行政書士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

行政書士 基礎法学 問33|刑事訴訟・無罪推定原則と挙証責任

問題

行政書士 | 基礎法学

刑事手続における無罪推定原則および挙証責任に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はエです。刑事裁判では、犯罪事実を証明する責任は検察官にあり、証明が足りなければ無罪になります(刑事訴訟法336条)。被告人が自分の無実を証明する必要は原則としてありません。アは誤りです。無罪推定は、有罪とされるまでは無罪として扱うという原則で、「有罪と推定」は逆です。イも同じ理由で誤りです。ウは誤りです。自白が自己に不利益な唯一の証拠であるときは、有罪とすることはできません(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)。オは誤りです。被告人は終始沈黙することもできます(刑事訴訟法311条1項)。

エが正答です。刑事訴訟では、事実の認定は証拠によらなければならず(刑事訴訟法317条)、被告事件について犯罪の証明がないときは無罪を言い渡さなければなりません(336条)。犯罪事実を証明する責任は訴追する検察官が負い、証明が尽くされなければ被告人の利益に無罪となります。被告人は検察官の立証に反論すれば足り、無実を積極的に証明する必要は原則としてありません。

アは誤りです。無罪推定の原則は、有罪が証明されるまでは無罪として扱うというもので、「立件の時点で有罪と推定」「自ら無罪を証明できない限り推定が維持」は原則を逆に述べています。

イは誤りです。挙証責任を被告人に負わせる点が、エで述べた構造と正反対です。

ウは誤りです。憲法38条3項は、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には有罪とされないと定め、刑事訴訟法319条2項も、公判廷での自白かどうかを問わず同じことを定めています。任意にされた自白でも、自白だけでは有罪にできず、ほかの証拠(補強証拠)が必要です。

オは誤りです。刑事訴訟法311条1項は、被告人は終始沈黙し、または個々の質問に対し供述を拒むことができると定めています。

【理論的背景:無罪推定と挙証責任】

無罪推定の原則は、被告人は有罪が証明されるまで無罪として扱われるという刑事手続の基本原則で、法定手続の保障(憲法31条)を支える考え方とされます。刑事訴訟法は、事実の認定は証拠による(317条)、犯罪の証明がないときは無罪を言い渡さなければならない(336条)と定め、証明できなかった不利益を訴追側に負わせています。このため、犯罪事実を証明する責任は検察官にあり、証明が足りずに疑いが残れば被告人は無罪になります。被告人は検察官の立証を争えば足り、自らの無実を証明する義務を負いません。

【各選択肢の正誤と論拠】

アは誤りです。「被疑者として立件された時点で有罪と推定」「自ら無罪を証明できない限り推定が維持」は、無罪推定を有罪推定に置き換え、証明の負担を被告人に移しています。

イは誤りです。挙証責任を被告人に負わせる点で、317条・336条が前提とする構造と正反対です。

ウは誤りです。憲法38条2項・刑事訴訟法319条1項は、強制・拷問・脅迫による自白、不当に長く抑留・拘禁された後の自白など任意にされたものでない疑いのある自白を証拠から排除します(自白法則)。そのうえで、任意の自白であっても、それが自己に不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされません(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項。補強法則)。319条2項は「公判廷における自白であると否とを問わず」と定めているので、法廷での自白でも同じです。自白の偏重による誤判を防ぐための規定です。

エが正しい記述です。「原則として」とあるのは、法律が被告人側の立証を予定する場面があるためです。たとえば名誉毀損罪では、公共の利害に関する事実で目的が専ら公益を図ることにあった場合に、真実であることの証明があれば罰しないとされています(刑法230条の2第1項)。

オは誤りです。311条1項は、被告人は「終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる」と定め、全面的な黙秘を認めています。裁判長は、起訴状の朗読の後、被告人に終始沈黙し、または個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨などを告げなければなりません(291条)。

【黙秘権の保障の広がり】

憲法38条1項は、何人も自己に不利益な供述を強要されないと定めます。刑事訴訟法はこれを具体化し、捜査段階では、取調べに際して被疑者に対し、あらかじめ自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならないとし(198条2項)、公判段階では被告人の黙秘を認めています(311条1項)。被告人が任意に供述する場合には、裁判長はいつでも必要な事項について供述を求めることができますが(311条2項)、それに答えるかどうかも被告人の自由です。

【試験での位置づけと学習ポイント】

刑事手続の基本原則では、①挙証責任は検察官にあること(317条・336条)、②自白法則と補強法則(憲法38条2項・3項、刑事訴訟法319条)、③被疑者・被告人の黙秘権(198条2項・311条1項)が頻出です。「唯一の証拠が自白」「終始沈黙」という語が出てきたら、条文の言葉と照らし合わせてください。

【根拠条文】

日本国憲法 第31条(法定手続の保障)・第38条(自己負罪の拒否・自白法則・補強法則)

刑事訴訟法 第198条第2項・第291条・第311条・第317条・第319条・第336条

刑法 第230条の2(公共の利害に関する場合の特例)

【補足】

挙証責任は検察官が負い、被告人は無実を証明する義務を負わない(エ正答)。自白が唯一の証拠なら有罪にできない(ウ誤り)。被告人は終始沈黙できる(オ誤り)。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録
  • 定期監査どちらとも読める選択肢があり、正答が1つに決まらなかったため、憲法・刑事訴訟法の条文に基づく選択肢に差し替えました。
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第31条(法定手続の保障)・第38条(自己に不利益な供述の強要の禁止・自白の証拠能力と補強)。刑事訴訟法 第198条第2項(取調べの際の告知)・第311条第1項(被告人の黙秘権)・第317条(証拠裁判主義)・第319条(自白の証拠能力・補強法則)・第336条(無罪の判決)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。