地絡過電圧継電器の役割と原理、電気設備の技術基準の解釈(第229条・第231条)で設置が求められる場面、動作電圧・動作時間の試験で確認すること、地絡継電器・地絡方向継電器との違いを、一次資料と第一種電気工事士の学科試験の出題(令和6年度・平成30年度)で整理します。
目次
結論:地絡過電圧継電器は、零相電圧(地絡が起きたときに現れる電圧)を見て、系統側の地絡事故を検出する保護継電器です。電気設備の技術基準の解釈では、分散型電源を高圧(第229条)・特別高圧(第231条)の電力系統に連系するときの保護装置として定められています。試験では、継電器が動作する電圧(動作電圧)と、動作までの時間(動作時間)が、整定どおりかを確認します。試験電圧や許容範囲は機器の取扱説明書と保安規程によるため、この記事では数値を示しません。
| 継電器・装置 | この記事で確認できること | 根拠 |
|---|---|---|
| 地絡過電圧継電器(解釈の名称は「地絡過電圧リレー」) | 系統側の地絡事故を、零相電圧で検出する。設置相数は1(零相回路) | 電気設備の技術基準の解釈 第229条・第231条 |
| 地絡方向継電器 | 特別高圧連系で、地絡過電圧リレーが有効に機能しない場合の代わりの継電器の一つ。学科試験では、需要家内のケーブルが長い場合の対策として出題 | 解釈 第231条の表の注、センター平成30年度 問30 |
| 地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS) | 責任分界点に設ける区分開閉器。一般送配電事業者との保護協調が大切 | センター令和6年度下期 問30 |
合格ナビの第一種電気工事士の問題261問のうち、「地絡過電圧」の語を含む問題は2問、「零相電圧」の語を含む問題は2問です(2026-10-02 時点の当サイトの問題データ。本試験の出題割合ではありません)。
電気設備の技術基準の解釈の改正状況:制定は平成25年3月14日付け、直近の改正は令和7年11月20日付け(20251104保局第2号)。最終確認日:2026-10-04。出典:経済産業省 電気設備の技術基準の解釈。
地絡過電圧継電器とは(役割と原理)
地絡過電圧継電器は、分散型電源(太陽光や自家発電などの発電設備)を電力系統につないでいる設備で、つないでいる系統の側で地絡事故が起きたことを検出するために使います。電気設備の技術基準の解釈(第229条)は、高圧の電力系統に分散型電源を連系する場合、「連系している電力系統の短絡事故又は地絡事故」を保護リレー等で検出し、分散型電源を自動的に解列する(電力系統から切り離す)ことを求めています。地絡事故の検出に使う保護リレーとして表に挙げられているのが「地絡過電圧リレー」です。
なぜ切り離すのかは、解釈の用語の定義から読み取れます。「単独運転」は、連系している電力系統が事故等で系統電源と切り離された状態で、分散型電源が発電を続け、線路負荷に有効電力を供給している状態です。系統側の事故を検出して、分散型電源を自動的に解列しなければ、事故の起きた系統に電気を送り続けるおそれがあります。
零相電圧を見る継電器
原理の中心は、零相電圧です。解釈の表の注は、地絡方向継電装置付き高圧交流負荷開閉器から「零相電圧を地絡過電圧リレーに取り込む」場合に、地絡過電圧リレーを省略できる条件があると書いています。地絡過電圧継電器の入力は零相電圧だと読めます。
電気技術者試験センターの第一種電気工事士の学科試験にも、零相電圧を検出する機器が出ています。令和6年度下期の問41は、高圧受電設備の単線結線図の①で示す図記号の機器について、「零相電圧を検出する」を正しい記述として選ぶ問題です(正答は「ロ.零相電圧を検出する。」)。
名称と記号について
電気設備の技術基準の解釈は、この継電器を「地絡過電圧リレー」という名称で規定しており、文字記号や機器番号では書いていません。センターの試験問題では、令和6年度下期の問30の選択肢に「地絡過電圧継電器」の名称で出ています。この記事では、解釈とセンターが使う名称で説明します。
この論点の問題を解く
解釈で設置が求められる場面(第229条・第231条)
高圧の電力系統に連系する場合(第229条)
第229条にある229-1表は、「系統側地絡事故」の欄の保護リレーとして「地絡過電圧リレー」を挙げています。逆変換装置を用いて連系する場合も、用いずに連系する場合も、逆潮流の有無にかかわらず、表では○が付いています。
表の注では、省略できる場合が決められています。
- 構内低圧線に連系する場合で、分散型電源の出力が受電電力に比べて極めて小さく、単独運転検出装置等により高速に単独運転を検出して停止又は解列するとき、又は、地絡方向継電装置付き高圧交流負荷開閉器から零相電圧を地絡過電圧リレーに取り込むとき(逆変換装置を用いて連系する場合の注)
- 発電機引出口に設置する地絡過電圧リレーにより系統側地絡事故が検知できるとき、又は、地絡方向継電装置付き高圧交流負荷開閉器から零相電圧を地絡過電圧リレーに取り込むとき(逆変換装置を用いずに連系する場合の注)
