精神保健福祉士

医療観察法とは?対象行為・審判・入院と通院・社会復帰調整官を条文で整理精神保健福祉士の専門科目

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

医療観察法(心神喪失者等医療観察法)の正式名称と目的、対象行為と対象者、検察官の申立てから審判(裁判官と精神保健審判員の合議体、精神保健参与員)、入院・通院・医療を行わない決定、保護観察所の社会復帰調整官までを、e-Gov 法令検索の条文と法務省・厚生労働省の公式ページで整理します。精神保健福祉士との関わりは、法が書いている範囲だけを紹介します。

目次
  1. 医療観察法とは:正式名称・目的・制度の全体像
  2. 対象行為と対象者(第2条)
  3. 手続の流れ:検察官の申立てから審判・決定まで
  4. 審判を担う人:裁判官・精神保健審判員・精神保健参与員
  5. 入院・通院・医療を行わない決定と、期間(第42条〜第44条、第49条以降)
  6. 保護観察所と社会復帰調整官(第19条〜第23条、第101条、第104条〜第108条)
  7. 精神保健福祉士との関わり:法が書いている範囲
  8. 条文の改正と、第26〜28回の試験日
  9. 専門科目の問題を解くときに確認すること
  10. まとめ
結論:医療観察法の正式名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(平成15年法律第110号)です。心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人に、その適切な処遇を決定するための手続等を定め、継続的かつ適切な医療と、そのために必要な観察及び指導を行うことで、病状の改善と同様の行為の再発の防止を図り、社会復帰を促進する法律です(第1条)。流れは、検察官の申立て、鑑定入院、裁判官と精神保健審判員の合議体による審判、入院・通院・医療を行わない旨の決定の順です。保護観察所の社会復帰調整官が、生活環境の調査・調整と精神保健観察を担います。精神保健福祉士は、条文の上では精神保健参与員の名簿(第15条)と社会復帰調整官の資格(第20条)に出てきます。

条文は e-Gov 法令検索で確認(2026年10月10日時点の現行条文)しています。心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(e-Gov法令検索)

現行の版:現行の版は2026年10月1日施行のもの(令和7年法律第87号による改正)です。この改正で変わった本則の条文は第84条で、診療報酬の審査・支払の事務を委託できる先の名称が「社会保険診療報酬支払基金」から「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」に改められました。最終確認日:2026-10-10。出典:e-Gov法令検索 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律。

医療観察法とは:正式名称・目的・制度の全体像

法律の目的は、第1条第1項に1文で書かれています。整理すると、要素は次の4つです。

  • 対象は、心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為)を行った者
  • 手段は、その適切な処遇を決定するための手続等を定めること
  • 内容は、継続的かつ適切な医療と、その確保のために必要な観察及び指導を行うこと
  • 目標は、病状の改善とこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、社会復帰を促進すること

第2項は、この法律による処遇に携わる者に、対象者が円滑に社会復帰をすることができるように努める義務を定めています。

厚生労働省のページは、この制度を、心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為(殺人、放火、強盗、不同意性交等、不同意わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度と説明しています。法務省のページも、同じ趣旨で、殺人、放火等の重大な他害行為を行った人の社会復帰を促進することを目的とした処遇制度と書いています。

法律は6つの章に分かれています。

章条文の範囲決めていること
第1章 総則第1条〜第23条の3目的・定義、裁判所(精神保健審判員・精神保健参与員)、指定医療機関、保護観察所(社会復帰調整官)、保護者
第2章 審判第24条〜第80条通則、入院又は通院の審判、退院又は入院継続、処遇の終了又は通院期間の延長、再入院等、抗告
第3章 医療第81条〜第103条医療の実施、指定医の必置、管理者の措置、入院者に関する措置
第4章 地域社会における処遇第104条〜第113条処遇の実施計画、精神保健観察、連携、報告、緊急の保護
第5章 雑則第114条〜第116条刑事事件との関係、精神保健福祉法との関係
第6章 罰則第117条〜第121条罰則

試験センターの科目別出題基準(精神保健福祉制度論)の大項目2には、中項目として医療観察法の概要と精神保健福祉士の役割があり、審判・処遇の流れ、処遇の内容、精神保健参与員の役割、社会復帰調整官の役割、医療観察法における精神保健福祉士の役割が挙げられています。この記事の見出しは、この並びに沿っています。精神保健福祉法の側は精神保健福祉法の記事で整理しています。

