行政書士

相続は行政書士と司法書士のどっち?違いを条文で整理(遺言書・相続登記・遺産分割協議書)

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

相続で行政書士と司法書士のどちらに頼むか迷う人向けに、行政書士法・司法書士法・弁護士法・税理士法・不動産登記法の条文で、相続登記・遺産分割協議書・遺言書の作成を誰が扱えるかを整理します。報酬額は扱いません。条文は2026年10月時点の現行版で確認しました。

目次
  1. 行政書士と司法書士の違いを条文で見る
  2. 相続手続の場面別に見る役割分担
  3. 遺言書の作成でできること(行政書士・司法書士・弁護士)
  4. 相続で依頼先を選ぶときの判断軸
  5. 試験としての違い(科目・難易度)
  6. 当サイトの問題で相続・遺言の論点を確認する
  7. 参照一次ソース
結論:相続の手続のうち、不動産の名義変更(相続登記)の申請は司法書士の業務で、行政書士は業として行えません。遺産分割協議書や相続人関係説明図などの書類作成、遺言書の作成支援は行政書士も扱います(日本行政書士会連合会の説明)。争いがある案件の代理は弁護士、相続税の申告は税理士の業務です。どちらに頼むかは、手続の中に登記が含まれるかどうかが最初の分かれ目になります。

この記事は、行政書士法・司法書士法・弁護士法・税理士法・不動産登記法・民法の条文を e-Gov 法令検索で確認し(2026-10-04 時点の現行条文)、相続の場面ごとに「誰が何をできるか」を整理します。報酬額や、個別の案件の判断は扱いません。個別の相談は、それぞれの専門家や法務局に確認してください。

相続の場面行政書士司法書士他の専門家
相続人・財産の調査と書類(戸籍の収集、相続人関係説明図)書類作成を扱う(戸籍謄本等の請求は戸籍法10条の2第3項)戸籍謄本等の請求は戸籍法10条の2第3項で可能-
遺産分割協議書の作成日行連が業務として掲げる条文だけでは線が引けない部分あり(後述)-
不動産の相続登記(申請の代理・申請書の作成)できない(司法書士法73条1項)できる(同法3条1項1号・2号)弁護士は別の法律の定めによる
遺言書の作成作成支援を扱う(日行連の説明)遺言に関する相談事例を日司連が掲載公正証書遺言は公証人が作成
相続税の申告できないできない税理士(税理士法52条)
相続人同士の争い(紛争の代理)日行連は「法的紛争段階」を除くと説明代理は簡易裁判所の一部の手続などに限られる(裁判所に提出する書類の作成は同法3条1項4号)弁護士(弁護士法72条)

行政書士と司法書士の違いを条文で見る

違いの出発点は、それぞれの法律が定める業務の範囲です。

項目行政書士司法書士
中心の業務官公署に提出する書類、権利義務・事実証明に関する書類の作成(行政書士法1条の3第1項)登記・供託の手続の代理(司法書士法3条1項1号)、法務局に提出する書類の作成(同2号)
裁判所との関係裁判所に提出する書類は、同条の業務に挙がっていない裁判所・検察庁に提出する書類の作成(同4号)。認定を受けた司法書士は簡易裁判所の一部の手続の代理(同6〜8号)
他の法律との関係他の法律で制限されている業務は行えない(行政書士法1条の3第2項)他の法律で制限されている業務は行えない(司法書士法3条8項)
業務の独占行政書士・行政書士法人でない者は、報酬を得て業として1条の3の業務を行えない(同法19条1項)司法書士・司法書士法人でない者は、3条1項1〜5号の業務を行えない(同法73条1項)
出典:行政書士法(e-Gov 法令検索)・司法書士法(e-Gov 法令検索)。2026-10-04 時点の現行条文によります。

ポイントは次の2つです。

  • 行政書士の業務は「書類の作成」が軸で、登記の手続や法務局に提出する書類の作成は、司法書士法の業務として別に定められています。行政書士法1条の3第2項は、書類の作成であっても他の法律で制限されている業務は行えないと定めています。
  • 司法書士の簡易裁判所での代理は、訴訟の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額を超えないものなどに限られ、認定を受けた司法書士だけが行えます(司法書士法3条1項6号・2項)。
簡易裁判所の訴額の上限:訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求(裁判所法33条1項1号)。司法書士法3条1項6号は、この額を超えないものについて簡易裁判所での代理を認めています。最終確認日:2026-10-04。出典:裁判所法(e-Gov 法令検索)。

行政書士は相続でどこまでできるか

日本行政書士会連合会は、相続について次のように説明しています。

「遺産相続においては、法的紛争段階にある事案や、税務・登記申請業務に関するものを除き、遺産分割協議書や相続人関係説明図等の書類作成を中心に、その前提となる諸々の調査も含め、お引き受けします。」(日本行政書士会連合会 遺言・相続)

