電験三種 理論の交流の入口をまとめました。周期の求め方、周波数と角周波数(角振動数)、実効値と平均値、位相の進み・遅れ、インピーダンスとアドミタンス、リアクタンスの周波数特性を単位つきの式と当サイトの計算による例題で解説。RLC回路のベクトル図は別記事へ。
目次
結論:交流の問題は、正弦波 v=Vm sin(ωt+φ) の4つの量(最大値Vm・角周波数ω・初期位相φ・実効値V)を読み取るところから始まります。周期T[s]と周波数f[Hz]は T=1÷f、角周波数は ω=2πf [rad/s]、正弦波の実効値は最大値÷√2 です。抵抗・コイル・コンデンサの合成は、インピーダンスZ=R+jX [Ω](その逆数がアドミタンスY=1÷Z [S])で扱い、リアクタンスは周波数で XL=ωL は比例して増え、XC=1÷(ωC) は反比例して減ります。
| 量 | 記号・式 | 単位 |
|---|---|---|
| 周期 | T=1÷f =2π÷ω | [s] |
| 周波数 | f=1÷T =ω÷(2π) | [Hz] |
| 角周波数(角振動数) | ω=2πf =2π÷T | [rad/s] |
| 正弦波の実効値 | V=Vm÷√2(≒0.707Vm) | [V] |
| 位相差と時間差 | Δt=φ÷ω | φ:[rad]、Δt:[s] |
| インピーダンス | Z=R+jX、|Z|=√(R²+X²) | [Ω] |
| アドミタンス | Y=1÷Z=G+jB、|Y|=1÷|Z| | [S] |
| 誘導性リアクタンス | XL=ωL=2πfL | [Ω] |
| 容量性リアクタンス | XC=1÷(ωC)=1÷(2πfC) | [Ω] |
電気技術者試験センターの試験科目のページでは、理論の内容が「電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測」と示されています(第三種電気主任技術者試験 試験概要)。交流の基本量は、そのうちの電気理論の交流回路の土台にあたります。RLC回路を矢印で描くベクトル図はベクトル図の記事、共振周波数などの公式は電験3種の公式一覧、複素数や三角関数の準備は電験三種の数学で扱っているので、この記事は基本量の意味と使い分けに絞ります。
正弦波交流の基本量:周期・周波数・角周波数
家庭の電気のように、向きと大きさが周期的に変わる電圧・電流が交流です。電験三種で扱うのは、ほぼ正弦波(sin波)で、次の形で表されます。
v=Vm sin(ωt+φ) [V](Vm:最大値[V]、ω:角周波数[rad/s]、t:時間[s]、φ:初期位相[rad])
- 周期T[s]:波が1回分くり返す時間。T=1÷f
- 周波数f[Hz]:1秒間にくり返す回数。f=1÷T。1Hz=1回/秒
- 角周波数ω[rad/s](角振動数とも):1秒間に進む位相の角度。1周期で2πラジアン(360°)進むので ω=2πf =2π÷T
周波数が50Hzのとき、周期は 1÷50=0.02s(20ms)で、角周波数は 2π×50≒314.16rad/s です。60Hzでは、周期 1÷60≒16.67ms、角周波数 2π×60≒376.99rad/s です(当サイトの計算)。周波数は問題文に書かれているので、その値をそのまま使います。
周期の求め方は2通りです。周波数が分かっていれば T=1÷f、式 v=Vm sin(ωt+φ) が与えられていれば、ωの値から T=2π÷ω で求めます。たとえば v=sin(100πt) なら、ω=100π、T=2π÷(100π)=0.02s です。
実効値・平均値と波形率・波高率
交流の大きさを表すには、最大値のほかに、実効値と平均値があります。
- 実効値:抵抗に加えたとき、同じ値の直流と同じ電力になる交流の値です。値は「瞬時値の2乗の平均の平方根」(2乗平均平方根)で定義され、正弦波では Vm÷√2 になります
- 平均値:正弦波は1周期で平均すると0になるので、半周期(または全波整流した波形)の平均を使います。正弦波では 2Vm÷π(≒0.637Vm)
- 波形率=実効値÷平均値(正弦波は π÷(2√2)≒1.111)
- 波高率=最大値÷実効値(正弦波は √2≒1.414)
| 量 | 正弦波での値 |
|---|---|
| 最大値 | Vm |
| 実効値 | Vm÷√2≒0.707Vm |
| 平均値(半周期) | 2Vm÷π≒0.637Vm |
| 波形率 | π÷(2√2)≒1.111 |
| 波高率 | √2≒1.414 |
問題文で「100V」とだけ書かれた交流電圧は、特に断りがなければ実効値です。最大値は 100×√2≒141.4V になります。正弦波以外の波形(方形波・三角波など)は、実効値・平均値が正弦波と異なるので、問題文の波形に合わせて、定義(2乗の平均の平方根)から計算します。
位相の進み・遅れと時間のずれ
同じ周波数の2つの正弦波は、大きさ(最大値)と、波がずれている量(位相差)の2つだけが違います。
