精神保健福祉の分野でいうピアサポート・ピアサポーターを、厚生労働省の一次情報から整理します。障害者ピアサポート研修事業、令和3年度報酬改定で創設されたピアサポート体制加算・ピアサポート実施加算の対象サービスと要件、令和6年度の拡大、精神保健福祉士試験の出題基準での位置づけを、出典つきで解説します。
目次
結論:障害福祉の制度の中でピアサポートは、厚生労働省の「障害者ピアサポート研修事業」(令和2年度から国庫補助の対象)と、障害福祉サービス等の報酬の加算(令和3年度報酬改定で創設)として位置づけられています。報酬の加算は、研修を修了した障害者(障害者であったと認められる者を含む)を事業所に配置することなどを要件としています。試験では、精神障害リハビリテーション論の出題基準に、「ピアサポートグループとピア活動」「ピアスタッフ」が小項目(例示)として載っています。一方、厚生労働省の報酬改定の概要・改定事項の資料には、ピアサポートそのものを定義する文の記載がありません(2026年10月10日時点)。
この記事は、厚生労働省の報酬改定のページと資料(令和3年度・令和6年度・令和8年度)、同省の事務連絡、障害福祉サービス等の費用額算定基準の留意事項通知、社会福祉振興・試験センター(以下「センター」)の出題基準だけをもとに、精神保健福祉の分野のピアサポートを整理したものです。民間サイトの定義や解説は使っていません。障害者総合支援法のサービスの全体像は障害者総合支援法の記事、精神保健福祉士の仕事の中身は精神保健福祉士とはで扱っています。合格ナビはセンターとも厚生労働省とも関係のない民間のサイトです。報酬や要件は改定で変わるため、最新の告示・通知で確認してください。
公式資料でのピアサポートの説明と、定義が見つからない点
まず、公式資料が「ピアサポート」をどう説明しているかです。令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(厚生労働省)は、報酬の加算を設ける理由として、次のように書いています。ピアサポートの専門性は、「利用者と同じ目線に立って相談・助言等を行うことにより、本人の自立に向けた意欲の向上や地域生活を続ける上での不安の解消などに効果がある」ことを踏まえて、一定の要件を設けたうえで評価する、という書き方です(令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要)。
これは、加算を設ける理由の説明です。ピアサポートの定義や範囲を示す文ではありません。次の資料には、ピアサポートそのものを定義する文の記載がありません(2026年10月10日時点)。
- 令和3年度・令和6年度・令和8年度の障害福祉サービス等報酬改定のページと、その概要・改定事項の資料
- 厚生労働省の精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築についてのページ
そのため、この記事では「ピアサポートとは〜のことです」という定義は書きません。制度が実際に何を求めているか(誰が、どの研修を修了し、どの事業所で、何をすると評価されるか)を、資料の記載に沿って整理します。
なお、令和3年度報酬改定の概要では、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの推進」と「ピアサポートの専門性の評価」は、障害福祉サービス等における横断的な改定事項として、別々の項目に並んでいます。
障害者ピアサポート研修事業
ピアサポートに関する研修は、地域生活支援事業の中の「障害者ピアサポート研修事業」として位置づけられています。厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部の事務連絡「障害者ピアサポート研修事業に係る情報提供等について」は、次の内容を書いています(事務連絡(令和3年3月31日))。
- 障害者ピアサポートについては、令和2年度から「障害者ピアサポート研修事業」を、地域生活支援事業費等補助金による国庫補助の対象としたこと
- 令和3年度の報酬改定で、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、計画相談支援、障害児相談支援及び就労継続支援B型に対する加算を創設したこと
- ピアサポート体制加算とピアサポート実施加算の算定にあたって、各事業所に配置される障害者や管理者等が、「障害者ピアサポート研修事業」のカリキュラムを修了すること等を要件としたこと
- 都道府県と指定都市に、別添カリキュラムによる研修事業の早期の実施の検討を依頼したこと
障害者ピアサポート研修事業の位置づけ:令和2年度から地域生活支援事業費等補助金による国庫補助の対象。事務連絡の日付は令和3年3月31日。最終確認日:2026-10-10。出典:厚生労働省 障害者ピアサポート研修事業に係る情報提供等について。
