かご形と巻線形の誘導電動機の違いを、回転子の構造・始動方法・速度制御の比較表で整理。すべりとトルクの公式、比例推移を、電験三種の公表問題(機械)の計算と検算つきで解説します。
目次
結論:かご形は回転子に棒状の導体を納めて両端を端絡環でつないだ構造で、巻線形は回転子に巻線を持ち、スリップリングとブラシで二次回路を外に引き出せる構造です。かご形は構造が簡単で安価なので、始動は固定子側(一次側)の電圧を下げて行い(Y-Δ始動・始動補償器・インバータ)、巻線形は引き出した二次回路に抵抗をつないで始動し、速度も二次抵抗で変えます。トルクはすべりsと二次入力P2から、T=P2÷ωs(ωsは同期角速度)で求まります。
| 項目 | かご形 | 巻線形 |
|---|---|---|
| 回転子 | 回転子溝に導体を納め、その両端を端絡環で接続する | 回転子に巻線があり、二次電流をスリップリングとブラシを通じて外部回路に流せる |
| 構造・価格 | 同じ容量の巻線形より構造が簡単で、安価 | ブラシとスリップリングがある分、構造が複雑 |
| 機械的な強さ | 棒状の導体の回転子は、同じ容量の巻線形より機械的に過酷な使用に耐えられる | ― |
| 始動の方法 | 一次側を調整して電圧を下げる(Y-Δ始動・始動補償器・インバータ) | 二次回路に抵抗をつなぎ、比例推移を利用する |
| 速度制御 | 電源周波数(VVVF)・極数の切り換え・一次電圧の大きさの変更 | 二次抵抗の値を調整する(比例推移の利用) |
合格ナビの電験三種の問題は、電気技術者試験センターが公表した令和4年度上期〜令和7年度下期のうち7回分(令和6年度下期を除く)の本試験問題352問(機械は86問)です。このうち三相誘導機を扱う問題は12問で(2026-10-04 集計)、収録している令和4年度下期〜令和7年度下期の6回では、毎回2問ずつ出題されています(令和4年度上期は収録が機械7問のみで、誘導機の問題はありません)。分類「電気機器(誘導機)」は13問ですが、そのうち1問(令和4年度下期)は永久磁石同期モータの問題なので、12問として数えています。表の内容は、公式の問題の正答文(令和4年度下期 機械 問3、令和7年度上期 機械 問3、令和7年度下期 機械 問3、令和5年度下期 機械 問3)で確かめています。
誘導電動機のしくみ(回転磁界・同期速度・すべり)
固定子の三相巻線に三相交流を流すと、回転する磁界(回転磁界)ができます。回転磁界の速度を同期速度Ns[min⁻¹]といい、電源周波数f[Hz]と極数pから決まります。
Ns=120f÷p (回転子の回転速度は N=Ns×(1-s))
回転子は同期速度より少し遅れて回ります。その遅れの割合がすべり s=(Ns-N)÷Ns です。停止しているときは s=1、同期速度で回るときは s=0 です。公式の問題でも、1>s>0 の運転状態は電動機、回転子の速度が同期速度より高速なら発電機(すべりが負)として出題されています(令和6年度上期 機械 問3、令和7年度上期 機械 問3)。
例題(令和6年度上期 機械 問4):
V/f 一定制御インバータで駆動されている6 極の誘導電動機がある。この電動機は,端子電圧をV[V],周波数をf [Hz]として,V/f 比=4 一定制御インバータによって66 Hz で駆動されている。 このときの滑りは5 %であった。この誘導電動機の回転速度[min-1]の値として,正しいのは次のうちどれか。
(1) 1 140 (2) 1 200 (3) 1 254 (4) 1 320 (5) 1 710
出典:令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験 機械 問4(一般財団法人電気技術者試験センター)
公式の問題PDF(令和6年度上期 機械)の問4です。
- 同期速度:Ns=120×66÷6=1,320 min⁻¹
- 回転速度:N=Ns×(1-s)=1,320×(1-0.05)=1,254 min⁻¹
答えは(3) 1 254です。公式の解答も(3)です。検算は、答えからすべりを逆算します。(1,320-1,254)÷1,320=0.05で、与えられたすべり5%と一致します。V/f比4は、この問題の答えには使いません(磁束を一定に保つための条件です)。
この論点の問題を解く:
- V/f一定制御インバータで駆動される6極の誘導電動機の回転速度(令和6年度上期 問4)
- 三相誘導電動機の誘導起電力の空欄補充(令和5年度上期 問3)
- 三相の誘導機の記述の空欄補充(令和6年度上期 問3)
かご形と巻線形の構造の違い
公式の問題は、構造の違いを次の形で出題しています。
