問題
代表取締役の権限および表見代表取締役に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
代表取締役の権限と表見代表取締役が問われています。エが誤り。354条は「社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称」と定めており、社長・副社長は例示にすぎません。例示されていないことを理由に「専務取締役」「常務取締役」に同条が適用される余地はない、とするエは条文の書き方と合いません。アは正しい(349条4項・5項:包括的代表権と、内部制限は善意の第三者に対抗不可)。イは正しい(354条:「社長」「副社長」等の名称を付した場合の責任)。ウは正しい(354条の文言は「善意の第三者」であり、無過失は条文上の要件ではない)。オは正しい(354条の保護対象は善意の第三者に限られる)。
代表取締役の権限(349条):349条4項「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」(包括的代表権)。349条5項「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」(内部制限の対抗不可:ア正しい)。表見代表取締役(354条):「株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。」ポイントは①会社が名称を付したこと、②当該名称が「株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称」であること、③第三者が善意であることです(ウ:条文上の文言は「善意」であり、無過失は要件として書かれていない)。また、責任を負う相手は「善意の第三者」に限られます(オ正しい)。「専務取締役」「常務取締役」の扱い:354条の「社長、副社長」は「その他…認められる名称」の例示であり、条文に名前が挙がっていない名称でも、代表権を有するものと認められる名称であれば同条の対象になり得ます。したがって、条文に例示されていないことだけを理由に「同条が適用される余地はない」とするエは誤りです。どの名称が代表権を有するものと認められるかは、名称ごとに判断される事柄です。
【理論的背景:354条の外観法理と帰責性の要件】
会社法354条は、外観を信頼した者を保護する外観法理の一つです。外観法理は一般に、①真実と異なる外観の存在、②その外観について本人側に責任を問える事情、③相手方の信頼、という三つの要素で組み立てられます。354条では、①代表権を有するものと認められる名称による外観、②株式会社がその名称を「付した」こと、③第三者が「善意」であること、がそれぞれ対応します。取引の相手方は、会社の内部で誰が代表取締役に選定されているかを常に確かめられるわけではなく、「社長」「副社長」といった名称から代表権があると考えるのが通常です。そこで、会社自身がそうした名称を付した以上、その外観を信頼した善意の第三者に対しては会社が責任を負うこととしました。同じく取引の安全を図る規定として、代表取締役の権限に加えた内部的な制限を善意の第三者に対抗できないとする349条5項があり、両者をセットで理解することが重要です。
【条文構造:349条と354条の関係】
349条4項は「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と包括的代表権を定め、同条5項は「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」と定めます。これは代表権を持つ者についての規定です。これに対し354条は、代表権を持たない取締役について、「株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う」と定めます。条文の構造上、「社長、副社長」は「その他…認められる名称」の例示であり、対象となる名称はこの二つに限られません。他方、保護される相手は条文上「善意の第三者」であり、悪意の第三者は保護されません。なお、条文上の文言は「善意」だけであり、「無過失」は要件として書かれていません。似た位置にある規定として、表見支配人に関する13条があり、本店・支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなされ、相手方が悪意であったときはこの限りでないとされています。
【試験での位置づけ:行政書士試験における表見代表取締役の頻出パターン】
行政書士試験での表見代表取締役(354条)の典型的な問われ方は、①どのような名称が対象か(「社長、副社長」は例示であること)、②会社が名称を「付した」ことが要件であること、③保護されるのは「善意の第三者」であること、④349条5項(代表権の内部制限と善意の第三者)との区別、の4点です。エのように「条文に例示されていないから適用の余地はない」と言い切る記述は、例示列挙を限定列挙と読み違えさせる典型的な引っかけです。あわせて、353条(株式会社が取締役に対し、または取締役が株式会社に対して訴えを提起する場合に、株主総会がその訴えについて会社を代表する者を定めることができる規定)のように、代表取締役の包括的代表権(349条4項)に対する例外の規定も整理しておくと有益です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。349条4項(包括的代表権)と5項(内部制限は善意の第三者に対抗不可)のとおり。例えば定款や取締役会の決議で一定の取引に制限を加えても、その制限を知らない第三者には主張できない。
- イ: 正しい。354条は「社長、副社長」を条文上明示している。これらの名称を代表取締役以外の取締役に付した場合、会社は当該取締役がした行為について善意の第三者に責任を負う。
- ウ: 正しい。354条の文言は「善意の第三者」であり、無過失は条文上の要件として書かれていない。
- エ: 誤り。354条の「社長、副社長」は「その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称」の例示であり、例示されていない名称であっても同条の対象となり得る。「適用される余地はない」とは言えない。
- オ: 正しい。354条は会社が責任を負う相手を「善意の第三者」と定めており、悪意の第三者に対しては同条による責任を負わない。
【根拠条文】
会社法 第349条第4項・第5項(代表取締役の包括的代表権・内部制限の対抗不可)
会社法 第354条(表見代表取締役・善意の第三者への会社責任)
会社法 第353条(株式会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表)
会社法 第13条(表見支配人)
- 会社法第354条・第349条・第353条・第13条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第349条第5項(代表権の内部制限と対抗不可)、会社法第354条(表見代表取締役) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

