サーマルリレー(熱動継電器)は電動機の過負荷を検出して守る器具、電磁接触器は電磁石の力で主回路を入り切りする器具です。両者を組み合わせた器具は、一般に電磁開閉器と呼ばれます。電動機の過負荷保護の条文(省令第65条・解釈第153条・第33条第4項)と、写真・配線図の問われ方を、第二種電気工事士の学科の観点で整理します。
目次
結論:電磁接触器は、電磁石の力で接点を動かし、電動機などに電気を流す主回路を入り切りする器具です。サーマルリレー(試験では「熱動継電器」)は、電動機に過負荷の電流が流れ続けたときに動作して、電動機を焼損から守る器具です。この2つを箱に収めて組み合わせたものが電磁開閉器です(当サイトの説明)。第二種電気工事士の学科では、写真の器具や配線図の図記号から名称を選ぶ問題が出ています。条文では、電動機の過負荷保護(省令第65条、解釈第153条・第33条第4項)が、これらの器具に関係します。
電気設備の技術基準の解釈(以下「解釈」)に、「サーマルリレー」「熱動継電器」「電磁接触器」の語の記載はありません(令和7年11月20日改正の版、2026-10-09 時点)。条文は「過負荷保護装置」「電磁開閉器」という語で定めているので、試験の器具名と条文の語を対応させて読みます。電動機回路の遮断器・開閉器の全体は、遮断器と開閉器の違いの記事の「電動機回路の電磁開閉器・配線用遮断器(電動機保護兼用)」で扱っているので、ここでは、サーマルリレーと電磁接触器の役割と、条文・試験での位置づけに絞って整理します。
試験センター非提携:本サイトは一般財団法人 電気技術者試験センターと一切関係ありません。試験の出題・資料は、出典を示して内容を紹介しています。製品名やメーカーは扱いません。
解釈の版:電気設備の技術基準の解釈(経済産業省のPDF)の最終改正は、令和7年11月20日付けです。条文の番号や数値は改正で変わることがあります。最終確認日:2026-10-09。出典:電気設備の技術基準の解釈(PDF)。
電磁接触器・サーマルリレー・電磁開閉器の役割
次の表は、3つの名称と役割の整理です(当サイトの説明。条文・試験での位置づけは出典つき)。
| 名称 | 役割 | 条文・試験での位置づけ |
|---|---|---|
| 電磁接触器 | 電磁石のコイルに電気を流すと、接点が閉じて主回路に電気が流れる。コイルの電気を切ると、接点が開く。離れた場所から、制御回路の信号で電動機を入り切りするために使う | 解釈第33条第4項第一号ロが、過負荷保護装置の規格の名称に「接触器及びモータスタータ」を含む。試験では、写真の器具の名称として、選択肢に出る(令和6年度下期 問17) |
| サーマルリレー(熱動継電器) | 電動機の電流で発熱する部分が、過負荷の電流が続くと動作する。電磁接触器と組み合わせて、電動機を止める | 試験では「熱動継電器」と書かれる(令和6年度下期 問17の正答)。条文では、過負荷保護装置(解釈第33条第4項、第153条)の一つにあたる(当サイトの整理) |
| 電磁開閉器 | 電磁接触器に、過負荷を検出する熱動継電器などを組み合わせて、箱に収めた器具 | 解釈第33条第4項第一号ロが、過負荷保護装置として「電気用品安全法の適用を受ける電磁開閉器」を挙げる。電気用品安全法施行令別表第二に「電磁開閉器(箱入りのものであつて、過電流継電機構を有するもの又はヒューズを取り付けるものに限る。)」がある |
出典:電気設備の技術基準の解釈第33条第4項、電気用品安全法施行令別表第二、令和6年度下期 問題。
電磁接触器が「入り切りの器具」、サーマルリレーが「過負荷から守る器具」という分担が、この2つの名称を区別するための要点です。令和6年度下期の問17は、器具の写真で、本体の下側に付いた部分(円で囲まれた部分)の名称を問う形でした。選択肢に電磁接触器と熱動継電器の両方が並ぶので、「入り切りする本体」と「過負荷を検出する部分」を区別できるかを見る問題です(当サイトの整理)。