- v1=Vm sin ωt を基準にして、v2=Vm sin(ωt+φ) の φ が正なら、v2は v1より φだけ進んでいる(先に山が来る)
- φが負なら、v2は v1より |φ| だけ遅れている
- 位相差φ[rad]は、時間のずれΔt[s]に直せる:Δt=φ÷ω(周期Tで割った比が φ÷2π)
例題1(当サイトの計算):電圧 e=100√2 sin(100πt+π/6) [V] について、最大値・実効値・周波数・周期・初期位相・t=0の瞬時値を求めます。また、50Hzの交流で位相差60°は何ミリ秒のずれかも求めます。
- 最大値:Vm=100√2≒141.4V、実効値:Vm÷√2=100V
- 角周波数:ω=100π≒314.16rad/s、周波数:f=ω÷(2π)=50Hz、周期:T=1÷50=20ms
- 初期位相:π/6=30°(基準の sin 100πt より30°進み)
- t=0の瞬時値:141.4×sin30°=141.4×0.5=70.7V
- 時間のずれ:60°=π/3 [rad]、Δt=(π/3)÷(100π)=1÷300≒3.33ms
- 検算:60°は1周期(360°)の6分の1なので、周期20msの6分の1=3.33msで一致
インピーダンスとアドミタンス
交流回路では、電圧と電流の比を、位相も含めた複素数で表します。
- インピーダンスZ[Ω]:Z=V÷I(複素数)。抵抗成分Rと、リアクタンス成分Xを使って Z=R+jX と書く。大きさは |Z|=√(R²+X²)
- アドミタンスY[S]:Y=1÷Z=I÷V。コンダクタンスG(Yの実部)とサセプタンスB(虚部)で Y=G+jB。大きさは |Y|=1÷|Z|
- 電流の大きさ:I=V÷|Z|=|Y|×V
| 素子 | インピーダンス | アドミタンス |
|---|---|---|
| 抵抗R | Z=R | Y=1÷R(=G) |
| コイルL | Z=jωL | Y=1÷(jωL)=−j÷(ωL) |
| コンデンサC | Z=1÷(jωC)=−j÷(ωC) | Y=jωC |
直列回路では Z を足し(Z=Z1+Z2)、並列回路では Y を足します(Y=Y1+Y2)。直列のコイルとコンデンサは、Z の虚部が逆符号なので打ち消し合います。並列では、Y の虚部が逆符号で打ち消し合います。
Z=R+jX から Y=G+jB を求めるときは、分母を実数にして次のとおりです。
- G=R÷(R²+X²)、B=−X÷(R²+X²) [S]
例題2(当サイトの計算):R=30Ω、L=0.1Hのコイルの直列回路に、実効値100V・50Hzの電圧を加えます。インピーダンス、電流、位相のずれ、アドミタンスを求めます。
- 誘導性リアクタンス:XL=2πfL=2π×50×0.1≒31.42Ω
- インピーダンス:Z=30+j31.42 [Ω]、|Z|=√(30²+31.42²)=√(900+986.96)=√1886.96≒43.44Ω
- 電流:I=100÷43.44≒2.30A
- 電圧に対する電流の位相:電流は電圧より φ=tan⁻¹(31.42÷30)≒46.3°遅れ(コイルを含む回路は遅れ電流)
- アドミタンス:G=30÷1886.96≒0.01590S、B=−31.42÷1886.96≒−0.01665S。|Y|=√(0.01590²+0.01665²)≒0.02302S
- 検算:|Y|=1÷|Z|=1÷43.44≒0.02302Sで一致。I=|Y|×V=0.02302×100≒2.30Aで一致
リアクタンスの周波数特性(f・L・Cとの関係)
リアクタンスは周波数によって値が変わります。コイルは周波数が高いほど電流を通しにくく、コンデンサは周波数が高いほど電流を通しやすくなります。
| 周波数 | コイル XL=2πfL | コンデンサ XC=1÷(2πfC) |
|---|---|---|
| 比例か反比例か | fに比例(fが2倍でXLも2倍) | fに反比例(fが2倍でXCは半分) |
| 直流(f=0) | XL=0(導線と同じ) | XC→∞(電流を通さない) |
| 周波数が非常に高い | XL→∞(電流を通さない) | XC→0(導線と同じ) |
例題3(当サイトの計算):L=0.1H、C=10μFで、周波数を変えたときのリアクタンスを求めます(直列にしたときの合成リアクタンスは X=XL−XC)。
| 周波数f | XL=2πfL [Ω] | XC=1÷(2πfC) [Ω] | X=XL−XC [Ω] | 回路の性質 |
|---|---|---|---|---|
| 50Hz | 31.4 | 318.3 | −286.9 | 容量性(電流は進み) |
| 約159.15Hz | 100.0 | 100.0 | 0 | 共振(XL=XC) |
| 500Hz | 314.2 | 31.8 | +282.3 | 誘導性(電流は遅れ) |
- 共振周波数:f0=1÷(2π√(LC))=1÷(2π×√(0.1×10×10⁻⁶))=1÷(2π×10⁻³)≒159.15Hz
