社労士 労働基準法 問21:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働時間・賃金の端数処理に関する行政解釈(通達)について、次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**の組合せはどれか。
- ア1日の労働時間について、30分未満を切り捨て30分以上を1時間に切り上げる処理は、行政解釈上、毎日適用しても労働者に不利益が生じない場合には認められている。
- イ賃金計算の基礎となる1か月の労働時間数の合計において、1時間未満の端数が生じた場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は、常に法違反ではないと行政解釈されている。正答
- ウ1時間当たりの賃金額に労働時間数を乗じて得た額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理は、行政解釈上認められている。
- エ同一の事業場で一部の労働者(例:管理監督者)にのみ有利な端数処理方法を適用し、他の労働者に不利な端数処理を適用することは、使用者の裁量で行うことができる。
- オ1か月の賃金の支払額に100円未満の端数が生じた場合、翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは、常に法違反となる。
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正答はイとウの組合せです。
労働時間・賃金の端数処理は、行政解釈(昭和63年基発第150号通達)によってルールが定められています。
認められる端数処理(イ・ウ):
- 1か月の労働時間数の合計において30分未満の端数を切り捨て・30分以上を1時間に切り上げる処理(イ)
- 賃金額1円未満の端数を50銭未満切り捨て・50銭以上1円に切り上げる処理(ウ)
アは誤りで、1日単位の端数30分切捨て・切上げ処理は通達上認められません(1日単位の切捨ては割増賃金の過少払いに直結するため不可)。1か月合計段階での端数処理のみが認められます。エ(一部労働者のみ有利な適用)とオ(翌月繰越が常に違反)も誤りです。
行政解釈(昭和63年3月14日基発第150号)が認める端数処理の範囲:
| 端数の種類 | 認められる処理 | 単位の注意点 |
|---|---|---|
| 1日の労働時間数 | 端数処理は認められない(1日単位の切捨ては不可) | 1日ごとに正確に計算が必要 |
| 1か月の労働時間合計 | 30分未満→切捨て、30分以上→1時間に切上げ | 1か月分の合計時間の最終端数のみ対象 |
| 割増賃金単価(時間単価) | 円未満の端数→50銭未満切捨て・50銭以上切上げ | または賃金計算期間合計で1円未満を同処理 |
| 1か月の賃金額 | 100円未満の端数→翌月繰越可(または50円未満切捨て・50円以上切上げ) | 習慣的でない一時的処理は対象外 |
各選択肢の精査:
- ア(誤): 1日単位の端数処理(30分未満切捨て・30分以上切上げ)は通達上認められない(毎日の切捨てが積み重なって割増賃金の大幅な過少払いに直結するため)。「毎日適用しても認められる」とする本選択肢は誤り。1日単位は1秒単位まで正確に計算が原則。
- イ(正): 1か月合計での30分未満切捨て・30分以上切上げは行政解釈上認容済み。
- ウ(正): 1円未満の端数(50銭基準)の処理も行政解釈で認容済み。
- エ(誤): 端数処理通達の適用は「一律・常時・全労働者に公平に」が条件。恣意的に一部だけ有利な処理を適用することは法の趣旨に反する。
- オ(誤): 1か月の賃金額の100円未満端数の翌月繰越は行政解釈で認められており、「常に法違反」は誤り。
【端数処理通達の立法的背景:労基法第24条「全額払」原則との緊張関係】
労基法第24条は賃金の「全額払」原則を定めており、本来は1円単位・1秒単位まで正確に計算すべき建前があります。しかし実務上、時間単価×労働時間数の計算では必然的に端数が発生します。昭和63年3月14日基発第150号通達は「常に行われ、かつ、労働者に不利とならない処理方法に限り、例外的に認める」という立場から具体的な基準を示したものです。
【「1日単位」と「1か月合計単位」の峻別:試験最頻出の誤り肢設計】
端数処理通達で最も重要な区別は「単位」です。
- 1日単位の端数処理: 認められない。毎日の労働時間を切り捨てることは、積み重なると割増賃金の大幅な過少払いに直結するため不可。
- 1か月合計の端数処理: 30分未満切捨て・30分以上切上げが認められる。1か月分の時間を合計した最終端数のみに適用されるため、使用者・労働者双方の処理の簡便化として許容される。
社労士試験では「1日の労働時間の端数」「1か月の合計時間の端数」を意図的に混同させた選択肢が出題されます。本問アはこの混同を意図した誤り肢典型です。
【賃金計算の完全なフロー(端数が発生する箇所と処理方法)】
1. 時間単価の計算: 月給÷所定労働時間(円未満端数→50銭基準処理)
2. 1日の実労働時間の記録: 端数処理なし(1秒単位まで正確に)
3. 1か月の合計時間数の計算: 合計値の端数のみ→30分基準処理
4. 割増賃金額の計算: 時間単価×割増率×合計時間数(1円未満端数→50銭基準処理)
5. 月次賃金額の計算: 端数→100円基準処理(翌月繰越か50円基準処理)
この5段階で端数処理の許容範囲が異なります。特に②の「1日単位の記録は端数なし」が基本前提です。
【時間外労働の割増賃金計算における端数処理の実務的重要性】
使用者が意図的に「1日30分未満の時間外を全員切り捨て」するシステムを構築した場合、それが就業規則に明記されていたとしても通達違反です。労基署の調査では打刻データと賃金台帳の照合により、1日単位の切捨てが常態化していないか確認されます。2019年働き方改革以降の客観的労働時間管理義務(安衛法第66条の8の3)とも相まって、端数処理の適法性は社労士の顧問業務で頻繁に問題になる論点です。
根拠: 労働基準法第24条・第37条、昭和63年3月14日基発第150号(端数処理通達)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第24条(賃金の支払)・第37条(割増賃金)、昭和63年3月14日基発第150号(端数処理通達) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): ★2026-06-08重要修正:選択肢アを再設計(旧アは通達上「正しい記述」となり正答イ・ウとの整合性を欠いたため、「1日単位の切上げ・切捨ても認められている」とする明確な誤り肢に書き換え)。アは1日単位の端数処理(30分未満切捨て・30分以上切上げ)が「労基法上認められない」のが正しい行政解釈。「毎日適用しても認められる」とするアは誤り。1日単位の切捨てを常態化すると割増賃金の過少払いに直結するため不可で、認められるのは「1か月合計」段階のみ。イは昭和63年基発150号で「1か月の合計時間の端数30分未満切捨て/30分以上切上げは認める」と明示→正しい。ウは同通達で「賃金額1円未満の端数は50銭未満切捨て・50銭以上切上げは認める」→正しい。エは「全労働者に一律適用すること」が要件→誤り。オは同通達で「1か月の支払額100円未満の端数は翌月繰越可」と規定→「常に法違反」は誤り。正答イ・ウで一意性確保。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。