電験三種

交流のベクトル図の書き方電験三種の本試験問題を作図で解く

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

交流のベクトル図の書き方を、基準ベクトルの決め方・位相の進み遅れ・足し算と引き算の3点で手順化。RLC直列回路、三相の線間電圧、同期電動機を、電験三種の公表問題(理論・機械)の計算と検算つきで示します。

目次
  1. ベクトル図とは(長さが大きさ、角度が位相)
  2. ベクトル図の書き方(3つの手順)
  3. RLC直列回路のベクトル図とインピーダンス(例題で作図)
  4. 並列回路のベクトル図(電圧を基準にして電流を足す)
  5. ベクトルの引き算の図(三相の線間電圧)
  6. 同期電動機のベクトル図(V曲線のなぞ)
  7. よくある間違いと見直しの方法
  8. ベクトル図の問題を続けて解く
結論:交流のベクトル図は「①基準にするベクトルを水平右向きに1本描く(直列なら電流、並列なら電圧)→②抵抗は基準と同じ向き、コイルの電圧は基準の電流より90°進み、コンデンサの電圧は90°遅れの向きに描く→③足し算は矢印をつないで、引き算は向きを反対にしてつなぐ」の3段階で描けます。長さは実効値、角度は位相の進み遅れを表します。
素子電圧と電流の位相基準を電流にしたときの電圧ベクトルインピーダンス
抵抗R同位相右向き(0°)R
コイルL電流は電圧より90°遅れる上向き(+90°)jωL(誘導性リアクタンスXL)
コンデンサC電流は電圧より90°進む下向き(-90°)1÷(jωC)(容量性リアクタンスXC=1÷ωC)

合格ナビの電験三種の問題は、電気技術者試験センターが公表した令和4年度上期〜令和7年度下期のうち7回分(令和6年度下期を除く)の本試験問題352問(理論87問・電力90問・機械86問・法規89問)です。このうち、ベクトル図(位相の関係)を描いて解く、または考える問題として当サイトが数えたのは9問(理論6問・機械2問・電力1問、法規は0問)でした(2026-10-04 集計。試験団体の分類ではなく当サイトの判定です)。問題文に「ベクトル」という語が書かれた問題は3問しかなく、ベクトル図は問題に書かれているのではなく、解く側が描く道具です。ただし、選択肢がベクトル図そのものになっている問題もあります。例えば令和5年度下期 機械 問5は、遅れ力率で運転する円筒形三相同期電動機の正しいベクトル図を5つの図から選ぶ問題で、公式の解答は(3)です(公式の問題PDF・解答PDFで確認。この問題は当サイトの問題データに収録されていないため、上の9問には含めていません)。

ベクトル図とは(長さが大きさ、角度が位相)

交流の電圧や電流は、時間とともに正弦波で変化します。同じ周波数の正弦波どうしなら、その違いは「大きさ(実効値)」と「どれだけ進んでいるか遅れているか(位相)」の2つだけです。この2つを、長さと向きで表した矢印がベクトル図です。

  • 矢印の長さ:実効値(例:100V なら 100 の長さ)
  • 矢印の向き:基準のベクトルから反時計回りに何度進んでいるか(時計回りは遅れ)
  • 同じ種類の量(電圧どうし、電流どうし)は同じ図に描けますが、電圧と電流は単位が違うので、長さの比べ合いはしません

ベクトル図の書き方(3つの手順)

  • ① 基準ベクトルを決める:直列回路は電流がすべての素子に共通なので電流を基準にし、右向き(水平)に描きます。並列回路は電圧が共通なので電圧を基準にします
  • ② 素子ごとのベクトルを描く:上の表のとおり、基準を電流にするなら、抵抗の電圧は右向き、コイルの電圧は上向き(電流より90°進み)、コンデンサの電圧は下向き(電流より90°遅れ)。基準を電圧にするなら、抵抗の電流は右向き、コイルの電流は下向き(遅れ)、コンデンサの電流は上向き(進み)です
  • ③ 足す・引く:足し算は、ベクトルの矢印の先に次のベクトルの根元をつないで、最初の根元から最後の先までを結びます。引き算は、引くベクトルを反対向きにして足します

