保育士試験のテキスト・参考書を、書名ではなく公式の基準で選ぶためのチェックリストです。協議会の出題範囲(9科目)への対応、筆記試験の法令・指針の基準日と版の年、保育所保育指針・こども家庭庁・こども基本法・児童福祉法の改正を反映しているか、解説の深さと演習問題の有無を確認します。「テキストはいらない?」にも答えます。
目次
結論:保育士試験のテキスト・参考書は、書名で選ぶより、①出題範囲の9科目に対応しているか、②法令・指針の基準日と版の年が合っているか、③近年の改正を反映しているか、④解説の深さと演習問題があるか、の4つで確かめると選びやすくなります。協議会は教材を案内していないので、選ぶ基準は自分で持つ必要があります。この記事は、書店やサイトで手に取る前後に使えるチェックリストです。特定の教材は紹介しません。
協議会は、テキストを案内していません
保育士試験を実施している全国保育士養成協議会(以下、協議会)のQ&Aに、受験対策の講習会や参考書の入手方法についての問いがあります。回答は次のとおりです。
協議会の教材案内:保育士試験Q&Aに、「保育士試験事務センターでは、講習会の開催や参考書等入手方法の案内は、一切行っておりません。」との回答がある。最終確認日:2026-10-12。出典:全国保育士養成協議会 保育士試験Q&A。
つまり、どのテキストが試験に合っているかを、公式が示してくれるわけではありません。選ぶ側が、公式に示されている基準(出題範囲・法令の基準日)と照らして確かめることになります。以下の4つのチェックを、順に使ってください。
| チェック | 見るもの | 公式の基準 |
|---|---|---|
| 1 | 9科目をすべて扱っているか | 協議会の保育士試験出題範囲 |
| 2 | 版の年が、受ける回の基準日に合っているか | 協議会の筆記試験概要 |
| 3 | 近年の変更を反映しているか | こども家庭庁・e-Gov法令検索 |
| 4 | 解説の深さと、演習問題の有無 | 協議会の過去の試験問題のページ |
チェック1:出題範囲の9科目をすべて扱っているか
協議会は、「保育士試験出題範囲」をPDFで公開しています。筆記試験の科目は、保育原理、教育原理、社会的養護、子ども家庭福祉、社会福祉、保育の心理学、子どもの保健、子どもの食と栄養、保育実習理論の9つで、それぞれに出題の基本方針と出題範囲が書かれています。
出題範囲は、国の通知(平成15年12月9日付けの通知の別紙)に定められた養成課程の教科目の名前で示されています。テキストの目次に、その教科目の内容が入っているかを見ます。
科目ごとの出題範囲に含まれる教科目の例:保育原理は「保育原理」「乳児保育Ⅰ」「乳児保育Ⅱ」「障害児保育」「子育て支援」。子ども家庭福祉は「子ども家庭福祉」「子ども家庭支援論」。保育の心理学は「保育の心理学」「子ども家庭支援の心理学」「子どもの理解と援助」。子どもの保健は「子どもの保健」「子どもの健康と安全」。教育原理、社会福祉、子どもの食と栄養は、それぞれ同名の教科目。最終確認日:2026-10-12。出典:全国保育士養成協議会 保育士試験出題範囲(PDF)。
確認のしかたは3つです。
- 目次に9科目すべてがあるか。科目別に分冊されているテキストは、9科目分がそろっているかを数える
- 1科目の中で、上の表のような関連する教科目の内容まで入っているか(例:保育原理に、乳児保育や障害児保育、子育て支援の内容があるか)
- 保育実習理論の範囲に含まれる、保育の計画と評価、保育者論などが入っているか。実技試験(音楽・造形・言語)は別の試験なので、実技の対策が目的なら、実技の解説があるかも別に見る
出題範囲には、出題範囲の改正に伴う経過措置として、当分の間、改正前の出題範囲の内容を理解していることを前提とする、という留意事項が、保育原理、子ども家庭福祉、社会福祉、子どもの保健にあります。改正前の範囲の内容として、保育原理は保育相談支援、子ども家庭福祉は家庭支援論、社会福祉は相談援助が示されています。新しい範囲だけに絞ったテキストは、この部分が薄くないかを見ておくと安心です。
