社労士 労働基準法 問13:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働基準法に規定する法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア労働者名簿には、労働者の氏名・生年月日・履歴・性別・住所・従事する業務の種類・雇入れの年月日・退職または死亡の年月日とその事由を記載しなければならないが、常時10人未満の事業場では記載が免除される項目がある。
- イ賃金台帳には、氏名・性別・賃金の計算期間・労働日数・労働時間数・時間外・休日・深夜の割増賃金の基礎となる賃金額と時間数・基本給・手当その他賃金の種類ごとの額・控除項目と控除額を記載しなければならない。正答
- ウ出勤簿(タイムカードを含む)は、法律上の作成・保存義務が労働基準法に直接明記されていないため、事業者が任意に作成するものであり、保存義務はない。
- エ労働者名簿・賃金台帳の保存期間については、令和2年(2020年)の労基法改正前は3年であったが、改正後は賃金台帳の保存期間のみが5年(当分の間は経過措置として3年)に延長された一方、労働者名簿については改正の対象外とされ、保存期間は3年のまま据え置かれた。
- オ法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)はいずれも書面での保存が義務付けられており、電磁的記録(電子データ)での保存に代替することはできない。
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正答はイ(正しい記述)です。
賃金台帳には、氏名・性別・賃金の計算期間・労働日数・労働時間数・時間外・休日・深夜労働の各時間数・基本給・手当等の賃金の種類ごとの額・控除項目と控除額を記載しなければなりません(労基法第108条、施行規則第54条)。これら全ての項目が法律上の必須記載事項です。
アは誤りです。労働者名簿の記載事項(第107条)は事業場規模による免除がなく、すべての事業場で同じ項目を記載する必要があります。ウは誤りです。出勤簿は「労働関係に関する重要な書類」として第109条の保存対象となっており、保存義務があります(保存期間5年・経過措置3年)。エは誤りです。労基法第109条は労働者名簿・賃金台帳・労働関係書類のすべてを「5年間保存」と規定しており、第143条の経過措置(当分の間3年)も労働者名簿を含む全書類に適用されます(厚労省「改正労基法等Q&A」令和2年4月1日参照)。したがって「労働者名簿は改正対象外で3年据え置き」という記述は誤りです。オは誤りです。法定三帳簿は一定の要件を満たせば電磁的記録(電子データ)での保存が認められます。
法定三帳簿の比較(令和8年度試験必須):
| 帳簿 | 根拠 | 主な必須記載事項 | 保存期間 |
|---|---|---|---|
| 労働者名簿 | 第107条・施行規則第53条 | 氏名・生年月日・履歴・性別・住所・業務種類・雇入年月日・退職/死亡年月日・事由 | 5年(経過措置3年)(死亡・退職・解雇の日から起算) |
| 賃金台帳 | 第108条・施行規則第54条 | 氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜労働の基礎賃金額と時間数・賃金の種類別額・控除項目と額 | 5年(経過措置3年)(最後の記入から起算) |
| 出勤簿 | 施行規則第56条(「労働関係に関する重要な書類」として保存義務) | 出退勤時刻・労働時間数(タイムカード・ICカード記録等も含む) | 5年(経過措置3年) |
令和2年(2020年)労基法改正の保存期間延長:
2020年4月施行の改正(民法の消滅時効延長に対応)で、賃金請求権の消滅時効が2年→5年(当分の間の経過措置3年)に延長されました(3年)。これに伴い、賃金に係る書類(賃金台帳・タイムカード等)の保存期間も3年→5年(経過措置3年)に延長されています。
| 項目 | 改正前 | 改正後(経過措置) | 将来(経過措置終了後) |
|---|---|---|---|
| 賃金請求権の時効 | 2年 | 3年(経過措置) | 5年 |
| 賃金台帳等の保存 | 3年 | 3年(経過措置) | 5年 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 労働者名簿の記載事項(第107条)に事業場規模による免除はない。
- イ(正): 賃金台帳の必須記載事項(施行規則第54条)の列挙が正確。
