第一種電気工事士 学科試験の「自家用電気工作物の検査方法」を、電気設備技術基準の解釈・電技省令の条文で整理します。高圧電路の絶縁耐力試験(試験電圧の計算)、低圧電路の絶縁抵抗値、接地抵抗値、保護継電器の種類と測定器の用途をまとめます。
目次
結論:第一種電気工事士の学科試験の科目「自家用電気工作物の検査方法」では、高圧電路の絶縁耐力試験(最大使用電圧に応じた試験電圧を連続して10分間)、低圧電路の絶縁抵抗値(電技省令第58条の3区分)、接地抵抗値、保護継電器の役割と測定器の用途が基本になります。数値は電気設備技術基準の解釈・電技省令の条文で確認できるので、条文に沿って整理しましょう。
第一種電気工事士の学科試験には、自家用電気工作物の検査方法の科目があります(出典:電気技術者試験センター 第一種電気工事士の試験概要)。本記事では、その中心となる、絶縁耐力試験・絶縁抵抗・接地抵抗・保護継電器・測定器を、条文に沿って整理します。
電気設備技術基準の解釈 絶縁耐力試験の規定:最大使用電圧が7,000V以下の交流電路は最大使用電圧の1.5倍、7,000Vを超え60,000V以下の電路は原則として最大使用電圧の1.25倍(10,500V未満となる場合は10,500V)の試験電圧を、電路と大地との間に連続して10分間加える(第15条)。最終確認日:2026-10-02。出典:経済産業省 電気設備技術基準の解釈。
1. 検査の位置づけ
電気設備技術基準の解釈には、電路や機械器具の絶縁性能・接地工事について、次のような規定があります。
| 項目 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 低圧電路の絶縁性能 | 第14条 | 電技省令第58条によること。絶縁抵抗の測定が困難な場合は漏えい電流1mA以下 |
| 高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能 | 第15条 | 試験電圧を連続して10分間加えたときに耐える性能 |
| 機械器具等の電路の絶縁性能 | 第16条 | 変圧器などの試験電圧と試験方法 |
| 接地工事の種類 | 第17条 | A種・B種・C種・D種の接地抵抗値・接地線 |
補足:一般用電気工作物と自家用電気工作物の違い(電気事業法第38条)
検査の対象になる「自家用電気工作物」と、第二種の範囲の「一般用電気工作物」は、電気事業法第38条で区別されます(条文は e-Gov 法令検索で確認(2026-10-04 時点の現行条文):電気事業法)。
| 項目 | 一般用電気工作物 | 自家用電気工作物 |
|---|---|---|
| 条文 | 第38条第1項 | 第38条第4項(事業用電気工作物は第2項) |
| 条文の言い方 | 構内に設置する電気工作物のうち、電気を使用するための電気工作物で「低圧受電電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの」、小規模発電設備で出力が省令の出力未満のものなど(第1項第1号・第2号) | 「一般送配電事業」「送電事業」「配電事業」「特定送配電事業」と一定の「発電事業」の用に供する電気工作物、及び一般用電気工作物以外の電気工作物(第4項) |
| 受電のイメージ(センターの説明) | 一般住宅や小規模な店舗など、低圧(電圧600V以下)で受電している施設 | 工場やビルなど、高圧以上の電圧で受電している事業場の需要設備等 |
| 設置者に課される主な義務 | 経済産業大臣は、技術基準に適合していない一般用電気工作物について、所有者又は占有者に修理・改造などを命じることができる(第56条)。一般用電気工作物と直接つながる電線路の維持・運用者に、技術基準に適合しているかの調査義務がある(第57条) | 事業用電気工作物の設置者として、技術基準に適合するよう維持する義務(第39条)、保安規程の届出(第42条)、主任技術者の選任(第43条)がある。自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)では、許可を受けて主任技術者免状のない者を選任することもできる(第43条第2項) |
| 電気工事士法での従事資格 | 第二種又は第一種の電気工事士(「一般用電気工作物等」・第3条第2項) | 第一種電気工事士(第3条第1項) |
| 学科試験の検査の科目 | 第二種:「一般用電気工作物等の検査方法」 | 第一種:「自家用電気工作物の検査方法」 |
出典:電気事業法(e-Gov)第38条・第39条・第42条・第43条・第56条・第57条、電気工事士法(e-Gov)第2条・第3条、電気技術者試験センター 電気工作物の概要、第一種の試験概要・第二種の試験概要。
一般用電気工作物の範囲を決める数値:電気事業法第38条第1項の「低圧」の電圧は、電気事業法施行規則第48条第1項で600Vとされています。小規模発電設備のうち一般用電気工作物にあたる出力は、同条第4項で、太陽電池発電設備が10キロワット未満、風力発電設備が零キロワット(風力は一般用電気工作物に含まれない)、内燃力を原動力とする火力発電設備が10キロワット未満などと定められています。最終確認日:2026-10-04。出典:e-Gov 電気事業法施行規則第48条。
