計器用変成器は変流器(CT)と計器用変圧器(VT)の総称。CTは大電流を小電流に、VTは高電圧を低電圧に変成し、零相変流器(ZCT)は零相電流を検出します。VCT・変流比の計算・二次側の接地(D種)・CT二次側開放の注意まで、第一種電気工事士の公表問題の正答で整理します。
目次
結論:計器用変成器は、変流器(CT)と計器用変圧器(VT)の総称です。CTは大電流を小電流に(二次側は一般に5A)、VTは高電圧を低電圧に(二次側は一般に110V)変成して、計器や保護継電器に渡します。零相変流器(ZCT)は、地絡で現れる零相電流を検出する機器です。公表問題では、写真の機器の用途として「大電流を小電流に変成し,計器での測定を可能にする。」が正答(令和8年度下期 問22)、配線図の①の機器については「零相電流を検出する。」が正答でした(令和8年度上期 出題例 問41)。
変流器・計器用変圧器・零相変流器を一枚で見る
高圧受電設備の単線結線図には、丸や重なった円の図記号で変成器が何種類も出てきます。次の表は、当サイトの整理です。
| 機器 | 略号 | 変成・検出するもの | 二次側の接続先 | 公表問題の手がかり |
|---|---|---|---|---|
| 変流器 | CT | 大電流を小電流に変成する | 電流計、過電流継電器 | 令和8年度下期 問22、令和6年度上期(出題例)問44、令和7年度下期 問47 |
| 計器用変圧器 | VT | 高電圧を低電圧に変成する | 電圧計、不足電圧継電器 | 令和8年度上期(出題例)問43、令和7年度下期 問44 |
| 電力需給用計器用変成器 | VCT | 電力量計のために電圧と電流を変成する | 電力量計(Wh) | 令和7年度上期(出題例)問43、令和6年度下期 問43 |
| 零相変流器 | ZCT | 零相電流を検出する | 地絡継電器、地絡方向継電器 | 令和8年度上期(出題例)問41 |
試験センターが公表している問題は、次のとおり出典を書いて引用します(例:出典:令和8年度下期 第一種電気工事士 学科試験 問22(一般財団法人 電気技術者試験センター))。以降の表では年度・区分と問番号だけを書きます。
変流器(CT)は大電流を小電流に変える
変流器は、電路に流れる大きな電流を、計器や継電器が扱える小さな電流に変成する機器です。二次側の定格電流は一般に5Aで、1Aのものもあります。
試験では、次の形で出ています。
| 出題の形 | 出題 | 公式の正答 |
|---|---|---|
| 写真の用途 | 令和8年度下期 問22、令和6年度上期(出題例)問22 | 大電流を小電流に変成し,計器での測定を可能にする。 |
| 配線図の機器の役割 | 令和6年度上期(出題例)問44(④)、令和7年度下期 問47(⑦) | 高圧電路の電流を変流する(変成する)。 |
令和8年度下期 問22の選択肢には「零相電流を検出する。」「高電圧を低電圧に変成し,計器での測定を可能にする。」「進相コンデンサに接続して投入時の突入電流を抑制する。」もありますが、どれも変流器の用途としては正答ではありません。
配線図では、変流器は電路に重なる丸の図記号で描かれ、二次側につながる過電流継電器(I >)と電流計(A)に電流を渡します。
変流比の計算
変流器の銘板には「100/5 A」のように変流比が書かれます。一次電流 = 二次電流 × (一次定格 ÷ 二次定格) です(当サイトの説明)。
当サイトの計算として、変流比100/5 Aの変流器で、一次電流が60 Aなら、二次電流は 60 × 5/100 = 3 A です。逆に、変流比200/5 Aの変流器につないだ電流計が4.2 Aを示すなら、一次電流は 4.2 × 200/5 = 4.2 × 40 = 168 A です。
二次側を開放しない
