労働基準法16労働基準法

社労士 労働基準法 問16:労働基準法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision

労働基準法第41条の2に規定する高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者は、対象業務(金融商品の開発業務・アナリスト業務・コンサルタント業務・研究開発業務等)に従事する者であって、使用者との間で書面または電磁的記録で締結された合意に基づき、年間の賃金額が基準額(10,750,000円/年)以上でなければならない。
  • 高度プロフェッショナル制度を適用するためには、労使委員会を設置し、委員の5分の4以上の多数による決議が必要であり、当該決議を所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
  • 高度プロフェッショナル制度が適用される労働者には、労働基準法の規定による労働時間・休憩・休日および深夜の割増賃金の規定が適用されなくなるため、使用者は労働時間の把握義務を負わない。正答
  • 高度プロフェッショナル制度の適用を受けた労働者に対し、使用者は健康管理時間(事業場内にいた時間と事業場外で業務に従事した時間の合計)を把握し、一定以上の健康管理時間を超えた場合には医師の面接指導を行う義務がある。
  • 高度プロフェッショナル制度の対象となる「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務」は、厚生労働省令で限定列挙されており、省令で定める業務以外に拡張することはできない。
正答:高度プロフェッショナル制度が適用される労働者には、労働基準法の規定による労働時間・休憩・休日および深夜の割増賃金の規定が適用されなくなるため、使用者は労働時間の把握義務を負わない。

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正答はウ(誤っている記述)です。

高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)が適用される労働者に対しては、労働時間・休憩・休日・深夜割増賃金の規定は適用されません。しかし、使用者は「労働時間の把握義務がなくなる」わけではなく、「健康管理時間」(事業場内にいた時間と事業場外で業務に従事した時間の合計)の把握義務が残ります(第41条の2第1項第4号)。また、健康管理時間が一定限度(週40時間を超えた時間が100時間超)を超えた場合には医師の面接指導を行う義務があります。

「労働時間の規制がない=把握義務もない」という理解は誤りです。健康確保の観点から、別の枠組みで時間管理が義務付けられています。

アは正しく、対象業務・年収要件が条文要件です。イは正しく、労使委員会の5分の4以上の決議と届出が必要です。エは正しく、健康管理時間超過時の医師面接指導義務があります。オは正しく、対象業務は省令で限定列挙されています。

標準試験対策の基準レベル

高度プロフェッショナル制度の要件一覧(2019年4月施行):

| 要件 | 内容 |

|---|---|

| 対象業務 | 省令で限定列挙(金融商品開発・アナリスト・コンサルタント・研究開発等5業務) |

| 対象労働者 | 年収 10,750,000円/年 以上の書面合意が必要 |

| 手続き | 労使委員会の5分の4以上の多数による決議+労基署長へ届出+労働者の書面同意 |

| 時間規制の除外 | 労働時間・休憩・休日・深夜割増賃金の規定が適用除外 |

| 健康確保措置(義務) | ①健康管理時間の把握 ②104日以上かつ4週4日以上の休日確保 ③以下のいずれか1つ以上: 勤務間インターバル(11時間以上)/健康管理時間上限(月100時間未満)/2週連続の休日/臨時健康診断 |

| 面接指導 | 健康管理時間が週40時間超で月100時間を超えた場合、医師による面接指導(義務) |

労使委員会と労働時間等設定改善委員会の違い:

| 委員会 | 使用目的 | 決議の多数要件 |

|---|---|---|

| 労使委員会 | 高プロ制度の決議(第41条の2)、裁量労働制の決議(第38条の3・第38条の4) | 5分の4以上 |

| 安全委員会・衛生委員会 | 安全衛生管理に関する調査審議 | 定めなし(合議制) |

各選択肢の解説:

  • ア(正): 対象業務(省令5業務)・年収要件(10,750,000円/年以上・書面合意)・書面合意の3要件。
  • イ(正): 労使委員会の5分の4以上の多数決議+労基署長届出(第41条の2第1項)。
  • ウ(誤・正答): 高プロ適用者でも「健康管理時間の把握義務」は残る(第41条の2第1項第4号)。「把握義務なし」は誤り。
  • エ(正): 健康管理時間が月100時間超の場合の医師面接指導義務(第41条の2第1項第5号)。
  • オ(正): 対象業務は省令第34条の2で5業務に限定列挙(新たに拡張するには省令改正が必要)。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【高度プロフェッショナル制度の立法経緯と「残業代ゼロ法案」批判への対応】

