貸借対照表(B/S)は一時点の財政状態、損益計算書(P/L)は一定期間の経営成績を表します。会社計算規則の区分に沿って、資産・負債・純資産の構成と、売上総利益から当期純利益までの5段階を整理し、ITパスポート過去問の計算で確認します。
目次
結論:貸借対照表(B/S)は決算日など「ある時点」の資産・負債・純資産を示し、損益計算書(P/L)は事業年度など「ある期間」の収益・費用・利益を示します。損益計算書の利益は、売上総利益→営業利益→経常利益→税引前当期純利益→当期純利益の5段階で、会社計算規則の第89条から第94条がこの順序を定めています。ITパスポートでは、この5段階の式と、貸借対照表から流動比率や自己資本比率を求める計算が公表問題に出ています。
貸借対照表と損益計算書の違い:時点と期間
会社法の臨時計算書類の定めは、2つの表の違いをそのまま示しています。臨時計算書類は、株式会社が最終事業年度の直後の事業年度の途中で作成できるもので、次の2つからなります(会社法第441条第1項)。
- 臨時決算日における貸借対照表
- 臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書
貸借対照表は「その日」の姿、損益計算書は「その期間」の動きです。当サイトのたとえでは、貸借対照表は写真、損益計算書は動画に近いものです。
| 項目 | 貸借対照表(B/S) | 損益計算書(P/L) |
|---|---|---|
| 示すもの | 資産・負債・純資産(財政状態) | 収益・費用・利益(経営成績) |
| 対象 | 決算日などの一時点 | 事業年度などの一定期間 |
| 主な指標 | 流動比率・自己資本比率 | 各段階の利益・売上高利益率 |
根拠法令の版:この記事の会社計算規則の条文は、e-Gov 法令検索の2026-10-28 時点の現行の版(令和7年3月31日施行)のものです。ITパスポートのシラバス Ver.6.5(令和8年1月掲載)では、項番3「会計・財務」に財務諸表の種類と役割、貸借対照表、損益分岐点などが載っています。最終確認日:2026-10-28。出典:e-Gov法令検索 会社計算規則、e-Gov法令検索 会社法、IPA ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5。
貸借対照表の構成:資産・負債・純資産
会社計算規則は、貸借対照表を資産の部・負債の部・純資産の部に区分して表示すると定めています(第73条第1項)。各部の区分は次のとおりです。
| 部 | 区分 | 根拠 |
|---|---|---|
| 資産の部 | 流動資産・固定資産・繰延資産。固定資産は有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に区分 | 第74条第1項・第2項 |
| 負債の部 | 流動負債・固定負債 | 第75条第1項 |
| 純資産の部(株式会社) | 株主資本・評価・換算差額等・株式引受権・新株予約権 | 第76条第1項第1号 |
株主資本はさらに、資本金・新株式申込証拠金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式・自己株式申込証拠金に区分されます(第76条第2項)。試験の問題に出てくる「株主資本」や「資本金」は、この純資産の部の項目です。
貸借対照表の左側の資産の合計と、右側の負債と純資産の合計は一致します。資産=負債+純資産の関係です(当サイトの説明)。たとえば令和4年度の問28の数字では、資産が 3,000+4,500=7,500百万円、負債と純資産が(1,500+4,000)+2,000=7,500百万円で一致します。
貸借対照表からの計算:流動比率と自己資本比率
貸借対照表の数字から求める指標が、ITパスポートの公表問題に出ています。
流動比率は、流動資産÷流動負債×100(%)で、短期の支払能力を見る指標です。令和4年度の問28は、流動資産3,000、固定資産4,500、流動負債1,500、固定負債4,000、株主資本2,000(単位は百万円)の会社で、流動比率を問います。
- 流動比率=3,000÷1,500×100=200% → 答えはエ(200)
A社の資産,負債及び純資産から流動比率を求める(令和4年度 問28)
自己資本比率は、純資産÷総資産×100(%)です(当サイトの説明。試験では純資産を自己資本として扱います。厳密には新株予約権などを除く定義もあります)。令和8年度の問26は、流動資産730、固定資産270、流動負債200、固定負債500、純資産の部が資本金300(単位は百万円)の貸借対照表で、自己資本比率を問います。
- 総資産=730+270=1,000、純資産=300
- 自己資本比率=300÷1,000×100=30% → 答えはア(30)