なお、このPDFには、いつ時点の版かを示す日付の記載がありません(2026-10-12 時点)。最新の範囲は、協議会のホームページで確認してください。
チェック2:法令・指針の基準日と、テキストの版の年
筆記試験の法令・保育所保育指針等がいつの時点のものか、協議会は回ごとに示しています。
令和8年後期の筆記試験の法令・指針の基準日:「筆記試験における法令・保育所保育指針等については、令和8年4月1日以前に施行されたものに基づいて出題します。」最終確認日:2026-10-12。出典:全国保育士養成協議会 筆記試験(後期)概要。
ここで押さえたいのは「施行されたもの」という点です。法律は、成立・公布の日と、実際に効力を持つ施行の日が違います。基準日より後に施行される内容は、その回の出題の基準に入らない、と読めます。
テキストの版の年は、次のように確かめます。
- 奥付などの発行年・改訂年を見る。「第○版」「○年度版」と書かれていても、どの時点の法令に合わせたかは別に書かれていることがある
- まえがきや帯、補足の案内に、「令和○年○月現在の法令に基づく」といった基準時点の記載があるかを見る。記載がなければ、基準日と合うか判断できない
- 受ける回の基準日と比べる。基準日より前の時点に合わせた版は、その後に施行された改正を載せていない可能性がある
- 基準日の後の情報(施行がまだの内容)が載っている場合は、それが試験の出題の対象ではない点に注意する
基準日は、回によって変わります。申し込む前に、受ける回の協議会の案内で、基準日を読んでください。
チェック3:近年の変更を反映しているか
基準日が合っていても、版が古ければ、近年の制度の変更が載っていないことがあります。公式サイトで確かめられる変更を、4つ挙げます。テキストに該当する記述があるか、見てください。
| 変更 | 公式サイトで確かめられること | 反映の確かめ方 |
|---|---|---|
| 保育所保育指針(平成29年告示) | 平成29年厚生労働省告示第117号。平成30年4月1日適用 | 指針の章立て・5領域の記述が現行のものか。詳しくは保育所保育指針とは |
| こども家庭庁の発足、こども基本法 | こども家庭庁設置法とこども基本法は、ともに令和5年4月1日施行 | 「厚生労働省」の所管と書かれていないか。こども基本法の記述があるか |
| 児童福祉法の改正(令和4年法律第66号) | e-Govの改正履歴では、施行日が令和4年6月15日、令和4年9月15日、令和5年4月1日、令和6年4月1日、令和7年6月1日に分かれている | 子ども家庭福祉・社会的養護の制度の記述が、現行の児童福祉法と合っているか |
| 地域限定保育士制度の一般制度化 | 令和7年10月1日施行の改正児童福祉法で、国家戦略特別区域法の特例から一般制度になった | 地域限定保育士の記述が、児童福祉法の制度として書かれているか。詳しくは地域限定保育士試験 |
保育所保育指針の現行の版:保育所保育指針は、平成29年厚生労働省告示第117号。平成29年3月31日付けの通知で公示され、平成30年4月1日から適用。最終確認日:2026-10-12。出典:こども家庭庁 保育所保育指針の公示について(通知)・こども家庭庁 保育。
こども家庭庁とこども基本法の施行日:こども家庭庁設置法(令和4年法律第75号)の附則は、令和5年4月1日から施行すると定める。こども基本法は、令和4年6月に成立し、令和5年4月に施行された。最終確認日:2026-10-12。出典:e-Gov法令検索 こども家庭庁設置法・こども家庭庁 こども基本法。