電気工事士法の「自家用電気工作物」は、電気事業法の自家用電気工作物から、小規模事業用電気工作物と、発電所、変電所、最大電力500キロワット以上の需要設備などを除いたものです(電気工事士法第2条第2項)。小規模事業用電気工作物は、電気工事士法では「一般用電気工作物等」に含まれます(第2条第1項)。つまり、電気工事士法で第一種電気工事士が従事する自家用電気工作物は、最大電力500kW未満の需要設備などです(センターの説明も「最大電力500kW未満の需要設備」です)。電圧の区分は、電気設備技術基準(電技省令第2条)で、低圧が交流600V以下・直流750V以下、高圧が交流600V超7,000V以下・直流750V超7,000V以下、特別高圧が7,000V超です。
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2. 絶縁耐力試験
2.1 試験電圧の考え方
高圧電路の絶縁耐力は、試験電圧を電路と大地との間に連続して10分間加えたときに耐える性能を有することで確認します(第15条第一号)。
試験電圧は、最大使用電圧に係数を掛けて求めます。
- 最大使用電圧が7,000V以下の交流電路:最大使用電圧の1.5倍
- 最大使用電圧が7,000Vを超え60,000V以下の電路:原則として最大使用電圧の1.25倍(10,500V未満となる場合は10,500V)
2.2 最大使用電圧の求め方
電路の使用電圧(公称電圧)が1,000Vを超え500,000V未満の場合、最大使用電圧は、使用電圧に1.15/1.1を乗じて求めます(解釈第1条・1-1表)。
2.3 計算例
| 使用電圧 | 最大使用電圧 | 試験電圧 |
|---|---|---|
| 3,300V | 3,300V×1.15/1.1=3,450V | 3,450V×1.5=5,175V |
| 6,600V | 6,600V×1.15/1.1=6,900V | 6,900V×1.5=10,350V |
| 22,000V | 22,000V×1.15/1.1=23,000V | 23,000V×1.25=28,750V |
22,000Vの電路は、最大使用電圧が7,000Vを超えるため、係数は1.25倍です。
2.4 ケーブルを使用する交流電路
電線にケーブルを使用する交流の電路では、試験電圧の2倍の直流電圧を、電路と大地との間(多心ケーブルでは、心線相互間及び心線と大地との間)に連続して10分間加えたときに耐える性能を有することでもよいとされています(第15条第二号)。
3. 低圧電路の絶縁抵抗と接地抵抗
3.1 絶縁抵抗値(電技省令第58条)
低圧の電路の絶縁抵抗は、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の値以上でなければなりません。
| 電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 |
|---|---|
| 300V以下で、対地電圧が150V以下の場合 | 0.1MΩ |
| 300V以下で、その他の場合 | 0.2MΩ |
| 300Vを超えるもの | 0.4MΩ |
300V超かどうかは使用電圧、0.1MΩか0.2MΩかは対地電圧で判断します。絶縁抵抗の測定が困難な場合は、使用電圧が加わった状態での漏えい電流が1mA以下であることでもよいとされています(解釈第14条)。
出典:e-Gov法令検索 電気設備に関する技術基準を定める省令、電気設備技術基準の解釈。
3.2 接地抵抗値(解釈第17条)
- A種接地工事:10Ω以下
- B種接地工事:変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路の1線地絡電流(Ig)に応じた値(遮断装置を設ける場合の遮断時間に応じて、150/Ig・300/Ig・600/Ig)
- C種接地工事:10Ω以下(低圧電路で、地絡を生じた場合に0.5秒以内に当該電路を自動的に遮断する装置を施設するときは500Ω以下)
- D種接地工事:100Ω以下(同じく、0.5秒以内に自動的に遮断する装置を施設するときは500Ω以下)
4. 保護継電器の種類と役割
自家用電気工作物の受電設備では、異常を検出して遮断器を動作させる保護継電器を使います。主な種類と役割は、次のとおりです。
| 種類 | 検出するもの |
|---|---|
| 過電流継電器 | 過電流 |
| 不足電圧継電器 | 電圧の低下 |
| 過電圧継電器 | 電圧の上昇 |
| 地絡継電器 | 地絡電流(零相変流器と組み合わせて使う) |
継電器の試験では、動作電流(動作電圧)・動作時間などの動作特性が整定どおりかを確認します。具体的な試験項目や整定値は、受電設備の保安規程や教材で確認してください。過電流継電器の役割と、公表問題に出た試験項目の名前は過電流継電器(OCR)の役割と試験で整理しています。
5. 保護協調の考え方
保護協調とは、事故が起きたときに、事故点に近い保護装置が先に動作して事故の範囲を限定し、上位の装置の動作を避ける考え方です。本記事では、動作時間・動作電流の具体的な数値例は扱いません(設備ごとの整定値は、設計や保安規程で決まるためです)。
6. 測定器の用途
| 測定器 | 主な用途 |
|---|---|
| 絶縁抵抗計(メガー) | 絶縁抵抗の測定 |
| 接地抵抗計 | 接地抵抗の測定 |
| クランプメータ | 回路を切らずに電流(負荷電流・漏れ電流)を測定 |
