過電流継電器(OCR)は、変流器からの電流が整定値以上になると遮断器を開く保護継電器です。短絡保護の組合せ、試験項目と注意事項、不足電圧継電器の出てくる場面、保護協調と短絡電流の使いどころを、第一種電気工事士の公表問題の正答で整理します。
目次
結論:過電流継電器(OCR)は、電路に流れる電流が整定値以上になると動作して、遮断器に開く指令を出す保護継電器です。受電設備では、変流器(CT)で電流を受け、短絡(と過負荷)の保護を受け持ちます。公表問題では、短絡保護の適切な組合せは「過電流継電器と高圧真空遮断器」(令和7年度下期 問20)、OCRの試験項目として誤っているのは「最小動作電圧試験」(令和6年度上期 出題例 問36)、PF・S形の主遮断装置に過電流継電器は必要でない(令和6年度下期 問33)、と整理できます。
過電流継電器は変流器で電流を受けて遮断器を開く
高圧受電設備の単線結線図では、遮断器の負荷側に変流器(CT)を置き、そのCTの二次側に、過電流継電器(図記号は枠に「I >」)と電流計(A)をつなぎます。電流が整定値以上になると、過電流継電器が遮断器に開く指令を出します。令和6年度上期(出題例)・令和8年度上期(出題例)・令和7年度下期の配線図は、どれもこの並びです。
過電流継電器は、動作の速さの違う2つの要素を持ちます。
| 要素 | 役目 | 試験での名前 |
|---|---|---|
| 限時要素 | 電流の大きさに応じた時間をおいて動作する。過負荷のような小さな過電流を受け持つ | 限時要素動作時間特性試験 |
| 瞬時要素 | 整定した電流を超えると、時間をおかずに動作する。短絡のような大きな電流を受け持つ | 瞬時要素動作電流特性試験 |
限時要素の動作時間の特性には、電流が大きいほど動作時間が短くなる反限時特性と、電流の大きさによらず一定の時間で動作する定限時特性があります(当サイトの整理)。
試験センターが公表している問題は、次のとおり出典を書いて引用します(例:出典:令和6年度上期 第一種電気工事士 学科試験(出題例)問36(一般財団法人 電気技術者試験センター))。以降の表では年度・区分と問番号だけを書きます。
整定値の換算(当サイトの計算)
過電流継電器の整定値は二次側の電流で表します。変流比100/5 Aの変流器につなぎ、動作電流を4 Aに整定した場合、一次側では 4 × 100/5 = 4 × 20 = 80 A で動作します。逆に確かめると、一次電流80 Aのとき二次電流は 80 × 5/100 = 4 A で、整定値と一致します。変流比の考え方は変流器(CT)・計器用変圧器(VT)・零相変流器の違いで扱っています。
短絡保護は過電流継電器と遮断器の組合せ
令和7年度下期 問20は「高圧受電設備の短絡保護装置として,適切な組合せは」を問いました。
| 選択肢 | 組合せ | 扱い |
|---|---|---|
| イ | 過電流継電器と高圧柱上気中開閉器 | 正答ではない |
| ロ | 地絡継電器と高圧真空遮断器 | 正答ではない |
| ハ | 地絡方向継電器と高圧柱上気中開閉器 | 正答ではない |
| ニ | 過電流継電器と高圧真空遮断器 | 正答(公式) |
出典:令和7年度下期 第一種電気工事士 学科試験 問20(一般財団法人 電気技術者試験センター)
電気設備の技術基準の解釈 第34条第1項第一号は、高圧の電路に施設する過電流遮断器について「電路に短絡を生じたときに作動するものにあっては、これを施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有すること。」と定めています。継電器は電流を検出して指令を出し、実際に短絡電流を遮断するのは遮断器です。遮断器の種類・遮断容量は断路器・負荷開閉器・遮断器の違いで扱っています。
遮断器を使わないPF・S形(限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器)では、短絡電流の遮断は限流ヒューズが受け持ちます。令和6年度下期 問33が、PF・S形の主遮断装置として「必要でないもの」に過電流継電器を挙げたのは、このためと整理できます(当サイトの整理)。
過電流継電器の試験項目と注意事項
試験では、過電流継電器の試験の名前と、試験時の注意が出ています。
試験項目の名前
令和6年度上期(出題例)問36は、過電流継電器(OCR)の試験項目として誤っているものを問いました。
| 選択肢(原文) | 扱い |
|---|---|
| 遮断器を含めた動作時間を測定する連動試験 | 誤りではない |
| 整定した瞬時要素通りにOCR が動作することを確認する瞬時要素動作電流特性試験 | 過電流継電器の試験として誤りではない |
| 過電流の大きさに応じてOCR が動作するまでの時間を測定する限時要素動作時間特性試験 | 過電流継電器の試験として誤りではない |
| OCR が動作する最小電圧を測定する最小動作電圧試験 | 過電流継電器の試験として誤り(公式の正答) |
過電流継電器は、電流の大きさと時間で動作を決める継電器です。電圧を変えて動作の最小値を測る試験は、この問題では誤りとされました。
試験時の注意事項
令和8年度上期(出題例)問36は「過電流継電器試験時の注意事項として,誤っているものは」を問いました。
| 選択肢(原文) | 扱い |
|---|---|
| 過電流継電器の現状の整定値を記録しておく。 | 誤りではない |
| 変流器による異常電圧の発生を防ぐため,電流用試験端子の継電器側端子の全てを短絡しておく。 | 誤り(公式の正答) |
| 試験電流が流れて電流計の破損を防ぐため,受電設備の電流計の切換スイッチを「切」にしておく。 | 誤りではない |
| 遮断器のトリップコイルが動作しても遮断器が開放されない場合,速やかに試験電流の通電を停止する。 | 誤りではない |