同じ事務連絡には、研修テキストの作成に、厚生労働科学研究費補助金の研究「障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に関する研究」が関わったことも書かれています。事務連絡は、都道府県と指定都市に研修事業の実施の検討を依頼しています。研修のカリキュラムの時間数や内容は、この事務連絡の本文には記載がありません(「別添カリキュラム」によるとされています)。
令和3年度報酬改定で創設された2つの加算
令和3年度の障害福祉サービス等報酬改定では、ピアサポートに関する加算が2種類、新設されました。名称と対象サービスを、厚生労働省の概要から整理します。
| 加算の名称 | 令和3年度改定で対象になったサービス |
|---|---|
| ピアサポート体制加算 | 自立生活援助、計画相談支援、障害児相談支援、地域移行支援、地域定着支援 |
| ピアサポート実施加算 | 就労継続支援B型(「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系) |
令和3年度改定時のピアサポート関連加算の単位数:ピアサポート体制加算は100単位/月、ピアサポート実施加算は100単位/月(令和3年度報酬改定の概要の記載)。最新の単位数は、算定基準の告示で確認する。最終確認日:2026-10-10。出典:厚生労働省 令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要。
2つの加算の違いは、評価の対象です。ピアサポート体制加算は、事業所が研修修了者を配置している体制を評価する加算として書かれており、概要でも「体制加算」と付記されています。ピアサポート実施加算は、就労継続支援B型で、就労や生産活動等への参加等に係るピアサポートを実際に実施した場合に、支援を受けた利用者の数に応じて、月単位で算定する加算です。
現在も加算が置かれていることは、令和8年度の報酬改定のページに掲載された留意事項通知の新旧対照表からも確認できます。この資料には、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、計画相談支援の各項目に「ピアサポート体制加算の取扱いについて」が、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労継続支援B型、共同生活援助の各項目に「ピアサポート実施加算の取扱いについて」が載っています(令和8年度障害福祉サービス等報酬改定についてに掲載の留意事項通知)。一方、令和8年度改定の「改定事項」の資料には、ピアサポートに関する記載がありません(2026年10月10日時点)。
令和6年度改定で広がったピアサポート実施加算
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定では、ピアサポート実施加算が、新たに次のサービスの関係に設けられました。
- 自立訓練(機能訓練):利用者の自立に向けた意欲の向上や、地域生活を続ける上での不安の解消等に資する観点から、ピアサポートの専門性を評価する(自立訓練(生活訓練)も同様。宿泊型自立訓練を除く)
- 共同生活援助:移行支援住居の入居中または退居後の一定期間におけるピアサポートの専門性を評価するため、ピアサポート実施加算と退居後ピアサポート実施加算を新設する
令和6年度改定のピアサポート実施加算の単位数:自立訓練(機能訓練)のピアサポート実施加算は100単位/月。共同生活援助のピアサポート実施加算・退居後ピアサポート実施加算は100単位/月(令和6年度報酬改定の概要の記載)。最終確認日:2026-10-10。出典:厚生労働省 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要。
厚生労働省の令和6年度の報酬改定のページには、加算の届出様式として「ピアサポート実施加算」「ピアサポート体制加算」が並んで掲載されています。
加算の要件を読む:研修修了・配置・年1回の研修
ピアサポート体制加算の要件を、令和3年度報酬改定の概要の記載から整理します。次の3点のすべてを満たす必要があると書かれています。
- 地域生活支援事業の「障害者ピアサポート研修(基礎研修及び専門研修)」を修了した次の者を、それぞれ常勤換算方法で0.5人以上配置していること:①障害者または障害者であったと都道府県または市町村が認める者、②管理者または①の者と協働して支援を行う者
- ①と②の者により、事業所の従業員に対して、障害者に対する配慮等に関する研修が年1回以上行われていること
- ①と②の者を配置していることを公表していること
ピアサポート実施加算(就労継続支援B型)も、研修(基礎研修及び専門研修)を修了した障害者(障害者であったと認められる者を含む)と管理者等を配置し、これらの者により、事業所の従業員に対して、障害者に対する配慮等に関する研修が年1回以上行われていることが、支援体制の要件として書かれています。令和6年度改定の概要では、自立訓練のピアサポート実施加算について、研修(基礎研修及び専門研修)を修了した障害者と管理者等を2名以上配置することが、支援体制の要件として書かれています。共同生活援助のピアサポート実施加算も、研修修了者を従業者として2名以上(うち1名は障害者等)配置することが、要件に含まれています。
