行政書士の資格から司法試験を目指せるかを、司法試験法4条・5条と法務省のQ&Aで確認。予備試験の試験構成、行政書士試験との科目の重なり、令和7年度の合格人数、公務員試験(国家一般職・総合職)の公表数値との比較軸を整理します。
目次
結論:行政書士の資格だけでは、司法試験は受けられません。司法試験法第4条第1項が定める受験資格は、法科大学院の課程の修了と、司法試験予備試験の合格の2つです。予備試験は、法務省のQ&Aで「受験資格及び受験期間の制限はありません」とされており、行政書士から目指すことはできます。ただし、令和7年度の予備試験は、短答式試験の受験者12,432人に対して最終合格者が452人でした。
この記事は「行政書士 司法試験」「行政書士から予備試験」「行政書士 公務員 試験 どっちが難しい」という検索の疑問を、条文と、国の機関が公表した数字だけで整理します。体験談や学習時間の目安は扱いません。他社の講座・予備校の評価やおすすめも書きません。
行政書士から司法試験・予備試験を目指せるか:3つの試験を表で比べる
最初に、3つの試験の入口と仕組みを並べます。人数は令和7年度の公表値です。
| 行政書士試験 | 司法試験予備試験 | 司法試験 | |
|---|---|---|---|
| 受験資格 | 年齢・学歴・国籍に関係なく受験できる(センターの案内) | 受験資格及び受験期間の制限はない(法務省Q&A) | 法科大学院の課程を修了した者、または予備試験に合格した者(司法試験法4条1項) |
| 試験の形式 | 択一式と記述式(40字程度)。法令等46題・基礎知識14題 | 短答式→論文式→口述の順に進む(司法試験法5条) | 短答式と論文式(司法試験法2条) |
| 令和7年度の人数 | 受験者50,163人・合格者7,292人 | 短答式の受験者12,432人・最終合格者452人 | 受験者3,837人・合格者1,581人 |
| 行政書士の資格との関係 | 資格そのもの | 免除の制度はない(法務省Q&A) | 受験資格に含まれない |
予備試験の受験資格:受験資格及び受験期間の制限はありません。最終確認日:2026-10-04。出典:法務省 令和8年司法試験予備試験に関するQ&A。
「司法試験を目指す」とは、実際には予備試験に合格するか、法科大学院の課程を修了するかのどちらかを経るという意味になります。この記事は、行政書士から入りやすい予備試験の側を中心に確認します。法科大学院の側の制度の細目は扱いません。
予備試験の受験資格と試験構成:短答式・論文式・口述の3段階
司法試験法第5条第1項によると、予備試験は、法科大学院の課程を修了した者と同等の学識及びその応用能力、法律に関する実務の基礎的素養があるかを判定する試験です。方法は、短答式と論文式の筆記、そして口述です。
| 段階 | 試験科目(司法試験法5条) | 受けられる人 |
|---|---|---|
| 短答式 | 憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・一般教養科目(第2項) | 出願した人 |
| 論文式 | 上の7つの法律科目、選択科目1つ、法律実務基礎科目(第3項) | 短答式に合格した人 |
| 口述 | 法律実務基礎科目(第4項) | 筆記試験に合格した人 |
法務省のQ&Aには、次のことも書かれています。
- 試験科目の免除の制度はない
- 前年に論文式試験まで合格していても、筆記試験の免除はなく、短答式試験からの受験になる
- 受験資格及び受験期間の制限はない
予備試験に合格すると、司法試験法第4条第1項第2号により、合格の発表の日後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間、司法試験を受けられます。予備試験の合格は、永続する資格ではなく、使える期間が決まっています。
なお、行政書士と司法書士の違いや、行政書士から司法書士を目指す場合の科目の重なりは、行政書士から司法書士を目指す|科目の重なり・難易度・司法試験との違いに書いています。
科目の重なり:憲法・行政法・民法・商法は共通の名前で出題される
行政書士試験(令和8年度の試験案内)と、予備試験の科目を並べると、次のようになります。
| 科目 | 行政書士試験 | 予備試験 短答式 | 予備試験 論文式 |
|---|---|---|---|
| 憲法 | 出題される | 出題される | 出題される |
