問題
商号を続用する営業譲受人の責任に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
営業を譲り受けた者が譲渡人の商号をそのまま使い続ける場合、取引の相手方は「経営主体が変わっていない」と信頼します。この信頼を保護するため、商法17条1項は「商号を続用する営業譲受人は、譲渡人の営業上の債務についても責任を負う」と定めています。ただし例外(免責)があり、17条2項により、営業を譲渡した後、遅滞なく「登記」をするか、「譲受人と譲渡人双方から第三者への通知」をすれば(通知はそれを受けた第三者に対してだけ)責任を免れます。エが正しい。アは誤り(責任を負う)。イは誤り(免責登記は事後に生じた債権者にのみ効くわけではなく、登記後に通知を受けていない既存債権者にも対抗できる)。ウは誤り(当事者間の合意のみでは第三者に対抗不可)。オは誤り(弁済期の到来は要件ではない)。
商法17条の商号続用責任は「外観法理(権利外観法理)」の一場面です。商号を続用することで、取引相手は「営業主体が同一または連続している」という外観を信頼するため、その信頼を保護する必要があります。17条1項:商号を続用する営業譲受人は、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負います(原則)。この責任は法定の特別責任であり、譲渡人の債務も当然には消えません。ただし譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅します(17条3項)。17条2項(免責):営業を譲渡した後、遅滞なく、次のいずれかをすれば免責されます。①譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合(すべての債権者に対して1項が適用されない)、②譲受人および譲渡人から第三者に対してその旨を通知した場合(通知を受けた第三者に対してのみ)。「登記」または「当事者双方からの通知」という二択の要件に注意が必要です。エが正しい理由はこの2項の免責要件を正確に述べているからです。ウが誤りなのは「当事者間の合意のみ(第三者への通知なし)」では第三者に対抗できないからです(17条2項は第三者への通知を必要とする)。また17条の責任が生じる「債務」は弁済期の到来を要件としません(オ誤り)。
【理論的背景:外観法理と商号続用責任の根拠】
商号続用責任(商法17条)は、民法の一般原則(「他人の債務は承継しない」という個別主義)に対する商法上の特則です。根拠は「外観法理(禁反言・表見責任)」にあります。商号は商業上の識別標識であり、同一商号が継続して使用される場合、取引相手は「事業主体の同一性または連続性」を合理的に信頼します。この信頼に応えて取引した債権者を保護するため、法は譲受人に弁済責任を課します。なお、商号続用責任は「譲渡人の債務が当然に移転する」(債務引受)ではなく、「外観を信頼した第三者保護のための法定責任」です。したがって譲渡人の債務は当然には消えず、譲受人と譲渡人の双方が責任を負う状態になります。この点が民法上の「免責的債務引受」(民法472条)とは異なります。ただし譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅します(商法17条3項)。また、商号を続用しない場合でも、譲受人が譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は譲受人に弁済の請求ができます(商法18条1項)が、試験上は「商号続用」が主要論点です。
【条文構造:商法17条の全体像】
商法17条1項:「営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。」この「商人」要件に注意です。両当事者が商人である必要があります。
商法17条2項:「前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人及び譲渡人から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。」免責の方法は「登記」(すべての第三者に対して効力)または「当事者双方からの個別通知」(通知を受けた第三者のみに効力)です。2項の「登記」と「通知」の効果の違いも重要な試験論点です。
商法17条3項:譲受人が1項により責任を負う場合、「譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する」。
商法18条1項は、商号を続用しない譲受人でも、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者が譲受人に弁済を請求できると定めます(会社については会社法23条1項)。試験上は17条の続用型が中心です。
【試験での位置づけ:行政書士試験における商号続用責任】
行政書士試験における商法総則の出題は、商号関連(商号の続用責任・商号の選定・不正使用)が頻出です。商号続用責任の典型的な引っかけは①「当事者間の合意だけで免責される(誤り:第三者への通知または登記が必要)」、②「免責登記の効果は事後発生の債権者にのみ及ぶ(誤り:登記後に通知されていない既存債権者にも対抗可)」、③「譲渡人は直ちに責任を免れる(誤り:譲渡人の責任は、営業譲渡の日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対して、その期間の経過時に消滅する:17条3項)」の3パターンです。会社法では同様の規定が22条に置かれており(会社の商号続用責任)、商法17条との対比も整理しておくとよいでしょう。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。商法17条1項により、商号を続用する譲受人は譲渡人の営業上の債務について弁済責任を負う。「一切責任を負わない」は正反対。
- イ: 誤り。免責登記(17条2項前段)の効果は、登記後に対して「すべての第三者」に対して効力が生じる(個別通知不要)。登記後に生じた債権者のみに限定されるわけではない。既存の債権者であっても、登記後はその者を知らなくても対抗できる。
- ウ: 誤り。商法17条2項は免責のために「登記」または「譲受人及び譲渡人から第三者への通知」を要求する。当事者間の合意のみでは第三者への対抗力がない(対外的公示なしに第三者に不利益を課せない)。
- エ: 正しい。商法17条2項の正確な記述。営業を譲渡した後遅滞なくした登記ではすべての債権者に対して、遅滞なくした当事者双方からの通知ではその通知を受けた第三者に対して、譲受人は責任を負わない。
- オ: 誤り。弁済期の到来は商号続用責任の要件ではない。責任の対象は「譲渡人の営業によって生じた債務」であり、弁済期前の債務も含まれる。
【根拠条文】
商法 第17条第1項(商号続用による譲受人の弁済責任)
商法 第17条第2項(免責の登記または通知による例外)
商法 第17条第3項(譲渡人の責任の2年での消滅)
商法 第18条第1項(債務引受の広告による譲受人の責任)
- 商法第17条・第18条e-Govで原文を読む
- 民法第472条e-Govで原文を読む
- 会社法第23条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 商法第17条第1項(商号続用による譲受人の責任)・第2項(免責の登記または通知) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

