労働基準法30労働基準法

社労士 労働基準法 問30:労働基準法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision

労働基準法第7条に規定する公民権行使の保障に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 使用者は、労働者が公民権行使のために必要な時間を請求した場合、原則として拒否することはできないが、その時間に対する賃金の支払義務は同条により使用者に課されている。
  • 「公民としての権利の行使」(第7条)には、選挙権・被選挙権の行使(投票・立候補活動)が含まれるが、労働組合の活動(組合役員としての活動)は「公民権」の範囲に含まれない。正答
  • 労働者が公職(国会議員・地方議会議員等)に就任するために請求した時間については、使用者は時季変更権(第39条)と同様に業務の正常な運営を妨げる場合に限り拒否することができる。
  • 使用者は、労働者が労働時間外に行う政治活動(特定の政党や候補者を支持する行為等)を理由として、当該労働者を解雇・懲戒処分とすることは、労基法第7条により原則として禁止されている。
  • 労働者が公職(国会議員・地方議会議員・市町村長等)に就任した場合、その公職の職務に必要な時間は、使用者が請求を拒否することができない時間として保障される。
正答:「公民としての権利の行使」(第7条)には、選挙権・被選挙権の行使(投票・立候補活動)が含まれるが、労働組合の活動(組合役員としての活動)は「公民権」の範囲に含まれない。

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正答はイ(正しい記述)です。

選挙権・被選挙権の行使(投票や立候補活動)は労基法第7条の「公民としての権利の行使」に含まれます。一方、労働組合の組合役員としての活動は「公民権」の範囲には含まれません。組合活動は労働組合法の規律(不当労働行為の問題等)に服します。

アが誤りの理由:第7条は「請求した時間を拒否できない」と規定していますが、その時間の賃金は有給か無給かを定めていません。賃金の有無は就業規則や労使間の合意によります。

ウが誤りの理由:公民権行使の時間について使用者は「時刻の変更」はできますが「拒否」はできません。

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労基法第7条の構造と内容:

| 項目 | 内容 |

|---|---|

| 保障の対象 | 「公民としての権利の行使」(選挙権・被選挙権の行使・公職就任等)および「公の職務の執行」(裁判員・参考人・証人等) |

| 組合活動 | 労基法第7条の保障対象外(労組法の問題) |

| 使用者の義務 | 請求された時間を「拒否できない」(時刻変更は可) |

| 賃金の有無 | 条文上規定なし(有給か無給かは就業規則・労使合意による) |

| 時刻変更権 | 「権利の行使または公の職務の執行に妨げのない限り」時刻を変更できる |

各選択肢の整理:

  • ア(誤): 賃金支払義務は第7条に明示されていない。公民権行使時間が無給となっても第7条違反にならない(行政解釈も同様)。
  • イ(正): 選挙権・被選挙権の行使は「公民としての権利の行使」に該当する。組合役員活動は労組法の問題であり、第7条の「公民権」ではない。
  • ウ(誤): 時季変更権(第39条)は有給休暇の問題。第7条には「業務の正常な運営を妨げる場合に拒否できる」という規定はなく、使用者は「時刻の変更」のみ可能で「拒否」は不可。
  • エ(誤): 第7条は就業時間中の公民権行使を保障する規定であり、労働時間外の政治活動への制限・不利益処分を禁止する条文ではない(私生活上の政治活動の自由は憲法上の問題)。
  • オ(誤): 公職に就任しても「自動的に全職務時間が保障」されるわけではない。都度、労働者が「時間の請求」を行い、使用者が「拒否できない」という構造。

第7条の「時刻変更権」の具体例:

投票日が月曜日の場合、労働者が「午前9時から2時間(投票のため)」を請求してきたとき、使用者は「午後2時から2時間に変えてほしい」と時刻変更を求めることはできます(投票可能な時間帯ならば「妨げのない限り」の要件を満たす)。ただし「その日は忙しいから投票は来週にしてほしい」と拒否することは禁じられます。

上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【公民権行使保障の歴史的背景:戦後民主主義の担保】

労基法第7条は1947年(昭和22年)の制定時から存在する条文です。戦前の日本では「会社の工場・鉱山・農場での労働者を管理する使用者が、労働者の投票・政治活動を妨害する」慣行がありました。戦後の民主化過程で、労働者が「働きながら主権者として政治参加できる」環境を保障するために立法化されました。