電動機の過負荷保護の条文:省令第65条・解釈第153条
電動機は、過負荷の状態が続くと巻線が過熱して焼損するおそれがあります。条文は、次のように定めています。
| 条文 | 内容(要点) |
|---|---|
| 省令第65条 | 屋内に施設する電動機(出力が0.2キロワット以下のものを除く)には、過電流による焼損で火災が発生するおそれがないよう、過電流遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。ただし、電動機の構造上又は負荷の性質上、電動機を焼損するおそれがある過電流が生じるおそれがない場合は、この限りでない |
| 解釈第153条(本文) | 屋内に施設する電動機には、電動機が焼損するおそれがある過電流を生じた場合に、自動的にこれを阻止し、又はこれを警報する装置を設ける |
| 解釈第153条(ただし書の各号) | 次のいずれかに該当する場合はこの限りでない。一 電動機を運転中、常時、取扱者が監視できる位置に施設する場合。二 電動機の構造上又は負荷の性質上、その電動機の巻線に当該電動機を焼損する過電流を生じるおそれがない場合。三 電動機が単相のものであって、その電源側電路に施設する過電流遮断器の定格電流が15A(配線用遮断器にあっては、20A)以下の場合。四 電動機の出力が0.2kW以下の場合 |
出典:電気設備に関する技術基準を定める省令第65条、電気設備の技術基準の解釈第153条。
つまり、電動機の焼損を防ぐ装置は原則として必要で、解釈第153条は、4つの場合には省略できるとしています。電動機の出力の「0.2キロワット以下」は、省令第65条のかっこ書と、解釈第153条第四号の両方に出てくる数値です。
過負荷保護装置と短絡保護の組合せ(解釈第33条第4項)
解釈第33条第4項は、過負荷保護装置と、短絡保護専用遮断器又は短絡保護専用ヒューズを組み合わせた装置を、低圧電路の過電流遮断器として施設する場合の条件を定めています。電動機のみに至る低圧電路(低圧幹線を除く)で使うものです。
| 項目 | 条文の内容 |
|---|---|
| 過負荷保護装置(第一号) | イ 電動機が焼損するおそれがある過電流を生じた場合に、自動的にこれを遮断する。ロ 電気用品安全法の適用を受ける電磁開閉器、又は、日本電気技術規格委員会が承認した規格(接触器及びモータスタータ)に適合するもの |
| 短絡保護専用遮断器(第二号) | 過負荷保護装置が短絡電流によって焼損する前に、短絡電流を遮断する能力を有する。定格電流の1倍の電流で自動的に動作しない。整定電流は定格電流の13倍以下。整定電流の1.2倍の電流を通じた場合に、0.2秒以内に自動的に動作する |
| 短絡保護専用ヒューズ(第三号) | 過負荷保護装置が短絡電流によって焼損する前に、短絡電流を遮断する能力を有する。定格電流は、過負荷保護装置の整定電流の値(標準定格に該当しない場合は直近上位の標準定格)以下。定格電流の1.3倍の電流に耐える。整定電流の10倍の電流を通じた場合に、20秒以内に溶断する |
| 収める箱(第四号) | 過負荷保護装置と、短絡保護専用遮断器又は短絡保護専用ヒューズは、専用の1の箱の中に収める |
出典:電気設備の技術基準の解釈第33条第4項。
計算例(当サイトの作例):
- 短絡保護専用遮断器の定格電流が30Aなら、整定電流は 30 × 13 = 390A 以下です(検算:390 ÷ 30 = 13)。整定電流を390Aにしたとき、その1.2倍は 390 × 1.2 = 468A で、この電流を通じたとき0.2秒以内に動作しなければなりません(検算:468 ÷ 390 = 1.2)
- 短絡保護専用ヒューズの定格電流が20Aなら、1.3倍の 20 × 1.3 = 26A に耐えなければなりません(検算:26 ÷ 20 = 1.3)
