高圧受電設備の断路器(DS)・負荷開閉器(LBS・GR付PAS)・遮断器(VCB)の違いを、第一種電気工事士の公表問題の正答で整理します。断路器は電流が流れていない電路を開く機器、短絡の遮断は遮断器か限流ヒューズ。主遮断装置のCB形とPF・S形、遮断容量の計算も解説。
目次
結論:断路器(DS)は「電流が流れていない電路を開閉する機器」で、負荷電流も事故電流も切る機器ではありません。負荷電流を開閉する役目は負荷開閉器(LBS・PAS)、短絡電流の遮断は限流ヒューズか遮断器(VCBなど)が受け持ちます。公表問題では、断路器について「電路や機器の点検時に負荷電流が流れていない電路を開放する」が正しい記述とされ(令和7年度上期 出題例 問45)、「故障時に電路を自動遮断する」は誤りとされました(令和8年度上期 出題例 問19)。
断路器・負荷開閉器・遮断器の違いを一枚で見る
高圧受電設備の単線結線図には、電路を開閉する機器が何種類も並びます。試験では「名称」「略号」「何ができて何ができないか」が問われます。次の表は、当サイトの整理です。右の列は、その根拠にした公表問題です。
| 機器 | 略号の例 | 役目 | 公表問題の手がかり |
|---|---|---|---|
| 断路器 | DS | 電流が流れていない電路を開閉する。点検時に電路を切り離す | 令和7年度上期(出題例)問30・問45、令和8年度上期(出題例)問19 |
| 負荷開閉器 | LBS、PAS | 電路を開閉する開閉器。限流ヒューズ付(PF・S形)ではヒューズが短絡を遮断する。GR付PAS(SOG機能付)は短絡を自分では遮断せず、一般送配電事業者側の遮断を待って開く | 令和6年度下期 問30、令和8年度上期(出題例)問30 |
| 遮断器 | VCB、CB | 短絡など事故時の電流を遮断する | 令和7年度下期 問20、令和7年度上期(出題例)問20 |
| 電磁接触器 | — | 高頻度の開閉に使う(問題の選択肢の名称は「高圧交流真空電磁接触器」) | 令和6年度下期 問20 |
試験センターが公表している問題は、次のとおり出典を書いて引用します(例:出典:令和6年度上期 第一種電気工事士 学科試験(出題例)問20(一般財団法人 電気技術者試験センター))。以降の表では年度・区分と問番号だけを書きます。
断路器(DS)は電流が流れていない電路を開く機器
断路器は、点検や修理のときに電路を切り離すための機器です。令和7年度上期の学科試験(出題例)問30は、図の①で示す断路器(DS)について「誤っているもの」を選ぶ問題でした。
| 選択肢の記述(原文) | 扱い |
|---|---|
| DS は区分開閉器として施設される。 | 誤り(公式の正答) |
| DS は負荷電流が流れている時,誤って開路しないようにする。 | 誤りではない |
| DS の接触子(刃受)は電源側,ブレード(断路刃)は負荷側にして施設する。 | 誤りではない |
| DS は断路器である。 | 誤りではない |
出典:令和7年度上期 第一種電気工事士 学科試験(出題例)問30(一般財団法人 電気技術者試験センター)
ここで覚えるのは次の3点です。
1. 断路器は区分開閉器ではありません。一方、令和6年度下期 問30では、地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS)について「GR 付PAS は,保安上の責任分界点に設ける区分開閉器として用いられる。」が不適切な記述とされませんでした。
2. 断路器は、負荷電流が流れている時に開路してはいけません。
3. 同じ試験の問45では、⑤で示す機器(図の断路器)の記述として「電路や機器の点検時に負荷電流が流れていない電路を開放する。」が正しいとされました。「雷サージの侵入時に電路を開放する」「地絡事故時に電路を遮断する」「短絡事故時に電路を遮断する」は正答ではありません。
送配電の分野でも同じです。令和8年度上期(出題例)問19では「断路器は,送配電線や変電所の母線,機器などの故障時に電路を自動遮断するものである。」が誤りでした。同じ問題の「空気遮断器は,発生したアークに圧縮空気を吹き付けて消弧するものである。」は誤りとされていません。
断路器を開く前には、遮断器など電流を切れる機器で先に電流を止める必要があります。これは、断路器が電流が流れていない電路を開閉する機器であることからの当サイトの説明です。
負荷開閉器(LBS・PAS)と限流ヒューズ付のPF・S形
負荷開閉器は、電路を開閉する機器です。受電設備では、次の使われ方が出題されています。
- GR付PAS:地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器。令和6年度下期 問30は、不適切な記述を選ぶ問題で、「GR 付PAS は,短絡等の過電流を遮断する能力を有しないため,過電流ロック機能が必要である。」は不適切ではない記述でした。不適切とされたのは、需要家内のケーブルが長い施設に「地絡過電圧継電器を設置することが望ましい」とした記述です(令和8年度上期(出題例)問30の同種の選択肢では、「地絡方向継電装置を設置することが望ましい」が不適切とされていません)。