対象行為と対象者(第2条)

対象行為は、第2条第1項に、刑法の条番号で5つの号に分けて書かれています。

号刑法の条厚生労働省のページの区分
第1号第108条〜第110条、第112条放火
第2号第176条、第177条、第179条、第180条不同意性交等・不同意わいせつ
第3号第199条、第202条、第203条殺人
第4号第204条傷害
第5号第236条、第238条、第243条(第236条又は第238条に係るもの)強盗

対象者は、第2条第2項に2つの類型で書かれています。

1. 公訴を提起しない処分において、対象行為を行ったこと、及び心神喪失者(刑法第39条第1項)又は心神耗弱者(同条第2項)であることが認められた者

2. 対象行為について、刑法第39条第1項により無罪の確定裁判を受けた者、又は同条第2項により刑を減軽する確定裁判を受けた者(拘禁刑を言い渡し、その刑の全部の執行猶予の言渡しをしない裁判で、執行すべき刑期があるものを除く)

つまり、不起訴で心神喪失者又は心神耗弱者と認められた人、無罪が確定した人、刑を減軽する裁判を受けて実刑にならなかった人が、この法律の対象者です。

指定医療機関は、第2条第3項〜第5項で、2種類に分けられています。

種類担当する医療根拠となる決定
指定入院医療機関入院による医療第42条第1項第1号又は第61条第1項第1号の決定
指定通院医療機関入院によらない医療(病院・診療所のほか薬局を含む)第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号の決定

どちらも厚生労働大臣が指定します(第16条)。指定入院医療機関の指定は、国、都道府県、又は都道府県が設立した特定地方独立行政法人などが開設する病院が対象です。

指定の辞退:指定医療機関が指定を辞退しようとするときは、辞退の日の1年前までに、厚生労働大臣に届け出る(第17条)。最終確認日:2026-10-10。出典:e-Gov法令検索 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律。

手続の流れ:検察官の申立てから審判・決定まで

最初の入院・通院の審判は、次の順に進みます。

1. 検察官の申立て(第33条):検察官は、対象行為を行ったこと及び心神喪失者又は心神耗弱者であることを認めて公訴を提起しない処分をしたとき、又は第2条第2項第2号の確定裁判があったときは、この法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合を除き、地方裁判所に、第42条第1項の決定をすることを申し立てなければなりません。

2. 鑑定入院命令(第34条):申立てを受けた地方裁判所の裁判官は、鑑定その他医療的観察のため、対象者を入院させ、第40条第1項又は第42条の決定があるまで在院させる旨を命じます(医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合を除く)。

3. 付添人(第30条・第35条):対象者と保護者は、弁護士を付添人に選任できます。申立てがあった場合に付添人がないときは、裁判所が付添人を付さなければなりません(必要的付添人)。

4. 鑑定(第37条):裁判所は、精神保健判定医又はこれと同等以上の学識経験を有すると認める医師に鑑定を命じます。鑑定した医師は、鑑定の結果に、入院による医療の必要性に関する意見を付します。

5. 生活環境の調査(第38条):裁判所は、保護観察所の長に、対象者の生活環境の調査を行い、その結果を報告することを求めることができます。

6. 精神保健参与員の関与(第36条):裁判所は、処遇の要否と内容について精神保健参与員の意見を聴くため、これを審判に関与させます(特に必要がないと認めるときを除く)。

7. 審判期日(第31条・第39条):申立てがあった場合は、原則として審判期日を開きます(検察官と付添人に異議がないときを除く)。審判期日の審判は公開されません(第31条第3項)。対象者が出席しないときは、原則として審判を行えません(第31条第8項)。

8. 決定(第42条):入院、通院、医療を行わない、のいずれかを決定します。

検察官は、刑法第204条(傷害)に当たる行為を行った対象者で、傷害が軽く、一定の事情を考慮して必要がないと認めるときは、申立てをしないことができます(第33条第3項。ほかの対象行為もある者を除く)。申立てを受けた事件の管轄は、対象者の住所、居所、現在地又は行為地を管轄する地方裁判所です(第3条)。

鑑定入院の期間:第34条の命令による入院の期間は、命令が執行された日から起算して2月を超えられない。裁判所は、必要があると認めるときは、通じて1月を超えない範囲で延長できる(第34条第3項)。最終確認日:2026-10-10。出典:e-Gov法令検索 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律。
検察官の申立ての取下げに関する通知の期間:裁判所が、心神喪失者と認めて公訴を提起しない処分をした対象者を心神耗弱者と認める決定をした場合、検察官は、決定の告知を受けた日から2週間以内に、申立てを取り下げるか否かを通知しなければならない(第40条第2項)。最終確認日:2026-10-10。出典:e-Gov法令検索 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律。