令和3年度改定時の経過措置:ピアサポート体制加算の研修の修了要件について、令和6年3月31日までの間は、都道府県または市町村が研修に準ずると認める研修を修了した障害者等(①の者)を常勤換算方法で0.5人以上配置する場合も、要件を満たすものとする経過措置があった(②の者の配置がない場合も算定可)(令和3年度報酬改定の概要の記載)。最終確認日:2026-10-10。出典:厚生労働省 令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要。
「ピアサポーター」という言葉は、留意事項通知の加算の説明に出てきます。令和8年度の留意事項通知の新旧対照表では、自立訓練(機能訓練)のピアサポート実施加算について、研修を修了した「障害者又は障害者であったと都道府県知事が認める者」が、その経験に基づき、利用者に対して「ピアサポーターとしての支援」を行った場合に算定すると書かれています。同じ箇所は、ピアサポーターとしての支援を、利用者の個別支援計画に基づき、当事者としての経験に基づく相談援助や、利用者のロールモデルとしての訓練・助言等を行った場合などと説明しています。これは加算の算定要件の書き方で、ピアサポーターという資格を定めたものではありません。
加算を算定する細かい要件(常勤換算の数え方、併設事業所の兼務など)は、サービスごとに異なります。事業所の側から確認する場合は、最新の報酬告示と留意事項通知を使ってください。個人が自分の場合に当てはまるかどうかは、この記事では判断できません。
精神保健福祉士の仕事・法とのつながり
精神保健福祉士法第2条は、精神保健福祉士の業務として、精神科病院等で医療を受けている人や、社会復帰の促進を図る施設を利用している人の地域相談支援の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練などの援助を行うことを定めています。地域相談支援は、障害者総合支援法の用語で、地域移行支援や地域定着支援がこれに当たります(法第2条は、障害者総合支援法第5条第19項を引いています)。
厚生労働省の留意事項通知は、地域移行支援と地域定着支援のピアサポート体制加算を、地域相談支援の報酬告示(地域相談支援報酬告示)の加算として扱っています。法第2条が業務に挙げる相談には地域相談支援の利用に関する相談が含まれ、その地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)は、ピアサポート体制加算の対象サービスでもあります。ただし、精神保健福祉士の資格や業務に、ピアサポート研修の修了が要件として入っているわけではありません。研修修了者の配置は、加算を算定する事業所の要件です。前の節のとおり、体制加算では、障害者等(①)だけでなく、管理者または①の者と協働して支援を行う者(②)も研修を修了して配置されていることが要件です(令和3年度報酬改定の概要)。
試験の専門科目での扱い(出題基準)
精神保健福祉士国家試験でピアサポートに関係するのは、センターの科目別出題基準では、精神障害リハビリテーション論です。
出題基準でピアサポートが載っている位置:精神障害リハビリテーション論の大項目4「精神障害リハビリテーションの動向と実際」、中項目1)「精神障害当事者や家族を主体としたリハビリテーション」の小項目(例示)に、「ピアサポートグループとピア活動」「ピアスタッフ」「家族による家族支援」「当事者プログラム」。最終確認日:2026-10-10。出典:試験センター 精神保健福祉士国家試験 出題基準の科目別出題基準(PDF)。
関連する記載は、ほかの科目の出題基準にもあります。いずれも「ピア」の語を含まない項目で、ピアサポートに近い当事者活動の項目です。
- 現代の精神保健の課題と支援:中項目「セルフヘルプグループと地域精神保健を課題とした市民団体」の小項目に、「家族会、当事者の会」「市民団体、市民活動」
- ソーシャルワークの理論と方法(専門):家族支援の方法の小項目に「家族のセルフヘルプグループ」
- 精神障害リハビリテーション論:家族支援プログラムの実施機関として「セルフヘルプグループ等」
出題基準について、センターは「出題基準は、あくまでも標準的な出題範囲の例示であって、出題範囲を厳密に限定するものではなく、また、作問方法や表現等を拘束するものではない。」と説明しています。また、「出題は、この出題基準に盛り込まれた事項に限定されるものではなく」とも書いており、法律、政省令等に規定されている事項や、公刊物に記載されている事項などからも出題されるとしています。
当サイトに載せている第26〜28回の専門科目176問のうち、問題文(事例文を含む)・選択肢に「ピア」を含む問は6問で、すべて第26回の問です(人名のピアジェを除く。2026-10-10 時点)。第26回は旧カリキュラムの試験で、6問の科目名は「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」が5問、「精神保健福祉に関する制度とサービス」が1問です。6問のうち3問は事例文にピアサポーターが登場する問、3問は選択肢に「ピア」を含む用語がある問です。