| 行政法 | 出題される(行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法・地方自治法を中心) | 出題される | 出題される |
| 民法 | 出題される | 出題される | 出題される |
| 商法 | 出題される(令和7年度の問題では会社法の規定を問う問題を含む) | 出題される | 出題される |
| 民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法 | 試験案内の出題範囲に名前がない | 出題される | 出題される |
| 一般知識など | 基礎知識として出題される | 一般教養科目として出題される | なし |
| 選択科目・法律実務基礎科目 | なし | なし | 出題される |
科目名が共通でも、出題の形式や水準が同じとは限りません。 行政書士試験は択一式と、40字程度の記述式です。予備試験は短答式・論文式・口述で、論文式は選択科目や法律実務基礎科目まで含みます。両試験の水準の比較は、この記事では扱いません。
科目名が共通の分野を、当サイトの自作問題で確かめることができます。すべて過去の出題論点をもとにした当サイトの自作問題で、実際の試験問題の転載ではありません。
- 司法権・違憲審査制の問題(憲法 問9)
- 取消訴訟の対象となる処分(処分性)の問題(行政法 問7)
- 取消訴訟の原告適格の問題(行政法 問8)
- 取消訴訟の出訴期間の問題(行政法 問9)
- 詐欺・強迫による意思表示の問題(民法 問6)
- 物権変動・対抗要件(二重売買)の問題(民法 問13)
- 株式会社の設立方法の問題(会社法 問9)
令和7年度の人数を並べて見る:合格率の「分母」が試験ごとに違う
次の表は、3つの試験の令和7年度の公表人数と、そこから計算した割合です。割合は、分母が試験ごとに違うため、横に並べて難しさの順位をつけるものではありません。
| 試験 | 分母 | 分子 | 割合(算術値) |
|---|---|---|---|
| 行政書士試験(令和7年度) | 受験者 50,163人 | 合格者 7,292人 | 14.54% |
| 予備試験 短答式 | 短答式の受験者 12,432人 | 短答式の合格者 2,744人 | 22.07% |
| 予備試験 最終 | 短答式の受験者 12,432人 | 最終合格者 452人 | 3.64% |
| 予備試験 最終 | 出願者 15,764人 | 最終合格者 452人 | 2.87% |
| 司法試験(令和7年) | 受験者 3,837人 | 合格者 1,581人 | 41.20% |
注意する点は次の3つです。
- 予備試験の割合は、分母を受験者にするか出願者にするかで変わります。 令和7年度の短答式試験の受験率は78.9%(出願者15,764人のうち12,432人)でした
- 司法試験の受験者は、すでに法科大学院の修了か予備試験の合格という資格を得た人だけです(司法試験法4条1項)。行政書士試験のように、誰でも受けられる試験とは母集団が違います
- 予備試験の論文式・口述の合格者数は、法務省の参考情報の表(短答合格者2,744人、論文合格者457人、最終合格者452人)で確認できます。口述試験の結果では、受験者457人のうち合格者が452人でした
令和8年司法試験予備試験の出願者数:15,843人(令和8年6月10日現在・前年15,764人)。最終確認日:2026-10-04。出典:法務省 令和8年司法試験予備試験の出願状況。
令和8年度の予備試験の最終結果は、この記事では数字を載せていません。
公務員試験との比較軸:国家一般職・総合職の公表数値
「行政書士と公務員試験はどちらが難しいか」は、よく比べられる疑問です。ここでは、人事院が公表している2025年度国家公務員採用試験の実施状況から、大卒程度の2つの試験を取り上げます。
| 試験(2025年度・大卒程度) | 申込者数 | 第1次試験の受験者数 | 最終合格者数 | 倍率(申込者÷最終合格者) | 倍率(受験者÷最終合格者) |
|---|---|---|---|---|---|
| 国家公務員採用一般職試験 | 25,437人 | 18,406人 | 8,815人 | 2.9 | 2.1 |
| 国家公務員採用総合職試験(「教養」区分を除く) | 10,740人 | 8,953人 | 1,153人 | 9.3 | 7.8 |
倍率を逆にして、受験者に対する最終合格者の割合に直すと、一般職は47.89%(8,815÷18,406)、総合職(「教養」区分を除く)は12.88%(1,153÷8,953)です。これらも算術値です。