配線用遮断器の動作時間の表(第33条第3項)は、遮断器と開閉器の違いの記事にあります。この記事の第4項は、過負荷保護装置を含む組合せの条文で、第3項とは別の規定です。
電気用品安全法上の電磁開閉器
電磁開閉器は、電気用品安全法施行令の別表第二に挙げられています。別表第二は、特定電気用品以外の電気用品の表です。配線器具の開閉器として、カットアウトスイッチ、カバー付ナイフスイッチ、分電盤ユニットスイッチと並んで、「電磁開閉器(箱入りのものであつて、過電流継電機構を有するもの又はヒューズを取り付けるものに限る。)」が掲げられています(定格電流が100アンペア以下(電動機用のものにあつては、その適用電動機の定格容量が12キロワット以下)のものに限るなどの条件あり)。このかっこ書は、別表第二に当たる電磁開閉器の範囲を、箱入りのもので、過電流継電機構を有するもの又はヒューズを取り付けるものに限っています。電磁開閉器の構成そのものを定義した書き方ではありません(当サイトの整理)。
特定電気用品と、それ以外の区分の見分け方は、電気用品安全法の記事で扱っています。
写真・配線図での問われ方
次の表は、センターが公表した令和5年度上期(午後)〜令和8年度上期の学科問題から、電磁接触器・熱動継電器・電磁開閉器にかかわる問題を、問いの型で分けたものです(当サイトの整理。問題文の引用は、短い語句に限っています)。
| 問いの型 | 該当する問題(回・問番号) | 正答・見るところ |
|---|---|---|
| 写真の器具の一部の名称 | 令和6年度下期 問17 | 熱動継電器(写真の器具の、円で囲まれた下側の部分)。選択肢に電磁接触器がある |
| 写真の器具の名称 | 令和5年度上期(午後)問17、令和7年度上期 問17 | 配線用遮断器(電動機保護兼用)。選択肢に漏電警報器・電磁開閉器・漏電遮断器が並ぶ |
| 配線図の図記号の名称 | 令和6年度下期 問33(③)、令和7年度上期 問34(④) | 問33はハ(電磁開閉器用押しボタン)、問34はニ(確認表示灯付電磁開閉器用押しボタン) |
| 配線図の図記号の機器 | 令和7年度上期 問35(⑤) | イ(制御配線の信号により動作する開閉器(電磁開閉器)) |
| 電気用品の区分 | 令和8年度上期 問29 | 電磁開閉器は特定電気用品ではない |
出典:センター公表の学科試験問題と解答。令和5年度上期(午後)、令和6年度下期、令和7年度上期、令和8年度上期。
写真の器具は、形が似ているので、本体の表示や形で見分けます。配線図の図記号の読み方は、配線図問題の記事にまとめています。
電磁開閉器の操作回路:小勢力回路(解釈第181条)
電磁開閉器の操作回路(コイルを動かす制御の回路)は、電動機に電気を流す主回路とは別の回路です。解釈第181条は、「電磁開閉器の操作回路又は呼鈴若しくは警報ベル等に接続する電路であって、最大使用電圧が60V以下のもの」を「小勢力回路」とし、最大使用電流は、最大使用電圧が15V以下なら5A、15Vを超え30V以下なら3A、30Vを超え60V以下なら1.5A以下と定めています(181-1表)。操作回路の電圧が60V以下の場合に、この条の適用を受ける、という読み方になります。
間違えやすいポイント
- 電磁接触器は入り切りの器具、サーマルリレー(熱動継電器)は過負荷から守る器具です。 名称を問う問題では、この役割の違いで選びます。
- 電磁開閉器は、電磁接触器に熱動継電器などを組み合わせて箱に収めた器具です(当サイトの説明)。 電磁接触器と同じものではありません。
- 電動機の出力が0.2kW以下の場合は、省令第65条の対象から除かれます。 解釈第153条第四号も、同じ数値です。
- 解釈第33条第4項の組合せでは、短絡電流は短絡保護専用の遮断器かヒューズが遮断します。 過負荷保護装置が短絡電流によって焼損する前に遮断する能力が、短絡保護専用の側に求められています。
