基本情報技術者試験のアジャイル・スクラム・ウォーターフォールを、IPAのシラバスVer.9.2とスクラムガイド2020、公開問題で整理。スクラムの3つの役割と5つのイベント、アジャイル開発宣言の4つの価値、ウォーターフォールとの違いを、試験で問われる形で解説します。
目次
結論:基本情報技術者試験のアジャイルは、IPAのシラバスVer.9.2の「ソフトウェア開発手法」にあり、(a)概要、(b)XP、(c)スクラムの特徴 が範囲です。スクラムは、スクラムチーム(プロダクトオーナー・開発者・スクラムマスター)が、決まった長さのスプリントの中で、プロダクトバックログから選んだ作業を進める枠組みです。ウォーターフォールは、要件を先に固めて工程を順に進めるモデルです。科目Aの公開問題では、デイリースクラムがどのイベントかや、プロダクトバックログの内容と順序を決める役割が問われていました。
シラバスの版:基本情報技術者試験のシラバスはVer.9.2。最終確認日:2026-10-21。出典:IPA 試験要綱・シラバスについて。
スクラムガイドの版:スクラムガイドの日本語版は2020年版を参照。最終確認日:2026-10-21。出典:Scrum Guides スクラムガイド2020(日本語)。
シラバスでの位置づけ:開発モデルとアジャイルは同じ項目に載っている
シラバスVer.9.2では、大分類4 開発技術/中分類13 ソフトウェア開発管理技術/1. 開発プロセス・手法/(1)ソフトウェア開発手法 に、次の2つの項目があります(PDFのページ 64)。
| 項目 | シラバスの用語例・内訳 |
|---|---|
| ① ソフトウェア開発モデル | 用語例にウォーターフォールモデル,プロトタイピングモデル,アジャイル,DevOps |
| ② アジャイル | (a)概要 (b)XP (c)スクラムの特徴。(c)の用語例はスクラムチーム(プロダクトオーナー,開発者,スクラムマスター),スプリント,プロダクトバックログ,スプリントバックログ |
出典:IPA 基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2。「ウォーターフォールモデル,プロトタイピングモデル,アジャイル,DevOps」は用語例の一部で、表には用語例の全部ではなく、この記事で扱うものを載せています。
アジャイルの(a)概要の用語例には、アジャイルソフトウェア開発宣言、12の原則、XP(エクストリームプログラミング)、スクラム、ユーザーストーリー、テスト駆動開発(TDD)、モブプログラミング、リファクタリング、継続的インテグレーション(CI)、ふりかえり(レトロスペクティブ)、KPT が挙がっています。出題範囲の改訂の全体像はシラバス9.0の変更点にまとめています。ITパスポートの用語解説はアジャイル・スクラム・ウォーターフォールで読めます。
ウォーターフォールとアジャイルの違い:要件を先に固めるか、変化を前提にするか
IPAが2009〜2013年度に行った事業のページ(現在はアーカイブ)は、アジャイル開発の特徴を次のように整理しています。
- 顧客の参画の度合いが強い
- 動くソフトウェアを成長させながら作る
- 反復・漸進型で進める
- 人と人のコミュニケーション・コラボレーションを重視する
- 開発前の要求の固定を前提としない
同じページは、ウォーターフォールを、早い段階で要求を固め、仕様をドキュメントとして形にしていく進め方として説明しています。出典:IPA アーカイブ 開発プロセス ent02-c(2026-10-21 に確認したアーカイブページで、現行の試験の解説ではありません)。
試験で比べるときの整理です(当サイトの整理で、IPAの定義ではありません)。
| 比べる点 | ウォーターフォール | アジャイル |
|---|---|---|
| 要件 | 先に固める | 変わることを前提にする |
| 進め方 | 工程を順に進める | 短い周期を繰り返す |
| 成果物 | 工程ごとの文書を重視する | 動くソフトウェアを重視する |
| 顧客のかかわり | 要件定義と受入れが中心 | 開発の途中も参画する |
ほかの開発モデルは、ITパスポートの用語解説にプロトタイピング・スパイラルモデル・DevOpsがあります。
アジャイル開発宣言の4つの価値:右側により価値をおく
アジャイルソフトウェア開発宣言は、2001年に17人の著者が示した文書です(日本語訳は平鍋健児氏)。次の4つの組で価値を述べています。
| 左(認めたうえで) | 右(より価値をおく) |
|---|---|
| プロセスやツール | 個人と対話 |
| 包括的なドキュメント | 動くソフトウェア |
| 契約交渉 | 顧客との協調 |
| 計画に従うこと | 変化への対応 |
宣言は「左記のことがらに価値があることを認めながらも、私たちは右記のことがらにより価値をおく」と書いています。左側を捨てるのではない点が、選択肢の読み違いを避けるポイントです。出典:アジャイルソフトウェア開発宣言。
スクラムの構成:3つの責任(役割)、5つのイベント、3つの作成物
スクラムガイド2020に基づく整理です。
スクラムチームは、スクラムマスター1人、プロダクトオーナー1人、複数人の開発者で構成されます。サブチームや階層はありません。
| 役割 | 内容(スクラムガイド2020) |
|---|---|
| プロダクトオーナー | プロダクトの価値を最大化することの結果に責任を持つ。プロダクトバックログ管理にも責任を持つ。プロダクトゴールを策定して伝え、プロダクトバックログアイテムを作成・明確化し、順序付けする(作業は他の人に任せられるが、最終的な責任はプロダクトオーナーに残る) |
| 開発者 | 各スプリントで、使えるインクリメントのあらゆる側面を作る人たち |
| スクラムマスター | スクラムが正しく理解・実施されるようにする責任を持つ |
| イベント | 内容(スクラムガイド2020) |
|---|---|
