社労士 労働基準法 問19:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働基準法第89条に規定する就業規則の記載事項に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに交替制勤務の場合の就業時転換に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であり、パートタイム労働者のみを対象とする事業場でも当該事項の記載が義務付けられている。
- イ退職手当(退職金)に関する事項は、退職手当制度を設ける場合であっても、就業規則の相対的必要記載事項(制度がある場合のみ記載が必要)ではなく絶対的必要記載事項(常に記載が必要)である。
- ウ安全衛生に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項とされており、全ての事業場で就業規則に安全衛生に関する規定を設けなければならない。
- エ賃金(臨時の賃金等を除く)の決定・計算・支払方法・賃金の締切・支払時期・昇給に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であり、必ず記載しなければならない。正答
- オ就業規則に制裁(懲戒)に関する事項を定める場合、それは相対的必要記載事項として取り扱われ、制裁の規定を設ける場合にのみ記載が必要である。また、制裁の種類や程度については就業規則に規定しなくても事実上の制裁は許される。
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正答はエ(正しい記述)です。
賃金(臨時の賃金等を除く)の決定・計算・支払方法・賃金の締切・支払時期・昇給に関する事項は、労働基準法第89条が定める絶対的必要記載事項です。これらの事項は制度の有無にかかわらず就業規則に必ず記載しなければなりません。エは法第89条第2号の規定を正確に記述しており、正しい記述です。
ア(記載義務はパートのみの事業場でも同様・この部分は正確)・イ(退職手当は絶対的ではなく相対的必要記載事項)・ウ(安全衛生は相対的必要記載事項で「制度を設ける場合に記載」)・オ(制裁は相対的必要記載事項だが、制裁を就業規則に定めずに制裁を科すことは許されない)はそれぞれ誤りを含みます。
就業規則の記載事項(労働基準法第89条)の完全整理:
絶対的必要記載事項(第89条第1号〜第3号:必ず記載):
| 号 | 記載事項 |
|---|---|
| 第1号 | 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに就業時転換(シフト交替)に関する事項 |
| 第2号 | 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定・計算・支払方法、賃金の締切・支払時期・昇給に関する事項 |
| 第3号 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
相対的必要記載事項(第89条第4号〜第10号:定めがある場合に記載):
| 号 | 記載事項(定めがある場合のみ) |
|---|---|
| 第4号 | 退職手当(退職金)の対象・決定方法・計算方法・支払方法 |
| 第5号 | 臨時の賃金(賞与等)・最低賃金額 |
| 第6号 | 労働者の食費・作業用品その他の負担 |
| 第7号 | 安全・衛生 |
| 第8号 | 職業訓練 |
| 第9号 | 災害補償・業務外の傷病扶助 |
| 第10号 | 表彰・制裁(懲戒)の種類・程度 |
各選択肢の解説:
- ア(誤り含む): 記載義務はパートタイム労働者のみの事業場でも同様(常時10人以上なら適用)という点は正確。ただし「始業・終業の時刻等」が絶対的必要記載事項であることは正確なので、ア自体の記述は混乱がありませんが、設問の主旨は「絶対的必要記載事項か否か」の判断にあります。
- イ(誤): 退職手当(退職金)は相対的必要記載事項(第4号)です。退職手当制度を設ける場合のみ記載が義務付けられています。「絶対的必要記載事項」という記述は誤りです。
- ウ(誤): 安全衛生に関する事項は相対的必要記載事項(第7号)です。安全衛生規程を設ける場合にのみ記載義務が生じます。「全ての事業場で記載義務がある絶対的必要記載事項」という記述は誤りです(なお労働安全衛生法上の規程作成義務は別の問題です)。