三相誘導電動機は,(ア) 磁界を作る固定子及び回転する回転子からなる。回転子は,(イ) 回転子と (ウ) 回転子との2 種類に分類される。(イ) 回転子では,回転子溝に導体を納めてその両端が (エ) で接続される。(ウ) 回転子では,二次電流を (オ) ,ブラシを通じて外部回路に流すことができる。
出典:令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験 機械 問3(一般財団法人電気技術者試験センター)
正答は(4)で、(ア)回転、(イ)かご形、(ウ)巻線形、(エ)端絡環、(オ)スリップリングです(公式の問題PDF・解答PDFで確認)。
かご形は、回転子の回路を外部に引き出すための部品(ブラシ・スリップリング)がありません。そのため、同じ容量の巻線形より構造が簡単で安価であり、棒状の導体を使った回転子は機械的に過酷な使用に耐えられます。この2点は、令和7年度上期 機械 問3の正しい記述として出題されています。同じ問題で誤りとされた記述は「大容量の電動機にはアルミダイカスト回転子が広く用いられている」で、公式の解答は(4)です(公式の問題PDF・解答PDFで確認)。そのほか、かご形が発電機として一部の水力発電や風力発電に採用されていること、発電運転中のすべりが負になることも、同じ問題の正しい記述です。
巻線形は、回転子の巻線の回路をスリップリングとブラシで外部に引き出し、外付けの抵抗で二次抵抗の値を調整できます。この調整ができることが、巻線形の最大の特徴です(令和6年度上期 機械 問3の正答でも、巻線形は「回転子巻線の回路をブラシとスリップリングで外部に引き出して二次抵抗値を調整する方式」とされています)。
この論点の問題を解く:
始動方法の違い(Y-Δ・始動補償器・二次抵抗)
誘導電動機は、始動の瞬間(s=1)には大きな電流が流れるので、かご形と巻線形で別々の方法で始動電流を抑えます。公式の問題は、始動の方法を次のように出題しています(抜粋)。
a.三相巻線形誘導電動機は,二次回路を調整して始動する。トルクの比例推移特性を利用して,トルクが最大値となる滑りを (ア) 付近になるようにする。具体的には,二次回路を (イ) で引き出して抵抗を接続し,二次抵抗値を定格運転時よりも大きな値に調整する。
b.三相かご形誘導電動機は,一次回路を調整して始動する。具体的には,始動時はY 結線,通常運転時はΔ結線にコイルの接続を切り替えてコイルに加わる電圧を下げて始動する方法,(ウ) を電源と電動機の間に挿入して始動時の端子電圧を下げる方法,及び (エ) を用いて電圧と周波数の両者を下げる方法がある。
出典:令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験 機械 問3(一般財団法人電気技術者試験センター)。この問題は、c(単相誘導電動機の始動)を含む5つの空欄の組合せを選ぶ形です。
正答は(4)で、(ア)は1、(イ)はスリップリング、(ウ)は始動補償器、(エ)はインバータです(公式の問題PDF・解答PDFで確認)。
Y-Δ始動で何が変わるのかは、計算で確かめられます。始動の瞬間にコイルをY結線にすると、各コイルに加わる電圧が定格(Δ結線)のときの 1÷√3 になり、トルクは電圧の2乗に比例するので 1÷3 になります。始動電流(線電流)も 1÷3 です。
例題(令和7年度下期 機械 問4):
あるかご形三相誘導電動機を定格電圧でY-Δ始動したところ,始動トルクは 49.0 N・m であった。また,Δ結線での全電圧始動時(定格電圧)の始動トルクは定格運転時の 210 %である。この電動機の定格運転時のトルクの値[N・m]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 16.3 (2) 23.3 (3) 28.3 (4) 40.4 (5) 70.0
出典:令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験 機械 問4(一般財団法人電気技術者試験センター)
- Y-Δ始動のトルクは、Δ結線で全電圧始動したときの1÷3:全電圧始動のトルク=49.0×3=147 N・m
- これが定格運転時のトルクの210%(2.10倍):定格運転時のトルク=147÷2.10=70.0 N・m
答えは(5) 70.0です。公式の解答も(5)です(同じ問題PDFの問4)。検算は逆向きに計算します。70.0×2.10=147 N・m(全電圧始動)、147÷3=49.0 N・m で、問題の値と一致します。
この論点の問題を解く:
- 二次回路・一次回路を調整する誘導電動機の始動(令和7年度下期 問3)
- Y-Δ始動の始動トルクから定格運転時のトルクを求める(令和7年度下期 問4)
- Y-Δ始動の始動トルクが60N・m、全電圧始動が定格の240%の場合(令和5年度下期 問4)
