社労士 労働基準法 問14:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働基準法に規定する解雇制限・解雇予告除外に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア使用者は、労働者が業務上の負傷・疾病のため療養のために休業する期間およびその後30日間は、その労働者を解雇することができない。
- イ使用者は、産前産後の女性が労基法第65条の規定により休業する期間およびその後30日間は、その女性労働者を解雇することができない。
- ウ解雇制限が適用される「業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間」は、労働者が実際に休業している期間に限られ、療養中であっても労働者が就労している日については解雇制限の保護対象とはならない。正答
- エ天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合には、所轄労働基準監督署長の認定を受けることを条件に、解雇制限期間中でも労働者を解雇することができる。
- オ解雇予告除外事由には、「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合」および「労働者の責めに帰すべき事由に基づく場合」の2つがあり、いずれも所轄労働基準監督署長の認定を受けることが必要である。
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正答はウ(誤っている記述)です。
労基法第19条の「療養のために休業する期間」は、全部休業に限らず一部休業(部分休業)も含むというのが通説・行政解釈(昭25.6.5基収1322号)です。例えば週5日の所定労働日のうち2日だけ療養のために休業している場合でも、その期間中の解雇は第19条違反となります。ウの「実際に休業している期間に限られ、療養中であっても就労している日については解雇制限の保護対象とはならない」という記述は、一部休業を保護対象から除外する点で通説に反し誤りです。
アは正しく、業務上負傷療養中およびその後30日間は解雇禁止です(第19条第1項本文前段)。イは正しく、産前産後休業期間およびその後30日間も解雇禁止です(同後段)。エは正しく、天災事変等による事業継続不可の場合は監督署長認定で解雇制限が解除されます(第19条第2項)。オは正しく、解雇予告除外の2事由はいずれも監督署長の認定が必要です(第20条第3項・第21条)。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 労基法第19条「療養のために休業する期間」について、通説・行政解釈(昭25.6.5基収1322号等)および裁判実務は「全部休業に限らず一部休業(部分休業)も含む」と解する。所定労働日のうち一部のみ休業している場合でも、その療養のための一部休業期間中の解雇は第19条違反となる。よってウの「実際に休業している期間に限られ、療養中でも就労している日は解雇制限の保護対象外」という記述は通説に反し誤り(一部休業も保護対象)。正答「ウ」のまま確定。 -->
解雇制限(第19条)と解雇予告除外(第21条)の比較:
| 制度 | 根拠 | 禁止または例外の内容 | 監督署長認定 |
|---|---|---|---|
| 解雇制限 | 第19条第1項 | 業務上負傷療養休業期間+30日、産前産後休業期間+30日は解雇禁止 | 認定不要(絶対的禁止) |
| 解雇制限の例外 | 第19条第1項ただし書き・第2項 | ①打切補償(療養3年経過後の平均賃金1200日分支払)②天災事変等で事業継続不可能→いずれも監督署長認定が必要 | 必要 |
| 解雇予告除外 | 第20条・第21条 | ①天災事変等で事業継続不可能②労働者の責めに帰すべき事由→いずれも監督署長認定が必要 | 必要 |
解雇制限の具体的な期間(第19条):
1. 業務上の負傷・疾病: 「療養のために休業する期間」+「その後30日間」
2. 産前産後の女性: 「第65条の規定により休業する期間」+「その後30日間」
「療養のために休業する期間」については、業務上傷病で労災保険から休業補償給付を受けている期間が典型的なケースです。
打切補償(第81条)との関係:
業務上の傷病で療養開始後3年経過しても治らない場合、使用者は「平均賃金の1200日分」の打切補償を支払うことで、以後の解雇制限を解除できます。この場合も监督署長の認定は不要ですが、打切補償の支払い(または労災保険の傷病補償年金への切替)が先行要件です。