出典:令和4年度・令和8年度 ITパスポート試験 公開問題(独立行政法人情報処理推進機構)(令和4年度 問題PDF・令和8年度 問題PDF)
損益計算書の5段階の利益
会社計算規則は、損益計算書を売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の項目に区分すると定め(第88条第1項)、利益を次の順序で求めると定めています。
| 利益 | 求め方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 売上高−売上原価 | 第89条第1項 |
| 営業利益 | 売上総利益−販売費及び一般管理費の合計 | 第90条第1項 |
| 経常利益 | 営業利益+営業外収益−営業外費用 | 第91条第1項 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益+特別利益−特別損失 | 第92条第1項 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益−法人税等 | 第93条・第94条 |
当期純利益は、法人税等のほかに法人税等調整額や、法人税等の更正・決定等による還付・納付額がある場合は、それらも加減した額です(第94条第1項)。試験の問題は、法人税等だけを引く簡単な形で出ています。
また、各段階の金額がゼロ未満になったときは、「利益」ではなく「損失」として表示します(第89条第2項、第90条第2項、第91条第2項、第92条第2項、第94条第2項)。たとえば売上総損益金額がマイナスなら、その絶対値を売上総損失として表示します。
試験では売上総利益を「粗利益」とも呼びます。令和3年度の問29は、粗利益を求める式として(売上高)−(売上原価)を選ばせる問題です。
覚え方としては、「本業の利益(営業利益)→本業以外の収益・費用を加減した通常の利益(経常利益)→臨時の損益を加減した利益(税引前当期純利益)→税金を引いた最終の利益(当期純利益)」の順に、段階を進めるたびに加減する項目が増えると整理できます(当サイトの説明)。会社計算規則は、特別利益を固定資産売却益・前期損益修正益・負ののれん発生益その他の項目に、特別損失を固定資産売却損・減損損失・災害による損失・前期損益修正損その他の項目に区分して細分するよう定めています(第88条第2項・第3項)。営業外収益・営業外費用の例としては、受取利息や支払利息が挙げられます(当サイトの説明)。
令和3年度 問28:経常利益
次の当期末損益計算資料から求められる経常利益は何百万円か。(売上高3,000、売上原価1,500、販売費及び一般管理費500、営業外費用15、特別損失300、法人税300。選択肢 ア 385 イ 685 ウ 985 エ 1,000)
出典:令和3年度 ITパスポート試験 公開問題 問28(独立行政法人情報処理推進機構)(問題PDF・解答例PDF)
- 売上総利益=3,000−1,500=1,500
- 営業利益=1,500−500=1,000
- 経常利益=1,000+0(営業外収益なし)−15=985 → ウ
- 特別損失300と法人税300は、経常利益より後の段階で引く項目なので、経常利益には関係しません。
当期末損益計算資料から経常利益を求める(令和3年度 問28)
選択肢のエの1,000は営業利益と同じ値です(当サイトの計算)。営業外費用を引き忘れると、この値になります。
令和4年度 問30:営業利益の式
営業利益を求める計算式はどれか。(ア(売上高)−(売上原価) イ(売上総利益)−(販売費及び一般管理費) ウ(経常利益)+(特別利益)−(特別損失) エ(税引前当期純利益)−(法人税,住民税及び事業税))
出典:令和4年度 ITパスポート試験 公開問題 問30(独立行政法人情報処理推進機構)(問題PDF・解答例PDF)
営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を引いたもので、答えはイです。選択肢のアは売上総利益、ウは税引前当期純利益、エは当期純利益の式です(会社計算規則 第89条・第92条・第93条・第94条のとおり)。
令和6年度 問8:段階をさかのぼって求める
表はA社の期末の損益計算書から抜粋した資料である。当期純利益が800百万円であるとき、販売費及び一般管理費は何百万円か。(売上高8,000、売上原価6,000、営業外収益150、営業外費用50、特別利益60、特別損失10、法人税等350。選択肢 ア 850 イ 900 ウ 1,000 エ 1,200)
出典:令和6年度 ITパスポート試験 公開問題 問8(独立行政法人情報処理推進機構)(問題PDF・解答例PDF)
当期純利益から逆向きに、各段階の加減を元に戻します。
- 税引前当期純利益=当期純利益800+法人税等350=1,150
- 経常利益=1,150−特別利益60+特別損失10=1,100
