フレミングの左手の法則は電流が磁界から受ける力(電磁力)、右手の法則は導体を動かして生じる誘導起電力の向きを表します。レンツの法則・ファラデーの法則との関係、F=BIl と e=Blv の計算を、電験三種の過去問(理論・機械・電力)の出題例とともに整理します。
目次
結論:フレミングの左手の法則は、磁界中の導体に電流を流したときに受ける力(電磁力)の向きを表し、右手の法則は、磁界中で導体を動かしたときに生じる誘導起電力の向きを表します。「電流から力を求める」なら左手、「運動から起電力を求める」なら右手です。レンツの法則は、誘導電流が磁束の変化を妨げる向きに流れることを述べる法則で、ファラデーの法則は、起電力の大きさが磁束の時間変化に比例することを述べる法則です。大きさは、電磁力が F=B I l、誘導起電力が e=B l v(磁界と導体が直角のとき)で求めます。
フレミングの左手の法則と右手の法則:指の向きの表
コトバンクに載る辞典(デジタル大辞泉・日本大百科全書)の説明を、表にまとめます。
| 左手の法則 | 右手の法則 | |
|---|---|---|
| 何を表すか | 磁界中の導体に電流を流したとき、導体が受ける力(電磁力)の向き | 磁界中で導体を動かしたとき、導体に生じる起電力(誘導電流)の向き |
| 親指 | 力の向き | 導線の運動の向き |
| 人差し指 | 磁界の向き | 磁界の向き |
| 中指 | 電流の向き | 起電力(誘導電流)の向き |
| 使う場面 | 電動機のように、電流で力を得る | 発電機のように、運動で起電力を得る(当サイトの整理) |
指は、3本を互いに直角に開きます。人差し指が磁界なのは、左手・右手に共通です。変わるのは、親指と中指の役割が入れ替わる点です。
- 左手:親指=力、中指=電流(「力は左手」)
- 右手:親指=運動、中指=起電力(「起電力は右手」)
覚え方の一例(当サイトの覚え方)として、左手は「親指=力(Force)、人差し指=磁界(B)、中指=電流(I)」と、頭文字を並べる方法があります。
出典:コトバンク「フレミングの法則」(デジタル大辞泉・日本大百科全書ほか)。
どちらの手を使うか:問題文の読み方
迷ったときは、問題文で「何が与えられていて、何を求めるか」を確かめます。
| 問題文の状況 | 与えられているもの | 使う法則 |
|---|---|---|
| 磁界中の導体に電流を流す。導体に働く力の向きは | 電流 | 左手 |
| 磁界中で導体を動かす。導体に生じる起電力の向きは | 運動 | 右手 |
| 磁石をコイルに近づける。コイルに流れる電流の向きは | 磁束の変化 | レンツの法則 |
導体が動いて起電力が生じ、その電流が磁界から力を受ける、という2つの現象が同時に起こる場合もあります。直流電動機が回転すると、電機子の導体には起電力が生じます。向きを決めるときは、「いま求めたいのは力か、起電力か」を分けて考えます。
レンツの法則とファラデーの法則:向きと大きさ
電磁誘導は、コイルを貫く磁束が変化すると、コイルに起電力が生じる現象です。
| 法則 | 内容 | 決めるもの |
|---|---|---|
| ファラデーの電磁誘導の法則 | 回路に生じる起電力は、その回路を通る磁束の時間的な変化の割合に比例する(1831年発見) | 起電力の大きさ |
| レンツの法則 | 誘導電流は、回路内の磁束の変化を妨げる向きに流れる(1834年) | 誘導電流の向き |
式で書くと、巻数Nのコイルでは e=N×ΔΦ÷Δt [V] です。式にマイナスの符号を付けて「e=−N×ΔΦ÷Δt」と書く場合、マイナスは、レンツの法則の「磁束の変化を妨げる向き」を表します。
作例(当サイトの作例):巻数200のコイルで、貫く磁束が0.003 Wb だけ0.05 s の間に変化した。
- 起電力の大きさ e=N×ΔΦ÷Δt=200×0.003÷0.05
- 0.003÷0.05=0.06 なので、e=200×0.06=12 V
- 検算:200×0.003=0.6 を先に計算し、0.6÷0.05=12 V で一致します
向きの考え方:磁石のN極をコイルに近づけると、コイルを貫く磁束は増えます。レンツの法則により、コイルには、その増加を妨げる向きに電流が流れます。つまり、磁石に向いたコイルの端(面)にN極ができ、近づく磁石を押し返す向きです。逆に、磁石を遠ざけると、磁束の減少を妨げる向きに電流が流れます。
出典:コトバンク「レンツの法則」、同「ファラデーの法則」、同「電磁誘導」。
大きさの計算:電磁力 F=BIl と誘導起電力 e=Blv
向きだけでなく、大きさの式も使えるようにします。磁束密度B [T]、導体の長さl [m] とします。
| 場面 | 式 | 条件 |