- SOG機能付:令和8年度上期(出題例)問30で、不適切な記述は「SOG は,需要家側高圧電路の地絡事故により地絡電流が流れたとき,負荷開閉器を一旦ロックし,一般送配電事業者側の遮断装置の動作後,無充電の状態で自動的に負荷開閉器を開路する。」でした。同じ問題の、短絡事故により短絡電流が流れたときに負荷開閉器を一旦ロックし、一般送配電事業者側の遮断装置の動作後に無充電の状態で開路する、という記述は不適切とされていません。短絡のときは、自分で遮断せず、配電線側の遮断を待ちます。
- UGS(地中線用地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器):令和7年度下期 問30は「短絡事故を遮断する能力を有する必要がある。」、令和8年度下期 問30は「電路に短絡が生じた場合,瞬時に電路を遮断する機能を有している。」が、それぞれ不適切な記述でした。
- 限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器:配線図では、変圧器につながる回路に描かれます。令和7年度下期 問48は、⑧で示す機器の名称が「限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器」で、ヒューズ付断路器・ヒューズ付高圧カットアウト・限流ヒューズ付高圧交流遮断器は正答ではありません。令和6年度上期(出題例)問48でも、⑧に設置できる機器の正答は「限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器」で、断路器・高圧気中負荷開閉器・ヒューズ付高圧カットアウトは正答ではありませんでした。
電気設備の技術基準の解釈 第34条は、高圧の電路に施設する過電流遮断器について、第1項第一号で「電路に短絡を生じたときに作動するものにあっては、これを施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有すること。」と定めています。第2項は、過電流遮断器として使う高圧の包装ヒューズの条件に、高圧限流ヒューズを挙げています。ヒューズも、短絡電流を切る役目を負う過電流遮断器です。
GR付PASのように短絡電流の遮断能力がない負荷開閉器は、過電流が流れたときに開かないようにロックする機能(過電流ロック)を持たせます。短絡は限流ヒューズや遮断器、あるいは一般送配電事業者側の遮断装置が先に切る前提の機器、と考えると整理できます。
遮断器(VCBなど)は短絡電流を遮断する
遮断器は、事故時の大きな電流を切るための機器です。試験では次の形で出ています。
| 出題 | 正答(公式) | 解き方のポイント |
|---|---|---|
| 令和7年度下期 問20「高圧受電設備の短絡保護装置として,適切な組合せは」 | 過電流継電器と高圧真空遮断器 | 地絡継電器と真空遮断器、過電流継電器と高圧柱上気中開閉器、地絡方向継電器と高圧柱上気中開閉器の組合せは、正答ではない |
| 令和7年度上期(出題例)問20「受電用遮断器の遮断容量を決定する場合に,必要なものは」 | 受電点の三相短絡電流 | 受電用変圧器の容量・最大負荷電流・契約電力は、この問題の正答ではない |
| 令和6年度上期(出題例)問23「写真に示す機器の文字記号(略号)は」 | VCB | 選択肢はDS・PAS・LBS・VCB |
過電流継電器(OCR)が短絡電流を検出し、遮断器に開く指令を出す、という組合せで短絡保護が成り立ちます。継電器の役割と試験項目は、過電流継電器(OCR)の役割と試験で、継電器に電流を渡す変流器は変流器(CT)・計器用変圧器(VT)・零相変流器の違いで扱っています。
遮断器は、アークを消す(消弧する)方式で、真空・ガス・油・空気に分かれます(当サイトの整理)。令和7年度下期 問20の正答に出てくる「高圧真空遮断器」は、真空の中でアークを消すもので、略号はVCBです。ガス遮断器・油入遮断器・気中遮断器も同じ「遮断器」の仲間です。試験では、受電設備の問題で真空遮断器、送配電・変電の問題で空気遮断器とGIS(SF6ガスを用いた絶縁開閉装置)が出ています(令和8年度上期 出題例 問19)。
遮断容量の計算
遮断容量は、三相では √3 × 定格電圧 × 定格遮断電流 で表します(当サイトの説明)。令和6年度上期(出題例)問20は、公称電圧6.6kVの高圧受電設備に使う高圧交流遮断器(定格電圧7.2kV、定格遮断電流12.5kA、定格電流600A)の遮断容量を問いました。√3 × 7.2 × 12.5 ≒ 155.9 [MV・A] で、選択肢(80・100・130・160)のうち計算値に最も近い160 MV・A(ニ)が公式の正答です。定格電流600Aは、この計算には使いません。
当サイトの計算として、定格電圧7.2kV・定格遮断電流8kAの遮断器を考えます。√3 ≒ 1.7321、1.7321 × 7.2 ≒ 12.471、12.471 × 8 ≒ 99.77 なので、遮断容量は約99.8 MV・Aです(√3 × 7200 V × 8000 A ≒ 99,766,000 V・A でも同じ)。
主遮断装置はCB形とPF・S形で選び方が違う
キュービクル式高圧受電設備の主遮断装置は、遮断器(CB形)か、限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器(PF・S形)です。
