問題
労働基準法に規定する法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はイ(正しい記述)です。
賃金台帳には、氏名・性別・賃金の計算期間・労働日数・労働時間数・時間外・休日・深夜労働の各時間数・基本給・手当等の賃金の種類ごとの額・控除項目と控除額を記載しなければなりません(労基法第108条、施行規則第54条)。これら全ての項目が法律上の必須記載事項です。
アは誤りです。常時30人未満の労働者を使用する事業では、労働者名簿の「従事する業務の種類」の記入を要しません(施行規則第53条第2項)。ウは誤りです。出勤簿は「労働関係に関する重要な書類」として第109条の保存対象となっており、保存義務があります(保存期間5年・経過措置3年)。エは誤りです。労基法第109条は労働者名簿・賃金台帳・労働関係書類のすべてを「5年間保存」と規定しており、附則第143条の経過措置(当分の間3年)も労働者名簿を含む全書類に適用されます(厚労省「改正労基法等Q&A」令和2年4月1日参照)。したがって「労働者名簿は改正対象外で3年据え置き」という記述は誤りです。オは誤りです。第109条の労働関係に関する重要な書類(出勤簿など)は、厚生労働省の所管法令に係る「e-文書」の省令により、電磁的記録(電子データ)での保存が認められています。
法定三帳簿の比較(令和8年度試験必須):
| 帳簿 | 根拠 | 主な必須記載事項 | 保存期間 |
|---|---|---|---|
| 労働者名簿 | 第107条・施行規則第53条 | 氏名・生年月日・履歴・性別・住所・業務種類(常時30人未満の事業は不要)・雇入年月日・退職年月日と事由・死亡年月日と原因 | 5年(経過措置3年)(死亡・退職・解雇の日から起算) |
| 賃金台帳 | 第108条・施行規則第54条 | 氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜労働の時間数・賃金の種類別額・第24条第1項による控除の額 | 5年(経過措置3年)(最後の記入の日。支払期日が遅い場合は支払期日から起算) |
| 出勤簿 | 第109条(「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として保存義務。起算日は施行規則第56条) | 出退勤時刻・労働時間数(タイムカード・ICカード記録等も含む) | 5年(経過措置3年)(完結の日から起算) |
令和2年(2020年)労基法改正の保存期間延長:
2020年4月施行の改正(民法の消滅時効延長に対応)で、賃金請求権の消滅時効が2年→5年(当分の間の経過措置3年)に延長されました(3年)。これに伴い、賃金に係る書類(賃金台帳・タイムカード等)の保存期間も3年→5年(経過措置3年)に延長されています。
| 項目 | 改正前 | 改正後(経過措置) | 将来(経過措置終了後) |
|---|---|---|---|
| 賃金請求権の時効 | 2年 | 3年(経過措置) | 5年 |
| 賃金台帳等の保存 | 3年 | 3年(経過措置) | 5年 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 常時30人未満の労働者を使用する事業では「従事する業務の種類」の記入を要しない(施行規則第53条第2項)。「免除される項目はない」が誤り。
- イ(正): 賃金台帳の記入事項(施行規則第54条第1項各号)の列挙と一致する。
- ウ(誤): 出勤簿は第109条の「労働関係に関する重要な書類」として保存義務がある。保存期間5年(経過措置3年)。
- エ(誤): 労基法第109条・附則第143条の経過措置は労働者名簿を含む全書類に適用。労働者名簿の保存期間も5年(経過措置3年)であり「3年据え置き」は誤り。
- オ(誤): 「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」(e-文書省令)の別表第一の表一に「労働基準法第百九条の規定による…労働関係に関する重要な書類の保存」が掲げられており、必要に応じ直ちに機器に表示し書面を作成できるようにすれば(同省令第4条第3項)、電磁的記録での保存に代えられる。「いずれも代替できない」は誤り。なお施行規則第56条は保存期間の起算日の規定である。
