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成年後見制度とは?後見・保佐・補助の違いと任意後見・2026年の改正行政書士の民法

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

成年後見制度とは何かを、法務省の説明と民法の条文で整理します。法定後見の後見・保佐・補助の違い(7条・11条・15条)、成年後見人の選任(843条)、任意後見契約に関する法律のしくみ、令和7年の申立件数と利用者数(最高裁判所)、2026年6月公布の改正法で3類型が「補助」にまとまる点を表で確認できます。

目次
  1. 成年後見制度とは:法定後見と任意後見の違い
  2. 後見・保佐・補助の違い:対象・同意・取消し・代理権
  3. 申立件数と利用者数で見る3つの類型:後見が約7割
  4. 成年後見人の選ばれ方と仕事(843条・847条・858条・859条)
  5. 任意後見のしくみ(任意後見契約に関する法律)
  6. 試験での問われ方:令和8年度は改正前の3類型で出る
  7. 成年後見制度は「誰が選ぶか」と「3類型の差」で整理しよう
結論:成年後見制度は、判断能力が不十分な人を支える制度で、家庭裁判所が後見人などを選ぶ法定後見と、本人が契約で選ぶ任意後見の2つがあります。法定後見は、今の民法では後見・保佐・補助の3つです(7条・11条・15条)。2026年6月24日公布の改正法で、3つは将来「補助」1つにまとまります。

成年後見制度とは:法定後見と任意後見の違い

法定後見は判断能力が不十分になった後に家庭裁判所が支える人を選ぶ制度、任意後見は判断能力があるうちに本人が契約で決めておく制度です(法務省)。

法務省は、成年後見制度を次のように説明しています。認知症、知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人は、財産の管理や施設に入る契約などを自分でするのが難しい場合があります。そうした人を保護し、支援するのが成年後見制度です。

項目法定後見制度任意後見制度
支える人を決めるのは家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)を選任する。権限も基本的に法律で決まっている本人が、任意後見人となる人とその権限を自分で決める
始まり方判断能力が不十分になった後、家庭裁判所に後見等の開始を申し立てる判断能力があるうちに任意後見契約を公正証書で結ぶ。判断能力が不十分になった後、任意後見監督人の選任を申し立てる
申立てができる人(法務省の表)本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見人となる人
監督人の選任必要に応じて家庭裁判所の判断で選任全件で選任(任意後見監督人)
できること制度に応じて、一定の範囲で代理したり、本人が結んだ契約を取り消したりできる契約で定めた範囲で代理できるが、本人が結んだ契約を取り消すことはできない

出典:法務省「成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A」Q1・Q2(2026-10-29 確認)

たとえると、法定後見は、困ったときに家庭裁判所が付き添い役を決める方法です。任意後見は、元気なうちに自分で付き添い役と頼む中身を決めておく方法のようなものです。

法務省の表は、法定後見の申立てができる人に「市町村長など」を入れていますが、民法7条の請求権者の列挙には市町村長は入っていません(理由は末尾のよくある質問)。試験で7条の請求権者を問われたら、条文の列挙どおりに答えます。

参考:法務省『成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A』成年後見制度について

後見・保佐・補助の違い:対象・同意・取消し・代理権

3つは本人の判断能力の程度で分かれ、程度が重いほど、本人がひとりでできる行為の範囲が狭くなります。条文の言葉で並べると、次のとおりです(民法、2026-10-29 確認)。

