行政書士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

行政書士 商法・会社法 問41|剰余金の配当・分配規制

問題

行政書士 | 商法・会社法

株式会社の剰余金の配当に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

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答え合わせ

正解は イ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

剰余金の配当に関する問題です。イが正しい。剰余金の配当で株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額は、分配可能額を超えてはなりません(461条1項8号)。これに違反した配当で金銭等を受け取った株主は、会社に対し、受け取った金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負います(462条1項)。これは会社法が直接定めた支払義務です。アは誤り:配当はその都度の株主総会の決議で決めるもので(454条1項)、定時総会に限られません。ウは誤り:取締役会で決められるのは定款の定めがある場合に限られます(459条1項)。エは誤り:配当のたびに準備金を計上する義務があります(445条4項)。オは誤り:分配可能額は剰余金の額から自己株式の帳簿価額などを差し引いて計算します(461条2項)。

イが正答の根拠(461条・462条の分配規制)

461条1項は、剰余金の配当(8号)などにより「株主に対して交付する金銭等…の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない」と定めます。これに違反した場合、462条1項により、金銭等の交付を受けた者と、その行為に関する職務を行った業務執行者などは、会社に対し、連帯して「当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う」とされます。イはこの条文どおりで正しい記述です。

各選択肢の誤りの核心

  • ア: 454条1項は「剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって」配当財産の種類・帳簿価額の総額などを定めると規定しており、定時総会に限定していません。また取締役会設置会社は、一事業年度の途中で1回に限り取締役会の決議で金銭の配当(中間配当)をする旨を定款で定めることができます(454条5項)。
  • ウ: 459条1項:定款の定めがある場合に限り、剰余金の配当に関する事項を取締役会が定めることができます。しかもこの定款の定めを置けるのは、会計監査人設置会社のうち、取締役(監査等委員会設置会社では監査等委員である取締役以外の取締役)の任期が1年を超えるもの、および監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除いた会社に限られます。「取締役会設置会社なら取締役会決議でよい」とするウは誤りです。
  • エ: 445条4項は「剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金…として計上しなければならない」と定めています。「準備金を積み立てる義務はない」とするエは誤りです。
  • オ: 461条2項は、分配可能額を「剰余金の額」などの合計額から「自己株式の帳簿価額」「最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額」などを差し引いた額と定めています。剰余金の額(446条)も、最終事業年度の末日後の変動を加減して計算します。「純資産額そのもの」とするオは誤りです。

【理論的背景:債権者保護のための剰余金分配規制の意義】

剰余金の配当に対する規制(分配規制)は、株式会社の有限責任性に由来します。会社法104条は「株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする」と定めており、会社は事実上「株主から拠出された資本を外部に流出させる可能性」を常に持ちます。これが過剰に行われると会社債権者が害されます。そこで会社法は「分配可能額」という上限を設け、その範囲内でのみ株主への財産的還元(配当・自己株式取得等)を許容しています。この「コーポレート・ファイナンスと債権者保護の調整」が計算分野の核心テーマです。

【実務・条文構造:分配可能額の計算の骨格】

分配可能額(461条2項)は概略以下の算式で計算されます。

分配可能額 = 剰余金の額(446条)+臨時計算書類による利益等 -(自己株式の帳簿価額+最終事業年度の末日後に処分した自己株式の対価の額+臨時計算書類による損失等+法務省令で定める額)(461条2項)

剰余金の額(446条)の骨格:最終事業年度の末日における資産の額と自己株式の帳簿価額の合計額から、負債の額、資本金及び準備金の額の合計額などを差し引き、さらに最終事業年度の末日後の自己株式の処分・資本金や準備金の額の減少・剰余金の配当などを加減して計算します。

445条4項の準備金計上義務:剰余金の配当をする場合には、法務省令で定めるところにより、配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金または利益準備金として計上しなければなりません。計上の具体的な方法は法務省令に委ねられています。

【試験での位置づけ:違法配当の効果と責任の連鎖】

462条の違法配当の効果は試験頻出です。①金銭等の交付を受けた株主は、交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を会社に支払う義務を負います(462条1項)。②その行為に関する職務を行った業務執行者や、総会議案提案取締役・取締役会議案提案取締役(462条1項各号)も、株主と連帯して同じ額の支払義務を負います。③ただし業務執行者と各号に定める者は、「その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない」(462条2項)。つまり証明責任が転換された過失責任です。④業務執行者等の義務は原則として免除できず、例外は、行為時の分配可能額を限度とする免除について総株主の同意がある場合だけです(462条3項)。

463条は関連規定で、1項は分配可能額を超えることについて善意の株主は、支払をした業務執行者等からの求償の請求に応ずる義務を負わないと定め、2項は会社の債権者が、義務を負う株主に対して直接、交付を受けた金銭等の帳簿価額(債権額が限度)に相当する金銭を支払わせることができると定めています。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。454条1項により配当は「その都度」株主総会の決議で決めるもので、時期は定時総会に限られません。取締役会設置会社では定款の定めにより年1回の中間配当を取締役会決議で行えます(454条5項)。
  • イ: 正しい。461条1項8号の分配規制と、462条1項の支払義務をそのまま述べています。
  • ウ: 誤り。459条1項の定款の定めを置けるのは、会計監査人設置会社のうち、取締役(監査等委員会設置会社では監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日である会社と、監査役設置会社であって監査役会設置会社でない会社を除いたものです。さらにこの定款の定めは、最終事業年度に係る計算書類が「法務省令で定める要件に該当する場合に限り、その効力を有する」とされています(459条2項)。これらを満たせば取締役会決議で配当や自己株式の取得の事項を定めることができ、さらに株主総会では定めない旨を定款で定めることもできます(460条1項)。
  • エ: 誤り。445条4項の準備金計上義務があるため、「積み立てる義務はない」とは言えません。
  • オ: 誤り。自己株式を保有していればその帳簿価額は分配可能額から差し引かれ(461条2項3号)、最終事業年度の末日後の自己株式の処分や剰余金の配当も剰余金の額の計算に反映されます(446条)。

【根拠条文】

会社法 第445条第4項(準備金の計上義務)

会社法 第446条(剰余金の額)

会社法 第453条・第454条第1項・第5項(剰余金の配当・中間配当)

会社法 第459条第1項・第2項(剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定め)

会社法 第461条第1項・第2項(配当等の制限・分配可能額)

会社法 第462条第1項〜第3項(剰余金の配当等に関する責任)

会社法 第463条(株主に対する求償権の制限等)

【補足】

分配可能額の上限規制(461条)と462条の支払義務がセット。業務執行者等は注意を怠らなかったことを証明すれば義務を負わない(462条2項)。445条4項の準備金計上義務(減少する剰余金の額の10分の1)も押さえる。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第453条〜第461条(剰余金の配当・分配規制)・第462条(剰余金の配当等に関する責任)・第445条第4項(準備金の計上)・第446条(剰余金の額) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。