設置相数は、第229条にある229-2表で「地絡過電圧リレー 1(零相回路)」とされています。三相すべてに置くのではなく、零相回路に1つです。
特別高圧の電力系統に連系する場合(第231条)
第231条にある231-1表では、系統側地絡事故の欄に「電流差動リレー」と「地絡過電圧リレー」が並びます。注によると、連系する系統が中性点直接接地方式の場合は電流差動リレーを設置し、中性点直接接地方式以外の場合は地絡過電圧リレーを設置します。地絡過電圧リレーが有効に機能しない場合は、地絡方向リレー、電流差動リレー又は回線選択リレーを設置します。ただし、電流差動リレーが設置されている場合など、注に挙げられた条件のいずれかを満たすときは、地絡過電圧リレーを設置しないことができます。設置相数は、231-2表で地絡過電圧リレーが「1(零相回路)」です。
| 連系する系統 | 地絡過電圧リレー | 根拠 |
|---|---|---|
| 高圧(第229条) | 表の欄で○。省略できる条件が注にある | 229-1表・注 |
| 特別高圧・中性点直接接地方式以外(第231条) | 設置する(ただし書の条件を満たす場合を除く)。有効に機能しない場合は地絡方向リレー等を設置 | 231-1表の注 |
| 低圧(第227条) | 表に出てこない | 第227条 |
出典:電気設備の技術基準の解釈(経済産業省)第229条・第231条。条文の番号・表の内容は、2026-10-04 時点の最新版(令和7年11月20日付け改正)によります。
地絡方向継電器・地絡遮断装置との違い
受電設備の地絡保護の話では、似た名前が並びます。この記事の一次資料で確認できる違いは、次のとおりです。
- 地絡過電圧継電器:零相電圧で系統側の地絡事故を検出します。分散型電源の系統連系の規定(第229条・第231条)に出てきます
- 地絡方向継電器:特別高圧連系の注で、地絡過電圧リレーが有効に機能しない場合の代わりに設置するものの一つです。学科試験では、需要家内のケーブルが長い場合の対策として出ます(下の「第一種電気工事士の学科試験との関係」)
- 地絡遮断装置:高圧又は特別高圧の電路に、地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設する規定が、解釈第36条第4項にあります。電気設備に関する技術基準を定める省令の第15条は、電路に地絡が生じた場合に、損傷、感電又は火災のおそれがないよう「地絡遮断器の施設その他の適切な措置」を講じることを求めています
つまり、地絡過電圧継電器は「受電設備の地絡遮断」ではなく、分散型電源を連系する場面の保護リレーとして規定されています。保護継電器の種類を全体で整理した表は、自家用電気工作物の検査方法の保護継電器の段にあります。地絡継電器(GR)と地絡方向継電器(DGR)を公表問題で比べた表は、高圧ケーブル端末処理の要点にあります。
試験で確認すること(動作電圧と動作時間)
継電器の試験では、継電器が整定どおりに働くかを確認します。地絡過電圧継電器では、次の2つが中心になります。
| 試験項目 | 確認すること |
|---|---|
| 動作電圧 | 継電器に加える電圧を上げていき、動作する電圧が、整定値に対して許容範囲に入っているか |
| 動作時間 | 整定値を超える電圧を加えてから、継電器が動作するまでの時間が、整定した時間に対して許容範囲に入っているか |
試験電圧の倍率、許容範囲、試験の結線は、機器ごとの取扱説明書に決められており、受電設備の保安規程でも点検の項目として定められます。電気設備の技術基準の解釈には、継電器の試験の判定値は書かれていません。このため、この記事では数値を示しません。試験の実施は、事業用電気工作物の設置者が定める保安規程と、主任技術者の監督のもとで行われます(次の項)。
試験・点検は誰が、どの決まりで行うか
電気事業法42条1項は、事業用電気工作物を設置する者に、工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、保安規程を定めて主務大臣に届け出ることを求めています。同条4項は、設置者とその従業者に保安規程を守ることを求めています。電気事業法施行規則50条3項3号は、自家用電気工作物の設置者が保安規程で定める事項の一つとして、「事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安のための巡視、点検及び検査に関すること」を挙げています。
また、電気事業法43条は、事業用電気工作物を設置する者に、保安の監督をさせるため主任技術者を選任することを求めています。工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければなりません(同条5項)。
つまり、継電器の試験を含む点検は、設置者が定めた保安規程にもとづき、主任技術者の監督のもとで行われます。電気工事士の学科試験で問われるのは、こうした保護継電器の種類・役割と、受電設備の図の読み方です。