項目後見保佐補助
対象(条文の言葉)精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(7条)精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(11条本文)精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(15条1項本文)
法務省の言い換え判断能力が欠けているのが通常の状態の方判断能力が著しく不十分な方判断能力が不十分な方
審判を請求できる人本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官(7条)本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官(11条本文)本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官(15条1項本文)
他の類型との関係—7条の原因がある者は対象外(11条ただし書)7条または11条本文の原因がある者は対象外(15条1項ただし書)
本人の行為の取消し法律行為は取り消せる。ただし日用品の購入その他日常生活に関する行為は除く(9条)13条1項各号の行為で、同意またはこれに代わる許可を得ないでしたものは取り消せる(13条1項・4項)審判で定めた特定の法律行為で、同意またはこれに代わる許可を得ないでしたものは取り消せる(17条1項・4項)
同意が要る行為の範囲9条は同意の有無で区別していない13条1項各号の10の行為。審判で広げられる(13条2項)。どちらも9条ただし書の行為は除く審判で決める。ただし13条1項に規定する行為の一部に限る(17条1項ただし書)
代理権後見人は財産を管理し、財産に関する法律行為について被後見人を代表する(859条1項)審判で特定の法律行為について付与(876条の4第1項)審判で特定の法律行為について付与(876条の9第1項)
本人以外の請求と本人の同意7条に本人の同意の定めはない開始(11条)には定めがない。代理権の付与は本人の同意が必要(876条の4第2項)開始に本人の同意が必要(15条2項)。同意権の付与(17条2項)・代理権の付与(876条の9第2項)も同じ

法務省のQ&Aは、成年被後見人が日常生活に関する行為以外の契約をした場合、成年後見人の同意があっても後で取り消せる、と書いています。後見に「同意」の欄が無いのは、このためです。

保佐人の同意権は条文の外に広げられ(13条2項)、補助人の同意権は13条1項の行為の一部に限られます(17条1項ただし書)。補助開始の審判は、17条1項の審判か876条の9第1項の審判とともにしなければなりません(15条3項)。

13条1項の10の行為(借財・保証、不動産の売買など)の一覧、審判どうしの関係(19条)、取消し・追認・相手方の催告(20条・21条・120条以下)は、宅建の制限行為能力者の記事にまとめています。

参考:e-Gov 法令検索『民法』(現行条文)民法

申立件数と利用者数で見る3つの類型:後見が約7割

令和7年の1年間に全国の家庭裁判所が受けた成年後見関係事件の申立ては4万3,159件で、そのうち後見開始が2万9,233件でした(最高裁判所事務総局家庭局)。

成年後見関係事件の概況・令和7年:申立件数は合計43,159件(後見開始29,233件・保佐開始9,743件・補助開始3,302件・任意後見監督人選任881件)。令和7年12月末日時点の利用者数は合計259,901人(成年後見180,828人・保佐58,162人・補助18,078人・任意後見2,833人)。最終確認日:2026-10-29。出典:最高裁判所事務総局家庭局『成年後見関係事件の概況』(令和7年1月〜12月)。
類型申立件数(令和7年)申立ての割合利用者数(令和7年12月末)利用者の割合
後見(成年後見)29,233件67.7%180,828人69.6%
保佐9,743件22.6%58,162人22.4%
補助3,302件7.7%18,078人7.0%
任意後見881件(監督人選任)2.0%2,833人1.1%
合計43,159件100%259,901人100%

出典:最高裁判所事務総局家庭局『成年後見関係事件の概況』(令和7年1月〜12月)資料1・資料11。割合は、件数と人数から計算した値です(小数第2位を四捨五入)。

成年後見関係事件の申立件数(令和7年)
令和7年の成年後見関係事件の申立件数は、後見開始29,233件、保佐開始9,743件、補助開始3,302件、任意後見監督人選任881件で、合計43,159件

出典:最高裁判所事務総局家庭局『成年後見関係事件の概況』(令和7年1月〜12月)

申立てでも利用者でも、後見が約7割を占めます。任意後見は、申立て・利用者とも全体の2%ほどです。

申立人で多いのは、本人(約24.8%)、市区町村長(約23.7%)、本人の子(約18.5%)の順です。市区町村長の申立ては1万139件でした。

選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)は、親族以外が約83.6%でした。親族以外の内訳では、司法書士1万1,966件、弁護士8,903件、社会福祉士7,280件が多く、行政書士は2,235件(親族以外の約6.3%)です。行政書士の数には、行政書士法人の84件が含まれます。

参考:最高裁判所事務総局家庭局『成年後見関係事件の概況』(令和7年1月〜12月、令和8年3月)成年後見関係事件の概況(裁判所)

