社労士と行政書士の違いを、業務と独占業務の条文、受験資格、直近10年の合格率、試験形式で比較します。行政書士試験に合格すると社労士試験の受験資格になること、どちらを先に受けるかの判断材料までまとめました。
目次
結論:社労士と行政書士は、扱う書類の分野が違います。社労士は労働・社会保険の書類と相談(社会保険労務士法2条)、行政書士は官公署に提出する書類や権利義務・事実証明の書類(行政書士法1条の3)です。労働社会保険諸法令に基づく書類の作成・提出代行は、社労士でない者が報酬を得て業として行うことが禁じられています(社労士法27条)。合格率は、平成29〜令和7年度の9年すべてで社労士のほうが行政書士より低い値でした。
この記事は「どっちが優れているか」ではなく、条文と公式データで違いを並べる記事です。年収の比較や、予備校の評価、「最強」といった順位づけはしません。
| 比べる点 | 社労士 | 行政書士 |
|---|---|---|
| 主な業務の根拠 | 社会保険労務士法2条 | 行政書士法1条の3 |
| 扱う分野 | 労働・社会保険の書類、帳簿、相談・指導 | 官公署に提出する書類、権利義務・事実証明の書類 |
| 独占の定め | 1号・2号業務は27条で独占(3号は対象外) | 1条の3の業務は19条で独占 |
| 受験資格 | あり(学歴・実務経験・認定された国家試験合格のいずれか) | なし(年齢・学歴・国籍に関係なく受験可) |
| 試験の時期 | 8月(第58回は令和8年8月23日) | 11月(令和8年度は11月8日) |
| 試験の形式 | 選択式8問+択一式70問(計110点満点) | 5肢択一40問+多肢選択3問+記述3問+基礎知識14問(300点満点) |
| 直近の合格率 | 令和8年度 9.3%(令和7年度 5.5%) | 令和7年度 14.54% |
業務の違い:条文で見る社労士と行政書士
社労士の業務(社会保険労務士法2条)
社会保険労務士法2条1項は、社労士の業務を次のように定めています(e-Gov 法令検索の現行条文・2026-10-03時点)。
- 1号:労働社会保険諸法令(法の別表第一に掲げる法令)に基づく申請書等の作成。あわせて、その提出手続の代行(1号の2)と事務代理(1号の3)
- 2号:労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成
- 3号:事業における労務管理その他の労働に関する事項と、労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、相談に応じ、または指導すること
紛争解決手続の代理(1号の4〜1号の6)は、特定社会保険労務士に限って行えます(2条2項)。詳しくは 特定社会保険労務士とは にまとめています。仕事の中身は 社労士の仕事内容 を参照してください。
行政書士の業務(行政書士法1条の3)
行政書士法1条の3第1項は、行政書士は「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類…その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする」と定めています。令和7年の法改正で、業務を定める条文は1条の2から1条の3に移りました(行政書士法改正(2026年1月施行)の要点)。
1条の4では、行政書士は、書類の作成のほか、官公署に提出する手続の代理や、契約書類の代理人としての作成、書類作成に関する相談などを行えるとされています。許認可に関する不服申立ての代理は、研修を修了した特定行政書士に限られます(同条2項)。行政書士の業務の広がりは 行政書士の資格を活かす(入管業務など) にまとめています。
出典:社会保険労務士法(e-Gov 法令検索)・行政書士法(e-Gov 法令検索)(2026-10-03 時点の現行条文)
独占業務の範囲:重なるところと、重ならないところ
2つの資格の境目は、条文では次のように読めます。
| 論点 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 社労士の独占 | 社労士法27条 | 社労士・社労士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、2条1項1号〜2号の事務を業として行ってはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合などは除く |
| 3号業務 | 社労士法27条 | 3号(相談・指導)は27条の対象に入っていない |
| 社労士の業務の外側 | 社労士法2条4項 | 1項各号の事務に、その事務を行うことが他の法律で制限されている事務は含まれない |
