入検査(臨検): 労基法第101条に基づき事前通知なしで実施可能
2. 違反事実の確認: 帳簿・タイムカード等の確認、使用者・労働者への尋問
3. 是正勧告書の交付: 行政指導(法的拘束力なし。是正期限を付して是正を求める)
4. 是正確認: 指定期限までに是正されたか再確認
5. 司法処分: 是正されない場合・悪質事案→司法警察員権限行使→検察庁送検
6. 書類送検・起訴: 検察官が起訴→刑事裁判へ
社労士の実務では、顧問先が労働基準監督署から是正勧告を受けた際に「是正勧告は行政指導であり、直ちに行政不服申立てや行政訴訟を提起できるわけではない」こと、および「是正勧告に応じないと送検・起訴に至る現実的リスクがある」ことの両面を正確に説明できることが重要です。
【労働基準監督官と都道府県労働局長・厚生労働大臣との権限関係】
社労士試験では監督行政の指揮命令系統も出題されます。労働基準監督官は「労働基準監督署長の指揮監督」下で職務を行います(労基法第98条)。都道府県労働局長・厚生労働大臣は規則制定権・許認可権を持ちますが、個別事業場への立入検査・臨検権限は原則として労働基準監督官が行使します。例えば変形労働時間制の協定の届出先が「労働基準監督署長」であることや、解雇予告除外の認定権限が「労働基準監督署長」にあることはこの関係を反映しています。
根拠: 労働基準法第97条(監督機関の職員)・第98条(指揮監督)・第100条(地方公共団体の行政庁)・第101条(臨検・尋問権)・第102条(司法警察員)・第104条の2(立入検査)、刑事訴訟法第189条第2項(司法警察員の職務)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第101条(監督官の権限)・第102条(司法警察員) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 労基法第101条は使用者の同意なき行政上の立入・尋問権を定める(強制力あり。臨検拒否は第120条罰則)→アは誤り肢として成立。労基法第102条の司法警察員権限は「労基法または同法に基づいて発する命令の違反の罪」に限定され、最低賃金法は同法第34条、安衛法は同法第94条で別途付与→オの「当然に司法警察員」は誤り肢として成立。正答「イ」のまま確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。