審判を担う人:裁判官・精神保健審判員・精神保健参与員

審判に関わる3つの立場は、名前が似ているので、役割で区別します。

立場根拠だれがなるか役割
裁判官第11条〜第14条地方裁判所の裁判官(判事補は合議体に加われない)合議体の構成員。法律に関する学識経験に基づき意見を述べ、審判期日の指揮をする
精神保健審判員第6条、第11条〜第14条精神保健判定医の名簿から、処遇事件ごとに地方裁判所が任命する医師合議体の構成員。精神障害者の医療に関する学識経験に基づき意見を述べる
精神保健参与員第15条、第36条精神保健福祉士その他の専門的知識及び技術を有する者の名簿から、処遇事件ごとに裁判所が指定する処遇の要否と内容について意見を述べる。合議体の構成員ではない

ポイントは3つです。

  • 合議体は、一人の裁判官と一人の精神保健審判員です(第11条第1項)。裁判は、その意見の一致したところによります(第14条)。
  • 精神保健参与員は、評決に加わる構成員ではありません。裁判所が意見を聴くために審判に関与させます(第36条)。員数は各事件について一人以上です(第15条第3項)。
  • 厚生労働大臣が作る名簿が、2つの立場でそれぞれ違います。精神保健判定医の名簿は最高裁判所に送付され(第6条第2項)、精神保健参与員の名簿は各地方裁判所ごとに作成されます(第15条第2項)。

一方、第4条・第5条などの裁判(移送、手続の併合、申立ての却下など)は、合議体の構成員である裁判官のみで行います(第11条第2項)。

精神保健審判員の欠格事由と精神保健参与員の員数:精神保健審判員には、拘禁刑以上の刑に処せられた者などは選任できない(第7条)。精神保健参与員の員数は、各事件について1人以上(第15条第3項)。最終確認日:2026-10-10。出典:e-Gov法令検索 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律。

入院・通院・医療を行わない決定と、期間(第42条〜第44条、第49条以降)

裁判所は、鑑定を基礎とし、鑑定した医師の意見と対象者の生活環境を考慮して、第42条第1項の3つの決定のいずれかをします。

決定条文要件の要点その後
入院の決定第42条第1項第1号精神障害を改善し、同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため、入院をさせて医療を受けさせる必要があると認める場合厚生労働大臣が定める指定入院医療機関で入院による医療を受ける(第43条第1項)
通院の決定第42条第1項第2号入院させる必要まではないが、医療を受けさせる必要があると認める場合厚生労働大臣が定める指定通院医療機関で入院によらない医療を受ける(第43条第2項)
医療を行わない決定第42条第1項第3号第1号・第2号の場合に当たらないときこの法律による医療を行わない

通院の決定を受けた人(退院を許可されて通院になった人を含む)は、通院期間を通じて保護観察所の精神保健観察に付されます(第106条)。

入院中の見直し(第49条〜第53条)

  • 指定入院医療機関の管理者は、勤務する精神保健指定医の診察の結果、入院を継続する必要があると認められなくなったときは、保護観察所の長の意見を付して、直ちに、地方裁判所に退院の許可を申し立てなければなりません(第49条第1項)。
  • 入院を続ける必要があると認める場合も、入院の決定(その後に入院継続の確認などの決定があれば、その最後の決定)があった日から起算して6月が経過する日までに、入院継続の確認を申し立てなければなりません(第49条第2項)。
  • 入院中の人、保護者、付添人は、自分から退院の許可又は医療の終了を申し立てられます(第50条)。
  • 裁判所は、申立てを受けて、「入院継続(申立ての棄却を含む)」「退院を許可して通院」「医療を終了」の3つのうちから決定します(第51条第1項)。

通院中の見直し(第54条〜第56条)

  • 保護観察所の長は、医療を受けさせる必要があると認められなくなったときは、指定通院医療機関の管理者と協議の上、直ちに医療の終了を申し立てます(第54条第1項)。
  • 通院期間を延長する必要があるときは、期間が満了する日までに、延長を申し立てます(第54条第2項)。
  • 裁判所は「医療の終了」か延長を含む継続かを決定します(第56条)。