速度制御の違い(周波数・極数・二次抵抗)
誘導電動機の回転速度は N=120f(1-s)÷p です。f・p・s のどれかを変えれば速度が変わるので、速度制御の方法もこの3つに分類できます。公式の問題(令和5年度下期 機械 問3、解答(5))の正答の内容は次のとおりです(公式の問題PDF・解答PDFで確認)。
| 変えるもの | 方法 | 対象 | 特徴(公式の問題の記述) |
|---|---|---|---|
| 周波数f | VVVF電源装置(インバータ)を用いた制御 | かご形 | かご形で広く利用されている |
| 極数p | 運転中に固定子巻線の接続を変更して極数を切り換える | かご形 | 効率はよいが、速度の変化が段階的になる |
| すべりs | 一次電圧の大きさを変更する | かご形 | 速度の安定な制御範囲を広くするために二次抵抗の値を大きくとり、銅損が大きくなる |
| すべりs | 二次抵抗の値を調整し、トルクの比例推移を利用する | 巻線形 | ― |
この論点の問題を解く:
すべりとトルクの公式
固定子から回転子へ送られる電力を二次入力P2といいます。回転子の抵抗で失われる損失(二次銅損)は、P2のs倍になります。P2を基準にすると、次の関係があります。
- 二次銅損 Pc2=s×P2
- 機械的出力(軸出力に機械損を加えたもの)Pm=(1-s)×P2
- P2:Pc2:Pm=1:s:(1-s)
トルクは、回転磁界の同期角速度 ωs=2π×Ns÷60[rad/s]に対する二次入力で決まります。
T=P2÷ωs (機械的出力で表すと T=Pm÷ω、ω=2π×N÷60)
例題1(令和5年度上期 機械 問4):
定格出力36 kW,定格周波数60 Hz,8 極のかご形三相誘導電動機があり,滑り4 %で定格運転している。このとき,電動機のトルク[N・m]の値として,最も近いものを次の(1)~(5)の中から一つ選べ。ただし,機械損は無視できるものとする。
(1) 382 (2) 398 (3) 428 (4) 458 (5) 478
出典:令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 機械 問4(一般財団法人電気技術者試験センター)
公式の問題PDF(令和5年度上期 機械)の問4です。
- 同期速度:Ns=120×60÷8=900 min⁻¹。回転速度:N=900×(1-0.04)=864 min⁻¹
- 角速度:ω=2π×864÷60≒90.48 rad/s
- トルク:T=36,000÷90.48≒397.9 N・m
答えは(2) 398です。公式の解答も(2)です。検算は二次入力から計算します。P2=36,000÷0.96=37,500 W、ωs=2π×900÷60≒94.25 rad/s、T=P2÷ωs=37,500÷94.25≒397.9 N・m で、一致します。
例題2(令和4年度下期 機械 問2):
三相誘導電動機が滑り2.5 %で運転している。このとき,電動機の二次銅損が188 W であるとすると,電動機の軸出力[kW]の値として,最も近いものを次の(1)~(5)の中から一つ選べ。ただし,機械損は0.2 kW とし,負荷に無関係に一定とする。
(1) 7.1 (2) 7.3 (3) 7.5 (4) 8.0 (5) 8.5
出典:令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験 機械 問2(一般財団法人電気技術者試験センター)
公式の問題PDF(令和4年度下期 機械)の問2です。
- 二次入力:P2=Pc2÷s=188÷0.025=7,520 W
- 機械的出力:Pm=(1-s)×P2=0.975×7,520=7,332 W
- 軸出力:7,332-200(機械損0.2 kW)=7,132 W≒7.13 kW
答えは(1) 7.1です。公式の解答も(1)です。検算は、二次銅損と機械的出力の比で行います。Pc2÷Pm=188÷7,332≒0.02564 で、s÷(1-s)=0.025÷0.975≒0.02564 と一致します。
この論点の問題を解く:
比例推移とは(二次抵抗を変えるとトルク曲線がずれる)
巻線形の始動と速度制御の土台になっているのが、トルクの比例推移です。誘導電動機のトルクは、二次抵抗 r2 とすべり s が「r2÷s」の形でしか出てこないので、r2 を k 倍にすると、同じトルクが出るすべりも k 倍になります。このずれが「比例推移」です。最大トルクの大きさそのものは、二次抵抗を変えても変わりません。