各選択肢の解説:
- ア(正): 業務上負傷療養中の解雇禁止とその後30日間の保護(第19条第1項本文前段)。
- イ(正): 産前産後休業期間の解雇禁止とその後30日間の保護(第19条第1項本文後段)。
- ウ(誤・正答): 通説・行政解釈(昭25.6.5基収1322号)では「療養のために休業する期間」は一部休業(部分休業)も含む。所定労働日のうち一部のみ療養休業している場合でも、その期間中の解雇は第19条違反。ウの「就労している日は保護対象外」は誤り。
- エ(正): 天災事変等の場合の解雇制限例外(第19条第1項ただし書き)は監督署長認定が条件。
- オ(正): 解雇予告除外の2事由(第20条第1項ただし書き・第21条各号)はいずれも監督署長の認定が必要。
【解雇制限の保護法益と「後30日間」の意義】
労基法第19条が業務上傷病療養中の解雇を禁止する理由は明確です。業務に起因する傷病で休業している労働者は、使用者の事業活動に由来するリスクの被害者であり、療養中に解雇されると生活基盤を失うと同時に治療の継続が困難になります。「療養終了後さらに30日間」の保護は、治癒・治療終了直後の不安定な状態でも十分な次の就職活動期間を確保するためのバッファーです。
【打切補償(第81条)と療養3年・1200日分の詳細】
業務上傷病で療養開始後3年が経過しても「治癒(症状固定を含む)」しない場合、使用者は以下のいずれかの方法で解雇制限を解除できます:
1. 第81条の打切補償: 平均賃金1200日分(約3年4か月分)を一時金として支払い、以後の補償義務を打ち切る(解雇制限も解除)。
2. 労災保険の傷病補償年金への切替: 傷病補償年金の支給決定により、第81条の打切補償を支払ったものとみなされる(第81条第2項。打切補償なしで解雇制限解除)。
この制度の実務上の注意点は、「療養開始後3年」ではなく「3年を経過しても治らない」ことが条件であり、3年ちょうどに打ち切れる権利が発生するわけではありません。また、1200日分という計算は平均賃金×1200であり、年齢・在職期間・退職金制度と無関係な独立した法定補償額です。
【解雇予告除外の認定基準(天災事変と労働者の帰責事由)】
解雇予告除外の2事由(第20条第1項ただし書き)の監督署長認定基準:
1. 天災事変その他やむを得ない事由: 地震・台風等の自然災害による事業所の全壊・焼失・水没等で事業継続が客観的に不可能な状況。「経営悪化」「売上減少」等の経営上の理由は該当しない(経営困難は即時解雇の理由にならない)。
2. 労働者の責めに帰すべき事由: 刑事犯罪・重大な規律違反・横領・重大な業務妨害等。単なる勤務不良・成績不振は通常、この事由に該当しない(解雇の正当性・有効性とは別論点)。
【産前産後休業との解雇制限の連動(第65条・第19条)】
産前産後休業(第65条)と解雇制限(第19条)は連動して機能します。産前6週間(多胎妊娠は14週間)・産後8週間の休業期間中は解雇禁止であり、産後休業終了後さらに30日間も保護されます。これは育介法の育児休業(最大2年)とは別の制度であり、育児休業中の解雇制限は育介法第10条(育介法違反)として規律されます。社労士試験では、産前産後休業(労基法)・育児休業(育介法)・産後パパ育休(育介法)の各休業の根拠法・期間・解雇制限の根拠を正確に区別することが求められます。
【特定社労士の実務:解雇紛争対応と解雇制限違反のリスク】
解雇制限に違反した解雇は、絶対的に無効(解雇の意思表示が法律上効力を生じない)です。使用者が業務上傷病療養中の労働者を解雇した場合、その解雇は当然無効となり、労働者は解雇後も在職中の地位を維持し、解雇期間中の賃金(バックペイ)を全額請求できます。
特定社労士の実務では、使用者側から「業績悪化で早期退職を求めたい」という相談があった場合に、解雇制限の有無(業務上傷病療養中・産前産後中か)を必ず確認し、制限期間中であれば「任意退職の勧奨は可能だが解雇は不可」という境界線を明確に示すことが最重要の業務です。
根拠: 労働基準法第19条(解雇制限)・第20条(解雇予告)・第21条(除外事由)・第65条(産前産後休業)・第81条(打切補償)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第19条(解雇制限)・第20条(解雇予告)・第21条(解雇予告除外) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。