つまり行政書士の相続業務は、紛争になっていない案件で、書類の作成と、その前提の調査が中心です。登記の申請と税務は含まれません。「行政書士 相続専門」と名乗る事務所があっても、法律上の業務の範囲は変わりません。団体の説明は条文の解釈の最終判断ではないため、迷う場合は依頼先に、その手続が自分の業務の範囲かどうかを確認してください。

相続手続の場面別に見る役割分担

相続登記:司法書士の業務で、3年以内の申請義務がある

不動産を相続した人には、相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2第1項)。法定相続分どおりの相続登記がされた後に遺産分割があり、法定相続分を超えて取得した人は、分割の日から3年以内に登記を申請します(同条2項)。正当な理由がないのに怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。この義務は令和6年4月1日に施行されました(法務省民事局の案内)。

相続登記の申請義務:相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。最終確認日:2026-10-04。出典:不動産登記法(e-Gov 法令検索)・法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し。

登記の申請の代理は司法書士法3条1項1号、申請書など法務局に提出する書類の作成は同2号の業務です。司法書士でない者は、これらを業として行えません(同法73条1項)。行政書士が相続登記の申請を引き受けられない理由は、この条文にあります。

遺産分割協議書:行政書士も司法書士も関わるが、条文だけでは線が引けない部分がある

遺産分割は、共同相続人が協議でできます(民法907条1項)。協議が調わないとき、または協議ができないときは、各共同相続人が家庭裁判所に分割を請求できます(同条2項)。

協議の結果をまとめた遺産分割協議書の作成は、行政書士が扱う書類作成として、日本行政書士会連合会が業務に挙げています。一方、遺産分割協議書は、相続登記の申請で法務局に提出する書類として使われることがあります。その場合に、書類の作成が司法書士法3条1項2号の「法務局に提出する書類の作成」に当たるのかは、条文の文言だけでは断定できません。協議書だけを頼むのか、登記まで一括で頼むのかによっても整理が変わるため、依頼先に「どこまでを自分の業務として引き受けるか」を確認するのが確実です。

  • 戸籍謄本等の請求は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などが、受任している事件・事務の業務のために必要がある場合に認められています(戸籍法10条の2第3項)。どの士業に頼んでも、相続人の確定のための戸籍の収集は進められます。
  • 相続人の中に判断能力が低下した人がいる場合は、成年後見の手続が先に必要になることがあります。日本行政書士会連合会と日本司法書士会連合会は、どちらも成年後見人等の業務を説明しています(日司連 司法書士の業務)。

この論点を当サイトの問題で確認できます。

争いがあるとき、税金が絡むとき

  • 相続人同士の争い:弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関して代理・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とすることは、弁護士法72条が禁じています(法律に別段の定めがある場合を除く)。行政書士は「法的紛争段階にある事案」を除いて引き受けると説明されています。司法書士法3条1項が代理を認めているのは、登記・供託の手続(1号)、その審査請求(3号)、簡易裁判所の手続など(6〜8号)で、家庭裁判所の遺産分割の手続の代理は挙がっていません。裁判所に提出する書類の作成は、同項4号に挙がっています。
  • 相続税の申告:税理士または税理士法人でない者は、税理士法に別段の定めがある場合を除き、税理士業務を行えません(税理士法52条)。日行連も、行政書士の相続業務から税務を除くと説明しています。
出典:弁護士法(e-Gov 法令検索)・税理士法(e-Gov 法令検索)・戸籍法(e-Gov 法令検索)

遺言書の作成でできること(行政書士・司法書士・弁護士)

遺言の方式は、民法が定めています。

  • 自筆証書遺言:遺言者が全文・日付・氏名を自書して印を押します。財産目録は自書でなくてもよく、その場合は目録の各ページに署名し、印を押します(民法968条1項・2項)。
  • 公正証書遺言:証人2人以上の立会いのもと、遺言者が趣旨を公証人に口授し、公証人法の定めに従って公証人が作成します(民法969条)。
  • 自筆証書遺言などの遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求します(民法1004条1項)。公正証書遺言には適用されません(同条2項)。法務局の遺言書保管所に保管されている遺言書にも適用されません(遺言書保管法11条)。
出典:民法(e-Gov 法令検索)・法務局における遺言書の保管等に関する法律(e-Gov 法令検索)

士業ごとの関わり方は次のとおりです。

専門家遺言書の作成との関わり確認できる根拠
行政書士自筆証書・公正証書・秘密証書のすべてで作成支援を行う(公正証書遺言では証人等を含む)日本行政書士会連合会の説明(条文に遺言書の作成が個別に列挙されているわけではない)
司法書士遺言に関する相談事例(遺言書の撤回、全財産を特定の人に遺す場合など)を日司連が掲載司法書士法3条1項に遺言書の作成そのものは列挙されていない。範囲は依頼先に確認
弁護士紛争の予防や、紛争後の代理を含む法律事務弁護士法72条
公証人公正証書遺言を作成する民法969条