次の数値例で確かめます(一次抵抗と励磁回路を無視した簡易モデルで、数値は当サイトの例です。実機の値ではありません)。相電圧200V、一次・二次の漏れリアクタンスの合計1.0Ω(二次側に換算)、4極50Hz(Ns=1,500 min⁻¹)とします。トルクは T=(3V²÷ωs)×(r2÷s)÷((r2÷s)²+x²)(x=1.0Ω)で、3V²÷ωs=3×200²÷157.08≒763.9 です。
| 二次抵抗(二次側換算) | 最大トルクのすべり | 最大トルク | 始動トルク(s=1) | s=0.04 のトルク | s=0.4 のトルク | 始動電流(s=1) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0.1Ω | 0.1 | 382 N・m | 75.6 N・m | 263.4 N・m | 179.8 N・m | 199.0 A |
| 1.0Ω(外付けで増やした) | 1.0 | 382 N・m | 382 N・m | 30.5 N・m | 263.4 N・m | 141.4 A |
- 二次抵抗が10倍になると、同じトルク263.4 N・mが出るすべりは0.04から0.4へ、ちょうど10倍に動きます(比例推移)
- 最大トルクは382 N・mのままで、最大トルクのすべりだけが0.1から1.0へ動き、始動のとき(s=1)に最大トルクが出ます
- 始動トルクは75.6 N・mから382 N・mへ約5倍になり、始動電流は199.0 Aから141.4 Aへ減ります。これが巻線形の始動の狙いです
検算:最大トルクは T=3V²÷(2×ωs×x)=3×200²÷(2×157.08×1.0)≒382.0 N・m で、表の値と一致します。s=0.04(r2=0.1Ω)では二次電流 I2=200÷√((0.1÷0.04)²+1²)=200÷√7.25≒74.28 A、T=3×I2²×(r2÷s)÷ωs=3×74.28²×2.5÷157.08≒263.4 N・m で、一致します。このとき二次入力 P2=T×ωs≒41,379 W、二次銅損 3×I2²×r2≒1,655 W で、1,655÷41,379=0.04=s も成り立っています。
よくある間違いと見直しの方法
- 同期速度と回転速度を取り違える:公式の Ns=120f÷p は回転磁界の速度で、実際の回転速度は Ns×(1-s) です。令和6年度上期の例題でも、選択肢の(4) 1 320は同期速度そのものです。すべりをかけ忘れていないか確認します
- Y-Δ始動のトルクを2分の1や√3分の1にしてしまう:Y結線では電圧が 1÷√3 になり、トルクは電圧の2乗に比例するので 1÷3 です
- 二次入力と機械的出力を取り違える:トルクは P2÷ωs でも Pm÷ω でも同じ値になります。二次銅損が与えられたら、P2=Pc2÷s が出発点です
- 比例推移で最大トルクも変わると思う:二次抵抗を変えて動くのは最大トルクの出るすべりで、最大トルクの値は変わりません
見直しは、すべり s が0〜1の範囲に入っているか、P2:Pc2:Pm=1:s:(1-s) を戻して成り立つか、答えを問題の式に代入して元の値に戻るか、の3点を確認します。
誘導電動機の問題を続けて解く
誘導電動機は、機械の電気機器(誘導機)に分類され、収録している6回では毎回2問ずつあります。構造・始動・速度制御の記述問題と、すべり・トルクの計算問題を交互に解くと、公式と記述が結びつきます。機械科目全体の出題範囲と勉強法は電験三種 機械の範囲・難易度・勉強法にまとめています。
よくある質問
Q誘導電動機の「誘導」とは何のことですか?
固定子の巻線に三相交流を流すと回転磁界ができ、この磁界が回転子の導体を切って起電力が誘導されます。誘導された電流と磁界の間に力が働いて回転子が回るので、「誘導」電動機と呼びます。回転子に外から電流を送らなくても回る点が、界磁巻線に直流を流して励磁する同期電動機との違いです。
Q誘導電動機のすべりが0になることはありますか?
すべりが0とは、回転子が同期速度(回転磁界と同じ速度)で回ることです。この状態では回転子の導体が磁界を切らず、起電力もトルクも生じません。電動機として運転している間は、同期速度より遅いので、すべりは0より大きくなります。同期速度より速く回すと、すべりが負になり、発電機として働きます。
Q巻線形の外付け抵抗は、運転中もつないだままですか?
始動のときは、二次抵抗を定格運転時よりも大きな値に調整します(公式の問題の記述)。二次抵抗を大きくしたまま運転すると、同じトルクを出すときのすべりが大きくなり、二次銅損(二次入力のs倍)が増えて効率は下がります。速度を下げる制御に使うときは、この損失が増えることが代わりの費用になります。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月4日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