令和7年度下期 問21は「キュービクル式高圧受電設備の主遮断装置として,不適切なものは」を問い、公式の正答は「受電設備容量400 kV・A の高圧受電設備に限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器(PF・S形)」でした。500 kV・Aの高圧交流遮断器(CB形)、300 kV・AのCB形、200 kV・AのPF・S形は、不適切とされていません。受電設備容量が大きいと、PF・S形は主遮断装置として使えない場合がある、という出題です。
令和6年度下期 問33は、PF・S形の主遮断装置として「必要でないもの」を問い、正答は過電流継電器でした。ストライカによる引外し装置、相間・側面の絶縁バリヤ、高圧限流ヒューズは、必要でないものとされていません。PF・S形は限流ヒューズが短絡を受け持つ構成なので、過電流継電器は必要でない、と整理できます(当サイトの整理)。
PF・S形が使える容量の考え方、単線結線図全体の読み方は、高圧ケーブル端末処理の要点でも主遮断装置とあわせて扱っています。
写真・略号・名称で問われる形
同じ機器でも、出題の形はいくつかあります。
| 出題の形 | 例 | 公式の正答 |
|---|---|---|
| 写真の略号を選ぶ | 令和6年度上期(出題例)問23(選択肢 DS・PAS・LBS・VCB) | VCB |
| 高頻度開閉の機器を選ぶ | 令和6年度下期 問20(選択肢 高圧断路器・高圧交流負荷開閉器・高圧交流真空電磁接触器・高圧交流遮断器) | 高圧交流真空電磁接触器 |
| 写真の品物を組み合わせた目的を選ぶ | 令和8年度下期 問23(GR付PASと制御装置の写真) | 高圧電路の開閉と、地絡事故が発生した場合の高圧電路の遮断 |
| 設置できる機器・名称を選ぶ | 令和6年度上期(出題例)問48、令和7年度下期 問48 | 限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器 |
令和8年度下期 問23の選択肢には「短絡事故が発生した場合の高圧電路の遮断」もありますが、これは正答ではありません。GR付PASは、地絡は検出して遮断し、短絡は遮断しない(過電流ロック)、と対応しています。
まとめ
- 断路器(DS)は、電流が流れていない電路を開閉する機器。区分開閉器ではなく、故障時に自動で遮断する機器でもない。
- 負荷開閉器(LBS・PAS)は電路を開閉する機器。GR付PASやUGSは短絡電流の遮断能力を持たない前提で出題される。
- 短絡電流を遮断するのは遮断器(VCBなど)か限流ヒューズ。短絡保護の組合せは、過電流継電器と高圧真空遮断器。
- 遮断容量は √3 × 定格電圧 × 定格遮断電流。受電用遮断器では受電点の三相短絡電流が必要。
- 主遮断装置は、CB形かPF・S形。PF・S形では過電流継電器は必要でない。
- 高頻度開閉は電磁接触器。高圧カットアウトは、ここで挙げた2問のどちらでも正答の機器ではない。
高圧受電設備の問題を続けて解く
配線図の問題では、断路器・負荷開閉器・遮断器の並びと略号が、位置で問われます。電気機器の問題や、検査・試験の問題もあわせて解いてみましょう。
よくある質問
Q断路器と遮断器の違いを一言でいうと何ですか?
断路器(DS)は、電流が流れていない電路を開閉するための機器です。令和7年度上期の学科試験(出題例)問45では「電路や機器の点検時に負荷電流が流れていない電路を開放する」が断路器の役割の正しい記述とされ、令和8年度上期(出題例)問19では「断路器は,送配電線や変電所の母線,機器などの故障時に電路を自動遮断するものである」が誤りとされました。故障時に電路を遮断するのは遮断器の役目です。
Q負荷開閉器は短絡電流を遮断できますか?
地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS)については、公表問題が「短絡等の過電流を遮断する能力を有しないため,過電流ロック機能が必要である」を正しい記述として扱っています(令和6年度下期 問30)。令和7年度下期 問30では、地中線用のUGSについて「短絡事故を遮断する能力を有する必要がある」が不適切とされました。短絡電流は、需要家側の遮断器・限流ヒューズか、一般送配電事業者側の遮断装置が遮断します。
Q遮断器の遮断容量はどうやって計算しますか?
三相の遮断容量は、√3 × 定格電圧 × 定格遮断電流で求めます。令和6年度上期(出題例)問20は、定格電圧7.2kV・定格遮断電流12.5kAの高圧交流遮断器の遮断容量を問い、公式の正答は選択肢の160 MV・Aでした。√3 × 7.2 × 12.5 は約155.9 で、選択肢のうち計算値に最も近い160が正答です。当サイトの計算として、定格電圧7.2kV・定格遮断電流8kAなら√3 × 7.2 × 8 ≒ 99.8 MV・Aになります。
Q高頻度で開閉する機器は、断路器・負荷開閉器・遮断器のどれですか?
どれでもありません。令和6年度下期 問20は「次の機器のうち,高頻度開閉を目的に使用されるものは」を問い、選択肢の高圧断路器・高圧交流負荷開閉器・高圧交流遮断器ではなく、高圧交流真空電磁接触器が公式の正答でした。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月21日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