| 検電器 | 充電の有無の確認 |
| 回路計(テスタ) | 電圧・抵抗などの測定 |
測定器の操作方法(端子の接続など)は、使用する機器の取扱説明書で確認してください。
7. 学習の進め方
1. 解釈第14条・第15条・第17条と電技省令第58条の数値と適用条件を、一覧にして整理する
2. 絶縁耐力試験の計算(最大使用電圧→試験電圧)を、手で何度か解く
3. 保護継電器の種類(過電流・不足電圧・過電圧・地絡)と役割を、図とセットで覚える
4. 測定器と用途を紐づけて覚える
学習時間の配分は、電気技術者試験センターが公表していません。受験日から逆算して決めてください。
8. 問題演習で身につける
試験センター非提携:本サイトは電気技術者試験センターと一切関係ありません。本サイトの問題は、電気技術者試験センターが公表した過去の試験問題(各問に出典を明記)で構成しています。
本サイトでは、検査方法の問題を分野別に解くことができ、各問に3段階の解説(初級・標準・上級)が付いています。
9. まとめ
- 高圧電路の絶縁耐力試験は、試験電圧を連続して10分間加える
- 試験電圧は、最大使用電圧が7,000V以下で1.5倍、7,000V超60,000V以下で原則1.25倍(10,500V未満は10,500V)
- 最大使用電圧は、1,000V超500,000V未満の使用電圧に1.15/1.1を乗じて求める
- 低圧電路の絶縁抵抗値は、電技省令第58条の3区分(0.1MΩ・0.2MΩ・0.4MΩ)
- 接地抵抗値は、解釈第17条で確認する
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よくある質問
Q自家用電気工作物の検査方法は、第二種の範囲と何が違いますか?
電気技術者試験センターの試験概要では、第一種電気工事士の学科試験の科目に「自家用電気工作物の検査方法」が示されています。第二種電気工事士の科目は「一般用電気工作物等の検査方法」で、対象となる電気工作物が異なります。第一種では、高圧の電路の絶縁耐力試験など、自家用電気工作物に関する検査が加わります。出典:電気技術者試験センター 第一種電気工事士の試験概要、第二種の試験概要。
Q絶縁耐力試験の試験電圧は、どのように求めますか?
高圧電路の絶縁耐力は、電気設備技術基準の解釈第15条で、最大使用電圧に応じた試験電圧を、電路と大地との間に連続して10分間加えたときに耐える性能を有することと定められています。最大使用電圧が7,000V以下の交流電路は最大使用電圧の1.5倍、7,000Vを超え60,000V以下の電路は、原則として最大使用電圧の1.25倍(10,500V未満となる場合は10,500V)です。最大使用電圧は、1,000Vを超え500,000V未満の使用電圧(公称電圧)では、使用電圧に1.15/1.1を乗じて求めます(第1条)。出典:経済産業省 電気設備技術基準の解釈。
Q6,600Vの高圧電路の試験電圧はいくらですか?
使用電圧6,600Vの最大使用電圧は、6,600V×1.15/1.1=6,900Vです。最大使用電圧が7,000V以下の交流電路の試験電圧は最大使用電圧の1.5倍なので、6,900V×1.5=10,350Vを、電路と大地との間に連続して10分間加えます。出典:電気設備技術基準の解釈(第1条・第15条)。
Q電線にケーブルを使用する高圧の交流電路では、試験の方法に違いがありますか?
電線にケーブルを使用する交流の電路では、第15条第二号により、表に規定する試験電圧の2倍の直流電圧を、電路と大地との間(多心ケーブルでは、心線相互間及び心線と大地との間)に連続して10分間加えたときに耐える性能を有することでもよいとされています。出典:電気設備技術基準の解釈(第15条)。
Q低圧電路の絶縁抵抗値は、どのように覚えますか?
電技省令第58条の表は、使用電圧が300V以下か300V超かで分け、300V以下の中を対地電圧150V以下かどうかで分けます。①使用電圧300V以下で対地電圧150V以下:0.1MΩ以上、②使用電圧300V以下のその他:0.2MΩ以上、③使用電圧300V超:0.4MΩ以上です。絶縁抵抗の測定が困難な場合は、使用電圧が加わった状態での漏えい電流が1mA以下であることでもよいとされています(解釈第14条)。出典:e-Gov法令検索 電気設備に関する技術基準を定める省令。
Q一般用電気工作物と自家用電気工作物は、条文でどう区別されますか?
電気事業法第38条第1項は、構内に設置する電気工作物のうち、「低圧受電電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの」などを一般用電気工作物と定めています。同条第4項の自家用電気工作物は、一般送配電事業などの用に供する電気工作物と一般用電気工作物以外の電気工作物です。電気工事士法では、一般用電気工作物と小規模事業用電気工作物を合わせて「一般用電気工作物等」、自家用電気工作物から最大電力500キロワット以上の需要設備などを除いたものを対象にしています。出典:e-Gov 電気事業法、e-Gov 電気工事士法。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月4日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
