衛生管理者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

衛生管理者 労働生理 問27|神経・自律神経の拮抗作用

問題

衛生管理者 | 労働生理

自律神経系の働きに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

誤りはエです。瞳孔を「散大(拡大)させる」のは交感神経の作用です(副交感神経ではありません)。副交感神経が活性化すると瞳孔は縮小(縮瞳)します。暗い場所(交感神経優位)では瞳孔が散大して光を多く取り込み、明るい場所(副交感神経優位)では縮瞳して光量を調節するのが正しい方向です。「副交感神経が遠方を見るときに活性化」という記述も誤りで、近くを見るときに毛様体筋が収縮・水晶体が厚くなる(副交感神経)が正しいです。

その他の選択肢はすべて正確です。交感神経→心拍数増加・気管支拡張(ア)、副交感神経→心拍数低下・消化促進(イ)、骨格筋血管のβ₂受容体拡張(ウ)、二重支配・拮抗作用(オ)はいずれも正確です。

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 交感神経(「闘争か逃走」反応)の主要な効果: 心拍数・心収縮力↑(β₁受容体)、血圧↑、気管支拡張(β₂受容体→平滑筋弛緩)→換気量↑、骨格筋血流↑、肝臓でのグリコーゲン分解↑(アドレナリン・ノルアドレナリン作用)。これらはいずれも身体活動・危機対応に適した変化です。
  • イ(正): 副交感神経(「休息・消化」反応)の主要な効果: 心拍数低下(M₂受容体)、消化管蠕動促進・消化液(胃液・膵液・唾液等)分泌増加(M₁・M₃受容体)、排尿促進、縮瞳(M₃受容体)、気管支収縮(M₃受容体)。
  • ウ(正): 骨格筋血管への二重作用は重要な知識です。ノルアドレナリン(交感神経末梢から放出)→α₁受容体→血管収縮。アドレナリン(副腎髄質から分泌)→β₂受容体(骨格筋血管に多い)→血管拡張。運動時には副腎髄質からのアドレナリン増加→β₂作用で骨格筋血管拡張→骨格筋への血流増加が促進されます。
  • エ(誤): 瞳孔の調節が逆です。 交感神経→瞳孔散大筋(虹彩の放射状筋)収縮→散瞳(瞳孔拡大)。副交感神経(動眼神経を介した毛様体神経節)→瞳孔括約筋(輪状筋)収縮→縮瞳(瞳孔縮小)。さらに調節(近くを見る)は副交感神経→毛様体筋収縮→水晶体が厚くなる(近くに焦点)。「遠方を見るときに副交感神経」という部分も逆(遠方を見るときは毛様体筋弛緩→水晶体が薄くなる=交感神経優位の弛緩状態)。
  • オ(正): 自律神経系の拮抗的な二重支配の正確な記述。多くの臓器(心臓・消化管・気管支・瞳孔等)は交感・副交感の両方によって支配されており、状況に応じてバランスが変化します。

【理論的背景】

自律神経系は「自らの意思によらず(自律的に)」内臓・血管・腺を制御する神経系です。交感神経と副交感神経は多くの臓器で拮抗的に作用し、体の「準備モード(闘争・逃走)」と「回復モード(休息・消化)」のバランスを調節します。

自律神経系の体系整理:

効果器官交感神経副交感神経
心臓(拍動数)増加(β₁)低下(M₂)
心臓(収縮力)増加(β₁)低下(M₂)
冠動脈拡張(β₂)軽度収縮
皮膚・内臓血管収縮(α₁)支配なし(一部拡張)
骨格筋血管収縮(α₁)・拡張(β₂)軽度拡張
気管支拡張(β₂)収縮・分泌↑(M₃)
消化管蠕動抑制(α₁・β₁)促進(M₃)
消化液分泌抑制促進(M₁・M₃)
瞳孔散大(α₁:散大筋収縮)縮小(M₃:括約筋収縮)
水晶体(調節)遠方(毛様体筋弛緩)近方(毛様体筋収縮・M₃)
発汗促進(コリン作動性交感神経)なし
立毛筋収縮(寒毛立ち)なし
膀胱(排尿筋)弛緩(β₃)収縮→排尿促進(M₃)
内尿道括約筋収縮→尿閉(α₁)弛緩→排尿(M₃)
副腎髄質アドレナリン・ノルアドレナリン分泌支配なし