| 行政書士の独占 | 行政書士法19条 | 行政書士・行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け報酬を得て、業として1条の3の業務を行えない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合などは除く |
| 行政書士の業務の外側 | 行政書士法1条の3第2項 | 書類の作成でも、他の法律で制限されている業務は行えない |
ここから言えるのは、次の2点です。
- 労働社会保険諸法令に基づく書類の作成・提出代行は、社労士法で社労士に独占されています。行政書士の資格だけでは、原則としてこの業務を報酬を得て業として行えません(行政書士法1条の3第2項と社労士法27条。昭和55年の行政書士法改正の附則に、当時すでに行政書士会に入会していた行政書士への例外があります。詳しくはこのページのFAQ)。
- 逆に、行政書士法19条は、行政書士でない者が1条の3の業務を報酬を得て業として行うことを禁じています。社労士の資格だけでは、労働・社会保険以外の官公署提出書類を、報酬を得て業として作ることはできません。社労士が労働社会保険諸法令の書類を作るのは、社労士法2条に基づく社労士の業務です。
個別の案件がどちらの業務に当たるかは、条文の細かな要件で変わります。実務の相談は、それぞれの専門家や所管の官庁に確認してください。
この論点の問題を解く(当サイトの論点別問題):
- 社会保険労務士法の業務範囲・登録要件(社労士 社会保険一般常識 問5)
- 社会保険労務士法の業務区分(社労士 社会保険一般常識 問16)
- 行政書士の業務範囲(行政書士 一般知識 問26)
- 行政書士の業務制限・登録(行政書士 一般知識 問29)
受験資格と登録:入口の条件が違う
受験資格
- 行政書士試験:センターの受験案内に「年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できます」とあります(令和8年度行政書士試験のご案内)。
- 社労士試験:受験資格は「学歴」「実務経験」「厚生労働大臣の認めた国家試験合格」の3つに分かれ、いずれか1つを満たす必要があります。受験資格証明書の提出も必要です(社会保険労務士試験オフィシャルサイト 受験資格について)。
ここで、2つの資格をつなぐ事実があります。社労士試験の受験資格の「試験合格による受験資格」の1つに、行政書士試験の合格が入っています(同ページ・受験資格コード10)。条文でも、社会保険労務士法8条6号に「行政書士となる資格を有する者」とあります。
登録
- 社労士:試験に合格しても、そのまま名乗れるわけではありません。社会保険労務士法3条は、試験合格者などで、労働社会保険諸法令の事務に従事した期間が通算2年以上のもの、または厚生労働大臣が同等以上の経験を有すると認めるものを、社労士となる資格がある者としています。厚生労働省の合格発表でも、2年以上の事務従事、または厚生労働大臣が指定した講習の修了が、登録の前提として示されています(第58回社会保険労務士試験の合格者発表)。
- 行政書士:行政書士法6条は、行政書士となる資格を有する者が、行政書士名簿に登録を受けるとしています。条文に、実務経験の年数の要件は書かれていません。
試験の違い:形式・合格基準・日程
| 項目 | 社労士(第58回・令和8年度) | 行政書士(令和7年度) |
|---|---|---|
| 試験日 | 令和8年8月23日(日) | 令和7年11月9日(日) |
| 時間 | 選択式80分・択一式210分 | 午後1時〜午後4時(3時間) |
| 問題数・配点 | 選択式8問(40点)・択一式70問(70点) | 60問・300点(記述式は3問60点) |
| 合格の条件 | 選択式は総得点25点以上かつ各科目3点以上(雇用保険法は2点以上)、択一式は総得点47点以上かつ各科目4点以上 | 法令等122点以上・基礎知識24点以上・総合180点以上 |
| 法令の基準日 | 令和8年4月10日現在施行 | 令和8年度の案内では、令和8年4月1日現在施行のもの |
社労士の合格基準の欄は、令和8年度のものです。公表資料には「試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正したもの」と書かれています(社会保険労務士試験の合格基準及び正答について)。合格基準点は年度ごとに公表される値で、毎年同じとは限りません。
社労士試験の受験手数料:15,000円(払込みに係る手数料は受験申込者負担)。最終確認日:2026-10-03。出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト 試験の概要。