コイルとコンデンサは向きが正反対なので、同じ回路にあると打ち消し合います。このことが、後に出てくる直列共振の理由です。公式の問題でも、RLC直列共振回路で「共振周波数より低い周波数では容量性となり,電圧より位相が進んだ電流が流れる。共振周波数より高い周波数では誘導性となり,電圧より位相が遅れた電流が流れる」と答える形で出題されています(令和5年度上期 理論 問8、公式の解答は(3)。公式の問題PDF・解答PDFで確認)。

RLC直列回路のベクトル図とインピーダンス(例題で作図)

直列回路なので電流を基準にして描きます。例として、電源電圧100V、R=6Ω、XL=10Ω、XC=2Ωの直列回路を作図します(数値は当サイトの例です)。

  • ① 電流Iを水平右向きに描く(大きさはまだ分かりません)
  • ② 電圧ベクトルの向きを決める:抵抗の電圧VR(右向き)、コイルの電圧VL(上向き)、コンデンサの電圧VC(下向き)
  • ③ VL と VC は逆向きなので、差(VL-VC)が上向きに残る。VR と(VL-VC)は直角なので、電源電圧は直角三角形の斜辺になる

インピーダンスの三角形も同じ形です。R を横、XL-XC を縦にとると、斜辺が Z です。

  • リアクタンス:XL-XC=10-2=8Ω(誘導性)
  • インピーダンスの大きさ:Z=√(6²+8²)=√100=10Ω
  • 電流:I=100÷10=10A。位相は電圧より φ=tan⁻¹(8÷6)≒53.1°遅れる(誘導性なので電流が遅れる)
  • 各部の電圧:VR=10×6=60V、VL=10×10=100V、VC=10×2=20V
  • 力率:cosφ=R÷Z=6÷10=0.6

検算1(電圧ベクトルの図から):VL-VC=100-20=80V。電源電圧は √(60²+80²)=√10,000=100V で、与えた電源電圧と一致します。

検算2(複素数で):I=100÷(6+j8)=100×(6-j8)÷100=6-j8(大きさ10A、角度-53.1°)。各素子の電圧は VR=6×(6-j8)=36-j48、VL=j10×(6-j8)=80+j60、VC=-j2×(6-j8)=-16-j12。3つを足すと (36+80-16)+j(-48+60-12)=100+j0 で、電源の100V(角度0°)に戻ります。

注意点として、VL=100V は電源電圧と同じ大きさになっています。コイルやコンデンサの両端の電圧は、電源電圧より大きくなることもあります。電圧は大きさをそのまま足せず、向きを考えて足すからです。

この論点の問題を解く:

並列回路のベクトル図(電圧を基準にして電流を足す)

並列回路では電圧を基準にして、電流のベクトルを足します。遅れ力率の負荷は、電流を「電圧と同じ向きの成分(有効分)」と「電圧より90°遅れた成分(無効分)」に分けて考えると、直角三角形の問題になります。

図の交流回路において,電源電圧をE=140 V とする。この電源に抵抗R0[Ω]と誘導性リアクタンスXL[Ω]とからなる力率0.8 の誘導性負荷を接続したところ,電源から流れ出る電流の大きさは30 A であった。次に,スイッチS を閉じ,誘導性負荷と並列に抵抗R[Ω]を接続すると,電源から流れ出る電流の大きさが82 A となった。このとき,抵抗R[Ω]の大きさとして,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 1.5 (2) 2.3 (3) 2.5 (4) 2.9 (5) 3.0
出典:令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論 問9(一般財団法人電気技術者試験センター)

