行政書士から司法書士を目指す人向けに、法務省・条文・行政書士試験の公式資料で、試験科目の重なり、受験資格、直近4年の合格率、試験構造の違いを整理します。司法試験の受験資格に行政書士が含まれない点も条文で確認します。
目次
結論:行政書士と司法書士は、試験科目のうち憲法・民法・商法(会社法)が重なります。ただし司法書士試験には、行政書士試験の範囲にない刑法、不動産登記、商業登記、供託、民事訴訟・民事執行・民事保全、司法書士法が加わります。直近4年(令和4〜7年度)の司法書士試験の合格率は、法務省の公表人数から計算すると5.2%台で、令和7年度の行政書士試験(14.54%)より低い値でした。どちらにも受験資格の制限はありません(司法書士試験は法務省の受験案内、行政書士試験は試験センターの案内)。
この記事は、すでに行政書士の学習をした人、または行政書士を考えている人が司法書士に進むとき、公式の資料だけで判断できる点をまとめます。勉強時間の数字や「何割が学習済み」といった、出典のない目安は載せません。
| 比べる点 | 行政書士 | 司法書士 |
|---|---|---|
| 受験資格 | 制限なし | 制限なし |
| 試験日 | 11月(令和8年度は11月8日) | 7月(令和8年度は7月5日)+口述試験(10月13日) |
| 試験時間 | 3時間(午後1時〜4時) | 午前2時間・午後3時間(計5時間) |
| 試験の内容 | 憲法・行政法・民法・商法・基礎法学+基礎知識 | 憲法・民法・商法・刑法/不動産登記・商業登記/供託・民事訴訟・民事執行・民事保全/司法書士法 |
| 形式 | 5肢択一・多肢選択・記述(40字程度)300点満点 | 多肢択一70問・記述2問、350点満点(令和6年度以降)。口述試験あり |
| 直近の合格率 | 令和7年度 14.54% | 令和7年度 5.21%(当サイト計算) |
科目の重なり:行政書士と司法書士の試験内容を並べる
法務省の令和8年度司法書士試験受験案内書では、筆記試験の内容が次の4つに分けて書かれています(令和8年度司法書士試験受験案内書)。
- ① 憲法、民法、商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む)及び刑法に関する知識
- ② 不動産登記及び商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む)
- ③ 供託並びに民事訴訟、民事執行及び民事保全に関する知識
- ④ 司法書士法3条1項1号から5号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
行政書士試験の科目は、センターの令和8年度の案内で、法令等が憲法・行政法・民法・商法・基礎法学、基礎知識が一般知識・行政書士法等の諸法令・情報通信・個人情報保護・文章理解とされています(令和8年度行政書士試験のご案内)。
| 科目 | 行政書士 | 司法書士 |
|---|---|---|
| 憲法 | 出題あり | 出題あり(午前の部) |
| 民法 | 出題あり | 出題あり(午前の部) |
| 商法・会社法 | 出題あり | 出題あり(午前の部) |
| 行政法 | 出題あり(令和7年度は当サイト集計で112点・300点の37.3%) | 試験内容に行政法の記載なし |
| 刑法 | 試験内容に記載なし | 出題あり(午前の部) |
| 不動産登記・商業登記・供託 | 試験内容に記載なし | 出題あり(午後の部) |
| 民事訴訟・民事執行・民事保全 | 試験内容に記載なし | 出題あり(午後の部) |
| 基礎法学・一般知識・文章理解など | 出題あり | 試験内容に記載なし |
令和7年度の行政書士試験を当サイトが数えた集計では、重なる3科目(憲法28点・民法76点・商法・会社法20点)の合計は124点で、300点満点の41.3%でした(分類は当サイト独自。令和7年度の講評)。これは行政書士試験の側から見た配点の割合です。司法書士試験の側では、問題数の科目別内訳が受験案内書に書かれていないため、「何割が重なるか」は公式資料では言えません。
出典:法務省 令和8年度司法書士試験受験案内書・行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内(2026-10-03 時点)
重なる科目を、当サイトの論点別問題で確認できます(当サイトは行政書士の論点別問題を扱っており、司法書士試験の問題はありません)。
- 民法:即時取得(行政書士 民法 問15)
- 民法:代理・無権代理と追認(行政書士 民法 問8)
- 民法:連帯債務・求償(行政書士 民法 問40)
- 商法・会社法:取締役会の権限(行政書士 商法・会社法 問28)
- 商法・会社法:取締役会の招集・議事録(行政書士 商法・会社法 問31)
- 憲法:表現の自由と検閲の禁止(行政書士 憲法 問4)
- 憲法:報道・取材の自由(行政書士 憲法 問40)
試験構造の違い:合格点と足切り
司法書士試験の仕組み
受験案内書によると、筆記試験は午前の部(多肢択一式35問・105点)と午後の部(多肢択一式35問・105点、記述式2問・140点)で、合計350点です。午前の部の多肢択一、午後の部の多肢択一、記述式の各成績が、それぞれの基準点に達しない場合は、それだけで不合格になります(令和8年度受験案内書)。筆記試験に合格した人が口述試験を受け、最終合格が決まります。