行政書士試験の受験手数料:令和8年度は10,400円。試験日は令和8年11月8日(日)午後1時から午後4時まで。最終確認日:2026-10-03。出典:行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内。
社労士の試験は、科目ごとの足切りがあるのが特徴です。選択式・択一式のそれぞれで、総得点と科目ごとの基準点の両方を満たす必要があります(試験の概要)。行政書士にも基礎知識24点の足切りがありますが、社労士は選択式8科目・択一式7科目の各科目に基準があります。科目の学習の優先順位は 行政書士の科目別配点と学習の優先順位、社労士の足切り対策は 社労士 一般常識の足切り対策 を参照してください。
どっちが難しい?合格率を同じ年度で並べる
試験センターと厚生労働省・試験オフィシャルサイトが公表した人数から、合格者数÷受験者数を当サイトが計算して並べます(社労士の人数は、公表されている過去10年の推移グラフの数値ラベルから読み取りました)。
| 年度 | 社労士の受験者数→合格者数 | 社労士の合格率 | 行政書士の合格率 |
|---|---|---|---|
| 平成29年度 | 38,685人→2,613人 | 6.75% | 15.72% |
| 平成30年度 | 38,427人→2,413人 | 6.28% | 12.70% |
| 令和元年度 | 38,428人→2,525人 | 6.57% | 11.48% |
| 令和2年度 | 34,845人→2,237人 | 6.42% | 10.72% |
| 令和3年度 | 37,306人→2,937人 | 7.87% | 11.18% |
| 令和4年度 | 40,633人→2,134人 | 5.25% | 12.13% |
| 令和5年度 | 42,741人→2,720人 | 6.36% | 13.98% |
| 令和6年度 | 43,174人→2,974人 | 6.89% | 12.90% |
| 令和7年度 | 43,421人→2,376人 | 5.47%(公表5.5%) | 14.54% |
| 令和8年度 | 42,510人→3,961人 | 9.32%(公表9.3%) | 未実施 |
出典:社会保険労務士試験の合格者の発表について(令和8年10月1日)、過去10年の推移と合格者の年齢階層別・職業別・男女別割合(社労士・PDF)、行政書士試験研究センター 試験結果の推移
社労士試験の合格率:第58回(令和8年度)は受験者42,510人・合格者3,961人・合格率9.3%(前年5.5%)。最終確認日:2026-10-03。出典:厚生労働省 第58回社会保険労務士試験の合格者発表(社労士試験オフィシャルサイトで公表)。
表から言えることと、言えないことを分けます。
- 言えること:平成29年度から令和7年度までの9年間、同じ年度で並べると、社労士の合格率は行政書士の合格率より毎年低い値でした。令和8年度の社労士は9.3%と、直近10年では最も高い値でした。ただし行政書士の令和8年度試験は11月8日で、まだ結果がありません。
- 言えないこと:合格率の違いだけで、2つの試験の難しさは決まりません。社労士は受験資格があり、受験者の層が違います。出題形式も、科目別の足切りの数や、記述式の有無が異なります。
社労士試験の令和8年度は、選択式・択一式とも昨年度の合格基準を補正しており、合格者数が前年の2,376人から3,961人に増えています。行政書士の合格率の10年推移と合格基準は 行政書士の難易度と合格率、社労士の推移は 社労士の合格率の推移 にあります。
勉強時間について
勉強時間は、試験センターや厚生労働省などの公式資料に目安が載っていません。他サイトの時間数は引用しません。比べられる公式の数字は、出題量です。社労士は選択式8問・択一式70問の計78問(科目は選択式8・択一式7)、行政書士は60問(うち記述式3問)で、社労士は科目ごとに基準点を満たす必要があります。当サイトの学習計画の例は 社労士 6ヶ月合格の学習計画、行政書士 学習スケジュール にあります(いずれも前提を明記した例で、公式の数字ではありません)。
どちらを先に受けるか:事実で分ける
「どっちが先」の答えは、人によって変わります。決める材料を、制度上の事実で整理します。
| 確認すること | 分かること |
|---|---|
| 社労士の受験資格はあるか | 学歴・実務経験・認定された国家試験合格のいずれかが必要。行政書士試験に合格すれば、その合格が受験資格になる(試験センター・社労士法8条6号) |
