社労士 労働基準法 問17:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働基準法に規定する妊産婦の保護に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合には就業させてはならないが、産後6週間を経過した女性が就業を請求した場合には就業させることができる。
- イ使用者は、妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させなければならないが、転換先の業務が存在しない場合には転換義務を履行する必要はない。
- ウ妊産婦(妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性)が請求した場合、使用者は法定時間外労働・法定休日労働・深夜業をさせてはならない。この請求権は三六協定が締結されている場合でも行使できる。正答
- エ産後8週間を経過した女性が就業を請求した場合、医師が支障がないと認めた業務についてのみ就業させることができるが、産後6週間は絶対的休業であり、いかなる場合も就業させてはならない。
- オ使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合には就業させてはならないが、この生理休暇に対して賃金を支払う義務はない。
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正答はウ(正しい記述)です。
妊産婦(妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性)が請求した場合、使用者は①法定時間外労働、②法定休日労働、③深夜業(午後10時〜午前5時)をさせてはなりません(第66条)。これは三六協定が締結されていても例外にはなりません。請求権は三六協定の有無に関わらず行使でき、使用者はこれを拒めません。
アは誤りです。産後の絶対禁止期間は6週間ではなく8週間です。産後8週間を経過した後に就業請求があった場合で、医師が支障なしと認めた業務に限り就業可能です(第65条第3項)。イは誤りです。軽易業務転換義務(第65条第3項)は「転換先がない場合には免除」とは規定されておらず、相応の業務を探す義務があります。エは誤りです。絶対的休業は産後8週間(産後6週間ではなく8週間)です。オは誤りで、生理休暇(第68条)は賃金の支払義務について法律上の規定がなく、有給か無給かは就業規則・協定等による点は正しいですが「義務はない」という断定が問題です。
妊産婦保護の条文別整理(第65条〜第68条):
| 条文 | 内容 | 請求者 | 請求の要否 |
|---|---|---|---|
| 第65条第1項 産前休業 | 出産予定日前6週間(多胎14週間)の休業 | 産前の女性 | 請求が必要(使用者は就業不可) |
| 第65条第2項 産後休業 | 産後8週間の就業禁止(絶対)、産後6〜8週間は医師が支障なしと認めれば可 | — | 請求不要(絶対禁止) |
| 第65条第3項 軽易業務転換 | 妊娠中の女性が請求した場合に他の軽易業務に転換 | 妊娠中の女性 | 請求が必要 |
| 第66条第1〜3項 時間外・休日・深夜 | 妊産婦の請求により時間外・休日・深夜労働を免除 | 妊産婦 | 請求が必要(三六協定があっても適用) |
| 第67条 育児時間 | 1歳未満の乳児を育てる女性が1日2回30分以上の育児時間を請求可 | 1歳未満乳児を育てる女性 | 請求が必要 |
| 第68条 生理休暇 | 生理日の就業が著しく困難な女性が請求した場合の休暇 | 当該女性 | 請求が必要(有給か無給かは規定なし) |
産後休業の絶対禁止と相対禁止:
- 産後0〜6週間: 絶対禁止(労働者の請求があっても就業させてはならない)
- 産後6〜8週間: 相対禁止(原則就業禁止。ただし労働者の請求があり、かつ医師が支障なしと認めた業務に限り就業可)
- 産後8週間経過後: 制限なし(ただし妊産婦としての第66条の請求権は産後1年まで継続)
「妊産婦」の定義:
第66条の「妊産婦」=妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性(第64条の3の定義を準用)。「産後1年」は出産日の翌日から計算。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 産後の「就業させてはならない」期間は6週間ではなく「8週間」(産後6〜8週間は医師認定で可・産後0〜6週間は絶対禁止)。産前は6週間(多胎14週間)が正しい。