自律神経の伝達物質:

  • 交感神経節後線維→ノルアドレナリン(例外: 汗腺へはアセチルコリン)
  • 副交感神経節後線維→アセチルコリン(ムスカリン受容体に作用)
  • 全ての自律神経節前線維→アセチルコリン(ニコチン受容体に作用)

【実務・条文構造】

薬物と自律神経系(産業医学的に重要な薬物の副作用):

交感神経作動薬(アドレナリン・ノルアドレナリン類似物質):

  • β₂刺激薬(気管支拡張薬: サルブタモール等)→気管支拡張(喘息治療)、骨格筋血管拡張(副作用:頻脈・振戦)
  • α₁刺激薬(鼻づまりの内服薬: プソイドエフェドリン等)→鼻粘膜血管収縮(充血緩和)、副作用:高血圧・頻脈
  • 作業適性評価: 交感神経作動薬服用中の労働者(高温環境作業・運転業務等)の適性確認が重要

副交感神経遮断薬(抗コリン薬):

  • アトロピン・スコポラミン・抗ヒスタミン薬の多く→M受容体遮断
  • 副作用:口渇・排尿困難・便秘・眩暈・散瞳(眼圧上昇リスク)・頻脈
  • 職場の安全: 抗コリン薬を服用している労働者が精密作業・高所作業・運転をする場合は副作用(散瞳・眩暈・口渇)に注意

有機リン系農薬中毒(コリンエステラーゼ阻害)の副交感神経過活動症状:

  • SLUDGE症状: Salivation(唾液過多)・Lacrimation(流涙)・Urination(頻尿)・Defecation(下痢)・GI distress・Emesis(嘔吐)
  • さらに縮瞳・気管支収縮(呼吸困難)・徐脈・意識障害
  • 解毒: アトロピン(抗コリン薬)でM受容体遮断→副交感神経過活動を抑制

【試験での位置づけ】

自律神経問題では「交感神経→散瞳・副交感神経→縮瞳(逆は誤り)」「副交感神経→心拍数低下・消化促進(副交感が心拍数を増加は誤り)」「交感神経→気管支拡張(副交感→気管支収縮)」「発汗は交感神経支配(コリン作動性)」が最頻出です。エのような「副交感神経が瞳孔散大」という誤りは交感・副交感の役割を入れ替えた典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「闘争か逃走(Fight or Flight)」反応の実用例: 職場でのパワハラ・激しいプレッシャー→慢性的な交感神経亢進→高血圧・頻脈・不眠・消化不良。これが「過重労働・ストレスが心疾患を引き起こす」生理学的メカニズムです。衛生管理者は慢性ストレス曝露の労働者の血圧・心拍変動をモニタリングすることが重要です。
  • エ: 散瞳と縮瞳の臨床的利用: 眼科での散瞳検査(眼底検査)ではアトロピン(副交感遮断薬)を点眼して散瞳させます。急性緑内障では散瞳すると前房角が閉塞→眼圧急上昇→激しい頭痛・嘔吐・視力低下(緑内障発作)。抗コリン薬が急性緑内障の禁忌である理由がこれです。
  • ウ: 運動時の骨格筋血管拡張の機序は多段階です: ①代謝産物(CO₂・H⁺・K⁺・アデノシン・NO)の局所産生→血管平滑筋直接弛緩(最も重要)②アドレナリン(副腎髄質)→β₂受容体→拡張③交感神経の相対的な抑制。①の代謝産物による局所拡張が最も大きな割合を占め、運動強度に比例して骨格筋血流は増加します。

【根拠】医学的事実(確立した生理学)。副交感神経が縮瞳を起こす(散大ではない)こと・交感神経が散瞳を起こすこと、各臓器に対する交感・副交感神経の拮抗作用は自律神経生理学の基礎概念として確立。

【補足】瞳孔散大は交感神経の作用(副交感神経は縮瞳)。副交感神経→心拍数低下・消化促進・縮瞳。交感神経→心拍数増加・気管支拡張・散瞳・血圧上昇。

この問題の根拠根拠: 医学的事実(確立した生理学)。瞳孔散大は交感神経の作用(副交感神経は縮瞳)。
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出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学)。瞳孔散大は交感神経の作用(副交感神経は縮瞳)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

この問題の関連トピック

  • 神経・自律神経の拮抗作用
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