| 年度 | 筆記の合格点 | 午前(多肢択一)の基準点 | 午後(多肢択一)の基準点 | 記述式の基準点 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年度 | 350点中258.0点 | 105点中84点 | 105点中75点 | 140点中70.0点 |
| 令和7年度 | 350点中255.0点 | 105点中78点 | 105点中72点 | 140点中70.0点 |
出典:法務省 令和8年度司法書士試験筆記試験の合格点等について、令和7年度司法書士試験の最終結果について
司法書士試験 令和8年度の日程と合格点:筆記試験は令和8年7月5日(日)、口述試験は10月13日(火)、最終合格者の発表は11月5日(木)。筆記の合格点は350点満点中258.0点以上。最終結果は2026-10-03時点で未発表。最終確認日:2026-10-03。出典:法務省 令和8年度司法書士試験。
筆記試験に合格した人は、次回の筆記試験が免除されます(令和8年度受験案内書の「次回の筆記試験の免除」)。
行政書士試験との違い
行政書士試験は、法令等122点以上・基礎知識24点以上・総合180点以上の3条件です(令和7年度。令和7年度合否判定基準)。これは300点満点の60%が総合の基準です。司法書士試験の筆記の合格点は、令和7年度が約72.9%、令和8年度が約73.7%(258÷350)にあたります(当サイトの計算)。ただし司法書士の合格点は年度ごとに変わるため、割合は目安として見てください。
難易度の違い:合格率を同じ年度で並べる
法務省が公表する最終結果の受験者数と合格者数から、当サイトが合格率を計算しました。受験者数は「午前の部及び午後の部の双方を受験した者の数」です。
| 年度 | 司法書士の受験者数→合格者数 | 司法書士の合格率 | 行政書士の合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 12,727人→660人 | 5.19% | 12.13% |
| 令和5年度 | 13,372人→695人 | 5.20% | 13.98% |
| 令和6年度 | 13,960人→737人 | 5.28% | 12.90% |
| 令和7年度 | 14,418人→751人 | 5.21% | 14.54% |
出典:法務省 最終結果 令和7年度・令和6年度・令和5年度・令和4年度、行政書士は 行政書士試験研究センター 試験結果の推移
司法書士試験の合格率:令和7年度は受験者14,418人・合格者751人(合格率5.21%・当サイト計算)。最終確認日:2026-10-03。出典:法務省 令和7年度司法書士試験の最終結果について。
表から言えるのは、4年とも司法書士の合格率が5%台前半で、行政書士の合格率(12〜14%台)の半分以下だったことです。「司法書士と行政書士のどちらが難しいか」の問いに対して、合格率の面では司法書士のほうが低い値です。ただし、合格率だけでは難しさは決まりません。
- 司法書士試験は受験者の層が異なります(行政書士の学習経験者も受験します)
- 試験の形式・時間・科目が違います(午後の部の記述式2問・口述試験など)
- 行政書士の10年推移・合格基準は 行政書士の難易度と合格率 にあります
勉強時間について
試験を実施する法務省・試験センターの公式資料に、勉強時間の目安は載っていません。他サイトが挙げる時間数は、出典が示されていないため引用しません。公式の数字で量を比べられるのは、試験時間(行政書士は3時間、司法書士は午前2時間と午後3時間の計5時間)と、試験内容に挙げられた科目の数です。科目の重なりを活かせるかどうかは、行政書士で学んだ憲法・民法・会社法の理解度によって変わります。
司法書士の仕事と行政書士の仕事:条文での境界
司法書士法3条1項は、司法書士の業務として、登記・供託の手続の代理(1号)、法務局・地方法務局に提出する書類の作成(2号)、登記・供託の審査請求の代理(3号)、裁判所・検察庁に提出する書類の作成など(4号)、これらの相談(5号)などを定めています(e-Gov 法令検索の現行条文・2026-10-03時点)。簡易裁判所での手続の代理(6号〜8号)は、研修を修了し、法務大臣の認定を受けた司法書士会の会員に限られます(同条2項)。
司法書士法73条1項は、司法書士会に入会している司法書士または司法書士法人でない者が、3条1項1号〜5号の業務を行うことを禁じています(他の法律に別段の定めがある場合を除く)。行政書士法1条の3第2項も、書類の作成であっても、他の法律で制限されている業務は行えないと定めています。
| 論点 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 司法書士の業務 | 司法書士法3条1項 | 登記・供託の代理、法務局提出書類の作成、裁判所提出書類の作成など |
| 司法書士でない者の制限 | 司法書士法73条1項 | 3条1項1号〜5号の業務を行ってはならない(他の法律に別段の定めがある場合を除く) |
| 行政書士の業務 | 行政書士法1条の3第1項 | 官公署に提出する書類その他権利義務・事実証明に関する書類の作成 |
| 他の法律で制限されている業務 | 行政書士法1条の3第2項 | 行うことができない |
個別の案件がどちらの業務に当たるかは、条文の要件で変わります。実務の判断は、それぞれの専門家や所管の官庁に確認してください。行政書士の業務の広がりは 行政書士の資格を活かす に、社労士との境目は 社労士と行政書士はどっち? にまとめています。