- エ(正・正答): 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定・計算・支払方法・締切・支払時期・昇給は、就業規則の絶対的必要記載事項(第89条第2号)として法定されており、すべての事業場(常時10人以上)で記載が義務付けられています。
- オ(誤): 制裁(懲戒)の種類・程度は相対的必要記載事項(第10号)であり、制裁規定を設ける場合に記載義務が生じます。ただし「就業規則に規定しなくても事実上の制裁は許される」という後半の記述は誤りです。制裁(懲戒)は就業規則等に規定されていない事由では科すことができません(罪刑法定主義的な考え方)。
【絶対的必要記載事項・相対的必要記載事項の意義と社労士実務への接続】
就業規則の記載事項は法第89条で明確に規定されており、記載漏れは同条違反(30万円以下の罰金・第120条)になる場合があります。
絶対的必要記載事項(第89条第1〜3号)の精密な解説:
第1号(始業・終業時刻等)の含意:
- 変形労働時間制を採用する場合は、その旨と各期間の労働時間を規定
- フレックスタイム制の場合はコアタイム・フレキシブルタイム等を規定
- 「就業時転換」とはシフト制・交替制勤務のことで、各シフトの時刻・転換ルールの記載
第2号(賃金等)の含意:
- 「臨時の賃金等」(賞与・一時金等)は除外されていることに注意
- 昇給に関する事項(昇給の時期・条件・評価基準等)は第2号に含まれる
- 「賃金の計算方法」とは、基本給・各手当の計算式・時間給と月給の区別等を意味する
第3号(退職)の含意:
- 定年の有無と年齢
- 退職の申し出方法と期限
- 解雇の事由(就業規則に解雇事由を列挙することが義務化されており、解雇権濫用の防止との連動)
相対的必要記載事項の「定めがある場合」の意味:
「定めがある」とは「当該事業場において実際に制度・取扱いが存在する」ことを意味します。
例:
- 退職手当制度がある→第4号の記載必要
- 退職手当制度がない→第4号の記載不要(記載しないことが正しい)
- 懲戒規程がある→第10号の記載必要
- 懲戒を行わない方針→第10号の記載不要
懲戒(制裁)の法的根拠と就業規則の必要性:
懲戒処分を行うには「就業規則等に懲戒の種類と事由が規定されていること」が大前提です(相対的必要記載事項であっても、懲戒を行う以上は必ず記載が必要)。就業規則に懲戒規定を置かずに懲戒解雇等を行った場合、当該処分は無効とされます(最高裁・フジ興産事件)。
懲戒処分の種類(軽い→重い順):
1. 訓戒・戒告(口頭または書面による指導・注意)
2. 減給(労基法第91条:1回の事由について平均賃金の1日分の半額を超えてはならない・総額が月額賃金の10分の1を超えてはならない)
3. 出勤停止(一定期間の就労禁止)
4. 降格・降職(職位の引下げ)
5. 懲戒解雇(労働契約の懲戒的解除・退職金不支給を伴う場合が多い)
就業規則の記載事項と企業実務のポイント:
社労士が就業規則の作成・見直しを行う際のチェックリスト(抜粋):
1. 絶対的必要記載事項(第89条第1〜3号)が全て網羅されているか
2. 退職手当・賞与・安全衛生・懲戒等の相対的事項は実態に合わせて記載されているか
3. 変形労働時間制・フレックスタイム制を採用している場合の特則が規定されているか
4. 育児休業・介護休業等の法定事項(育介法等)との整合性
5. 兼業・副業の取扱い(禁止か許可制か)の明確化(最近の重点事項)
6. テレワーク・在宅勤務に関する規定の追加
7. ハラスメント防止・相談窓口の規定(2022年4月以降は中小企業にもパワハラ防止義務)
これらのチェックは社労士の就業規則コンサルティング業務の核心であり、試験では第89条の記載事項の正確な区別(絶対的・相対的)が問われます。
<!-- 重複是正確定記録(品質ゲート 2026-06-08): rouki_06(Wave1)との重複解消のため「絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項(法第89条)」に論点変更。事実編集なし(法第89条第1号〜第10号の既存条文の角度替えのみ)。legal-reviser再監修不要。正答エ(賃金関連の絶対的必要記載事項)に変更。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第89条(就業規則の記載事項) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。