問題
賃金の支払に関する労働基準法第24条に規定する「通貨払い」の例外について、次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はオ(誤っている記述)です。
賃金の通貨払い原則(労基法第24条)の例外として現物給与(食事・住居・被服等での一部支払い)が認められるのは、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合です(第24条第1項ただし書)。就業規則はここに含まれていないため、就業規則に定めても現物給与は認められません。これがオの誤りです。
就業規則は使用者が作成するもので、労働組合との合意である労働協約とは性質が異なります。アの労働協約による現物給与、イの口座振込み・ウの証券総合口座への払込み(いずれも労働者の同意が必要。施行規則第7条の2第1項第1号・第2号)、エのデジタル払いは、いずれも正しい記述です。
賃金の通貨払い原則と例外の体系(労基法第24条第1項):
| 通貨払い原則の例外 | 認められる根拠 | 認められない根拠 |
|---|---|---|
| 現物給与 | 法令又は労働協約に別段の定め | 就業規則・個別合意のみでは不可 |
| 口座振込 | 労働者本人の同意(施行規則第7条の2第1項第1号) | 同意なしの強制振込は不可 |
| 証券総合口座 | 労働者本人の同意+要件を満たす預り金(同項第2号) | 同意なし・要件不充足では不可 |
| デジタル払い | 要件を満たした資金移動業者口座+労働者の同意(2023年4月施行) | 要件不充足業者・同意なしでは不可 |
各選択肢の精査:
- ア(正): 労働協約による現物給与→第24条第1項ただし書き。食事・住居・被服等が典型例。
- イ(正): 個々の労働者の同意による口座振込→施行規則第7条の2。「労働者の意思に基づく」が要件。
- ウ(正): 労働者の同意を得た場合、労働者が指定する金融商品取引業者に対する本人の預り金(一定の要件を満たすもの=いわゆる証券総合口座)への払込みも認められる(施行規則第7条の2第1項第2号)。
- エ(正): デジタル払い→2023年4月1日施行(令和4年厚生労働省令第158号)。厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への賃金支払が可能になった(施行規則第7条の2第1項第3号)。
- オ(誤): 就業規則による現物給与は認められない。現物給与の例外根拠は第24条第1項ただし書の「法令若しくは労働協約」の定めで、就業規則は含まれない。
正答=オ: 就業規則によって通貨払いの例外(現物給与)を定めることはできないため、オが誤り。
【現物給与の根拠が「法令又は労働協約」に限られる意味:労使対等原則の反映】
労基法第24条第1項ただし書きは、現物給与の根拠を「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合」に限っています。使用者と労働者の間の取り決めとして認められるのは、労働組合という集団的な交渉力を背景にした労働協約だけで、就業規則(使用者が作成)や個別合意(労働者個人は使用者に比べて交渉力が弱い)は含まれません。
【現物給与の法的性質と課税・社会保険上の扱い】
現物給与(食事・社宅・被服等)は、社会保険上の標準報酬月額の算定においても「現物による報酬」として報酬に含まれます(健保法・厚年法)。食事・住宅の現物給与は、厚生労働大臣が都道府県ごとに定める価額により通貨に換算します。所得税法上も現物給与は原則として経済的利益として課税対象になります。
【口座振込の法的構造:「同意」と「協定」の混同回避】
口座振込については、施行規則第7条の2第1項柱書が「使用者は、労働者の同意を得た場合には」と規定しており、個々の労働者の同意が要件です。振込先も「当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金」(第1号)で、本人名義の口座に限られます。施行規則には口座振込について労使協定を要件とする規定はありません。試験では「個別同意のみでは不可・労使協定が必要」と断定する選択肢が誤り肢として出題されることがあるため、施行規則の要件(同意)を正確に押さえることが重要です。
また、同条第2項により、退職手当については、労働者の同意を得れば、第1項の方法のほかに第2項各号に定める方法によって支払うこともできます。
【2023年4月施行・デジタル払い解禁の実務上の位置づけ】
2023年4月に解禁されたデジタル払い(資金移動業者口座への賃金振込)の要件:
1. 厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(指定資金移動業者)の口座であること
2. 口座残高が100万円を超えないようにする措置、または超えた場合に速やかに100万円以下とする措置があること
3. 破産等で債務の履行が困難となったときに口座残高の全額を速やかに弁済することを保証する仕組みがあること
4. ATM等で1円単位で現金化でき、少なくとも毎月1回は手数料なく受け取れること
5. 労働者本人の同意(口座振込と同様)
「労働者の同意が必要」「指定業者限定」「100万円」の3要素は要暗記です。
根拠: 労働基準法第24条第1項、同施行規則第7条の2第1項(第1号 口座振込・第3号 デジタル払い)。
- 労働基準法第24条e-Govで原文を読む
- 健康保険法e-Govで原文を読む
- 厚生年金保険法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第24条第1項(賃金支払5原則・ただし書「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合」)、労基法施行規則第7条の2第1項(第1号 口座振込・第2号 証券総合口座・第3号 デジタル払い) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

