問題
労働基準法に規定する解雇制限・解雇予告除外に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウ(誤っている記述)です。
労基法第19条第1項ただし書が解雇制限の例外として定めるのは、①第81条の打切補償を支払う場合と、②天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(労働基準監督署長の認定が必要)の2つだけです。解雇予告手当(第20条)を支払っても、解雇制限は解除されません。
アは正しく、業務上負傷療養のための休業期間およびその後30日間は解雇禁止です(第19条第1項本文)。イは正しく、産前産後休業期間およびその後30日間も解雇禁止です(同項本文)。エは正しく、天災事変等による事業継続不可の場合は監督署長の認定を受けて解雇できます(第19条第1項ただし書・第2項)。オは正しく、解雇予告が不要となる2事由はいずれも監督署長の認定が必要です(第20条第1項ただし書・第3項)。
解雇制限(第19条)と解雇予告除外(第21条)の比較:
| 制度 | 根拠 | 禁止または例外の内容 | 監督署長認定 |
|---|---|---|---|
| 解雇制限 | 第19条第1項本文 | 業務上負傷療養休業期間+30日、産前産後休業期間+30日は解雇禁止 | —(例外は次の行の2つだけ) |
| 解雇制限の例外 | 第19条第1項ただし書き・第2項 | ①打切補償(療養開始後3年経過しても治らない場合の平均賃金1200日分)を支払う場合②天災事変等で事業継続不可能となった場合 | ①は不要・②は必要 |
| 解雇予告除外 | 第20条第1項ただし書・第3項 | ①天災事変等で事業継続不可能②労働者の責めに帰すべき事由→いずれも監督署長認定が必要 | 必要 |
※ 第21条は、日日雇い入れられる者など一定の労働者について第20条(解雇予告)を適用しない規定(除外「事由」ではなく適用除外の「労働者」)です。
解雇制限の具体的な期間(第19条):
1. 業務上の負傷・疾病: 「療養のために休業する期間」+「その後30日間」
2. 産前産後の女性: 「第65条の規定により休業する期間」+「その後30日間」
「療養のために休業する期間」については、業務上傷病で労災保険から休業補償給付を受けている期間が典型的なケースです。
打切補償(第81条)との関係:
業務上の傷病で療養開始後3年経過しても治らない場合、使用者は「平均賃金の1200日分」の打切補償を支払うことで、以後の解雇制限を解除できます。この場合、監督署長の認定は不要です(第19条第2項の認定は天災事変等の場合のみ)。なお労災保険の傷病補償年金を受ける場合の「打切補償を支払ったものとみなす」扱いは労災保険法第19条の規定です。
各選択肢の解説:
- ア(正): 業務上負傷療養のための休業期間の解雇禁止とその後30日間の保護(第19条第1項本文)。
- イ(正): 産前産後休業期間の解雇禁止とその後30日間の保護(第19条第1項本文)。
- ウ(誤・正答): 解雇制限の例外は打切補償の支払と天災事変等(認定要)の2つに限られる(第19条第1項ただし書)。解雇予告手当の支払で解除されることはない。
- エ(正): 天災事変等の場合の解雇制限例外(第19条第1項ただし書き)は監督署長認定が条件(同条第2項)。
- オ(正): 解雇予告が不要となる2事由(第20条第1項ただし書き)はいずれも監督署長の認定が必要(同条第3項)。
【解雇制限の保護法益と「後30日間」の意義】
労基法第19条が業務上傷病療養中の解雇を禁止する理由は明確です。業務に起因する傷病で休業している労働者は、使用者の事業活動に由来するリスクの被害者であり、療養中に解雇されると生活基盤を失うと同時に治療の継続が困難になります。「療養終了後さらに30日間」の保護は、治癒・治療終了直後の不安定な状態でも十分な次の就職活動期間を確保するためのバッファーです。
【打切補償(第81条)と療養3年・1200日分の詳細】
業務上傷病で療養開始後3年が経過しても「治癒(症状固定を含む)」しない場合、使用者は以下のいずれかの方法で解雇制限を解除できます:
1. 第81条の打切補償: 平均賃金1200日分を支払い、以後の労基法上の補償義務を打ち切る(解雇制限も解除)。
2. 労災保険の傷病補償年金: 療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合、またはその日後に受けることとなった場合は、打切補償を支払ったものとみなされる(労災保険法第19条。打切補償なしで解雇制限解除)。
1200日分という計算は平均賃金×1200であり、年齢・在職期間・退職金制度と無関係な独立した法定補償額です。
【解雇予告除外の認定基準(天災事変と労働者の帰責事由)】
解雇予告除外の2事由(第20条第1項ただし書き)の監督署長認定の考え方(具体的な認定基準は行政解釈によるもので、条文には例示がありません):
1. 天災事変その他やむを得ない事由: 条文上「事業の継続が不可能となつた場合」に限られるため、自然災害等で事業継続が不可能な状況が想定されています。単なる経営悪化・売上減少は、行政解釈上これに当たらないとされます。
2. 労働者の責めに帰すべき事由: 行政解釈では、予告期間を置かずに即時に解雇されてもやむを得ないと認められるほど重大・悪質な服務規律違反や背信行為が想定されています。単なる勤務不良・成績不振は通常該当しない(解雇の正当性・有効性とは別論点)。
【産前産後休業との解雇制限の連動(第65条・第19条)】
産前産後休業(第65条)と解雇制限(第19条)は連動して機能します。第65条により実際に休業する期間(産前は請求により6週間(多胎妊娠は14週間)以内、産後は原則8週間)中は解雇禁止であり、休業終了後さらに30日間も保護されます(産前休業を請求せずに就労している期間は、条文上「休業する期間」に当たりません)。これは育介法の育児休業(最大2年)とは別の制度であり、育児休業については、育児休業の申出・取得を理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(育介法第10条)として規律されます。社労士試験では、産前産後休業(労基法)・育児休業(育介法)・産後パパ育休(育介法)の各休業の根拠法・期間・解雇制限の根拠を正確に区別することが求められます。
【社労士の実務:解雇紛争対応と解雇制限違反のリスク】
第19条は強行規定であり、これに違反した解雇は無効と解されています。無効な解雇の後も労働者は労働契約上の地位を失わず、解雇期間中の賃金を請求し得ます。また第19条違反には第119条第1号の罰則(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)があります。
社労士の実務では、使用者側から解雇の相談があった場合に、解雇制限の有無(業務上傷病療養中・産前産後中か)を必ず確認し、制限期間中であれば第19条第1項ただし書の2つの例外に当たらない限り解雇はできないという境界線を明確に示すことが重要です。
根拠: 労働基準法第19条(解雇制限)・第20条(解雇予告)・第21条(除外事由)・第65条(産前産後休業)・第81条(打切補償)、労働者災害補償保険法第19条。確認日2026-06-08。
- 労働基準法第65条・第19条e-Govで原文を読む
- 労働者災害補償保険法第19条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第19条(解雇制限)・第20条(解雇予告)・第21条(解雇予告除外) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