成年後見人の選ばれ方と仕事(843条・847条・858条・859条)

成年後見人は、後見開始の審判をするときに家庭裁判所が職権で選び、本人の財産を管理して、財産に関する法律行為について本人を代表します(843条1項・859条1項)。

項目成年後見人保佐人・補助人
選任後見開始の審判をするときは、職権で選任する(843条1項)保佐開始・補助開始の審判をするときは、職権で選任する(876条の2第1項・876条の7第1項)
選任のときの考慮成年被後見人の心身の状態、生活・財産の状況、成年後見人となる者の職業・経歴、成年被後見人との利害関係の有無(法人のときはその事業の種類・内容、法人・代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情(843条4項)843条2項〜4項と844条〜847条を準用(876条の2第2項・876条の7第2項)
なれない人(欠格事由)未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人、破産者、被後見人に対して訴訟をし、またはした者並びにその配偶者・直系血族、行方の知れない者(847条)847条を準用(876条の2第2項・876条の7第2項)
意思の尊重成年被後見人の意思を尊重し、心身の状態・生活の状況に配慮する(858条)保佐は876条の5第1項。補助は876条の10第1項で同項を準用
居住用不動産の処分居住の用に供する建物またはその敷地の売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定その他これらに準ずる処分には、家庭裁判所の許可が必要(859条の3)859条の3を準用(876条の5第2項・876条の10第1項)
解任不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるとき、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人もしくはその親族もしくは検察官の請求により、または職権で解任できる(846条)846条を準用(876条の2第2項・876条の7第2項)
報酬家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から相当な報酬を与えることができる(862条)862条を準用(876条の5第2項・876条の10第1項)

843条にも847条にも、特定の資格を持つ人しかなれない、という定めはありません。選ばれるかどうかは、843条4項の事情を考えて家庭裁判所が決めます。前の章の数字のとおり、実際には司法書士・弁護士・社会福祉士など親族以外が多く選ばれています。

任意後見のしくみ(任意後見契約に関する法律)

任意後見は、元気なうちに公正証書で契約しておき、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から契約の効力が生じる制度です(任意後見契約に関する法律3条・2条1号)。民法ではなく、この法律が定めています。

条文内容
2条1号任意後見契約とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、代理権を付与する委任契約で、4条1項により任意後見監督人が選任された時から効力を生ずる旨の定めのあるもの
3条法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない
4条1項契約が登記されていて、本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるとき、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族または任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する
4条1項ただし書選任しない場合:本人が未成年者のとき/本人が成年被後見人・被保佐人・被補助人で、その後見・保佐・補助を続けることが本人の利益のため特に必要と認めるとき/任意後見受任者が民法847条各号(4号を除く)に掲げる者などのとき
4条3項本人以外の請求で選任するには、あらかじめ本人の同意が必要。ただし、本人が意思を表示できないときは不要
5条任意後見受任者・任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人になれない
7条1項任意後見監督人の職務:任意後見人の事務の監督/家庭裁判所への定期的な報告/急迫の事情があるときの必要な処分/利益が相反する行為についての本人の代表
8条任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他任務に適しない事由があるとき、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族または検察官の請求により解任できる
9条監督人の選任前は、本人または任意後見受任者が、いつでも、公証人の認証を受けた書面で解除できる(1項)。選任後は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て解除できる(2項)
10条契約が登記されているときは、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等ができる(1項)。監督人の選任後に本人が後見開始の審判等を受けたときは、契約は終了する(3項)
11条任意後見人の代理権の消滅は、登記をしなければ、善意の第三者に対抗できない

4条1項ただし書の2つ目と、4条2項(監督人を選任する場合に本人が成年被後見人などであるときは、後見開始の審判等を取り消す)は、任意後見と法定後見がぶつかったときの調整です。任意後見を優先し、法定後見は特に必要なときだけ、という順になっています。