- 電磁開閉器は、特定電気用品ではありません。 電気用品安全法施行令別表第二に挙げられています。
まとめ
- 電磁接触器は主回路の入り切り、サーマルリレー(熱動継電器)は電動機の過負荷からの保護。電磁開閉器は、両者を箱に収めた器具(当サイトの説明)
- 屋内の電動機には、過電流による焼損を防ぐ措置が原則として必要で、出力0.2kW以下などは除かれる(省令第65条、解釈第153条)
- 過負荷保護装置と短絡保護専用の遮断器・ヒューズを組み合わせる場合の条件は、解釈第33条第4項にある
- 電磁開閉器は、電気用品安全法施行令別表第二(特定電気用品以外)に挙げられている
- 写真・図記号の問題は、令和6年度下期 問17(熱動継電器)、令和7年度上期 問34・問35(電磁開閉器の図記号)などで、名称の取り違えを見ている
よくある質問
Qサーマルリレーと電磁接触器の違いは何ですか?
電磁接触器は、電磁石の力で接点を動かし、電動機などに電気を流す主回路を入り切りする器具です。サーマルリレー(試験では「熱動継電器」)は、電動機に過負荷の電流が流れ続けたときに動作して、電動機を焼損から守る器具です(当サイトの説明)。入り切りを行うのが電磁接触器、過負荷を検出して守るのがサーマルリレー、と役割が分かれています。令和6年度下期の問17は、器具の写真の円で囲まれた部分の名称を、漏電警報器・電磁接触器・漏電遮断器・熱動継電器から選ぶ問題で、センターの解答は熱動継電器でした。出典:令和6年度下期 問題・解答。
Q電動機には、必ず過負荷保護の装置を付けなければなりませんか?
原則は付けます。電気設備に関する技術基準を定める省令第65条は、屋内に施設する電動機(出力が0.2キロワット以下のものを除く)に、過電流による焼損で火災が発生するおそれがないよう、過電流遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならないとし、ただし書で、構造上又は負荷の性質上、焼損するおそれがある過電流が生じるおそれがない場合を除いています。解釈第153条は、電動機を運転中に常時、取扱者が監視できる位置に施設する場合、単相の電動機で電源側の過電流遮断器の定格電流が15A(配線用遮断器は20A)以下の場合なども、除外される場合に挙げています。出典:電気設備に関する技術基準を定める省令第65条、電気設備の技術基準の解釈第153条。
Q過負荷保護装置だけで、短絡(ショート)も防げますか?
解釈第33条第4項は、過負荷保護装置と、短絡保護専用遮断器又は短絡保護専用ヒューズを組み合わせた装置を、過電流遮断器として施設する場合の条件を定めています。短絡保護専用の遮断器とヒューズには、いずれも「過負荷保護装置が短絡電流によって焼損する前に、当該短絡電流を遮断する能力を有すること」が求められます。つまり、短絡電流の遮断は専用の遮断器かヒューズが受け持つ構成だと読めます(当サイトの整理)。出典:電気設備の技術基準の解釈第33条第4項。
Q電磁開閉器は、特定電気用品ですか?
特定電気用品ではありません。電気用品安全法施行令の別表第二(特定電気用品以外の電気用品)に、配線器具の開閉器として「電磁開閉器(箱入りのものであつて、過電流継電機構を有するもの又はヒューズを取り付けるものに限る。)」が挙げられています(定格電流が100アンペア以下などの条件あり)。令和8年度上期の問29は、特定電気用品の配線器具の組合せを選ぶ問題で、選択肢の一つが「電磁開閉器,フロートスイッチ」でしたが、センターの解答はハ(タイムスイッチと配線用遮断器)でした。出典:電気用品安全法施行令別表第二、令和8年度上期 問題・解答。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月9日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

