問題
寄託に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか(現行民法に基づいて答えること)。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
イが誤りです。受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、第三者(再受寄者)に寄託物を保管させることができません(民658条2項・2020年改正後)。原則として寄託者の承諾が必要であり、「承諾なく保管させることができる」とするイは誤りです。アは正しく(現行民法は寄託を諾成契約とした・2020年改正で明文化・民657条)、ウは正しく(無償受寄者の注意義務の軽減・民659条)、エは正しく(損害賠償請求は競合して行使可能)、オは正しく(消費寄託の規律・民666条)。
イが誤りです。民法658条2項は「受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない」と規定しており(2020年改正後)、受寄者は原則として寄託者の承諾(またはやむを得ない事由)なく再保管させることはできません。再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において受寄者と同一の権利義務を負います(民658条3項)。イの「承諾なく保管させることができる」という記述が誤りです。
アは正しいです。2020年施行の改正民法(民657条)は、寄託を「諾成契約」として明文化しました(改正前は要物契約と解されていた)。
ウは正しいです。民659条は「無償で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う」と規定し、有償寄託(善管注意義務・民400条)より軽い義務に軽減されています。
エは正しいです。受寄者の権限外処分は債務不履行(寄託契約違反)と不法行為(民709条)の両方を構成しえます(請求権競合)。
オは正しいです。民666条1項は「受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、受寄者は、寄託された物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならない」と規定し、利息は特約によります。
【理論的背景】
寄託(民657条〜666条)は、当事者の一方(寄託者)が相手方(受寄者)に物の保管を委託し、受寄者がこれを承諾する契約です。2020年施行の改正民法では、寄託を諾成契約として明文化(民657条)し、物の引渡しなしに合意のみで契約が成立するとしました。改正前は「受け取ること」を要件とする要物契約と解されていたため、実務(銀行の寄託契約書の締結等)との整合性のために改正されました。なお、寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで解除できます(民657条の2第1項。書面によらない無報酬寄託では受寄者も解除可・同条2項)。
【条文構造】
寄託規定の核心を整理します。
民657条:寄託の成立(諾成契約・2020年改正で明文化)。
民657条の2:受寄者が寄託物を受け取るまで寄託者は解除可能(1項)。書面によらない無報酬寄託では受寄者も受取り前に解除可能(2項)。
民658条:1項(受寄者は寄託者の承諾なく寄託物を使用できない)。2項(受寄者は寄託者の承諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない)。3項(再受寄者は、寄託者に対し、その権限の範囲内で受寄者と同一の権利義務を負う)。いずれも2020年改正後の規律。
民659条:無償受寄者の注意義務の軽減(固有の注意=自己の財産と同一の注意)。有償受寄者は善管注意義務(民400条)。
民666条:消費寄託(同種・同等・同量の返還義務。利息は特約による)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における寄託の典型論点は、①2020年改正による諾成契約への変更(民657条)、②無償受寄者の注意義務の軽減(固有の注意・民659条)と有償受寄者の善管注意義務の対比、③受寄者の再保管の制限(原則として寄託者の承諾必要・民658条)、④消費寄託の規律(同種同等同量の返還・利息特約なければ無利息)の4点です。特に②の有償・無償の注意義務の差異は委任との比較問題として出題されやすい(委任・請負・雇用も含めた総合的な契約法の理解が必要)。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい(2020年改正の核心)。改正前の要物契約説では、物を受け取らなければ寄託契約が成立せず、受寄者が物を受け取り拒んでも責任を負わなかった。改正後は諾成契約となったため、合意後に受寄者が引受けを拒むと債務不履行となる。ただし寄託者には受寄者の受取り前の解除権がある(657条の2第1項)。
- ウ: 正しい(民659条)。無償受寄者の軽減された注意義務(固有の注意)は「自己の財産と同程度の注意」であり、完璧な注意を要しない。例:自宅の倉庫と同様の管理で足りる。有償受寄者(例:倉庫業者)は善管注意義務(より高い注意水準)が求められる。
- イ: 誤り(正答)。民658条2項の承諾(またはやむを得ない事由)必要原則(2020年改正後)。倉庫業者の二次倉庫の利用等の実務問題と関連する。再受寄者は寄託者に対し、その権限の範囲内で受寄者と同一の権利義務を負う(民658条3項)。なお改正前の旧658条2項にあった「無断再保管は不可抗力でも責任あり」という規定は、改正により削除されている点に注意。
- エ: 正しい。請求権競合(不法行為と債務不履行の競合)は民法の一般理論。寄託者は損害の全額賠償を求めるという同一目的のために、どちらの請求権も行使できる(重複回収は不可)。
- オ: 正しい(民666条)。消費寄託の典型は銀行預金(消費寄託として金銭を預ける・銀行は同額を返還する義務)。利息(普通預金・定期預金の利率)は消費寄託契約の特約として定まる(原則無利息)。消費貸借(借主が使う目的)と消費寄託(保管を委託・受寄者が使用権を持つ)の違いにも注意。
【根拠条文】
民法 第657条(寄託の成立・諾成契約)、第658条第2項(再保管の制限・承諾またはやむを得ない事由)、第658条第3項(再受寄者の権利義務)、第659条(無償受寄者の注意義務)、第666条(消費寄託)
【補足】
2020年改正で寄託が要物→諾成契約に変更(民657条)。再保管の制限(寄託者の承諾またはやむを得ない事由が必要・民658条2項)は最重要論点(改正前の旧658条2項の「無断再保管は不可抗力でも責任」は削除済み)。無償受寄者の軽減された注意義務(固有の注意・民659条)も頻出。
- 民法第658条・第657条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第657条(寄託の成立)、第658条(受寄者による第三者への保管)、第659条(無償受寄者の注意義務)、第666条(消費寄託) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