参考:e-Gov 法令検索『任意後見契約に関する法律』(現行条文)任意後見契約に関する法律

試験での問われ方:令和8年度は改正前の3類型で出る

令和8年度の行政書士試験は、令和8年4月1日現在施行の法令から出題されるので、後見・保佐・補助の3類型の条文で問われます(行政書士試験研究センター)。

行政書士試験 令和8年度の法令の基準日:試験日は令和8年11月8日(日)午後1時から午後4時まで。法令については、令和8年4月1日現在施行されている法令に関して出題。最終確認日:2026-10-29。出典:行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内。

2026年の改正法:3類型は「補助」1つにまとまる

民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)が、2026年6月24日に公布されました。改正後の民法7条は「補助開始の審判」だけを定め、後見開始・保佐開始の審判の条文はなくなります。

事理を弁識する能力を欠く常況にある人には、必要があると認めるとき、補助人として「特定補助人」を付ける審判ができるようになります(改正後の10条1項)。任意後見契約に関する法律も、同じ改正法で改められます。

令和8年法律第45号の施行日:主な改正の施行は、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日(附則1条)。遺言などの一部の規定は、別の日に施行される(附則1条各号)。最終確認日:2026-10-29。出典:e-Gov 法令検索 民法(改正履歴・未施行の版)。

その年度の試験の基準日(令和8年度は4月1日)の時点で主な改正がまだ施行されていなければ、その年度も今の3類型の条文で問われます。施行の後の年度は、その年度の受験案内の基準日で確かめます。

間違えやすいところ

よくある誤解条文では
後見開始の審判は、家庭裁判所が職権でする7条は、本人・配偶者などの請求により審判をすると書く。職権で選ぶのは成年後見人(843条1項)
被保佐人が行うことは、すべて保佐人の同意が必要13条1項各号の行為と、13条2項の審判で加えた行為。9条ただし書の行為は除く
補助人の同意が必要な行為は、審判で自由に決められる13条1項に規定する行為の一部に限る(17条1項ただし書)
補助開始は、家族の請求だけでできる本人以外の請求には本人の同意が必要(15条2項)
任意後見契約は、結んだ時から代理できる任意後見監督人が選任された時から効力を生ずる(2条1号)
任意後見監督人の選任後も、本人はいつでも解除できる正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て(9条2項)
成年後見人は、本人の自宅を自由に売れる居住の用に供する建物またはその敷地の処分は家庭裁判所の許可が必要(859条の3)

この論点の問題は次の3問です。合格ナビの問題は、過去の出題論点をもとにした問題です。

成年後見制度は「誰が選ぶか」と「3類型の差」で整理しよう

成年後見制度は、まず家庭裁判所が選ぶ法定後見と、本人が契約で選ぶ任意後見に分けましょう。法定後見の3類型は、表の中の、同意が要る行為の範囲と、本人以外の請求のときの本人の同意の行を見比べると、選択肢の入れ替えに気づけます。民法の問題で、条文の言葉どおりに見分けられるかを確かめましょう。

参照した一次ソース

よくある質問

Q改正法が施行されたあと、いまの成年被後見人や被保佐人はどうなりますか?

民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)の附則は、施行日の前に後見開始の審判を受けた成年被後見人と、その成年後見人・成年後見監督人について、附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例によるとしています(附則2条1項)。被保佐人と保佐人・保佐監督人も同じです(附則3条1項)。施行日の前に補助開始の審判を受けた被補助人は、施行日以後は、改正後の民法7条1項の補助開始の審判を受けた者とみなされます(附則4条1項)。

Q市町村長は、民法7条の請求権者に入っていないのに、なぜ後見開始の申立てができるのですか?

民法とは別の法律が、市町村長に審判の請求を認めているからです。たとえば老人福祉法32条は、市町村長が65歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときに、民法7条・11条・15条1項などの審判の請求をすることができると定めています。知的障害者福祉法28条も、知的障害者について同じ形で定めています(e-Gov 法令検索、2026-10-29 確認)。

この資格の問題を解く行政書士 科目別問題集
解いてみる

法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月29日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

合格ナビ 編集長・運営者

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