- 検算:f0のとき XL=2π×159.15×0.1≒100Ω、XC=1÷(2π×159.15×10×10⁻⁶)≒100Ω で等しい
- 50Hzでは XC>XL なので全体が容量性、500Hzでは XL>XC なので誘導性。共振周波数を境に性質が入れ替わる
この共振の考え方は、電験3種の公式一覧の共振周波数の例題と同じ回路です。
電験三種 理論での問われ方(出題の型)
電気技術者試験センターが過去の試験問題を公表しているので、問われ方の型を確かめられます。交流の基本量には、次のような問われ方の型があります。
| 問われ方 | 使う式・考え方 |
|---|---|
| 正弦波の式から、最大値・実効値・周波数・位相を読み取る | v=Vm sin(ωt+φ)、ω=2πf、実効値=Vm÷√2 |
| 波形(方形波など)の実効値・平均値を求める | 定義(2乗の平均の平方根)で計算する |
| RL・RC・RLC直列回路の電流・インピーダンス・力率を求める | |Z|=√(R²+X²)、I=V÷|Z|、力率=R÷|Z| |
| 並列回路の電流・アドミタンスを求める | Y=G+jB、電圧を基準にして電流を足す |
| 周波数を変えたときの電流・電圧・位相の変化を記述で選ぶ | XL∝f、XC∝1÷f、共振周波数 |
選ぶ順番の目安は、①与えられているのが瞬時値の式か実効値か(Vm÷√2で直す)、②直列ならZ、並列ならYで足す、③周波数が変わるなら XL・XC を f の式で書き直す、です。RLC回路の位相のずれを図で確かめるときは、ベクトル図の記事の作図の手順を使います。
交流回路の問題を続けて解いて、「瞬時値か実効値か」「直列か並列か」を最初に確かめる習慣をつけましょう。
間違えやすいポイント
- 最大値と実効値を取り違える:「100V」は実効値です。瞬時値の式 v=141.4 sin ωt の141.4は最大値で、実効値は100Vです
- ωとfを混同する:XL=ωL=2πfL です。2πをかけ忘れる・二重にかけるミスが多いので、単位がrad/sかHzかを確認します
- 平均値を、1周期の平均(0)と取り違える:正弦波の平均値は半周期(または全波整流)の平均 2Vm÷π です
- 位相の進み・遅れを逆にする:コイルは電流が電圧より遅れ、コンデンサは電流が電圧より進みます(電圧を基準にして電流を見る)
- 並列でZを足す・直列でYを足す:直列はZ、並列はYの和です
- リアクタンスの周波数依存を逆にする:コイルは周波数が高いほど大きく、コンデンサは周波数が高いほど小さくなります
- 単位の取り違え:インピーダンスはΩ、アドミタンスはS(ジーメンス)、角周波数はrad/sです
まとめ
交流の基本量は、周期T=1÷f、角周波数ω=2πf、実効値=最大値÷√2、位相差と時間差 Δt=φ÷ω が出発点です。直列はインピーダンスZ=R+jXを足し、並列はアドミタンスY=1÷Zを足します。リアクタンスは XL=2πfL が周波数に比例、XC=1÷(2πfC) が反比例で、この大小が逆転する周波数が共振周波数です。まず「瞬時値か実効値か」「直列か並列か」「周波数はいくつか」を読み取ってから、式に代入します。
よくある質問
Q角周波数ωの単位は、Hzとrad/sのどちらですか?
角周波数の単位はrad/s(ラジアン毎秒)です。周波数f[Hz]は「1秒間に何周期あるか」、角周波数ω[rad/s]は「1秒間に位相が何ラジアン進むか」を表し、1周期は2πラジアンなので ω=2πf の関係があります。式に代入するときは、fではなくωを使う式(XL=ωL など)か、fを使う式(XL=2πfL)かを区別します。
Q実効値が交流の電圧の代表値として使われるのはなぜですか?
実効値は、同じ抵抗に加えたとき、直流と同じ電力(熱の発生)になる値として決められているからです。たとえば実効値100Vの交流を抵抗に加えると、100Vの直流を加えたときと同じ電力が消費されます。最大値は約141Vです。
Qアドミタンスの虚部(サセプタンス)の符号は、コイルとコンデンサで逆になりますか?
逆になります。Y=G+jB と書くと、コンデンサは Y=jωC なのでBは正、コイルは Y=1÷(jωL)=−j÷(ωL) なのでBは負です。インピーダンス(Z=R+jX)ではコイルのXが正、コンデンサのXが負なので、アドミタンスは符号がそろって逆になります。問題文に書かれた符号の約束に合わせて読みます。
Q位相が進んでいるか遅れているかは、波形のどこを見て判断しますか?
同じ周波数の2つの波が、基準の波より先に山(またはゼロを上向きに横切る点)を迎えるほうが「進み」です。式で見ると、v=Vm sin(ωt+φ) のφが大きいほど波が左にずれて早く立ち上がり、φが正なら基準(sin ωt)より進んでいます。時間のずれは、位相差φ[rad]÷ω[rad/s]で求まります。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

