問題
株式会社の代表取締役および代表権限に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
代表取締役の権限に関する問題です。エが正しい。会社法349条4項は、代表取締役は「株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する」と定め、同5項は「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」と定めています。定款や取締役会決議で権限を制限しても、善意の第三者には対抗できず、善意・無過失の第三者にももちろん対抗できません(エ正しい)。アは「善意の第三者にも対抗できる」が誤り。イは誤り:唯一の代表取締役が任期満了で退任しても、後任の就任まで代表取締役の権利義務が残ります(351条1項)。ウは誤り:「副社長」は354条が明記する名称です。オは誤り:代表取締役の解職は取締役会の職務です(362条2項3号)。
エが正答の根拠(349条4項・5項の構造)
349条の重要な二段構造:①4項:代表取締役は「業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限」(包括的代表権)を持つ。②5項:「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」。条文が保護するのは「善意の第三者」です。善意・無過失の第三者は当然に善意の第三者に含まれるので、その者に制限を対抗できないとするエは条文どおりで正しい記述です。
各選択肢の誤りの核心
- ア: 「その制限は善意の第三者にも対抗することができる」が誤り。349条5項で対抗不可。
- イ: 351条1項は「代表取締役が欠けた場合…任期の満了又は辞任により退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役…が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を有する」と定めます。唯一の代表取締役が退任すれば「代表取締役が欠けた場合」に当たるので、権利義務を有しないとするイは誤り。会社が代表者不在になることを防ぐ制度です。
- ウ: 354条は「代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う」と定めます。「副社長」は条文が明記する名称なので、会社は責任を負わないとするウは誤り。
- オ: 362条2項3号は取締役会の職務として「代表取締役の選定及び解職」を挙げています。取締役会決議で解職できないとするオは誤り。
【理論的背景:包括的代表権と取引安全の保護】
代表取締役の包括的代表権(349条4項)は、会社との取引の安全を保護するための制度です。取引の相手方が会社の内部規程(業務分掌規程・稟議規程等)をすべて調査することは不可能であり、そのような調査負担を課すと商取引の円滑が著しく阻害されます。そこで会社法は代表取締役に「株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限」を与え、内部的制限の外部効を否定(349条5項)することで取引安全を確保しています。同じ考え方は、表見支配人(会社法13条・商法24条)や表見代表取締役(会社法354条)にも見られ、外観を作った会社側の事情を重く見て、取引の相手方を保護するという法政策で一貫しています。
【実務・条文構造:表見代表取締役(354条)の要件と効果】
354条は「株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う」と定めます。要件を分解すると、①会社が代表取締役以外の取締役に名称を付したこと(名称の付与)、②その名称が「社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称」であること、③相手方が善意の第三者であること、の3つです。効果は、会社がその取締役の行為について責任を負うことです。条文が名指ししている名称は「社長」「副社長」の2つで、それ以外の肩書は「代表する権限を有するものと認められる名称」に当たるかどうかで判断されます。
【試験での位置づけ】
代表取締役に関する頻出ポイントは次の四つです。①349条4項・5項:包括的代表権と、権限の制限を善意の第三者に対抗できないこと。②351条1項:代表取締役が欠けたとき、任期満了・辞任で退任した代表取締役は後任の就任まで権利義務を持ち続けること(取締役全般の欠員については346条1項が同じ仕組みを定める)。③354条:名称付与を要件とする表見代表取締役。④362条2項3号・3項:取締役会設置会社では、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定し、解職も取締役会の職務であること。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。「善意の第三者にも対抗できる」は349条5項に正面から反します。内部的な制限の典型例は「代表取締役は一定額以上の契約を単独で締結できない」といった社内規程です。この規程に反して締結した契約でも、規程を知らない相手方には制限を主張できません。
- イ: 誤り。351条1項により、唯一の代表取締役が任期満了で退任した場合は「代表取締役が欠けた場合」に当たり、新たに選定された代表取締役が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を有します。必要があれば、利害関係人の申立てにより裁判所が一時代表取締役の職務を行うべき者を選任することもできます(351条2項)。
- ウ: 誤り。「副社長」は354条が明記する名称です。会社がこの名称を付した以上、善意の第三者に対して責任を負います。
- エ: 正しい。349条5項の「善意の第三者」には、善意・無過失の第三者も当然含まれます。
- オ: 誤り。362条2項は取締役会の職務として「一 取締役会設置会社の業務執行の決定」「二 取締役の職務の執行の監督」「三 代表取締役の選定及び解職」を挙げ、同条3項は「取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない」と定めています。
【根拠条文】
会社法 第349条第4項(代表取締役の包括的代表権)・第5項(権限制限の対抗不可)
会社法 第351条第1項・第2項(代表取締役に欠員を生じた場合の措置)
会社法 第354条(表見代表取締役)
会社法 第362条第2項第3号・第3項(代表取締役の選定及び解職)
【補足】
349条4項・5項の「代表権制限→善意第三者に対抗不可」と354条「表見代表取締役→名称付与が要件」は別制度。それぞれの保護要件の違いを整理する。
- 会社法第349条・第13条・第354条・第351条・第362条e-Govで原文を読む
- 商法第24条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第349条第4項・第5項(代表取締役の権限)・第351条第1項(代表取締役に欠員を生じた場合の措置)・第354条(表見代表取締役)・第362条第2項第3号(代表取締役の選定及び解職) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