一次側に電流が流れている状態で変流器の二次側を開放すると、二次側に高い電圧が生じます。点検や試験で電流回路を触るときは、二次側を開放しない扱いが基本です(当サイトの説明)。令和8年度上期(出題例)問36は、過電流継電器試験時の注意事項を問い、「変流器による異常電圧の発生を防ぐため,電流用試験端子の継電器側端子の全てを短絡しておく。」を誤りとしました。同じ問題の「過電流継電器の現状の整定値を記録しておく。」は誤りではありません。誤りとされたのは「継電器側」の端子を全て短絡しておく、という手順の記述で、変流器の二次側を開放してはいけないことと、この選択肢が誤りであることは別の話です。正しい手順はこの問題の選択肢からは読み取れないため、実際の試験は受電設備の保安規程や教材の手順で確認してください。過電流継電器の試験項目と注意事項は過電流継電器(OCR)の役割と試験で扱っています。
計器用変圧器(VT)は高電圧を低電圧に変える
計器用変圧器は、高圧の電圧を、電圧計や継電器が扱える低い電圧に変成する機器です。二次側の電圧は一般に110Vです。変流器とは逆に、二次側を短絡してはいけません(当サイトの説明)。
| 出題 | 内容 | 公式の正答 |
|---|---|---|
| 令和8年度上期(出題例)問43 | 配線図の③(計器用変圧器の図記号)の役割 | 高電圧を低電圧に変成する。 |
| 令和6年度下期 問22 | 写真の機器の用途 | 高電圧を低電圧に変成する。 |
| 令和7年度下期 問44 | ④の限流ヒューズを使用する主な目的 | 計器用変圧器の内部短絡事故が主回路に波及することを防止する。 |
令和7年度下期 問44の選択肢には「計器用変圧器の欠相を防止する」「計器用変圧器の過負荷を防止する」「計器用変圧器を雷サージから保護する」もありますが、正答ではありません。配線図で、計器用変圧器の電源側に置かれたヒューズの役目は、変圧器が内部で短絡したときに主回路まで事故を広げないことです。
VCT(電力需給用計器用変成器)は計量のための変成器
VCTは、計器用変圧器(VT)と変流器(CT)を1つの箱にまとめた形で、電力量計につながります。電力量の計量に使われる機器で、配線図では、箱の中に重なった円(VT)と電路に重なる丸(CT)が描かれ、右側の電力量計(Wh)に配線されます。
| 出題 | 内容 | 公式の正答 |
|---|---|---|
| 令和7年度上期(出題例)問43 | ③で示す機器の文字記号(略号) | VCT(選択肢はVTT・VCT・MCB・VCB) |
| 令和6年度下期 問43 | ③で示す機器の名称と文字記号の組合せ | 電力需給用計器用変成器 VCT |
| 令和7年度上期(出題例)問22 | 写真の機器の名称 | 電力需給用計器用変成器 |
令和6年度下期 問43では、「零相計器用変圧器 ZCT」「零相計器用変圧器 ZVT」「電力需給用計器用変成器 EVT」の組合せは正答ではありません。ZCTは零相変流器の略号です。
零相変流器(ZCT)と零相電圧を検出する機器
地絡事故の検出には、零相電流を見る方法と零相電圧を見る方法があります。配線図の①で、検出するものを問う問題がこの2つで出ています。
| 出題 | ①で示す機器 | 公式の正答 |
|---|---|---|
| 令和8年度上期(出題例)問41 | 零相変流器(図記号は電路に重なる丸) | 零相電流を検出する。 |
| 令和6年度上期(出題例)問41 | 零相電圧を検出する機器(図記号は点線の枠内のコンデンサと変圧器) | 零相電圧を検出する。 |
令和8年度上期の問41には零相電圧・異常電圧・短絡電流を検出する選択肢が、令和6年度上期の問41には零相電流・短絡電流・欠相電圧を検出する選択肢が並んでいますが、いずれも正答ではありません。零相電流と零相電圧は、どちらの問題にも選択肢として並びます。
零相変流器は、電路の3本の電線をまとめて貫通させ、各相の電流のベクトル和(零相電流)を取り出します。地絡のときだけ零相電流が現れるので、地絡継電器と組み合わせて使います(当サイトの説明)。地絡方向継電器は、零相電流に加えて零相電圧も使って地絡の方向を判定します(当サイトの説明)。ケーブルのシールド接地線とZCTの位置関係は、高圧ケーブル端末処理の要点で、地絡過電圧継電器は地絡過電圧継電器の試験方法で扱っています。