- ウ(誤): 出勤簿は第109条の「労働関係に関する重要な書類」として保存義務がある。保存期間5年(経過措置3年)。
- エ(誤): 労基法第109条・第143条の経過措置は労働者名簿を含む全書類に適用。労働者名簿の保存期間も5年(経過措置3年)であり「3年据え置き」は誤り。
- オ(誤): 電磁的記録(電子データ)での保存は一定要件(見読可能性・改ざん防止等)を満たせば認められる(労基法施行規則第56条)。
【法定三帳簿制度の立法趣旨と「記録の保存」の意義】
法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)の保存義務は、労働基準法の実効性を担保するための基礎インフラです。労働基準監督官が臨検した際に三帳簿が整備されていることで、賃金未払い・時間外労働違反・雇用関係の有無等を証拠として確認できます。三帳簿が保存されていない場合は、それ自体が労基法第109条違反(30万円以下の罰金・第120条)となります。
【賃金台帳の保存期間延長と「未払い残業」立証との連鎖】
2020年改正で賃金台帳等の保存期間が実質的に延長された背景には、未払い残業請求の時効延長という民事法上の要請があります。賃金請求権の消滅時効が5年(経過措置3年)に延長されると、労働者は最大5年(当面3年)分の未払い賃金を請求できます。しかし使用者が賃金台帳・タイムカードを破棄していると証拠が失われ、実質的に労働者の権利行使が困難になります。そこで保存期間も同期間延長することで、請求可能期間中の証拠保全を担保する設計です。
この改正は実務上極めて重要で、令和2年以降は:
- タイムカード・ICカード勤怠記録は最低5年(当面3年)保存が必要
- メール・チャット等の電子的な時間外労働証拠も「労働時間の記録に関する書類」として保存対象になり得る
- 電磁的記録での保存が明示的に認められた(施行規則改正)
【電磁的記録での保存に必要な要件】
2017年・2020年の施行規則改正により、法定三帳簿を電磁的記録(電子データ)で保存することが認められています。必要な要件は:
1. 見読性(モニター等での閲覧可能性): 監督官の臨検時に即時に表示できること
2. 真正性(改ざん防止): 書類の作成後に改ざんできない記録管理措置
3. 保存性(保存期間中の消失防止): バックアップ・障害対応措置
クラウド型勤怠管理システム・給与計算ソフトのデータ保存は、これらの要件を満たせば紙の帳簿に代わる法的に有効な保存方法です。
【社労士実務での帳簿整備支援の実際】
社会保険労務士の主要業務の一つは、顧問先の法定三帳簿(特に賃金台帳・勤怠記録)の整備支援です。実務上の重要ポイント:
1. 賃金台帳と給与計算の連動: 給与ソフトの設定で賃金台帳の必須記載事項が自動生成されるか確認
2. 出勤簿の二重管理防止: タイムカードと事業主申告のダブルチェック体制
3. 保存期間管理: 電子保存の場合はバックアップポリシーの整備、紙の場合は5年分の管理台帳
4. 外国人労働者への対応: 労働者名簿に国籍・在留資格の記載が実務上推奨(義務規定ではないが管理上必要)
特に近年は、労働基準監督署の臨検でタイムカードとシフト表の差異(「不自然に帰宅時刻が揃っている」等)が残業代未払いの端緒として指摘されるケースが増加しています。社労士はこのリスクを顧問先に事前説明し、適正な記録管理を指導する責務があります。
根拠: 労働基準法第107条(労働者名簿)・第108条(賃金台帳)・第109条(記録の保存)・第120条(罰則)、労働基準法施行規則第53条・第54条・第56条。消滅時効: 3年(経過措置3年)・5年(将来5年)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第107条(労働者名簿)・第108条(賃金台帳)・第109条(記録の保存)・第143条(経過措置)、労働基準法施行規則第53条・第54条・第56条 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 労基法第109条は「労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」を5年間保存と規定。第143条の経過措置(当分の間3年)は労働者名簿を含む全書類に適用される(厚労省Q&A令和2年4月1日参照)。よって設問エの旧記述「労働者名簿も5年(経過措置3年)」は実態として正しく、イとの二重正答を回避するため、エを「労働者名簿は改正対象外で3年据え置き」型の誤り肢に書き換え。正答「イ」のまま確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。