|---|---|---|
| 電磁力(左手) | F=B×I×l [N](I は電流 [A]) | 磁界と導体が直角のとき |
| 誘導起電力(右手) | e=B×l×v [V](v は速さ [m/s]) | 磁界・導体・運動の向きが互いに直角のとき |
| 運動の向きが磁界と角θをなすとき | e=B×l×v×sinθ [V] | 導体は磁界と直角のまま |
作例1(電磁力・当サイトの作例):磁束密度0.5 T の一様な磁界の中に、磁界と直角に長さ0.2 m の導体を置き、6 A の電流を流す。
- F=B I l=0.5×6×0.2
- 0.5×6=3、3×0.2=0.6 なので、F=0.6 N
- 検算:0.2×6=1.2、1.2×0.5=0.6 N で一致します
作例2(誘導起電力・当サイトの作例):磁束密度0.4 T、長さ0.25 m の導体を、磁界と直角に8 m/s で動かす。
- e=B l v=0.4×0.25×8
- 0.4×0.25=0.1、0.1×8=0.8 なので、e=0.8 V
- 検算:0.25×8=2、2×0.4=0.8 V で一致します
- 運動の向きが磁界と30°をなすとき:e=0.8×sin30°=0.8×0.5=0.4 V(検算:0.8÷2=0.4 V)
ローレンツ力との関係:ローレンツ力は、磁界中を運動する電荷が受ける力です。辞典は、磁界と速度が垂直な場合はフレミング右手の法則に相当し、フレミングの法則はローレンツ力から導かれると説明しています。
電験三種ではどう出るか:公表された問題の例
電気技術者試験センターは、理論の科目を「電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測」としています(第三種電気主任技術者の試験概要)。公表された問題冊子から、関連する出題を、問題文の転記は避けて整理します。
| 年度・科目・問番号 | 内容 | 確かめられること |
|---|---|---|
| 令和5年度上期 理論 問4 | 磁界・磁束に関する5つの記述から誤りを選ぶ。選択肢に「フレミングの左手の法則では、親指の向きが導体に働く力の向きを示す」がある | この記述は正しい(正解は、平行導体の反発力の記述である(3)) |
| 令和4年度上期 理論 問4 | 一様な磁界中で、直線状導体が磁界と60°の角度で動くときの誘導起電力[mV]を求める | 正解は(3)。B・l・v と sin60° で計算する形(下の再計算) |
| 令和6年度下期 機械 問1 | 導体が磁束に直角な方向に移動するとき、導体にはフレミングの(ア)の法則により、e=(イ)[V]の誘導起電力が発生する。直流機の電機子の誘導起電力の式につなげる穴埋め | 正解は(5)。(ア)には「右手」、(イ)には「Blv」が入る(運動で起電力が生じる場面の法則) |
| 令和7年度上期 電力 問9 | 架空送電線路から通信線路への誘導障害。静電誘導障害と電磁誘導障害の2種類を穴埋めする | 選択肢には「ファラデー」という人名も並ぶが、現象としては「電磁誘導」を選ぶ(正解は(3)) |
| 令和6年度下期 理論 問12 | 真空中の平行平板電極間の電子の運動。電界と直交する磁界の中で電子が受ける力の名称を問う | 正解は(4)。受ける力は「ローレンツ」力 |
| 令和4年度下期 理論 問12 | 磁界中の荷電粒子に働くローレンツ力の大きさと向きから、荷電粒子の速さと向きを求める | ローレンツ力を直接使う計算 |
出典:電気技術者試験センターの問題冊子(令和5年度上期 理論、令和4年度上期 理論、令和6年度下期 機械、令和7年度上期 電力、令和6年度下期 理論、令和4年度下期 理論)と、正答(令和5年度上期、令和4年度上期、令和7年度上期、令和6年度下期)。
令和4年度上期 理論 問4の再計算(当サイトの計算):問題の数値は、B=0.02 T、導体の長さ0.5 m、速さ0.5 m/s、角度60°です。e=B l v sin60°=0.02×0.5×0.5×0.866=0.005×0.866=0.00433 V=4.33 mV で、選択肢の「4.3」にあたります。検算:0.02×0.5=0.01、0.01×0.5=0.005 と、積の順序を変えても同じです。
機械・電力の分野での使いどころ
理論以外でも、同じ原理が使われます。
| 場面 | 原理 | 区別のポイント |
|---|---|---|
| 直流機の電機子の誘導起電力 | 磁界中を動く導体に起電力が生じる(右手の法則、e=Blv が出発点) | 令和6年度下期 機械 問1の穴埋め |
| 電動機の回転力 | 磁界中の導体に電流が流れて力を受ける(左手の法則) | 電流が与えられ、力が求める量 |