出典:電気事業法(e-Gov 法令 API v2 で 2026-10-04 に取得。law_revision_id 339AC0000000170_20260803_508AC0000000068・施行 2026-08-03)、電気事業法施行規則(同日取得。407M50000400077_20260401_507M60000400068)、電気設備に関する技術基準を定める省令(同日取得。409M50000400052_20230320_504M60000400096)。
第一種電気工事士の学科試験との関係(令和6年度・平成30年度の問30)
第一種電気工事士の学科試験は、受電設備の図とセットで、GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)の記述を出します。同じ文のうち、設置が望ましい継電器だけが年度で違います。
| 出題 | 選択肢の文(需要家内のケーブルが長い場合) | 公表された解答 |
|---|---|---|
| 令和6年度下期 問30(不適切なものを選ぶ) | ニ「GR付PASの地絡継電装置は,需要家内のケーブルが長い場合,対地静電容量が大きく,他の需要家の地絡事故で不必要動作する可能性がある。このような施設には,地絡過電圧継電器を設置することが望ましい。」 | 正答は「ニ」。この文が不適切 |
| 平成30年度 問30(不適切なものを選ぶ) | イ「GR付PASの地絡継電装置は,需要家内のケーブルが長い場合,対地静電容量が大きく,他の需要家の地絡事故で不必要動作する可能性がある。このような施設には,地絡方向継電器を設置することが望ましい。」 | 正答は「ロ」。イの文は不適切ではない(正しい記述) |
出典:令和6年度下期 第一種電気工事士 学科試験 問30(問題・解答)、平成30年度 第一種電気工事士 筆記試験 問30(問題・解答)(いずれも一般財団法人 電気技術者試験センター)。
この2問から読み取れるのは、「他の需要家の地絡事故で不必要に動作する」問題への対策として、センターは地絡方向継電器を望ましいと示し、地絡過電圧継電器は望ましい対策としていない、ということです。地絡方向継電器は、事故が自分の側か他の側かを方向で見分けるための継電器です。零相電圧だけを見る地絡過電圧継電器には、この見分ける働きがありません。
この論点の問題を解く
まとめ
- 地絡過電圧継電器は、零相電圧で系統側の地絡事故を検出する保護継電器で、設置相数は1(零相回路)
- 電気設備の技術基準の解釈では、分散型電源を高圧(第229条)・特別高圧(第231条)の系統に連系するときの保護装置として定められている。低圧連系(第227条)には出てこない
- 試験で確認するのは動作電圧と動作時間。試験電圧や許容範囲は取扱説明書と保安規程で確認し、この記事では数値を示さない
- 継電器の試験を含む点検は、設置者が定める保安規程にもとづき、主任技術者の監督のもとで行われる(電気事業法42条・43条)
- 学科試験では、需要家内のケーブルが長い場合の対策として、令和6年度下期は地絡過電圧継電器の文が不適切、平成30年度は地絡方向継電器の文が正しい記述として出ている
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よくある質問
Q地絡過電圧継電器は、高圧で受電するすべての設備に必要ですか?
いいえ。電気設備の技術基準の解釈で地絡過電圧リレーを挙げているのは、分散型電源(発電設備など)を電力系統に連系する場合の保護装置の規定です。高圧の系統に連系する第229条と、特別高圧の系統に連系する第231条にあり、低圧の系統に連系する第227条には出てきません。発電設備を連系しない受電設備は、この規定の対象ではありません。
Q試験の判定値(誤差の許容範囲や試験電圧の倍率)は、どこで確認しますか?
電気設備の技術基準の解釈には、継電器の試験の判定値は書かれていません。事業用電気工作物の保安に関する巡視・点検・検査の方法は、設置者が定める保安規程に含まれます(電気事業法42条、同法施行規則50条)。実際の試験電圧や許容範囲は、機器の取扱説明書と受電設備の保安規程で確認してください。この記事では数値を示しません。
Q第一種電気工事士の学科試験で、地絡過電圧継電器は出ますか?
令和6年度下期の問30の選択肢に出ています(GR付PASの記述で、ここでは「不適切」な記述の一部)。当サイトの第一種の問題261問のうち、「地絡過電圧」の語を含むのは2問です(2026-10-02 時点の当サイトの問題データの集計)。「OVGR」という略号を含む問題は、当サイトの問題にはありません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月4日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
