行政書士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

行政書士 民法 問45|同時履行の抗弁・危険負担

問題

行政書士 | 民法

AはBとの間で甲土地の売買契約を締結した(代金500万円・引渡日2026年7月1日)。同時履行の抗弁権および危険負担に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか(現行民法に基づいて答えること)。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

現行民法(2020年改正後)の危険負担制度では、双方の帰責事由なく目的物が滅失した場合、債権者(B)は「反対給付の履行を拒絶することができる」(536条1項)と規定されます。これは拒絶権(選択権)であり、当然に代金支払い義務が消滅するわけではありません。よってエ「当然に免れる」は誤りです。ウは「履行を拒絶することができる」として正しい。旧法(旧534条の債権者主義)では特定物の場合に債権者が危険を負担して代金を支払う義務を負っていましたが、現行法では拒絶権として整理されました。ア・イ(同時履行の抗弁)、オ(相手方の債務が弁済期にないときは行使不可・533条ただし書)は各々正しい記述です。

エが誤りの根拠は現行民法536条1項の文言です。同条は「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」と規定します。「拒むことができる(拒絶権の付与)」であり、「当然に免れる(代金支払い義務の自動消滅)」ではありません。Bが代金支払いを免れたいなら、拒絶権を行使するか、または解除(542条1項1号・全部不能の無催告解除)をする必要があります。ウはこの拒絶権を正しく表現しており正しい。アは533条の同時履行の抗弁権として正しい(売買契約の目的物引渡と代金支払いは同時履行の関係)。イは同時履行の抗弁権が存在する場合でも相手方は給付を訴求できるが、裁判所は引換給付判決(「Aの甲土地引渡しと引換えにBは代金を支払え」)を下すという民事訴訟実務として確立した扱いで正しい。オについて、533条ただし書は「相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない」と規定しており、相手方の債務が弁済期にない間は同時履行の抗弁権を行使できないので、正しい。

【理論的背景】

2020年改正前の民法(旧法)では、危険負担について「特定物の売買では、目的物の支配(占有)移転前であっても、特定した時点から買主(債権者)がリスクを負う(旧534条の債権者主義)」という規律がありました。これは特定物の引渡前に滅失した場合でも買主が代金を支払わなければならないという極めて不合理な結論をもたらし、批判が強い規定でした。現行法はこれを廃止し、536条1項として「双方帰責事由なき不能→債権者の反対給付履行拒絶権(選択権)」という形に変更しました。「拒絶権(選択権)」という構成は、Bが代金支払いを望めば引き続き義務を負い(AはBに代金を請求できるが給付がない状態)、拒絶するか解除すれば代金支払い義務を免れるという弾力的な制度設計です。

【条文構造の精密な理解】

  • 533条: 同時履行の抗弁権→双務契約の当事者は相手方が履行または提供をするまで自己の債務の履行を拒絶できる(同時履行関係にある債務の典型は売買の代金と目的物引渡)。ただし相手方の債務が弁済期にないときは拒絶できない(ただし書・オの根拠)。
  • 536条1項: 当事者双方帰責事由なき不能→債権者は反対給付の履行を拒絶できる(拒絶権・エが誤りの根拠)。
  • 536条2項: 債権者帰責事由による不能→債権者は反対給付の履行を拒むことができない(債権者が代金を支払うべき義務を負い続ける)。
  • 542条1項1号: 全部履行不能の場合の無催告解除。Bが代金支払い義務を完全に消滅させたいなら、拒絶権行使だけでなく解除をすることが確実。

旧534条(特定物の債権者主義)は削除済み。「特定物の売買で目的物滅失でも買主が代金を支払う義務がある」という旧論点は現行法では誤り(旧論点ブラックリスト)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における本論点の典型的な出題パターンは、(a)危険負担の現行規律(拒絶権であり義務の自動消滅ではない・エのような誤りを問う問題)、(b)旧534条(債権者主義)の廃止の確認、(c)同時履行の抗弁権の要件と効果(533条)、(d)引換給付判決の実務(イのような記述)の4点です。特に(a)の「拒絶権 vs 自動消滅」の区別は改正前後で制度の性格が変わっているため、現行法ベースでの正確な理解が重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。533条の同時履行の抗弁権。双務契約(売買)において、一方が履行提供するまで他方は自己の履行を拒絶できる(「同時に」の担保)。代金先払いの合意がない限り、甲土地引渡と代金支払いは同時履行関係にある。
  • イ: 正しい。同時履行の抗弁権があっても訴訟提起は妨げられず、被告が抗弁権を主張した場合に裁判所は引換給付判決(AがBに代金を訴求した本問では「Aの甲土地引渡しと引換えにBは代金を支払え」)を下す。代金を支払うのはB、引き渡すのはAであり、当事者を逆にした判決主文にはならない。これは民事訴訟の確立した実務(533条の訴訟法的効果)。
  • ウ: 正しい。536条1項の「反対給付の履行を拒む(拒絶権)」。Bは代金支払いを拒絶することを選択できる(義務が自動消滅するわけではない)。
  • エ: 誤り(正答)。「当然に免れる」が誤り。536条1項は「拒むことができる」(拒絶権の付与)。Bが拒絶の意思表示をしなければ、代金支払い義務は依然として存在する。代金支払い義務を完全に消滅させるには解除(542条1項1号)が必要。
  • オ: 正しい。533条ただし書「ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない」。相手方の債務の弁済期が到来していない場合には、自己の債務の履行を拒むことはできない。代金先払いの特約がある場合の買主などが典型。

【根拠条文】

民法 第533条(同時履行の抗弁権)

民法 第536条第1項(危険負担・双方帰責なき不能の場合の拒絶権)

民法 第536条第2項(債権者帰責事由による不能・反対給付請求権の維持)

民法 第542条第1項第1号(全部不能の無催告解除)

【参照判例】

(同時履行の抗弁が認められる場合に引換給付判決を下す扱いは確立した民事訴訟実務。本問は条文・実務問題として整理)

【補足】

旧534条(特定物の債権者主義)は廃止。「特定物の売買において目的物滅失前から買主が危険を負担する」という旧論点は現行法では誤り。危険負担は「拒絶権(選択権)」であり「義務の自動消滅」ではない点が最重要。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第533条・第536条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。