問題
電離放射線による健康影響および被ばく管理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
誤りはオです。X線(電磁波)は透過力は強いですが、電離密度は高くありません。高密度の電離を起こすのはα線で、放射線加重係数もα線は20、β線・γ線は1とされています。α線は透過力が弱く皮膚の角質層を透過できないため外部被ばくは問題になりませんが、体内に取り込まれた場合(内部被ばく)に強い影響を与えます。
ア(確定的影響・確率的影響)・イ(実効線量限度)・ウ(女性の実効線量3か月5mSv)・エ(白内障のしきい値の見直し)はすべて正しい内容です。
電離放射線の種類と特性:
| 放射線の種類 | 実体 | 透過力 | 電離密度 | 止める物 |
|---|---|---|---|---|
| α線 | ヘリウム原子核 | 弱い(皮膚の角質層を透過できない) | 高い | 紙1枚 |
| β線 | 電子 | 弱いがα線よりは透過 | 低い | プラスチック1cm・アルミ板2〜4mm程度 |
| γ線・X線 | 電磁波 | α線・β線より高い | 高くない | 鉛や鉄の厚い板 |
| 中性子線 | 中性子 | 電荷を持たず衝突でエネルギーを失う | ― | 陽子(水素の原子核)との衝突で効果的に減速 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 確定的影響(組織反応)には、これ以下なら影響が生じないという「しきい線量」があります。確率的影響(がん・遺伝性影響)は、放射線防護上しきい線量はないと仮定され、ICRPは低線量域でも線量に依存して影響があると仮定して基準を定めています。
- イ(正): 電離則第4条第1項。実効線量は5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSvを超えないようにします。
- ウ(正): 電離則第4条第2項。女性(妊娠する可能性がないと診断されたもの等を除く)の実効線量は3月間につき5mSvを超えないようにします。
- エ(正): 白内障のしきい値は1.5グレイとされてきましたが、ICRPは0.5グレイ程度に見直し、眼の水晶体の職業被ばくの新しい等価線量限度を設けました。
- オ(誤): γ線・X線は透過力が強いものの電離密度は高くなく、生物への影響力はβ線と同程度です。高密度の電離を起こすのはα線です。
【理論的背景】
電離放射線の健康影響は、影響が生じるメカニズムの違いにより「確定的影響(組織反応)」と「確率的影響」に分けられます。確定的影響は臓器や組織を構成する細胞が多数死んだり変性したりすることで起こり(急性放射線症候群・白内障・胎児への影響等)、しきい線量を超えると発生率が急激に増加します。確率的影響はがんや遺伝性影響のように遺伝子の変異で起こる影響で、放射線防護上しきい線量はないと仮定されています。
電離密度と放射線加重係数(wR):
- α線は組織内で局所的に高密度の電離を起こし、DNAに大きな損傷を与える
- β線は直接電離を起こすが電離の密度は低い。γ線・X線は透過力が強く深部まで到達するが電離密度は高くなく、生物への影響力はβ線と同程度
- 放射線加重係数(ICRP 2007年勧告): α線=20、β線・γ線=1。中性子線はエネルギーによりγ線・β線の2.5〜21倍の人体影響を見込む
等価線量(Sv)は、組織・臓器ごとの吸収線量(Gy)に放射線加重係数を乗じて求めます。α線は同じ吸収線量のγ線やβ線に比べ、人体に及ぼす影響が20倍とされています。
【実務・条文構造】
電離則の線量限度(電離則第4条〜第6条):
実効線量限度(第4条):
- 放射線業務従事者: 5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv
- 女性(妊娠する可能性がないと診断されたもの等を除く): 3月間につき5mSv
等価線量限度(第5条):
- 眼の水晶体: 5年間につき100mSv及び1年間につき50mSv
- 皮膚: 1年間につき500mSv
妊娠と診断された女性(第6条): 妊娠と診断されたときから出産までの間につき、内部被ばくによる実効線量1mSv・腹部表面に受ける等価線量2mSv
確定的影響のしきい値の例(環境省 基礎資料):
- 精巣: 一度に0.1グレイ以上で一時的不妊
- 骨髄: 0.5グレイ以上で造血能が低下
- 水晶体(白内障): 1.5グレイとされてきたが、ICRPが0.5グレイ程度に見直し
確率的影響の考え方:
がんリスクは、およそ150mSv以上ではほぼ直線的に線量と共に上昇することが分かっていますが、それより低い線量で直線的に上昇するかは明らかではありません。ICRPは低線量域でも線量に依存して影響(直線的な線量反応)があると仮定して、放射線防護の基準を定めています。
【試験での位置づけ】
電離放射線問題では「確定的影響(しきい線量あり)と確率的影響(しきい線量なしと仮定)の区別」「実効線量限度(5年100mSv・1年50mSv)」「女性の実効線量3か月5mSv」「妊娠中の内部被ばく1mSv・腹部表面2mSv」「水晶体の等価線量限度(5年100mSv・1年50mSv)」「放射線の種類と電離密度・透過力」が問われます。オのような「透過力が高いX線ほど影響が大きい」という記述は、透過力と電離密度を混同させる典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 確定的影響の例は急性放射線症候群(皮膚障害・造血能低下)・胎児への影響・白内障、確率的影響の例はがん・遺伝性影響です。ただしヒトでは、動物実験と同じような頻度で放射線による遺伝性疾患が出現することは確認されていません。
- イ: 実効線量限度は「5年間で100mSv」と「1年間で50mSv」の両方を満たす必要がある二重の制限です(電離則第4条第1項)。
- ウ: 女性の3月間5mSvは実効線量の限度です(電離則第4条第2項)。妊娠と診断された後は、別に第6条の限度(内部被ばくによる実効線量1mSv・腹部表面に受ける等価線量2mSv)が適用されます。
- エ: 白内障のように発症まで数年かかる確定的影響もあります。電離則第5条の眼の水晶体の等価線量限度は、5年間につき100mSv及び1年間につき50mSvです。
- オ: α線は皮膚の角質層を透過できないため外部被ばくは問題になりませんが、α線を放出する放射性物質による内部被ばくでは、組織内で局所的に高密度の電離を起こし、DNAに大きな損傷を与えます。
【根拠】電離放射線障害防止規則(電離則)第4条(実効線量の限度)・第5条(等価線量の限度)・第6条(妊娠中の女性の限度)。環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和4年度版)」(電離放射線の種類・放射線の透過力・様々な係数・確定的影響と確率的影響・様々な影響のしきい値)。
【補足】オ(誤): X線・γ線は透過力が強いが電離密度は高くない。高密度の電離を起こすのはα線(放射線加重係数20)。実効線量限度=5年100mSv・1年50mSv。女性=3月5mSv(実効線量)。
- 電離放射線障害防止規則第4条・第5条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 電離放射線障害防止規則(電離則)第4条・第5条・第6条。放射線の性質・健康影響は環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和4年度版)」。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