出典:司法書士法(e-Gov 法令検索)・行政書士法(e-Gov 法令検索)
行政書士から司法試験を受けられるか
「行政書士から司法試験」を考える場合、司法書士試験とは入口が違います。予備試験の人数や公務員試験との比較まで含めた詳しい整理は行政書士から司法試験・予備試験は目指せる?にあります。
司法試験法4条1項は、司法試験を次の人が受けられると定めています(e-Gov 法令検索の現行条文・2026-10-03時点)。
- ① 法科大学院の課程を修了した者(修了の日後の最初の4月1日から5年を経過するまで)
- ② 司法試験予備試験に合格した者(合格の発表の日後の最初の4月1日から5年を経過するまで)
2項には、法科大学院に在学中の一定の者が受けられる規定もあります。いずれにも、行政書士の資格や行政書士試験の合格は含まれていません。つまり、行政書士の資格を持っているだけでは、司法試験の受験資格にはなりません。
予備試験の短答式の科目は、司法試験法5条2項で、憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・一般教養科目とされています。憲法・行政法・民法・商法は、行政書士試験の法令等とも共通する名前の科目です。ただし試験の形式(短答式・論文式・口述)や求められる水準は異なり、科目名が同じでも出題の深さは同じとは言えません。
出典:司法試験法(e-Gov 法令検索)。受験の細目は、法務省の司法試験のページで確認してください。
途中で切り替えるときの判断材料
行政書士の学習を途中で司法書士に切り替えるか、続けるか。決めるための事実を整理します。
| 確認すること | 分かること |
|---|---|
| 次の試験日 | 司法書士の筆記は7月(令和8年度は7月5日)、行政書士は11月(令和8年度は11月8日)。司法書士の令和9年度の日程は、法務省の受験案内書で確認する |
| 試験内容に含まれない科目 | 行政書士にあって司法書士にないのは行政法・基礎知識など。司法書士にあって行政書士にないのは刑法・登記・供託・民事訴訟など |
| 足切りの形 | 行政書士は法令等・基礎知識・総合の3条件。司法書士は午前の多肢択一・午後の多肢択一・記述式の各基準点 |
| 筆記合格の持ち越し | 司法書士は筆記合格で翌年の筆記が免除される(受験案内書) |
| 受験資格 | どちらも制限なし。ただし、社労士試験では行政書士試験の合格が受験資格の1つ(社労士と行政書士の比較) |
学習の優先順位は人によって異なります。法律の学習経験が浅い場合は、まず行政書士の範囲で民法・憲法・会社法を固めるやり方もあり、すでに民法の理解に自信がある場合は、司法書士の範囲(刑法・登記・供託・民事訴訟)の確認から入る方法もあります。どの順序でも、受験案内で試験内容と日程を確認することが出発点です。
科目のハブは 憲法・民法・商法・会社法 です。行政書士の科目別の優先順位は 行政書士の科目別配点と学習の優先順位 を参照してください。
参照一次ソース
- 法務省 令和8年度司法書士試験
- 法務省 令和8年度司法書士試験受験案内書
- 法務省 令和8年度司法書士試験筆記試験の合格点等について
- 法務省 令和7年度司法書士試験の最終結果について
- 司法書士法(e-Gov 法令検索)
- 司法試験法(e-Gov 法令検索)
- 行政書士法(e-Gov 法令検索)
- 行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内
- 行政書士試験研究センター 試験結果の推移
当サイトの論点別問題は、過去の出題論点をもとに独自に作成した問題で、公式の試験問題ではありません。
よくある質問
Q行政書士試験に合格していると、司法書士試験で免除はありますか?
法務省の令和8年度司法書士試験受験案内書に載っている免除は、前回(令和7年度)の筆記試験に合格した人の筆記免除です。行政書士試験の合格を理由とする免除は、受験案内書の試験日程・結果発表・試験内容の項には載っていません。受験案内書の全文は、法務省のページで確認してください。
Q行政書士から司法試験を受けることはできますか?
司法試験法4条1項が定める受験資格は、法科大学院の課程を修了した者と、司法試験予備試験に合格した者(それぞれ一定の期間内)です。行政書士の資格や行政書士試験の合格は、この条文の受験資格に含まれていません。在学中受験の要件など細かい条件は、法務省の司法試験のページで確認してください。
Q司法書士試験の合格点は毎年同じですか?
同じではありません。筆記試験の合格点は年度ごとに公表されます。令和7年度は350点満点中255.0点以上、令和8年度は350点満点中258.0点以上です。また、令和5年度までは満点が280点(記述式の満点が70点)で、令和6年度から350点(記述式140点)になっているため、年度をまたいだ点数の単純な比較はできません。
Q司法書士試験の口述試験は、誰が受けるのですか?
筆記試験に合格した人が受けます。令和8年度は、筆記の合格発表が10月1日、口述試験が10月13日、最終合格者の発表が11月5日と、受験案内書に書かれています。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月3日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