児童福祉法の改正と施行日:e-Gov法令検索の児童福祉法の改正履歴に、児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の施行日として、2022-06-15、2022-09-15、2023-04-01、2024-04-01、2025-06-01が並ぶ。児童福祉法等の一部を改正する法律(令和7年法律第29号)の施行日として、2025-04-25、2025-10-01、2025-10-20、2026-04-01、2026-10-01が並ぶ。こども家庭庁は、この令和7年法律第29号が令和7年4月18日に成立し、地域限定保育士制度の一般制度化を含むと案内している。最終確認日:2026-10-12。出典:e-Gov法令検索 児童福祉法・こども家庭庁 令和7年4月に成立した改正児童福祉法について(保育関係)。
地域限定保育士制度の一般制度化の施行日:改正児童福祉法(令和7年10月1日施行)により、国家戦略特別区域法に基づく特例措置だった地域限定保育士制度が一般制度化された。最終確認日:2026-10-12。出典:福岡県 地域限定保育士試験。
使い方の注意が2つあります。
- 改正法は、1つの法律でも、条文ごとに施行日が分かれます。令和7年法律第29号の施行日の一覧には、令和8年4月1日と令和8年10月1日があります。令和8年後期の基準日(令和8年4月1日)で線を引くと、令和8年10月1日に施行される部分は、その回の基準に入らない、と読めます。どの条文がどの日かは、e-Govの改正履歴と附則で確認してください
- 改正の中身が試験のどの科目のどの問題に関わるかは、協議会の資料に記載がありません(2026-10-12 時点)。この表は「テキストに載っているか」を確かめる手がかりであり、出題の予想ではありません
テキストが改正に触れていなくても、使えないとは限りません。制度の細部を載せない方針のテキストもあります。気になる箇所は、原文で読み直せば足ります。
チェック4:解説の深さと、演習問題の有無
範囲と基準日が合っていても、使いやすさは解説の書き方で変わります。次の点を、手に取って(無料の試し読みがあれば開いて)確かめます。
- 結論だけでなく、理由・根拠まで書いてあるか。例えば、制度の名前と目的だけで終わらず、その根拠の法令や指針の章に戻れる書き方か
- 似た制度や用語を、並べて比べる表や整理があるか
- 図や表が、本文の説明と合っているか。数字や年が、原文と合うか(疑わしいときは原文で確認する)
- 章ごとに確認の問題があるか、別冊や別売りの問題集があるか。協議会の試験はマークシート方式で、5つの選択肢から問題文に示された数を選ぶ形なので、練習問題も同じ形式かを見る
- 間違えた選択肢の理由まで解説があるか。正答だけでは、復習で原因が分からない
テキストに問題がない場合は、演習を別に用意する必要があります。協議会の過去の試験問題は、問題と正答だけで、解説がありません(2026-10-12 時点)。解説つきの演習は、テキスト側か、別の教材で補います。
「テキストはいらない」は本当か:状況別の考え方
「テキストはいらない」と言う意見は、前提を伏せたまま広まりがちです。公式の資料から言えるのは、次の2つです。
- 協議会が公開しているのは、過去の試験問題(問題と正答)で、解説の記載はない(2026-10-12 時点)
- 出題範囲は、養成課程の教科目という広い範囲で示されている
この2点から、いるかどうかは、状況で変わります。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 養成課程で学んだ科目が多く、手元に教科書や授業資料がある | その資料が基準日に合っているかを確かめれば、新しく買わなくても進められることがある |
| 保育所保育指針や児童福祉法を原文で読み、過去の試験問題の理由も自分で調べる時間がある | 公式の資料と原文だけで進める方法がある。ただし、9科目の整理に時間がかかる |
| 初めて学ぶ科目が多い、または調べる時間が限られる | 出題範囲に対応した解説つきの教材があると、整理の手間が減る |
| 試験が近く、受ける科目を絞っている | 絞った科目だけ、範囲に合う教材を選ぶ方法がある。合格した科目は合格した年を含めて3年間有効 |