遺言執行者(遺言の内容を実現する人)は、遺言で指定できます(民法1006条1項)。なれないのは未成年者と破産者だけです(民法1009条)。専門家に限られるわけではありません。

相続で依頼先を選ぶときの判断軸

条文から言える範囲で、状況ごとの見方を表にします。個別の案件がどれに当たるかは、専門家や法務局への確認が必要です。

状況見るポイント
不動産を相続した登記申請は司法書士の業務。3年以内の申請義務がある(不動産登記法76条の2)
不動産がなく、書類作成が中心紛争がなければ、行政書士が扱う書類作成の範囲に入る(日行連の説明)
相続人の間で意見が分かれている紛争の代理は弁護士法72条の問題。行政書士は法的紛争段階を除く。司法書士の代理は簡易裁判所の手続などに限られる
相続税の申告が必要になりそう税理士の業務(税理士法52条)
遺言書を作りたい方式は民法968条・969条。作成支援は行政書士、公正証書は公証人。争いが予想される場合は弁護士にも相談
登記も書類も必要窓口を1つにするのか、士業ごとに分けるのか、どこまで引き受けてもらえるかを最初に確認する

迷ったときの確認事項として、次の3点を挙げておきます。

  • その手続に、法務局への申請(登記)が含まれるか
  • 相続人の間に、すでに争いがあるか(または見込まれるか)
  • 相続税の申告が必要になる見込みがあるか

いずれの専門家に頼む場合も、どこまでを引き受けてもらえるのか、業務の範囲を最初に書面で確認するのが安全です。この記事は報酬額を扱いません。

試験としての違い(科目・難易度)

資格を取る側から見ると、行政書士と司法書士の試験は、科目の重なりも難易度も大きく違います。

  • どちらの試験にも受験資格の制限はありません。
  • 司法書士試験の筆記は、憲法・民法・商法・刑法、不動産登記・商業登記、供託・民事訴訟・民事執行・民事保全、司法書士法などの範囲です。行政書士試験は憲法・行政法・民法・商法・基礎法学と基礎知識です。
  • 令和7年度の合格率は、行政書士が14.54%、司法書士が5.21%(法務省の公表人数から当サイトが計算)でした。
令和7年度の合格率:行政書士14.54%、司法書士5.21%(受験者14,418人・合格者751人から当サイト計算)。最終確認日:2026-10-03。出典:行政書士試験研究センター 試験結果の推移・法務省 令和7年度司法書士試験の最終結果について。

科目の重なり、直近4年の合格率、司法試験との違いは 行政書士から司法書士を目指す人向けの比較 にまとめています。行政書士の業務の全体像は 行政書士の資格を活かす(入管業務・相続・契約書) を参照してください。

当サイトの問題で相続・遺言の論点を確認する

当サイトの行政書士向け問題のうち、民法で相続・遺言・遺留分を主題にした問題は23問あります(2026-10-03時点の当サイト集計。出題頻度ではなく、当サイトの問題数です)。相続の手続を頼む側としても、受験する側としても、民法の基本の確認に使えます。

参照一次ソース

当サイトの論点別問題は、過去の出題論点をもとに独自に作成した問題で、公式の試験問題ではありません。この記事は法律相談ではありません。個別の案件は、弁護士・司法書士・行政書士・税理士などの専門家や法務局にご確認ください。

よくある質問

Q行政書士は相続登記(不動産の名義変更)を代理できますか?

登記の手続の代理は司法書士法3条1項1号、法務局に提出する書類の作成は同2号に定められた司法書士の業務で、同法73条1項は司法書士・司法書士法人でない者がこれらを行うことを禁じています(他の法律に別段の定めがある場合を除く)。行政書士法1条の3第2項も、他の法律で制限されている業務は行えないと定めています。日本行政書士会連合会も、行政書士が引き受ける相続の書類作成から「登記申請業務」を除くと説明しています。

Q遺言執行者は、行政書士や司法書士などの専門家でないとなれませんか?

民法1009条が遺言執行者になれないとしているのは、未成年者と破産者だけです。資格の有無は欠格事由になっていません。遺言者は遺言で、1人または数人の遺言執行者を指定できます(民法1006条1項)。誰に任せるかは、遺言の内容や相続人の状況を見て決めることになります。

Q公正証書遺言も家庭裁判所の検認が必要ですか?

公正証書による遺言には、遺言書の検認の規定(民法1004条1項)は適用されません(同条2項)。法務局の遺言書保管所に保管されている遺言書も、法務局における遺言書の保管等に関する法律11条により、検認の規定が適用されません。自筆証書遺言を自宅などで保管していた場合は、検認の手続が問題になります。

Q相続登記をしないでいると、罰則はありますか?

不動産登記法76条の2は、相続で所有権を取得した人に、取得を知った日から3年以内の登記申請を義務づけています。正当な理由がないのに怠った場合は、同法164条により10万円以下の過料の対象です。令和6年4月1日に施行されました。個別の事情で正当な理由に当たるかは、法務局または専門家に確認してください。

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