高プロ制度は、いわゆる「残業代ゼロ法案」として長年にわたり労働側から強い批判を受け続けた末、2018年の働き方改革関連法でようやく成立した制度です(2019年4月施行)。制度の設計においては、批判を踏まえて以下の「過用防止策」が組み込まれました:

1. 年収要件の厳格化: 基準額(10,750,000円/年)という高い閾値設定。一般の労働者への拡張を法制度で阻止。

2. 対象業務の限定列挙: 省令5業務。「知識集約型業務全般」への際限ない拡張を禁止。

3. 労働者の同意要件: 使用者が一方的に適用できず、書面による個別同意が必要。

4. 健康確保措置の義務付け: 時間規制除外のかわりに健康管理時間の把握・面接指導・休日確保等を義務化。

5. 不利益取扱いの禁止: 制度に同意しなかった・同意を撤回した労働者への不利益取扱い禁止(第41条の2第2項)。

【「健康管理時間」の概念と通常の「労働時間」管理との違い】

高プロ適用者には「労働時間」管理が適用されないかわりに、「健康管理時間」という独自概念で時間管理を行います。健康管理時間は「事業場内にいた時間」と「(事業場外で)業務に従事した時間」の合計です。通常の労働時間管理と比較すると:

| 概念 | 通常の労働時間管理 | 高プロの健康管理時間 |

|---|---|---|

| 目的 | 賃金算定・残業代計算 | 健康確保(医師面接指導のトリガー) |

| 計算基礎 | 労働した時間(休憩除く) | 事業場内滞在+事業場外業務時間の合計(休憩含み得る) |

| 超過時の効果 | 割増賃金発生 | 月100時間超→医師面接指導義務 |

【年収基準額の設定ロジックと改定可能性】

基準額(10,750,000円/年)は「労基法第41条の2第1項第2号に基づき厚生労働省令で定める額」として省令に委任されています。制度開始時から継続して同額が維持されていますが、省令改正により変更可能であり、今後インフレ・賃金水準の変化に応じた改定が論点になり得ます。社労士試験では「年収要件が政令で定められているか省令で定められているか」という根拠法レベルの問いも出題されます(省令委任が正解)。

【専門業務型裁量労働制(第38条の3)との比較】

高プロ制度に近い制度として専門業務型裁量労働制(第38条の3)があります。両者の主な違い:

| 比較項目 | 高プロ制度 | 専門業務型裁量労働 |

|---|---|---|

| 年収要件 | あり(10,750,000円/年以上) | なし |

| 対象業務 | 省令5業務(高度専門業務・時間-成果関連低業務) | 省令19業務 |

| 割増賃金 | 深夜割増も含め不適用 | 深夜・休日割増は適用あり |

| 時間把握 | 健康管理時間の把握義務 | 労働時間(みなし時間)の管理 |

| 同意 | 個別書面同意が必要 | 個別書面同意が必要 |

社労士実務では、顧問先から「残業代を支払わない方法はないか」という相談が来た際に、高プロ制度・裁量労働制・管理監督者(第41条2号)の適否を正確に説明し、不適切な適用(違法な「名ばかり管理職」等)のリスクを警告することが重要な業務です。

根拠: 労働基準法第41条の2(高度プロフェッショナル制度)、労働基準法施行規則第34条の2(対象業務5業務・対象業務告示)。年収基準: 10,750,000円/年(省令委任・労基則第34条の2第3項で1,075万円以上に確認日2026-06-08)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第41条の2(高度プロフェッショナル制度)、労働基準法施行規則第34条の2(対象業務) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): ウについて、労基法第41条の2第1項第4号により高プロ適用者にも「健康管理時間(事業場内滞在時間+事業場外業務時間)の把握義務」が事業者に課される。したがって「労働時間の把握義務を負わない」という記述は誤り→正答「ウ」として成立。年収基準は労基則第34条の2第6項により1,075万円(基準年間平均給与額の3倍を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額)。volatile_master.jsonに KOUDO_PRO_NENSHU=1075万円 を追加投入する。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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