| 発電機・変圧器 | 磁束の変化で起電力が生じる(ファラデー・レンツ) | 電磁誘導の応用として辞典も紹介 |
| 送電線から通信線への誘導障害 | 電流の変化で、近くの線路に電圧が誘導される | 令和7年度上期 電力 問9。静電誘導との区別 |
辞典は、電磁誘導を、発電機や変圧器などに応用される現象と説明しています。
間違えやすいポイント
- 左右を取り違える:力は左手、起電力は右手です。「求めたいものが力か、起電力か」を先に確認します
- 親指の役割を混同する:左手の親指は力、右手の親指は運動です。中指も、左手は電流、右手は起電力と変わります
- レンツの法則を「同じ向きに電流が流れる」と読む:磁束の変化を妨げる向きです。磁束が増えるなら、その増加を妨げる向きに電流が流れます
- ファラデーの法則で、磁束の大きさに比例すると考える:比例するのは、磁束の時間変化の割合です。磁束が大きくても、変化がなければ起電力は生じません
- e=Blv を、角度が付いた場合にもそのまま使う:運動の向きが磁界と角θをなすときは sinθ を掛けます
- 電磁力の式を電流と無関係に覚える:公表された問題には、「電流の大きさに比例した力が働く」という記述(令和5年度上期 理論 問4の(2))があり、これは正しい記述です
- 平行導体の力を距離の2乗に反比例とする:令和5年度上期 理論 問4の(3)は、この記述が誤りとされています。この力は距離に反比例します(2乗ではありません)
まとめ
- フレミングの左手の法則は電磁力(電流から力)、右手の法則は誘導起電力(運動から起電力)の向きを表します
- 指の役割:人差し指は共通で磁界。左手は親指=力・中指=電流、右手は親指=運動・中指=起電力です
- ファラデーの法則は起電力の大きさ(磁束の時間変化の割合に比例)、レンツの法則は向き(磁束の変化を妨げる向き)を決めます
- 大きさは、電磁力が F=B I l、誘導起電力が e=B l v(角θなら sinθ を掛ける)、コイルでは e=N×ΔΦ÷Δt です
- 電験三種では、理論(電磁力・ローレンツ力・誘導起電力の計算)、機械(直流機の誘導起電力)、電力(誘導障害の電磁誘導)に関連する出題があります
電気回路の公式は電験3種の公式一覧、交流の要素は電験3種の交流の基本、誘導電動機の動作は誘導電動機の記事で整理しています。
よくある質問
Qフレミングの左手の法則と右手の法則は、どう使い分けますか?
「電流を流して力を得る」場面が左手、「導体を動かして起電力を得る」場面が右手です。辞典の説明では、左手は中指を電流・人差し指を磁界に向けたときの親指が力の向き、右手は人差し指を磁界・親指を導線の運動方向に向けたときの中指が誘導電流(起電力)の向きです。問題文で、与えられているものが電流なら左手、導体の運動なら右手、と読み分けます。
Qレンツの法則は、フレミングの右手の法則とどう違いますか?
どちらも誘導起電力・誘導電流の向きを決める法則です。右手の法則は、磁界中で導体を動かす場合に、指で向きを決めます。レンツの法則は、磁束が変化する回路一般について「誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れる」と述べる、より一般的な法則です。辞典(ブリタニカ国際大百科事典)も、フレミングの右手の法則はレンツの法則を言い替えたものと説明しています。
Qファラデーの電磁誘導の法則は、式でどう表しますか?
回路に生じる起電力の大きさは、回路を貫く磁束の時間変化の割合に比例します。コイルの巻数をN、磁束の変化をΔΦ、かかった時間をΔtとすると、起電力の大きさは e=N×ΔΦ÷Δt [V] です。向きはレンツの法則で決まり、磁束の変化を打ち消す向きになります(式にマイナスの符号を付けて表す書き方もあります)。
Q電験三種では、フレミングの法則はどの科目で出ますか?
公表された問題冊子では、理論(磁界と電磁力)、機械(直流機の誘導起電力)、電力(誘導障害の電磁誘導)などに、関連する出題があります。理論の科目は、電気技術者試験センターの試験概要で「電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測」とされています。
Qフレミングの法則とローレンツ力は別のものですか?
ローレンツ力は、磁界中を運動する電荷が受ける力です。辞典は、フレミングの法則はローレンツ力から導かれるもので、磁界と速度が直角な特別の場合になっていると説明しています。理論の問題冊子には、ローレンツ力を直接問う出題もあります。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月21日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