図は公式の問題PDF(令和7年度上期 理論)の問9にあります。

解き方(ベクトル図):電圧Eを右向きの基準にします。

  • 誘導性負荷の電流30Aを2つに分けます。有効分(右向き)=30×0.8=24A、無効分(下向き・遅れ)=30×√(1-0.8²)=30×0.6=18A
  • 並列に足した抵抗の電流 I は電圧と同じ向きなので、有効分に加わります。全電流の有効分は(24+I)A、無効分は18Aのまま
  • 全電流の大きさ82Aは直角三角形の斜辺:82²=(24+I)²+18² → (24+I)²=6,724-324=6,400 → 24+I=80 → I=56A
  • 抵抗:R=140÷56=2.5Ω

答えは(3) 2.5です。公式の解答も(3)です。

検算1(答えを戻す):R=2.5Ωなら電流は140÷2.5=56A。全電流の有効分24+56=80A、無効分18Aなので、√(80²+18²)=√6,724=82A で問題の値と一致します。

検算2(複素数で):負荷のインピーダンスの大きさは140÷30≒4.667Ω、そのうち抵抗分は4.667×0.8≒3.733Ω、リアクタンス分は4.667×0.6=2.8Ω。これに2.5Ωを並列にした全体の電流を複素数のアドミタンスで計算すると、大きさは82.0Aになりました(数値計算で確認)。

この論点の問題を解く:

ベクトルの引き算の図(三相の線間電圧)

引き算の図を使う代表的な場面は、三相交流の「相電圧」から「線間電圧」を求めるときです。a相とb相の相電圧を、大きさE、位相が120°ずれたベクトル Va、Vb とすると、線間電圧は Vab=Va-Vb です。

  • ① Va を基準(0°)にして右向きに描く。Vb は Va より120°遅れなので、-120°の向き(右下)に描く
  • ② 引き算は向きを反対にして足す。-Vb は、Vb を180°回した向き(+60°、右上)になる
  • ③ Va と-Vb を足す。大きさが等しく60°をはさむので、合成の大きさは 2E×cos30°=√3E、向きは真ん中の+30°

結果、線間電圧は相電圧の √3 倍で、位相は30°進みます。

検算(成分に分けて):Va=E×(1, 0)、Vb=E×(-1/2, -√3/2)。Va-Vb=E×(3/2, √3/2)。大きさ=E×√(9/4+3/4)=√3E。角度=tan⁻¹((√3/2)÷(3/2))=tan⁻¹(1/√3)=30°。図の結果と一致します。

この論点の問題を解く:

同期電動機のベクトル図(V曲線のなぞ)

機械の同期機は、電機子巻線の電圧の関係をベクトルで考えます。電機子抵抗を無視した三相同期電動機では、1相あたり「端子電圧V=誘導起電力E+jXs×電機子電流I」です(Xs:同期リアクタンス)。電流Iを基準に描くと、jXsI は電流より90°進んだ向き(電流と直角)になります。令和5年度下期 機械 問5の正解の図も、V、E、jXsI が三角形をつくり、jXsI が電流と直角になっています。次の例題は、力率1の場合にこの三角形が直角三角形になる問題です。

線間電圧V が360 V,電機子電流I が20 A,力率cosφ が1.0 で運転されている三相同期電動機がある。この電動機の電機子巻線はY 結線,一相の同期リアクタンスXs は6Ωである。巻線抵抗の電圧降下は無視するものとし,この運転状態における一相の誘導起電力E[V]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 130 (2) 220 (3) 240 (4) 370 (5) 380
出典:令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験 機械 問6(一般財団法人電気技術者試験センター)

公式の問題PDF(令和6年度上期 機械)の問6です。

解き方(ベクトル図):

  • 1相の電圧(相電圧):Vp=360÷√3≒207.8V(Y結線なので線間電圧の1/√3)
  • 力率1.0なので、電流Iは端子電圧Vpと同じ向き。jXsI は電流より90°進んだ向きで、大きさは 6×20=120V
  • E=V-jXsI なので、Vp(右向き)と jXsI(上向き)が直角をつくり、E はその差の斜辺になる:E=√(207.8²+120²)=√(43,200+14,400)=√57,600=240V