| 行政書士の受験資格はあるか | 制限はなく、すぐに受験できる |
| 試験日の順番 | 同じ年なら、社労士(8月)の後に行政書士(11月)。令和8年は8月23日と11月8日 |
| 法律の学習経験 | 行政書士は行政法と民法で配点の約6割を占める(令和7年度の当サイト集計は 令和7年度の講評)。社労士は労働・社会保険の各法が中心 |
| 登録の条件 | 社労士は試験合格後に2年以上の事務従事または指定講習の修了が必要。行政書士は条文上、実務経験の年数の要件が書かれていない |
学歴や実務経験の条件を満たさない人が、行政書士試験の合格を社労士試験の受験資格として使うことは、制度上のルートの1つです。ただし、そのために行政書士を受けるべきかは、目的(どちらの業務をしたいか)と学習の負担で決めることです。受験資格の細目は、必ず 社労士試験オフィシャルサイトの受験資格のページ で確認してください(受験前の事前確認の制度もあります)。
ダブルライセンスと、司法書士を含めた3つの比較
2つの資格は、扱う書類の分野が違うため、業務が補い合う場面があります。ただし、2つの資格をそろえたときの収入や有利さを示す公的な統計は、この記事の出典にはありません。「最強」や「おすすめの組み合わせ」といった順位づけは行いません。司法書士を含めた比較は、行政書士から司法書士を目指す場合の科目と難易度、司法書士と社労士の違い を参照してください。
参照一次ソース
- 社会保険労務士法(e-Gov 法令検索)
- 行政書士法(e-Gov 法令検索)
- 社会保険労務士試験オフィシャルサイト 受験資格について
- 社会保険労務士試験オフィシャルサイト 試験の概要
- 社会保険労務士試験オフィシャルサイト 第58回受験案内(PDF)
- 社会保険労務士試験オフィシャルサイト 合格発表(第58回)
- 行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内
- 行政書士試験研究センター 試験結果の推移
当サイトの論点別問題は、過去の出題論点をもとに独自に作成した問題で、公式の試験問題ではありません。
よくある質問
Q行政書士の資格があれば、社労士の仕事もできますか?
原則としてできません。労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成や提出手続の代行は、社会保険労務士法27条により、社労士または社労士法人でない者が報酬を得て業として行うことが禁じられています(ただし書で、他の法律に別段の定めがある場合などは除かれます)。行政書士法1条の3第2項も、他の法律で制限されている業務は行えないと定めています。例外として、行政書士法の一部を改正する法律(昭和55年法律第29号)の附則2項は、施行(昭和55年9月1日)の際に現に行政書士会に入会している行政書士である者は、当分の間、社労士法2条1項1号・2号の事務を業とすることができると定めています(e-Gov 法令検索の行政書士法の附則、2026-10-03 時点)。
Q社労士の資格があれば、行政書士の仕事もできますか?
社労士の資格だけでは、行政書士法1条の3に定める業務(官公署に提出する書類の作成など)を、報酬を得て業として行うことはできません(行政書士法19条)。行政書士法2条の資格者の一覧に、社会保険労務士は入っていません。社労士が労働社会保険諸法令の書類を作る業務は、社労士法に基づく別の業務です。
Q社労士と行政書士のダブルライセンスは、どちらから取るのがよいですか?
制度上の事実は2つです。行政書士試験に合格すると、社労士試験の受験資格(学歴・実務経験の代わり)になります。一方、行政書士試験には受験資格の制限がありません。どちらが向くかは、受験資格の有無、試験日(社労士は8月、行政書士は11月)、法律の学習経験によって変わります。個別の判断は、ご自身の状況で比べてください。
Q社労士と行政書士は、年収はどちらが高いですか?
本記事では比較しません。本記事が出典とする試験センターの資料や法令に、資格別の年収を示す記載がなく(2026-10-03 時点)、他サイトの数字を使うことはしないためです。
Q社労士試験に合格すれば、すぐに社労士を名乗れますか?
いいえ。厚生労働省の合格発表では、合格者のうち、労働社会保険諸法令の事務に2年以上従事した者または厚生労働大臣が指定した講習を修了した者が、社会保険労務士名簿に登録することで社会保険労務士になれるとされています。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月3日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

