測量士補

測量士補 水準測量 問6出典: 令和5年度 問11

問題

測量士補 | 水準測量 | 令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-19

次の文は,水準測量の誤差について述べたものである。ア 〜 エ に入る語句又は数値の組合せとして最も適当なものはどれか。次の中から選べ。 a. 視準線誤差は,レベルと前視標尺,後視標尺の視準距離を ア することで消去できる。 b. レベルの イ の傾きによる誤差は,三脚の特定の2脚を進行方向に平行に設置し,そのうちの1本を常に同一標尺の方向に向けて設置することで軽減できる。 c. 標尺の零点誤差は,測点数を ウ とすることで消去できる。 d. 公共測量における1級水準測量では,標尺の下方 エ cm以下を読定しないものとする。

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正解は 1
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解説

水準測量の代表的な誤差とその消去・軽減方法を問う穴埋め問題(令和5年度 問11)。正答は(1)「等しく・鉛直軸・偶数回・20」です。

ア「等しく」:視準線誤差(i角誤差)は,レベルの視準線と水平面が一致していないことによる誤差です。前視距離と後視距離を「等しく」すると,前視・後視の読み取り誤差が同じ量だけ生じるため,高低差の計算で相殺されます。

イ「鉛直軸」:三脚の特定の2脚を進行方向に平行に配置する方法は,レベルの「鉛直軸」の傾きによる誤差を軽減します。三脚の向きを固定することで,測量進行中の鉛直軸傾きの変化を一定方向に揃え,誤差の偏りを軽減します。

ウ「偶数回」:標尺の零点誤差は,2本の標尺それぞれの目盛りの起点(零点)のずれです。測点数(測站数)を「偶数回」にすることで,出発点と終点で同じ標尺を使うことになり,零点誤差が互いに打ち消し合って消去されます。

エ「20」:1級水準測量では標尺の下方20 cm以下を読定しないと規定されています(地面の熱気流・屈折の影響が大きい低い位置の読定を避けるため)。

【水準測量の誤差消去・軽減方法の穴埋め問題】(令和5年度 問11)

【ア「等しく」の根拠:視準線誤差(i角)の消去】

視準線誤差は,気泡が中央にあるときに視準線が水平でなく傾いていることによる系統誤差。読定誤差 = i × d(i:i角,d:視準距離)。

前後視距離が等しい(d_前=d_後)場合:

高低差 h = 後視読定 − 前視読定

= (後視真値 + i×d_後) − (前視真値 + i×d_前)

= 後視真値 − 前視真値 + i(d_後 − d_前)

= 後視真値 − 前視真値(d_後=d_前のときi角誤差がゼロ)

距離を「等しく」することで,視準線誤差が完全に消去できる。「短く」では消去にならない。

【イ「鉛直軸」の根拠:三脚配置と軸誤差】

レベルの鉛直軸が完全に鉛直でない場合,器械を回転させると水平軸も傾き,読定に誤差が生じる(鉛直軸誤差)。三脚の2脚を常に進行方向に平行・1脚を後視または前視方向に向けることで,鉛直軸の傾き方向を一定に保ち,誤差の影響を軽減する。水平軸の傾きは別の誤差(水平軸誤差)であり,この対策ではない。

【ウ「偶数回」の根拠:零点誤差の消去】

2本の標尺(A・B)の零点誤差をεA・εBとすると,1測站での高低差への影響:

  • 奇数測站目:後視B・前視A → εB−εA
  • 偶数測站目:後視A・前視B → εA−εB

偶数回(偶数測站数)の場合,奇数・偶数測站の誤差が(εB−εA)+(εA−εB)=0となって消去される。奇数回では残差が生じる。

【エ「20」の根拠:最低読定高の規定】

作業規程の準則第73条(観測の実施):1級水準測量では「標尺の下方20 cm以下を読定しない」。

理由:地表面に近い部分は,日射・地温による大気の乱れ(地表面からの熱気流)で視準が不安定になり,大気屈折誤差が大きくなる。2級水準測量では下方10 cm以下が読定禁止(精度ランクで数値が異なる)。

【水準測量の誤差理論の体系と消去・軽減手法の詳細】(令和5年度 問11)

【水準測量の誤差分類と対策一覧】

水準測量の誤差は「消去できる誤差」と「軽減のみ可能な誤差」に分類される。

消去できる誤差(適切な手順で完全消去):

1. i角誤差(視準線誤差)→ 前後視等距離

2. 零点誤差 → 偶数測站数(偶数回)

3. 大気差(屈折誤差)の一部 → 前後視等距離(往路・復路で相殺)

軽減のみ可能な誤差:

4. 三脚沈下誤差 → BFFB法(完全消去は不可,軽減のみ)

5. 鉛直軸誤差 → 三脚配置の固定(軽減)

6. 標尺の傾斜誤差 → 最小読定値の採用・標尺の振り(軽減)

7. 地表面屈折誤差 → 最低読定高の確保(20cm以上)(軽減)

【i角誤差の定量評価と野外検定】

レベルのi角(視準誤差)の測定方法(Kukkamaki法・ペッグ試験):

1. 距離Lの2点A・B間にレベルを設置

2. 中間点からA・B標尺を読定:i角の影響が等しく消え,真の高低差h_真を得る

3. 一方の点の近く(約3m)にレベルを設置し,近・遠の標尺を読定

4. 近側の読定はほぼi角なし,遠側はi角×L分の誤差が生じる

5. i = (観測高低差 − h_真) / L(ラジアン)

1級水準測量の許容i角:10″以内(作業規程の準則)。超過の場合は器械調整が必要。

【零点誤差の詳細メカニズム】

インバー標尺の零点:標尺の最下端(地面接触点)から目盛り「0」までの距離が,A尺とB尺で異なる(製造誤差・摩耗)。

1路線n測站の累積誤差:

  • 偶数n:Σ(εB−εA) = (n/2)(εB−εA) + (n/2)(εA−εB) = 0
  • 奇数n:最後の1測站で消去されずεB−εA または εA−εB が残る

実際の運用:往路・復路の測站数を別々に偶数にするか,往路終点で標尺を入れ替える方法が取られる。

【最低読定高20cmの物理的根拠】

地表面からの熱輻射・対流により,地表面0〜30cm付近は空気の密度が不均一(乱流)となり,光の屈折が非一様になる。これによる視準の「揺らぎ」が標準偏差で1〜5mmにもなる場合がある。

20cm制限の計算上の根拠:球差・気差の標準的な補正モデルは地表面からの高度の関数として近似的に表せ,20cm以上を確保することで大気屈折誤差を許容範囲(1km当たり数十μm)に抑えられる。

【測量士試験への接続】

測量士では,水準測量の誤差伝播計算(路線長に比例する偶然誤差・系統誤差の違い),重力補正・正標高変換の計算,水準網の最小二乗平均計算(条件方程式法・間接観測法)が出題される。

この問題の根拠出典: 令和5年度 測量士補試験 問11(国土地理院)/国土地理院コンテンツ利用規約・PDL1.0に基づき利用
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出典と作り方

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執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)。測量法・作業規程の準則・計算式根拠に基づき、段差のある3段階の解説(初心者・標準・上級)を作成しています。