答えは(3) 240です。公式の解答も(3)です。EはVより tan⁻¹(120÷207.8)=30°遅れた向きにあります。

検算(電力で):入力電力は 3×Vp×I=3×207.8×20≒12,471W。同期電動機の電力は 3×Vp×E×sinδ÷Xs でも表せるので、δ=30°、E=240V を入れると 3×207.8×240×0.5÷6≒12,471W となり、一致します。

V曲線をベクトル図で説明する

同期電動機の出力が一定のまま、界磁電流を変えるとEの大きさが変わります。出力が一定ならEの縦成分(E×sinδ)は変わらないので、Eの先端は水平線の上を動き、電流(V-E)÷jXs の向きと大きさが変わります。次の表は、V=1、Xs=1、出力=1(いずれも基準値を1とした値)の理想化した例です(Eが界磁電流に比例すると仮定し、磁気飽和と電機子抵抗を無視しています。当サイトの数値例です)。

Eの大きさ(界磁電流の目安)電機子電流の大きさ電流の位相力率
1.2(小さい:不足励磁)1.055遅れ18.6°0.948
1.414(力率1になる点)1.0000°1.000
2(大きい:過励磁)1.239進み36.2°0.807

電流の大きさは力率1のときに最小になり、界磁電流が大きくても小さくても増えます。これがV曲線(位相特性曲線)の形です。公式の問題でも、図の破線より右側(界磁電流が大きい側)が進み電流、左側が遅れ電流の範囲となる、と問われています(令和4年度下期 機械 問4、公式の解答は(4)。公式の問題PDF・解答PDFで確認)。この性質を利用して無効電力を調整する、無負荷の同期電動機を同期調相機といいます。

この論点の問題を解く:

よくある間違いと見直しの方法

  • 基準を決めずに描き始める:直列なら電流、並列なら電圧。基準が決まらないと、進みと遅れが逆になります
  • コイルとコンデンサの向きを取り違える:電圧基準なら「コイルの電流は遅れ(下向き)、コンデンサの電流は進み(上向き)」。電流基準なら電圧の向きは逆になります
  • 大きさを足し算してしまう:電圧や電流は向きを考えて足します。同じ向きなら足し算、直角なら √(a²+b²)、逆向きなら引き算です
  • 単位のちがうものを同じ図に描く:電圧と電流は別の図に描くか、基準だけ共通にします。インピーダンスの三角形は電圧の三角形と相似なので、考え方は同じです

見直しは、直角三角形になっているか(ピタゴラスの定理で確かめる)、力率が 0〜1 の範囲に入るか、答えを問題の式に戻して元の値になるか、の3点を確認します。

ベクトル図の問題を続けて解く

交流回路は理論の「交流回路」、同期機は機械の「電気機器(同期機)」に分類されています。それぞれの出題傾向は電験三種 理論のコツと出題傾向と電験三種 機械の範囲・難易度・勉強法で確認できます。ベクトル図で式の意味が見えたら、次は問題を解いて、図と計算が同じ答えになるか確かめてみましょう。

よくある質問

Qベクトル図は直列回路と並列回路で何を基準にしますか?

直列回路は全部の素子に同じ電流が流れるので電流を基準(水平右向き)にし、並列回路は全部の素子に同じ電圧がかかるので電圧を基準にします。基準を逆にしても答えは同じですが、図が複雑になって位相の向きを間違えやすくなります。

Q遅れ・進みは、図の上向きと下向きのどちらですか?

基準ベクトルから見て反時計回り(上向き側)が「進み」、時計回り(下向き側)が「遅れ」です。基準を電圧にしたとき、誘導性負荷の電流は電圧より遅れるので下向き、容量性負荷の電流は進むので上向きに描きます。

Qベクトル図が描けなくても電験三種の計算問題は解けますか?

複素数の計算(j を使った式)で解く方法もあり、同じ答えになります。ただし、向きや大きさの見当をつけたり、答えを見直したりするときは図があるほうが速く確かめられます。この記事の例題は、図で解いたあとに複素数や別の式で検算しています。

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法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月4日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

合格ナビ 編集長・運営者

電験三種(第三種電気主任技術者)の出題範囲・法令・公式の統計を参照して書いています。プロフィール・編集方針