再入院等(第59条〜第61条):通院の決定を受けた人について、入院をさせて医療を受けさせる必要があると認めるに至った場合、又は通院の義務や守るべき事項に違反し継続的な医療を行うことが確保できない場合は、保護観察所の長が地方裁判所に入院を申し立てます(第59条)。

入院・通院の期間:通院は決定のあった日から3年間。裁判所は、通じて2年を超えない範囲で延長できる(第44条第1項)。入院継続の確認の申立ては、決定から起算して6月が経過する日まで(第49条第2項)。再入院の申立てに伴う鑑定入院は、命令の執行の日から1月を超えられず、通じて1月を超えない範囲で延長できる(第60条第3項)。最終確認日:2026-10-10。出典:e-Gov法令検索 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律。

厚生労働省のページは、通院について、処遇実施計画に基づいて、原則として3年間、地域で指定通院医療機関による医療を受けることになると説明しています。法務省のページも、通院決定を受けた人及び退院を許可された人について、原則として3年間、指定通院医療機関による医療が提供されるほか、保護観察所による精神保健観察に付されると書いています。

保護観察所と社会復帰調整官(第19条〜第23条、第101条、第104条〜第108条)

地域での処遇の中心は、法務省所管の保護観察所と、そこに置かれる社会復帰調整官です。

保護観察所の事務(第19条第1項)は、5つです。

1. 生活環境の調査(第38条)

2. 生活環境の調整(第101条)

3. 精神保健観察の実施(第106条)

4. 関係機関相互間の連携の確保(第108条)

5. その他、この法律で保護観察所の所掌に属せしめられた事務

社会復帰調整官(第20条)は、保護観察所に置かれ、精神障害者の保健及び福祉その他この法律に基づく対象者の処遇に関する専門的知識に基づいて、これらの事務に従事します。法務省のページは、社会復帰調整官を、精神保健福祉士の有資格者など対象者の社会復帰を促進するために必要な知識及び経験を有する者で、処遇を実施するとともに、関係機関相互の連携・調整役を担う、と説明しています。

入院中から退院後まで、保護観察所が行うこと

場面条文内容
審判の前第38条裁判所の求めに応じて、対象者の生活環境を調査し、報告する
入院の決定後第101条対象者とその家族等の相談に応じ、指定入院医療機関の管理者の援助や、精神保健福祉法第47条・第49条などに基づく都道府県・市町村の援助を受けられるようあっせんするなどして、退院後の生活環境を調整する
通院の決定後第104条指定通院医療機関の管理者、都道府県知事、市町村長と協議して、処遇の実施計画を定める。処遇の状況に応じて見直す
通院期間中第106条・第107条精神保健観察。対象者と適当な接触を保ち、医療を受けているか、生活の状況はどうかを見守り、継続的な医療を受けさせるために必要な指導その他の措置を講ずる
関係機関との調整第108条医療、精神保健観察、援助が実施計画に基づいて適正に実施されるように、情報交換や協力体制の整備を行う
生活が著しく困難なとき第112条金品の給与・貸与などの緊急の保護

精神保健観察に付された人が守るべき事項は、第107条に3つ書かれています。一定の住居に居住すること、住居の移転や長期の旅行をするときはあらかじめ保護観察所の長に届け出ること、保護観察所の長から出頭や面接を求められたときはこれに応ずることです。

保護者(第23条の2・第23条の3):対象者の後見人若しくは保佐人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が、一定の順位で保護者となります。保護者となる者がいないときは、対象者の居住地を管轄する市町村長が保護者になります。

精神保健福祉士との関わり:法が書いている範囲

医療観察法の条文で、精神保健福祉士の語が出てくるのは、次の2か所です(e-Gov 法令検索の現行条文で確認)。

条文書かれていること
第15条第2項精神保健参与員の名簿は、精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術を有する者について作成する
第20条第3項社会復帰調整官は、精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有する者として政令で定めるものでなければならない

どちらも、精神保健福祉士を例に挙げた上で「その他」の者も含める書き方です。精神保健福祉士でなければ就けない、とする書き方ではありません(2026-10-10 時点)。ここから先の精神保健福祉士が現場でどう働くかは、条文には書かれていません。たとえば、第91条は指定医療機関の管理者に、医療を受ける人の社会復帰の促進を図るため、相談に応じ、必要な援助を行い、保護者や精神障害者の医療、保健又は福祉に関する機関との連絡調整を行うように努める義務を定めていますが、その担当者が精神保健福祉士であるとは書いていません。