どれが正しいと決めることはできません。勉強の量の見積もりと組み合わせ方は、保育士試験の独学の勉強法にまとめています。
テキスト・協議会の過去の試験問題・当サイトの演習を組み合わせる
テキストは、知識を整理する役割です。使い方の流れの例を示します。
- 整理:テキストで科目の範囲を読む。基準日と版の年が合わない箇所は、保育所保育指針や法令の原文で確認する
- 実戦:協議会が「過去の試験問題」のページで公開している問題を、科目ごとに本番の時間(60分または30分)で解き、協議会の正答で採点する。公表されている回と使い方は、保育士試験の過去問はどこで見られる?にまとめています
- 理由の確認:間違えた問題は、テキストの該当箇所と根拠の原文に戻る。協議会の資料には解説がないため、ここがテキストの出番になる
- 補充:弱い科目を、演習で解く。合格ナビのオリジナル問題は、協議会の試験問題とは別の自作問題で、各問に初級・標準・上級の3段階の解説がつく。ブラウザだけで使え、登録もインストールも不要
- 仕上げ:模擬試験で、科目ごとの出題数・制限時間・合格基準(6割)にそろえて解く
合格ナビのオリジナル問題は、テキストの代わりではなく、範囲を覚えたあとの演習用です。範囲の整理に使うテキストは、上の4つのチェックで選んでください。一問一答やアプリを選ぶ基準は、保育士試験の一問一答・アプリで勉強する方法で扱っています。
まとめ・次にやること:購入前のチェックリスト
- □ 目次に9科目がそろい、関連する教科目の内容も入っている
- □ 版の年、または基準時点の記載があり、受ける回の基準日と比べられる
- □ 保育所保育指針(平成29年告示)の現行の内容になっている
- □ こども家庭庁の所管、こども基本法、児童福祉法の改正が、載っているか、載っていなくても原文で補える
- □ 解説に理由と根拠がある。練習問題があるか、別の演習を用意している
- □ 迷った箇所は、協議会のページ、こども家庭庁のページ、e-Gov法令検索の原文で確かめた
次にやることは、①受ける回の協議会の案内で基準日を読む、②手元の教材(または気になる教材)の版の年と基準時点を確認する、③チェックに合わない箇所を、原文で読み直す科目として書き出す、の3つです。ほかの疑問は保育士試験のよくある質問にもあります。出題範囲と合格基準は出題内訳と合格基準にまとめています。
よくある質問
Q保育士試験に、テキストや参考書は必ず必要ですか?
必ず必要とは言えず、状況によります。協議会の過去の試験問題のページには、問題と正答はありますが、解説の記載がありません(2026-10-12 時点)。そのため、正答の理由を自分で調べる手間をかけられる人は、公式の資料と法令・指針の原文を中心に進める方法があります。一方、9科目の範囲を最初から整理したい人や、調べる時間が限られる人は、出題範囲に対応した解説つきの教材があると進めやすくなります。どちらが合うかは、今の知識と使える時間で決まります。
Q古い年のテキストを使っても大丈夫ですか?
使えるかどうかは、その内容が、受ける回の基準日までに施行された法令・指針と合っているかで決まります。令和8年後期は、令和8年4月1日以前に施行されたものに基づいて出題されます。古い版は、その後の改正を反映していないことがあるので、保育所保育指針や児童福祉法の改正にあたる箇所だけでも、現行の原文で読み直すことが必要です。
Qテキストに載っている改正の情報は、どこで確かめればよいですか?
保育所保育指針はこども家庭庁の保育のページ、法令はe-Gov法令検索で、原文を確かめられます。e-Govには法令ごとの改正履歴があり、改正法ごとの施行日を確認できます。テキストの記述と原文が食い違うときは、試験の基準日時点の原文を優先します。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月12日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