変流器の二次側を開放すると高い電圧が生じます(当サイトの説明)。上の問題で誤りとされたのは、継電器側の端子を全て短絡しておく、という手順の記述です。正しい手順はこの問題の選択肢からは読み取れないため、実際の試験は受電設備の保安規程や教材の手順で確認してください。
自主検査で行う試験・行わない試験
令和6年度下期 問37は、受電電圧6,600Vの受電設備が完成したときの自主検査で、一般に行わないものを問い、公式の正答は「変圧器の温度上昇試験」でした。高圧電路の絶縁耐力試験、高圧機器の接地抵抗測定、地絡継電器の動作試験は、行わないものとされていません。地絡方向継電器(DGR)の保護装置試験では、令和8年度下期 問36で「動作周波数試験」が行わないものの正答でした(動作電流値試験・動作電圧値試験・位相特性試験は、行わないものとされていません)。
不足電圧継電器(UVR)はどこに出てくるか
不足電圧継電器は、電圧の低下を検出する継電器です。受電設備の単線結線図には、計器用変圧器(VT)の二次側に不足電圧継電器(図記号は枠に「U <」)が描かれる例があります(令和7年度上期 出題例 配線図)。
電気設備の技術基準の解釈では、不足電圧リレーは、分散型電源(発電設備)を電力系統に連系する場合の保護リレーとして出てきます。第227条(低圧連系)の227-1表と第229条(高圧連系)の229-1表で、「発電電圧異常低下」と「系統側短絡事故」を検出するリレーとして不足電圧リレーが挙げられています。
略号の問題では、「UVR」が選択肢に出たことがあります。平成30年度 追加試験 問43は③で示す機器の略号を問い、選択肢はVCT・LBS・VCB・UVRで、公式の正答はVCTでした(UVRは正答ではありません)。
保護協調と短絡電流の使いどころ
保護協調
保護協調は、地絡継電装置の問題で出ています。
| 出題 | 不適切とされなかった記述(原文) |
|---|---|
| 令和8年度上期(出題例)問30、令和6年度上期(出題例)問30 | 地絡継電装置は,波及事故を防止するため,一般送配電事業者側との保護協調が必要である。 |
| 令和7年度下期 問30、令和8年度下期 問30(UGS) | 波及事故を防止するため,一般送配電事業者の地絡保護継電装置と動作協調をとる必要がある。 |
需要家側の過電流継電器は、一般送配電事業者側の保護装置より先に動作するように、動作電流と動作時間を整定します(当サイトの説明)。
短絡電流を使う場面
短絡電流の値が必要になる問題は、次のとおりです。
| 出題 | 不適切とされなかった内容 |
|---|---|
| 令和7年度上期(出題例)問20「受電用遮断器の遮断容量を決定する場合に,必要なものは」 | 受電点の三相短絡電流 |
| 令和7年度下期 問30、令和8年度下期 問30(UGS) | 定格短時間耐電流は,系統(受電点)の短絡電流以上のものを選定する。 |
まとめ
- 過電流継電器(OCR)は、変流器からの電流が整定値以上になると遮断器を開く。短絡(と過負荷)の保護に使う。
- 短絡保護の組合せは、過電流継電器と高圧真空遮断器。短絡電流を遮断するのは遮断器か限流ヒューズ(解釈 第34条)。
- PF・S形の主遮断装置に、過電流継電器は必要でない。
- OCRの試験項目では、最小動作電圧試験が誤り。試験では、変流器の二次側を開放しない扱いが前提。
- 不足電圧リレーは、解釈では分散型電源の連系(第227条・第229条)の保護リレーとして出てくる。
- 保護協調は、地絡継電装置と一般送配電事業者側の保護装置との関係で出る。
高圧受電設備の問題を続けて解く
継電器の問題は、配線図で「図記号から名称・役割を選ぶ」形と、検査・試験の知識を問う形に分かれます。続けて解いてみましょう。
よくある質問
Q過電流継電器と地絡継電器は、何が違いますか?
検出するものが違います。過電流継電器は電路に流れる電流が整定値以上になると動作し、短絡や過負荷の保護に使います。地絡継電器は零相変流器と組み合わせて、地絡のときの零相電流を検出します。令和7年度下期 問20「高圧受電設備の短絡保護装置として,適切な組合せは」の公式の正答は、過電流継電器と高圧真空遮断器です。地絡継電器と高圧真空遮断器の組合せは正答ではありません。
Q過電流継電器(OCR)の試験項目で、誤っているものはどれですか?
令和6年度上期の学科試験(出題例)問36「高圧受電設備に使用されている過電流継電器(OCR)の試験項目として,誤っているものは」の公式の正答は「OCR が動作する最小電圧を測定する最小動作電圧試験」でした。遮断器を含めた動作時間を測定する連動試験、整定した瞬時要素通りに動作することを確認する瞬時要素動作電流特性試験、動作するまでの時間を測定する限時要素動作時間特性試験は、誤りとされていません。
QPF・S形の主遮断装置に、過電流継電器は必要ですか?
必要ではありません。令和6年度下期 問33は、図の④に示すPF・S形の主遮断装置として「必要でないもの」を問い、公式の正答は過電流継電器でした。ストライカによる引外し装置、相間・側面の絶縁バリヤ、高圧限流ヒューズは、必要でないものとされていません。
Q保護協調とは何ですか?
事故が起きたときに、事故点に近い保護装置が先に動作して事故の範囲を限定し、上位の装置の動作を避ける考え方です(当サイトの説明)。公表問題では、「地絡継電装置は,波及事故を防止するため,一般送配電事業者側との保護協調が必要である。」が不適切な記述に含まれていません(令和8年度上期 出題例 問30、令和6年度上期 出題例 問30)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月21日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