- イ(誤): 軽易業務転換は請求があれば転換を試みる義務があり、「転換先がないから免除」という規定はない。実務では別部署・他業務への転換を含めて検討が必要。
- ウ(正): 妊産婦の時間外・休日・深夜労働免除は三六協定の有無にかかわらず請求権が行使できる(第66条)。
- エ(誤): 「絶対的休業」は産後6週間ではなく8週間(産後6〜8週間は医師認定付きで就業可)。
- オ(誤): 生理休暇(第68条)の有給・無給の問題は「義務がない(当然に無給)」と断定できない。就業規則・協定で有給とする例も多い。
【妊産婦保護規定の体系的理解:労基法・育介法・均等法の三法の連携】
妊産婦保護は労基法単独ではなく、育介法・男女雇用機会均等法との三法連携で理解する必要があります:
1. 労基法(第65〜68条): 産前産後休業・時間外/深夜労働の禁止・軽易業務転換・育児時間・生理休暇
2. 育介法(第5〜15条、第16〜16条の9等): 育児休業(子が1歳(最大2歳)まで)・産後パパ育休(子の出生後8週以内・最大28日)・介護休業・各種休暇
3. 均等法(第12〜13条): 妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止・マタハラ防止義務
社労士試験では、各制度の「根拠法」「請求者の要件」「有給か無給か」「違反時の効果」を混同しないことが重要です。
【軽易業務転換義務(第65条第3項)の実務上の限界と対応】
軽易業務転換は「妊娠中の女性が請求した場合」に使用者に課される義務です。「転換先の業務が物理的に存在しない場合」についての条文上の免除規定はありませんが、行政通達では「事業場の規模・業種等により転換先業務の確保が困難な場合には、可能な範囲で配慮をすることが求められる」という解釈を示しています。
実務上の問題点:
- 少人数事業場(例:5人規模の建設業)で全員が重作業に従事している場合に「軽易業務」が存在しない
- 転換に伴う賃金低下が生じる場合(転換後の業務単価が低い等)
- 転換を拒否した場合の均等法第9条(妊娠等を理由とする不利益取扱い禁止)との交錯
これらは社労士が顧問先で必ず直面する問題であり、就業規則への明記・産前産後管理フローの整備が予防的実務の核心です。
【産後8週間の「絶対」と「相対」の立法趣旨】
産後0〜6週間を絶対的休業としているのは、分娩後の身体的回復に最低限必要な期間として医学的根拠に基づいています。産後6週間は子宮の回復・哺乳の開始・産後うつのリスクが最も高い時期であり、いかなる事情があっても就業を禁止することで母体保護を最優先しています。
産後6〜8週間を「医師が支障なしと認めた業務に限り可」とする相対的禁止は、個々の女性の回復状況の多様性を考慮したものです。医師(産科医等)の証明書が就業の条件となります。
【三六協定と妊産婦請求権の優先関係(社労士試験の頻出論点)】
三六協定(第36条)は、事業場全体として時間外・休日労働を可能にする労使協定ですが、個々の労働者(特に妊産婦)の請求権を消滅させるわけではありません。この「労使の集団的合意(三六協定)」対「個人の請求権(第66条)」の関係が試験での頻出論点です。
同様に、フレックスタイム制・変形労働時間制が適用されている事業場においても、妊産婦が請求した場合には通常の8時間/週40時間の規定による就労時間への適用を求めることができます(第66条第1項・第2項)。これは変形制・フレックスの適用からの「離脱請求権」ともいえる重要な個人保護権限です。
根拠: 労働基準法第64条の3・第65条・第66条・第67条・第68条、男女雇用機会均等法第12条・第13条・第9条。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第64条の3(妊産婦の定義準用)・第65条(産前産後休業)・第66条(妊産婦の労働時間制限)・第67条(育児時間)・第68条(生理休暇) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 産前6週(多胎14週)請求休業=第65条第1項、産後8週絶対禁止+6週経過後医師認定就業=第65条第2項、軽易業務転換請求=第65条第3項、妊産婦の時間外/休日/深夜労働の請求免除(三六協定があっても適用)=第66条、育児時間=第67条、生理休暇=第68条、いずれも条文通り確認。正答「ウ」(三六協定があっても妊産婦の請求権は行使可)として確定。設問エの「絶対的休業=産後6週間」は産後8週(うち0〜6週は絶対・6〜8週は医師認定で就業可)が正しいため誤り肢として成立。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。