- 営業利益=1,100−営業外収益150+営業外費用50=1,000
- 売上総利益=8,000−6,000=2,000
- 販売費及び一般管理費=売上総利益2,000−営業利益1,000=1,000 → ウ
当期純利益から販売費及び一般管理費を求める(令和6年度 問8)
検算:売上総利益2,000から販売費及び一般管理費1,000を引くと営業利益1,000、150を足して50を引くと経常利益1,100、60を足して10を引くと税引前1,150、350を引くと当期純利益800で、問題の条件と一致します。
損益計算書だけで計算できる指標:令和6年度 問30
指標が「どの表の数字から計算できるか」を問う問題もあります。令和6年度の問30は、自社の当期の損益計算書だけから計算できる指標として、売上高増加率・売上高利益率・自己資本利益率のうち、当てはまるものを全て選ぶ問題で、答えは「売上高利益率」だけです。
- 売上高利益率:利益と売上高はどちらも損益計算書にあるので、計算できます。
- 売上高増加率:前の期の売上高が必要です。当期の損益計算書だけでは計算できません。
- 自己資本利益率:分母の自己資本(純資産)は貸借対照表の項目なので、損益計算書だけでは計算できません(当サイトの説明)。
損益計算書だけから計算できる指標はどれか(令和6年度 問30)
間違えやすい点
- 貸借対照表は「時点」、損益計算書は「期間」です。指標がどちらの表の数字を使うかを先に考えると、問30のような問題で迷いません。
- 経常利益には、特別利益・特別損失・法人税等は関係しません。
- 営業利益から経常利益に進むときは、営業外収益を足し、営業外費用を引きます。足す・引くを逆にしないようにします。
- 逆算の問題は、当期純利益から1段階ずつ戻します。
- 流動比率は流動資産÷流動負債、自己資本比率は純資産÷総資産です。分母と分子を取り違えないようにします。
用語の意味は、用語集の損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)でも確かめられます。ここで扱った会社計算規則は株式会社などの計算書類に適用される法令で、試験では同じ考え方の簡略化した数字で出題されています。
まとめ
- 貸借対照表は一時点の資産・負債・純資産、損益計算書は一定期間の収益・費用・利益を示します。
- 資産は流動資産・固定資産・繰延資産、負債は流動負債・固定負債に区分されます。
- 利益は、売上総利益(売上高−売上原価)→営業利益(−販売費及び一般管理費)→経常利益(+営業外収益−営業外費用)→税引前当期純利益(+特別利益−特別損失)→当期純利益(−法人税等)の順に求めます。
- 流動比率は流動資産÷流動負債、自己資本比率は純資産÷総資産です。
- 当サイトに収録しているITパスポートの公表問題(令和3〜8年度)で、これらの計算を扱う問題の例は、令和3年度の問28・問29、令和4年度の問28・問30、令和6年度の問8・問30、令和8年度の問26です(2026-10-21 時点)。
よくある質問
Q貸借対照表と損益計算書は、何が違いますか?
貸借対照表は決算日などある一時点の資産・負債・純資産を示し、損益計算書は事業年度などある期間の収益・費用・利益を示します。会社法の臨時計算書類の定めも、貸借対照表は「臨時決算日における」もの、損益計算書は「事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る」ものとして区別しています。
Q営業利益と経常利益は、どう違いますか?
営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を引いたものです。経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を引いたものです。会社計算規則の第90条と第91条が、この順序で定めています。
Q貸借対照表では、流動と固定を何で分けますか?
会社計算規則は、資産を流動資産・固定資産・繰延資産に、負債を流動負債・固定負債に区分すると定めています。流動比率は流動資産÷流動負債で求め、短期の支払能力を見る指標です。ITパスポート令和4年度の問28は、この式で計算します。
Q自己資本比率はどう計算しますか?
純資産÷総資産(資産合計)です(当サイトの説明。試験では純資産を自己資本として扱います。厳密には新株予約権などを除く定義もあります)。ITパスポート令和8年度の問26は、資産合計1,000百万円、純資産(資本金)300百万円の貸借対照表で、自己資本比率を30%と求める問題です。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月28日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