計器用変成器の二次側には接地を施す
電気設備の技術基準の解釈 第28条は、第1項で「高圧計器用変成器の2次側電路には、D種接地工事を施すこと。」、第2項で「特別高圧計器用変成器の2次側電路には、A種接地工事を施すこと。」と定めています。
| 出題 | 正答(公式) |
|---|---|
| 令和7年度下期 問35「D種接地工事を施さなければならない箇所は」 | 高圧計器用変成器の二次側電路 |
| 令和7年度上期(出題例)問32「不適切なものは」 | 計器用変成器の二次側電路の接地は,B 種接地工事である。 |
令和7年度上期(出題例)問32の選択肢「高圧電路に取り付けた変流器の二次側電路の接地は,D 種接地工事である。」は、不適切とされていません。令和7年度下期 問35の選択肢では、高圧電路に施設する外箱のない変圧器の鉄心、使用電圧400Vの電動機の鉄台、6.6kV/210V変圧器の低圧側の中性点は、正答ではありません。
まとめ
- 計器用変成器は、変流器(CT)と計器用変圧器(VT)の総称。
- CTは大電流を小電流に、VTは高電圧を低電圧に変成する。CTは二次側を開放しない。
- 変流比は、一次電流 = 二次電流 × (一次定格 ÷ 二次定格) で換算する。
- VCTは電力需給用計器用変成器で、電力量計につながる。ZCTは零相変流器で、零相電流を検出する。
- 高圧計器用変成器の二次側電路にはD種接地工事、特別高圧にはA種接地工事(解釈 第28条)。
高圧受電設備の問題を続けて解く
配線図の問題では、変成器の図記号と、検出するもの・名称・略号が結びつけて問われます。続けて解いてみましょう。
よくある質問
Q変流器(CT)の二次側を開放してはいけないのはなぜですか?
一次側に電流が流れている状態で二次側を開放すると、二次側に高い電圧が生じて、感電や機器の損傷のおそれがあるためです(当サイトの説明)。試験や点検で電流回路を触るときは、変流器の二次側を開放状態にしない扱いが前提になります。過電流継電器の試験時の注意事項を問う公表問題は、本文で取り上げています。
Q高圧計器用変成器の二次側には、何種接地工事を施しますか?
電気設備の技術基準の解釈 第28条第1項は「高圧計器用変成器の2次側電路には、D種接地工事を施すこと。」と定め、第2項で特別高圧計器用変成器の2次側電路にはA種接地工事を施すと定めています。公表問題では、令和7年度下期 問35で「高圧計器用変成器の二次側電路」がD種接地工事を施さなければならない箇所の正答でした。令和7年度上期(出題例)問32は、「計器用変成器の二次側電路の接地は,B 種接地工事である。」を不適切な記述としています。
QVCTとは何の略号で、何をする機器ですか?
VCTは電力需給用計器用変成器の略号です。令和6年度下期 問43は、図の③の名称と文字記号の組合せで「電力需給用計器用変成器 VCT」を正答としました。令和7年度上期(出題例)問43は③の文字記号を問い、正答はVCTです。配線図では、VCTは電力量計(Wh)につながる箱として描かれ、計量のために高電圧と大電流を変成します。
Q零相変流器(ZCT)と変流器(CT)は、どこが違いますか?
検出するものが違います。令和8年度上期(出題例)問41は、①で示す機器について「零相電流を検出する。」を正答としました(図の①は零相変流器)。一方、令和8年度下期 問22の写真の変流器は「大電流を小電流に変成し,計器での測定を可能にする。」が正答です。零相変流器は電路の3本の電線をまとめて貫通させ、地絡のときに現れる電流を取り出します。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月21日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