この数字は、当サイトに載せた176問の範囲のもので、試験全体の傾向を示すものではありません。今後の出題を予想するものでもありません。実際に解くときは、問題の一覧から確認してください。
まとめ・次にやること
- 障害福祉の制度の中のピアサポートは、障害者ピアサポート研修事業(令和2年度から国庫補助の対象)と、報酬の加算(ピアサポート体制加算・ピアサポート実施加算)として位置づけられている
- ピアサポート体制加算は令和3年度に新設され、自立生活援助・計画相談支援・障害児相談支援・地域移行支援・地域定着支援が対象。ピアサポート実施加算は、就労継続支援B型に新設され、令和6年度に自立訓練や共同生活援助の関係にも設けられた
- 加算の要件は、研修(基礎研修及び専門研修)を修了した障害者等の配置、年1回以上の従業員向け研修などで、サービスごとに細かい要件が異なる
- 厚生労働省の報酬改定の概要・改定事項の資料には、ピアサポートそのものを定義した文の記載がない(2026年10月10日時点)。この記事が出典に挙げた資料には、ピアサポーターを国家資格や名称独占として定める記載もない
- 試験では、出題基準の精神障害リハビリテーション論に「ピアサポートグループとピア活動」「ピアスタッフ」が小項目(例示)として載っている
次にやることは、①試験で学ぶ範囲として、専門科目の出題範囲で精神障害リハビリテーション論の項目を確認する、②地域移行や地域定着の制度の全体像を、障害者総合支援法の記事と精神保健福祉法の記事で押さえる、③事業所の要件を確かめる場合は、最新の報酬告示と留意事項通知を見る、の3つです。
本サイトは社会福祉振興・試験センター・厚生労働省とは関係ありません。報酬の単位数や算定要件は改定で変わるため、必ず最新の告示・通知と、所管の都道府県・市町村の案内で確認してください。出題基準の記載は、センターの科目別出題基準(2026年10月10日に確認した版)にもとづきます。
よくある質問
Qピアサポーターになるには、資格が必要ですか?
この記事が出典に挙げた厚生労働省の資料(報酬改定の概要・障害者ピアサポート研修事業の事務連絡・留意事項通知)には、ピアサポーターを国家資格や名称独占として定める記載がありません(2026年10月10日時点)。これらの資料に出てくるのは、報酬の加算を算定する事業所の要件としての研修修了です。令和3年度報酬改定の概要は、加算の算定要件として、地域生活支援事業の障害者ピアサポート研修(基礎研修及び専門研修)を修了した、障害者または障害者であったと都道府県または市町村が認める者を、常勤換算で0.5人以上配置することなどを挙げています。個人が受けられる研修の実施主体や日程は、都道府県・指定都市に確認してください。
Qピアサポート体制加算とピアサポート実施加算は、何が違いますか?
厚生労働省の資料では、ピアサポート体制加算は、自立生活援助・計画相談支援・障害児相談支援・地域移行支援・地域定着支援を対象に、令和3年度報酬改定で新設された加算です。ピアサポート実施加算は、同じ改定で就労継続支援B型に新設され、令和6年度改定で自立訓練や共同生活援助の関係にも設けられました。どちらも、障害者ピアサポート研修の修了者を配置し、事業所の従業者に対して障害者に対する配慮等に関する研修を年1回以上行うことが、要件に含まれています。算定できるかどうかは、事業所が都道府県等へ届け出る体制や報酬告示で決まるため、詳細は最新の告示・通知で確認してください。
Qピアサポートの定義を示した公式の文書はありますか?
厚生労働省の令和3年度・令和6年度・令和8年度の障害福祉サービス等報酬改定のページと概要・改定事項の資料、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築についてのページには、ピアサポートそのものを定義する文の記載がありません(2026年10月10日時点)。令和3年度報酬改定の概要には、ピアサポートの専門性について、利用者と同じ目線に立って相談・助言等を行うことにより、自立に向けた意欲の向上や、地域生活を続ける上での不安の解消などに効果があると説明する文があります。これは評価の理由づけで、定義ではありません。
Q精神保健福祉士の試験の出題基準には、ピアサポートの記載がありますか?
あります。試験センターが掲載する科目別出題基準では、精神障害リハビリテーション論の大項目「精神障害リハビリテーションの動向と実際」、中項目「精神障害当事者や家族を主体としたリハビリテーション」の小項目(例示)に、「ピアサポートグループとピア活動」「ピアスタッフ」が載っています。出題基準は標準的な出題範囲の例示とされており、範囲を厳密に限定するものではありません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月10日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

