社労士 労働基準法 問28:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働基準法に規定する過半数代表者に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいものはいくつあるか**。 ア. 過半数代表者は、使用者が指名・任命してはならず、労働者が自主的に選出しなければならないが、立候補した者がいない場合には使用者が適任者を指名することが認められている。 イ. 過半数代表者は、労基法第41条に規定する管理監督者(管理職)であってはならない。 ウ. 使用者が時間外・休日労働に関する協定(36協定)を締結するにあたり、労働者の過半数を代表する者を選出したが、その選出方法が使用者の意向を通じた非民主的手続によるものであった場合、その36協定は無効となる。 エ. 過半数代表者の選出は、挙手・投票・持ち回り決裁など民主的な方法であれば足り、その選出過程が書面で記録・保存されている必要はない。 オ. 同一事業場に複数の労使協定(36協定・変形労働時間制協定・年次有給休暇計画的付与協定等)を締結する必要がある場合、協定ごとに別々の過半数代表者を選出する必要はなく、1人の過半数代表者が複数の協定に署名することができる。
- ア一つ
- イ二つ
- ウ三つ正答
- エ四つ
- オ五つ
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正しいものはイ・ウ・オの3つです。
アは誤りです。使用者は過半数代表者を指名することが一切禁止されており、立候補者がいない場合でも例外はありません。選出は労働者が自主的に行わなければなりません。
エも誤りです。2019年(平成31年)の施行規則改正で、過半数代表者の選出過程は書面で記録し3年間保存することが義務付けられました。
イ(管理監督者は不可)・ウ(非民主的選出は協定を無効にする)・オ(1人が複数協定に署名可能)の3つが正しい記述です。
過半数代表者の選出要件(労基法施行規則第6条の2):
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 選出主体 | 労働者の自主的な選出(使用者の指名・意向の介入は全面禁止・例外なし) |
| 欠格事由 | 労基法第41条の管理監督者は過半数代表者になれない |
| 選出方法 | 挙手・投票・持ち回り等民主的な方法であること |
| 記録・保存 | 選出過程を書面で記録し3年間保存(2019年改正で義務化) |
| 複数協定 | 同一の過半数代表者が複数の協定に署名することは可能 |
各選択肢の整理:
- ア(誤): 使用者が立候補者不在を理由に指名することも禁止。使用者は「選出手続の告知・機会提供」はできるが、特定人を指名・推薦することはできない。
- イ(正): 管理監督者は過半数代表者になれない(施行規則第6条の2第1項第1号)。管理職でない一般労働者から選出する必要がある。
- ウ(正): 使用者の意向を通じた非民主的選出による協定は無効。過半数代表者の要件を欠く→労使協定としての効力がない→時間外労働の免罰効果も生じない(違法となる)。
- エ(誤): 2019年改正で選出過程の書面記録・3年保存が義務化(施行規則第6条の2第4項・第6条の2第5項)。
- オ(正): 法律上、同一の過半数代表者が36協定・変形労働時間制協定・有休計画的付与協定等の複数協定に署名することは認められている。
【過半数代表者制度の立法趣旨:労使対等原則の実質的保障】
労基法は「労働条件は労使対等の立場で決定する」(第2条第1項)を原則としますが、集団的労働関係では労使の力関係の非対称性が問題になります。使用者が指名した者を「代表者」として協定を締結しても、それは使用者の意思が二重に反映されているに過ぎず、労働者の真の同意とはいえません。施行規則第6条の2が「使用者の意向を排除した民主的選出」を厳格に要求するのはこのためです。
【2019年改正の重要性:選出過程の記録・保存義務化】
2019年(平成31年・令和元年)の労基法施行規則改正は、過半数代表者制度に2つの重要な変更を加えました。
第1に、選出過程の書面記録・3年保存の義務化(施行規則第6条の2第4項・第5項)です。改正前は選出方法の「民主性」が要件でしたが、事後的な立証が困難でした。改正後は使用者が選出過程(いつ、誰が、どの方法で選出したか)を書面で記録・保存する義務を負い、労基署の調査時に提示できなければ違反となります。
第2に、使用者による便宜供与の明確化(改正施行規則第6条の2第2項)です。使用者は「過半数代表者が労働者の意見集約等を行うことができる時間の確保等便宜を供与すること」が望ましいとされています(規制ではなく要請として)。
【非民主的選出による協定の効力と刑事免責の関係】
36協定の締結により使用者は労基法第32条・第35条違反(時間外・休日労働)の刑事責任を免れます(免罰効果)。過半数代表者の選出が非民主的であった場合、36協定自体が無効→免罰効果が発生しない→実際に時間外労働をさせていれば労基法違反が成立する、という連鎖が生じます。
この問題は実務上も重大で、「社長が気に入っている部下を代表者に指名して36協定を締結する」という慣行が、法的には無効な協定・違法な時間外労働として問題になったケースが複数あります(東京地判平成20年・3月27日等)。
【管理監督者が過半数代表者になれない理由:利益相反の排除】
管理監督者(労基法第41条第2号)は、採用・解雇・人事評価・昇給等に関する権限を持ち、経営上の機密にアクセスできる立場にある者です。このような者が「労働者代表」として使用者と協定を締結すると、自らの利益(管理職としての立場の維持)と労働者全体の利益が相反する構造になります。また管理監督者は時間外・休日労働の適用除外(第41条)であるため、36協定の影響を直接受けない当事者が「代表」を務めることも制度の趣旨に反します。
【複数協定・複数代表者の問題と社労士の実務】
法律上は1人の過半数代表者が複数の協定に署名できますが、実務では「選出のタイミングと対象協定の明示」が重要です。例えば「36協定の締結のために過半数代表者を選出する」という手続きで選出された者が、後から「変形労働時間制協定にも署名してほしい」と求められた場合、そもそも「変形労働時間制協定への署名」についての選出権限の委任があったかどうかが問題になります。社労士の実務では「包括的な協定交渉代理権を含む選出決議」を行うよう指導することが重要です。
根拠: 労働基準法第36条・第38条の4第2項・第39条第6項、労働基準法施行規則第6条の2(平成11年厚労省令第26号・2019年改正)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第36条・第38条の4第2項・第39条第6項、労働基準法施行規則第6条の2(平成11年厚労省令第26号・2019年改正) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 正しいものは3つ(イ・ウ・オ)→いくつあるか型「三つ」=選択肢ウが正答。ア誤り=使用者の指名・任命は一切禁止であり例外もない(施行規則6条の2第1項第1号)。立候補者不在でも使用者が指名することは不可。イ正=管理監督者は過半数代表者になれない(施行規則6条の2第1項第1号)。ウ正=非民主的手続による選出は無効→協定も無効(東京地判H20.3.27等)。エ誤=2019年改正で選出過程の書面記録・保存は義務化(施行規則6条の2第4項・保存3年)。オ正=同一事業場で同一の過半数代表者が複数協定に署名することは可能(法律上の制限なし)。当初プラン正答位置「ア」だったが、「いくつあるか型」では数値=ア〜オの対応で正答が決まるため、3つ=ウに修正(プラン§9 正答偏り補正の例外:いくつあるか型は別カウント)。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。