試験センターの出題基準が挙げる「精神保健参与員の役割」「社会復帰調整官の役割」「医療観察法における精神保健福祉士の役割」は、上の2つの条文と、審判(第36条)、保護観察所の事務(第19条、第101条、第104条〜第108条)を軸に整理すると、条文と対応させやすくなります。

以下は、当サイトが条文をもとに作った例(作例)です。

1. 通院中の人が、住居を移転するのにあらかじめ届け出なかった場合、それは精神保健観察の守るべき事項(第107条第2号)に反します。継続的な医療が確保できないと認められるときは、保護観察所の長が入院の申立てをすることがあります(第59条第2項)。

2. 入院の決定を受けた人の退院後の住まいを調整するのは、指定入院医療機関ではなく、保護観察所の長の職務(第101条)です。管理者は、第91条により相談・援助・連絡調整に努めます。

3. 医療を終了する申立てを自分でできるのは、入院中の人(第50条)と、通院中の人(第55条)で、どちらも保護者と付添人も申し立てられます。

条文の改正と、第26〜28回の試験日

2023年以降に施行された改正のうち、本則の条文が変わったものは次のとおりです(e-Gov 法令検索の改正履歴には、本則の文言が変わらない施行日もあり、それは表から除いています)。いずれも、手続の骨格(入院・通院の決定、合議体、社会復帰調整官)を変える内容ではありません。

施行日変更された条文内容第26回第27回第28回
2023年7月13日第2条第1項第2号刑法の性犯罪の規定の改正に伴い、「刑法第176条から第180条まで」が「第176条、第177条、第179条又は第180条」に施行後施行後施行後
2023年11月15日第78条第2項費用の徴収について準用する規定に、刑事訴訟法の規定などが加わる施行後施行後施行後
2025年6月1日第2条第2項第2号、第7条、第74条、第76条、第117条「懲役又は禁錮」「禁錮以上の刑」などが「拘禁刑」に施行前施行前施行後
2026年5月21日第24条事実の取調べで行える処分に、刑事訴訟法の電磁的記録提供命令が加わる施行前施行前施行前
2026年10月1日第84条診療報酬の審査・支払の事務の委託先の名称が「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」に施行前施行前施行前
試験日と施行日の対応:第26回は2024年2月3日・4日、第27回は2025年2月1日・2日、第28回は2026年1月31日・2月1日。拘禁刑の語への改正(2025年6月1日施行)は、第26回・第27回の後、第28回の前です。最終確認日:2026-10-10。出典:社会福祉振興・試験センター 第26回の合格発表について、第27回、第28回、e-Gov法令検索 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(改正履歴)。
法令の版:上の表の施行日と条文は、e-Gov 法令検索の改正履歴にある各施行日の版の条文にもとづきます。センターの出題基準のページには、出題の基準となる法令の基準日の記載がありません(2026-10-10 時点)。最終確認日:2026-10-10。出典:e-Gov法令検索 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律、社会福祉振興・試験センター 出題基準。

精神保健福祉法の側の改正(令和4年法律第104号による施行日ごとの整理)は、精神保健福祉法の記事にまとめています。

専門科目の問題を解くときに確認すること

1. だれが何を決めるか:入院・通院・医療を行わない旨を決めるのは、裁判官と精神保健審判員の合議体を構成する地方裁判所です(第11条、第42条)。申立てるのは、最初は検察官(第33条)、その後の見直しは指定入院医療機関の管理者(第49条)、保護観察所の長(第54条・第59条)、本人・保護者・付添人(第50条・第55条)です。申立人の問われ方に注意します。

2. 精神保健審判員と精神保健参与員を混ぜない:評決に加わるのは、裁判官と精神保健審判員です。精神保健参与員は、意見を述べる者です。

3. 期間の数字は条文で確認する:通院3年+通じて2年(第44条)、入院継続の確認の申立て6月(第49条第2項)、鑑定入院2月+通じて1月(第34条第3項)です。

4. 社会復帰調整官は保護観察所の職員:医療機関の職員ではありません。生活環境の調査・調整、精神保健観察、関係機関の連携を担当します。

5. 精神保健福祉法との接点:指定入院医療機関に入院していない医療観察法の対象者について、指定通院医療機関の管理者と保護観察所の長が自傷他害のおそれがあると認めたときの通報は精神保健福祉法第26条の3、通院の決定を受けた人への精神保健福祉法による入院は、医療観察法第115条で妨げられません。