| スプリント | 1か月以内の決まった長さ。他のすべてのイベントの入れ物。前のスプリントが終わり次第、新しいスプリントが始まる |
| スプリントプランニング | スプリントで何をするかを計画する |
| デイリースクラム | 開発者のための15分のイベント。スプリント期間中は毎日、同じ時間・場所で開催し、スプリントゴールの進捗を検査する |
| スプリントレビュー | スプリントの成果を検査し、今後の適応を決める。スプリントの最後から2番目のイベント |
| スプリントレトロスペクティブ | チームのやり方を振り返り、改善につなげる |
作成物は、プロダクトバックログ(プロダクトゴールを約束とする)、スプリントバックログ(スプリントゴール)、インクリメント(完成の定義)の3つです。出典:スクラムガイド2020(日本語)。
試験の用語との対応を、まちがえやすい順に整理します(当サイトの整理)。
- プロダクトバックログ:プロダクトに必要なものの一覧。順序を決めるのはプロダクトオーナー
- スプリントバックログ:そのスプリントで開発者が取り組む作業の計画
- スプリントレビュー:成果物を検査する場。レトロスペクティブ(ふりかえり)は、やり方を見直す場
公開問題で確認できた出題の形
当記事が確認したのは、令和5〜8年度の科目A・B公開問題と、2022年のサンプル問題(科目A)です。確認した範囲で、スクラムの語が正解の選択肢に関係していたものは次のとおりです。
| 問題 | 確認できた内容 |
|---|---|
| 令和5年度 科目A 問12 | スクラムのイベントの説明を示し、その名前を選ばせる。正解はデイリースクラム(ウ)。問題文は「開発チーム」の語を使用 |
| 令和6年度 科目A 問12 | スクラムのイベントの説明を示し、その名前を選ばせる。正解はデイリースクラム(エ)。問題文は「開発チーム」の語を使用 |
| 令和7年度 科目A 問13 | プロダクトバックログアイテムの内容と順序を決める役割を問い、正解はプロダクトオーナ |
| 2022年サンプル問題 科目A 問41 | スプリントの決まりに関する記述を問う |
出典:令和5年度・令和6年度・令和7年度の科目A問題冊子と各解答例、2022年サンプル問題 科目A。令和8年度の科目A・Bと令和5〜7年度の科目Bでは、スクラムの語が正解の選択肢に関係する問題は、当記事の確認では見つけていません(2026-10-21 時点)。出題の回数や傾向を述べるものではありません。
用語の覚え方は用語集の項目も参考になります。各年度の問題は、令和7年度・令和6年度・令和5年度の一覧から解けます。
解き方と勉強の進め方(当サイトの提案)
IPAの案内ではなく、当サイトの提案です。
- ① 役割は「誰が何に責任を持つか」で覚える。順序を決めるのはプロダクトオーナー、作るのは開発者、進め方を整えるのはスクラムマスター
- ② イベントは「何を検査・調整する場か」で覚える。デイリースクラムは日々の進捗、レビューは成果物、レトロスペクティブはやり方
- ③ 「アジャイルは文書を作らない」「ウォーターフォールは必ず失敗する」のような言い切りは、宣言の「左記にも価値がある」と合わないので注意する
- ④ 問題文が「開発チーム」と「開発者」のどちらを使っていても、指す対象は同じと読む
科目Aの全体の進め方は科目A攻略法にまとめています。
まとめ
- シラバスVer.9.2では、アジャイルは(a)概要・(b)XP・(c)スクラムの特徴の3つ。ウォーターフォールモデルは開発モデルの用語例に載っている
- スクラムチームは、プロダクトオーナー1人、スクラムマスター1人、複数人の開発者。プロダクトバックログの順序を決めるのはプロダクトオーナー
- スプリントは1か月以内の決まった長さ。デイリースクラムは開発者のための15分のイベントで、毎日同じ時間・場所で行う
- アジャイル開発宣言は、右側により価値をおくが、左側の価値も認めている
- 公開問題では、令和5・6年度の問12でデイリースクラム、令和7年度の問13でプロダクトオーナを確認できた
よくある質問
Qスクラムの「開発チーム」と「開発者」は、試験ではどちらで答えればよいですか?
IPAのシラバスVer.9.2は、スクラムチームの構成を「プロダクトオーナー,開発者,スクラムマスター」と書いています。スクラムガイド2020も「開発者」です。一方、令和5年度・令和6年度の科目Aの公開問題(各問12)の問題文には「開発チーム」という語が使われていました。問題文がどちらの語を使っていても、指しているのは「開発を行う人たち」です。選択肢は役割の中身で判断してください。
Qアジャイルとスクラムは同じものですか?
同じではありません。シラバスは「アジャイル」の項の中に、(a)概要、(b)XP、(c)スクラムの特徴 の3つを並べています。アジャイルは考え方や手法の総称にあたり、スクラムとXPはその中の具体的な枠組み・手法、という位置づけです。
Qウォーターフォールは古くて、アジャイルのほうが優れているのですか?
そうは言えません。IPAが2009〜2013年度に行った事業のページ(現在はアーカイブ)は、アジャイル開発をすべての開発に適用すべきだという立場ではない、と述べています。試験では優劣ではなく、それぞれの進め方の違いと、どんな場面に向くかを選べるようにしておくと対応できます。
Qスプリントの長さは何日と覚えればよいですか?
スクラムガイド2020は、スプリントを「1か月以内の決まった長さ」と書いています。日数は決められていません。1週間や2週間にする例もありますが、これはガイドの決まりではなく運用例です。数字を暗記するより、「長さを決めて固定し、前のスプリントが終わり次第、次が始まる」という点を押さえてください。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月21日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