【「公民権」の範囲の解釈論:選挙・裁判員・住民投票まで】

「公民としての権利の行使」の範囲については、以下の整理が重要です:

含まれるもの:

  • 選挙権の行使(国政・地方選挙の投票)
  • 被選挙権の行使(立候補活動)
  • 住民投票(住民投票条例に基づくもの等)
  • 特定個人情報保護委員会等の参加(法令で義務付けられた者)

含まれないもの:

  • 労働組合の組合役員活動(団体交渉参加・組合大会出席等)→ 労組法の不当労働行為(第7条第3号)の問題
  • 政党・政治団体の活動(選挙期間外の政治活動)→ 私生活上の自由の問題
  • 宗教活動(信教の自由の問題)

「公の職務の執行」の範囲:

  • 裁判員・補充裁判員としての出廷(裁判員法第100条も特別規定あり)
  • 証人・鑑定人・通訳人としての出廷
  • 民事訴訟・行政不服申立ての当事者としての出頭

【賃金の有無をめぐる争点:学説・実務・就業規則の重要性】

第7条が賃金の有無を規定していないことから、学説上は「有給か無給かは法律問題ではなく当事者間の問題」という見解が多数説です。行政解釈(昭和23年10月30日基発1458号)も「第7条は有給・無給を規定していない」と明確にしています。

実務上は以下の3パターンがあります:

1. 有給保障型: 就業規則で「公民権行使・公的職務の時間は有給とする」と規定(福利厚生として)。

2. 無給・有休取得型: 公民権行使時間は無給とし、労働者が年次有給休暇を取得して対応。

3. 時間振替型: 別の日の労働時間を調整して対応。

社労士の実務では、就業規則に「第7条の公民権行使時間の賃金の取扱い」を明記することを推奨します。規定がない場合、労使トラブルの原因になります。

【第7条違反の効果:刑事罰(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)】

第7条に違反した場合(使用者が公民権行使の請求を拒否した場合)は、労基法第119条により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。これは労基法の中でも比較的重い罰則区分(第119条:1年以下/6か月以下の2段階のうち6か月以下)に属します。

ただし実務上、第7条違反が刑事訴追される例は少なく、むしろ「公民権行使を理由とした解雇・不利益処分」が問題になるケースが多いです(解雇権濫用法理・不当解雇として民事上の問題になります)。

【裁判員制度との関係:特別法との調整】

裁判員法(平成16年成立)は、「裁判員・補充裁判員の職務に従事することを理由として使用者は不利益な取扱いをしてはならない」と明記しています(裁判員法第100条)。この規定は労基法第7条の「公の職務の執行」の特別規定として機能します。裁判員としての出廷は労基法第7条・裁判員法第100条の双方で保護されており、「二重保護」の状態にあります。

根拠: 労働基準法第7条・第119条、昭和23年10月30日基発1458号(賃金の有無に関する行政解釈)、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第100条。確認日2026-06-08。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第7条(公民権行使の保障)、同法施行規則第7条 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): イが正しい。選挙権・被選挙権の行使は公民権(第7条の「公民としての権利の行使」)に含まれる(正)。組合役員としての活動(組合大会・団体交渉参加等)は「公民権」ではなく「組合活動」として労組法の問題(不当労働行為等)。ア誤り=賃金支払義務は労基法第7条に明記されておらず、「有給か無給かは当事者の合意・就業規則による」が確立した解釈(条文・判例上、有給を義務付ける規定はない)。ウ誤り=公民権行使時間の請求に対する「業務の正常な運営を妨げる場合に拒否できる」という時季変更権的な規定は存在しない。使用者は「時刻の変更」(同条但書)はできるが「拒否」はできない。エ誤り=第7条は就業時間中の公民権行使を保障する条文であり、労働時間外の政治活動を理由とした不利益処分の禁止は第7条の直接の規律対象ではない(日本国憲法19条・21条の問題)。オ誤り=「公職に就任した場合」の全職務時間が自動的に保障されるわけではなく、労働者が「請求」した時間について使用者が「時刻変更」をできるに留まる。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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