6. 出題基準の見かた:センターの出題基準は、「出題基準は、あくまでも標準的な出題範囲の例示であって、出題範囲を厳密に限定するものではなく、また、作問方法や表現等を拘束するものではない。」と書いています。条文に当たる習慣が、基準の外の問題への備えになります。

回別の問題一覧は、第26回、第27回、第28回からたどれます。出題範囲は出題範囲の一覧で確認できます。

まとめ

  • 医療観察法は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人の、適切な処遇を決める手続等を定め、継続的かつ適切な医療と観察・指導で、再発の防止と社会復帰を図る法律(第1条)。平成15年法律第110号
  • 対象行為は、放火・性犯罪・殺人・傷害・強盗に当たる刑法の規定(第2条第1項)。対象者は、不起訴で心神喪失者・心神耗弱者と認められた人と、無罪又は刑の減軽の確定裁判を受けた人(同条第2項)
  • 審判は、一人の裁判官と一人の精神保健審判員の合議体が行う。精神保健参与員は意見を述べる立場で、評決には加わらない
  • 決定は、入院(指定入院医療機関)・通院(指定通院医療機関)・医療を行わない、の3つ。通院は3年+通じて2年
  • 保護観察所の社会復帰調整官が、生活環境の調査・調整と精神保健観察を担う。精神保健福祉士は、精神保健参与員の名簿(第15条)と社会復帰調整官の資格(第20条)に条文上出てくる
  • 次の一歩は、精神保健福祉法の記事で入院形態と合わせて整理することと、専門科目の問題を解いてみることです
本サイトは社会福祉振興・試験センター・厚生労働省・法務省とは関係のない民間のサイトです。条文の引用・要約は e-Gov 法令検索の現行条文(2026年10月10日確認)と、厚生労働省・法務省・センターの公表資料にもとづきます。

よくある質問

Q医療観察法の正式名称と法律番号は何ですか。

正式名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」で、平成15年法律第110号です。略称として「心神喪失者等医療観察法」が使われ、厚生労働省のページの題名も「心神喪失者等医療観察法」です(e-Gov 法令検索と厚生労働省のページで確認)。

Q医療観察法の審判は、だれが行いますか。

地方裁判所が、一人の裁判官と一人の精神保健審判員の合議体で行います(第11条第1項)。裁判官は法律に関する学識経験、精神保健審判員は精神障害者の医療に関する学識経験に基づいて意見を述べ(第13条)、裁判は両者の意見の一致したところによります(第14条)。精神保健審判員は医師で、厚生労働大臣が送付する精神保健判定医の名簿に載った者から選ばれます(第6条)。精神保健参与員は、評決に加わる合議体の構成員ではなく、裁判所が処遇の要否と内容について意見を聴くために審判に関与させる者です(第36条)。

Q精神保健参与員になれるのは、精神保健福祉士だけですか。

第15条第2項は、厚生労働大臣が各地方裁判所ごとに作成する名簿を「精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術を有する者」の名簿と定めています。精神保健福祉士だけに限るという記載は、条文にはありません(2026-10-10 時点)。選任は、地方裁判所が毎年あらかじめ選任した中から、処遇事件ごとに裁判所が指定し、員数は各事件について一人以上です(第15条第1項・第3項)。

Q通院の決定を受けた人の通院期間は何年ですか。

第44条第1項は、入院によらない医療を行う期間を、決定のあった日から起算して3年間とし、裁判所は、通じて2年を超えない範囲で延長できると定めています。延長は、保護観察所の長の申立てによる審判で決まります(第54条第2項、第56条)。

Q社会復帰調整官になるには、精神保健福祉士の資格が必要ですか。

第20条第3項は、社会復帰調整官を「精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有する者として政令で定めるもの」でなければならないと定めています。法務省のページは、保護観察所に配置される社会復帰調整官を「精神保健福祉士の有資格者など」と説明しています。精神保健福祉士以外にどのような者が政令で定められているかは、この記事では扱っていません。

この資格の問題を解く精神保健福祉士 専門科目の過去問(第26〜28回・全176問)
解いてみる

法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月10日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

合格ナビ 編集長・運営者

精神保健福祉士の出題範囲・法令・公式の統計を参照して書いています。プロフィール・編集方針