この表と、行政書士試験の合格率は、そのまま比べられません。 理由は次のとおりです。
- 行政書士試験の合格率は、受験者に対する合格者の割合です。人事院の倍率は、最終合格者を分母にした倍率で、申込者を使う列と、第1次試験の受験者を使う列に分かれています
- 人事院の表の受験者数は、各次試験の最後の試験種目を受験した人数と注記されています
- 表には最終合格者数が載っており、採用された人数は載っていません
- 公務員試験は、試験の種類・区分ごとに内容が違います。この記事では試験の中身(科目や面接)は扱いません
比べるなら、順位ではなく、何を比べたいのかを決めます。
| 比べたいこと | 見るもの |
|---|---|
| 受験できる条件 | 行政書士試験は年齢・学歴・国籍に関係なく受験できる(センターの案内)。公務員試験の受験資格は人事院の案内で確認 |
| 試験に合格した後の流れ | 行政書士は登録を受けて初めて業務ができる(行政書士法第6条)。公務員試験は、最終合格のあとの採用の手続きを人事院や各機関の案内で確認 |
| 数字の定義 | 合格率か倍率か、分母は受験者か申込者か |
目指す前に確かめること:行政書士の学習は、予備試験にどうつながるか
行政書士試験の勉強が予備試験の学習に直接つながる、とは言い切れません。科目名の共通点は確認できますが、水準の比較は公的な資料に出ていないためです。目指す前に、次の3点を自分で確かめることをおすすめします。
- 試験の段階と免除:予備試験には短答式・論文式・口述の3段階があり、免除の制度はありません。前年に論文式まで合格しても、短答式から受け直しです
- 答案の形式:行政書士試験の記述式は40字程度です。予備試験の論文式の形式は、法務省が公表している過去の問題と出題の趣旨で確認してください
- 受験できる期間:予備試験に合格しても、司法試験を受けられるのは、合格の発表の日後の最初の4月1日から5年を経過するまでです
迷っている段階では、まず問題を数問解いて、法律の勉強が自分に合うかを確かめる方法もあります。
まとめ:資格の入口、数字の定義、順位をつけない
- 行政書士の資格だけでは、司法試験は受けられません。受験資格は、法科大学院の課程修了か予備試験の合格です(司法試験法4条1項)
- 予備試験には受験資格及び受験期間の制限がなく、科目の免除もありません(法務省Q&A)。令和7年度は、短答式の受験者12,432人に対して最終合格者452人でした
- 憲法・行政法・民法・商法は、行政書士試験と予備試験で共通の科目名ですが、水準を比べた公的資料は、この記事の出典にはありません
- 合格率と倍率は、分母と分子の定義が違います。この記事では、行政書士・予備試験・司法試験・公務員試験の難しさの順位はつけていません
参照した一次ソース
よくある質問
Q行政書士の資格があれば、司法試験を受けられますか?
行政書士の資格だけでは受けられません。司法試験法第4条第1項は、司法試験を受けられる人を、法科大学院の課程を修了した者と、司法試験予備試験に合格した者(それぞれ、決められた期間内)と定めています。行政書士の資格や行政書士試験の合格は、この条文の受験資格に含まれていません。第2項に法科大学院在学中の一定の者の特則がありますが、こちらにも行政書士は含まれません。
Q予備試験は、誰でも受けられますか?
法務省の「令和8年司法試験予備試験に関するQ&A」では、受験資格及び受験期間の制限はない、とされています。年齢・学歴・資格の有無を問われない、という意味です。ただし、令和9年以降の取扱いは、受験する年の法務省の受験案内で確かめてください。
Q行政書士試験に合格していれば、予備試験の科目が免除されますか?
免除されません。法務省のQ&Aは、予備試験に試験科目の免除の制度はない、と答えています。前年に論文式試験まで合格していても筆記試験の免除はなく、短答式試験から受け直すことになります。
Q行政書士試験と公務員試験は、どちらが難しいですか?
この記事では順位をつけません。行政書士試験の合格率(受験者に対する合格者)と、人事院が公表する国家公務員採用試験の倍率(申込者または第1次試験受験者に対する最終合格者)は、分母と分子の定義が違うためです。試験の種類・区分によって内容も違います。数字は、定義つきで並べた表で確認できます。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

