問題
労働による疲労およびストレスに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
誤りはイです。「精神的疲労も筋肉内の乳酸蓄積が主因」という部分が誤りです。精神的疲労(中枢性疲労)は、判断・集中などで脳(中枢神経系)を使い続けることによって生じるもので、筋肉内の乳酸蓄積とは別の仕組みです。
その他の選択肢は正しい内容です。筋肉疲労はエネルギー基質の枯渇や代謝産物の蓄積で生じ、休息で回復する(ア)。回復しきらない疲労の繰り返しが過労につながる(ウ)。セリエの汎適応症候群は警告反応期・抵抗期・疲弊期の3段階(エ)。フリッカー値は大脳の疲労と関連する客観的指標として使われる(オ)。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 筋肉を使い続けると、エネルギー源となるグリコーゲンが減り、乳酸などの代謝産物がたまって筋肉の働きが落ちます。休息によってエネルギー源が補われ、代謝産物が処理されることで回復します。
- イ(誤): 精神的疲労の原因は脳(中枢神経系)の働きの低下であり、筋肉内の乳酸蓄積ではありません。筋肉を動かさない頭脳作業でも精神的疲労は生じます。
- ウ(正): 疲労が十分に回復しないまま作業を繰り返すと疲労が蓄積し、健康障害につながります。安衛法は、時間外・休日労働が多く疲労の蓄積が認められる労働者に医師による面接指導を行う仕組みを設けています(第66条の8)。
- エ(正): セリエの汎適応症候群は、ストレスに対する生体の反応を、警告反応期(ストレスへの最初の反応)・抵抗期(適応して抵抗力を保つ時期)・疲弊期(適応が限界に達し抵抗力が落ちる時期)の3段階で説明します。
- オ(正): 情報機器作業ガイドラインの解説は、フリッカー値を「光の点滅頻度のことで、この値の低下は覚醒水準の低下に起因する視覚機能の低下を反映している」とし、「大脳の疲労と関連する指標値」として扱っています。
【理論的背景】
疲労には、作業能率の低下という客観的な面と、疲れたという感覚(疲労感)という主観的な面があります。評価では、自覚症状の調査と、客観的な指標(作業能率、フリッカー値などの神経機能の検査)を組み合わせます。
疲労の種類:
| 分類 | 主な原因 | 特徴 | 回復の基本 |
|---|---|---|---|
| 筋肉疲労(末梢性) | エネルギー基質の枯渇・代謝産物の蓄積 | 使った筋肉の働きの低下・だるさ | 休息・栄養補給 |
| 精神的疲労(中枢性) | 脳(中枢神経系)の持続的な使用 | 判断力・集中力の低下 | 睡眠・休息 |
イの誤りは、この二つの仕組みを混同させるものです。
フリッカー値(情報機器作業ガイドラインの解説より):
- 一連続作業時間の目安を1時間としているのは、パソコン作業がおおよそ1時間以上連続すると誤入力の頻度が増すことや、フリッカー値が低下する、すなわち大脳の疲労と関連する指標値に変化がみられたという研究結果に基づいています。
- 疲労測定に関する調査研究として、フリッカー値が5%以上の低下を示して疲労を示す対象者が作業者の25%を超えないことを目標とすると、1日の作業時間は300分が望ましいとされたことも紹介されています。
【実務・条文構造】
職場における疲労・過重労働の管理:
長時間労働者への面接指導(安衛法第66条の8・安衛則第52条の2・第52条の3):
- 対象: 休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた時間が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者
- 方法: 労働者の申出により、事業者が遅滞なく医師による面接指導を行う
- 事業者は、超えた時間の算定を毎月1回以上一定の期日を定めて行い、80時間を超えた労働者にはその時間に関する情報を通知する
- 産業医は、要件に該当する労働者に申出を行うよう勧奨することができる
時間外労働の上限(労働基準法第36条):
- 限度時間は原則として1か月45時間・1年360時間
- 特別な事情がある場合でも、1年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が1か月100時間未満などの範囲に限られる
【試験での位置づけ】
疲労・ストレスの問題では「筋肉疲労=エネルギー基質の枯渇・代謝産物の蓄積(末梢性)」「精神的疲労=中枢神経系の機能低下(乳酸蓄積ではない)」「セリエの汎適応症候群=警告反応期・抵抗期・疲弊期」「フリッカー値=大脳の疲労と関連する客観的指標」が頻出です。イは、筋肉疲労の説明を精神的疲労にそのまま当てはめた引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 筋肉疲労は休息で回復しますが、回復が追いつかないまま作業を続けると疲労が積み重なります。作業の合間の休止はこの回復のためのものです。
- イ: 精神的疲労は、筋肉をほとんど使わない監視・判断・情報処理の作業でも生じます。疲労の種類に応じて、休憩の取り方や作業の組み立てを考える必要があります。
- ウ: 面接指導の要件にある「疲労の蓄積が認められる者」という表現は、疲労が回復しきらずに積み重なった状態を健康管理の対象としていることを示しています。
- エ: 汎適応症候群の疲弊期は、ストレスが長く続いて適応が限界に達し、抵抗力が落ちた段階です。職場では、ストレスの原因を減らし、回復の機会を確保することが大切です。
- オ: フリッカー値は自覚症状と違って測定値として得られるため、作業の前後での変化を比べる客観的な指標として使われます。情報機器作業の一連続作業時間の目安(1時間)の根拠の一つにもなっています。
【根拠】厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」解説(フリッカー値)、労働安全衛生法 第66条の8、労働安全衛生規則 第52条の2・第52条の3、労働基準法 第36条。筋肉疲労・精神的疲労の機序とセリエの汎適応症候群は労働生理学の基本事項。
【補足】精神的疲労(中枢性疲労)は中枢神経系の機能低下が主因(筋肉の乳酸蓄積は誤り)。筋肉疲労=エネルギー基質の枯渇・代謝産物の蓄積(末梢性)。セリエのGAS=警告反応期→抵抗期→疲弊期の3段階。フリッカー値=大脳の疲労と関連する客観的指標。
- 労働安全衛生法第66条の8e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生規則第52条の2e-Govで原文を読む
- 労働基準法第36条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働生理学の基本事項(筋肉疲労と精神的疲労の機序の違い)。フリッカー値は厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」解説(https://www.mhlw.go.jp/content/000539604.pdf)。長時間労働者の面接指導は労働安全衛生法第66条の8・労働安全衛生規則第52条の2・第52条の3。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