【法定三帳簿制度の立法趣旨と「記録の保存」の意義】
法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)の保存義務は、労働基準法の実効性を担保するための基礎インフラです。労働基準監督官が臨検した際に三帳簿が整備されていることで、賃金未払い・時間外労働違反・雇用関係の有無等を証拠として確認できます。三帳簿が保存されていない場合は、それ自体が労基法第109条違反(30万円以下の罰金・第120条)となります。
【賃金台帳の保存期間延長と「未払い残業」立証との連鎖】
2020年改正で賃金台帳等の保存期間が実質的に延長された背景には、未払い残業請求の時効延長という民事法上の要請があります。賃金請求権の消滅時効が5年(経過措置3年)に延長されると、労働者は最大5年(当面3年)分の未払い賃金を請求できます。しかし使用者が賃金台帳・タイムカードを破棄していると証拠が失われ、実質的に労働者の権利行使が困難になります。そこで保存期間も同期間延長することで、請求可能期間中の証拠保全を担保する設計です。
この改正は実務上極めて重要で、令和2年以降は:
- タイムカード・ICカード勤怠記録は最低5年(当面3年)保存が必要
- メール・チャット等の電子的な時間外労働証拠も「労働時間の記録に関する書類」として保存対象になり得る
- 電磁的記録での保存も、要件を満たせば認められる
【電磁的記録での保存に必要な要件】
第109条の書類の電磁的記録による保存は、e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)第3条第1項と、厚生労働省のe-文書省令(別表第一の表一「労働基準法第百九条の規定による…重要な書類の保存」)に根拠があります。保存の方法は同省令第4条で定められています:
1. 方法(第4条第1項): 電子計算機のファイル等で作成した電磁的記録をそのまま保存する方法か、書面をスキャナで読み取った電磁的記録を保存する方法
2. 見読性(第4条第3項): 必要に応じ、直ちに明瞭かつ整然とした形式で機器に表示し、書面を作成できるようにしておくこと(監督官の臨検時に即時に表示できること)
同条第4項の改変・消去の確認(真正性)や復元可能性(保存性)の措置は、別表第一の表二・表四などに掲げる書面に課されるもので、労働基準法の表一の書類に法令上求められるのは見読性です。ただし改ざんや消失は証拠としての価値を損なうため、クラウド型勤怠管理システム・給与計算ソフトを使う場合も、変更履歴とバックアップを確保しておくのが実務上安全です。
【社労士実務での帳簿整備支援の実際】
社会保険労務士の主要業務の一つは、顧問先の法定三帳簿(特に賃金台帳・勤怠記録)の整備支援です。実務上の重要ポイント:
1. 賃金台帳と給与計算の連動: 給与ソフトの設定で賃金台帳の必須記載事項が自動生成されるか確認
2. 出勤簿の二重管理防止: タイムカードと事業主申告のダブルチェック体制
3. 保存期間管理: 電子保存の場合はバックアップポリシーの整備、紙の場合は5年分の管理台帳
4. 外国人労働者への対応: 労働者名簿に国籍・在留資格の記載が実務上推奨(義務規定ではないが管理上必要)
特に近年は、労働基準監督署の臨検でタイムカードとシフト表の差異(「不自然に帰宅時刻が揃っている」等)が残業代未払いの端緒として指摘されるケースが増加しています。社労士はこのリスクを顧問先に事前説明し、適正な記録管理を指導する責務があります。
根拠: 労働基準法第107条(労働者名簿)・第108条(賃金台帳)・第109条(記録の保存)・第120条(罰則)、労働基準法施行規則第53条・第54条・第56条。消滅時効: 3年(経過措置3年)・5年(将来5年)。確認日2026-06-08。
- 労働基準法第108条・第109条・第百九条・第107条e-Govで原文を読む
- 民法e-Govで原文を読む
- 労働基準法施行規則第53条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第107条(労働者名簿)・第108条(賃金台帳)・第109条(記録の保存・5年間)、労働基準法施行規則第53条・第54条・第56条 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

