電験三種で使う数学の範囲を、問題冊子4科目9回分594問の語句で数えました。sin・cosが出る問題は14問、微分・積分の語は機械の2問だけ(問題文のテキストで数えた下限)。関数電卓が使えない試験で補う方法と科目別の数学の比重を、例題の検算つきでまとめます。
結論:電験三種で使う数学の範囲は、電気技術者試験センターが示していません。試験概要・問題と解答のページ・令和8年度上期の受験案内に「数学」の語はなく、電卓は四則演算と開平計算(√)のものだけで、関数電卓は使えません。令和4年度上期〜令和8年度上期の問題冊子9回分(4科目594問)の問題文を数えると、sinまたはcosが出る問題は14問、自然対数・対数の語が出る問題は5問、微分・積分の語が出る問題は機械の2問(制御の用語)でした(いずれも問題文のテキストで数えた下限)。一方、数値で答える「最も近いものを」の問題は594問中224問(37.7%、これも問題文のテキストで数えた件数)で、理論と機械は4割を超えます。
| 科目 | 問題数(9回分) | 「最も近い」を含む問題 | sin・cosが出る問題 | 自然対数・対数が出る問題 | 微分・積分の語が出る問題 |
|---|---|---|---|---|---|
| 理論 | 162問 | 80問(49.4%) | 7問 | 2問 | 0問 |
| 電力 | 153問 | 45問(29.4%) | 4問 | 0問 | 0問 |
| 機械 | 162問 | 75問(46.3%) | 3問 | 2問 | 2問(制御の用語) |
| 法規 | 117問 | 24問(20.5%) | 0問 | 1問 | 0問 |
| 合計 | 594問 | 224問(37.7%) | 14問 | 5問 | 2問 |
この表は、電気技術者試験センターが公表した問題冊子(令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度上期・令和5年度下期・令和6年度上期・令和6年度下期・令和7年度上期・令和7年度下期・令和8年度上期の理論。電力・機械・法規は同じ日付の q02・q03・q04)の問題文を、合格ナビ編集部がテキストで検索して数えたものです(2026-10-04 集計)。B問題の小問(a)(b)は1問として数え、改行で語が分かれた箇所も含めて数えています。数えたのは問題冊子のテキストだけで、図の中の文字は数えていないため、図にだけ出る語や式は含まれず、各件数は下限です。PDFのテキスト抽出では、√・∫・πなどの数式記号や図の中の文字が欠けるため、sin・cos・対数・微分・積分の件数は実際より少ない下限です。
電験三種で必要な数学の範囲
電気技術者試験センターの試験概要は、理論の範囲を「電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測」と示していますが、数学の範囲は書かれていません。同じ試験概要と、問題と解答のページ、令和8年度上期の受験案内には、「数学」の語が3つとも出てきません(2026-10-04 時点)。
示されているのは、使える電卓の規定です。
電験三種で使える電卓:四則演算と開平計算(√)を行うための電卓。数式が記憶できる電卓・関数電卓・印字機能を有する電卓は使用できません。最終確認日:2026-10-04。出典:電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者の試験概要。
試験概要には、「試験問題によっては、開平計算(√)が必要になりますので、開平機能付きの電卓を使用するようにしてください。」とも書かれています。つまり、√は電卓で計算でき、sin・cos・指数・対数は電卓では計算できません。範囲が示されていないため、必要な数学は「過去の問題で実際に使われたもの」から決める方法があります。公式と、三角比・平方根・接頭語などの簡易表は電験3種の公式一覧の「電験3種の数学」にあります。本記事では、その表を問題冊子9回分の出番と例題の検算で確かめます。
三角関数・複素数・微分積分の出番
9回分の問題冊子で、数学の種類ごとにどんな問題に出たかを整理します。
| 数学 | 9回分の問題冊子での出番 | 実例 |
|---|---|---|
| 三角関数(sin・cos) | 問題文にsinまたはcosが出る問題が14問(理論7・電力4・機械3) | 理論 令和7年度上期 問8(sin45°) |
| 平方根・分数 | 電卓の√キーで計算できる。力率や三相電力の問題で出る | 理論 令和5年度上期 問9(力率 cosφ=1/√3) |
| 連立方程式 | 条件を2つ与えて、電池の起電力や抵抗を求める形で出る | 理論 令和7年度下期 問6・問9 |
| 複素数 | 「複素」の語は理論 令和7年度上期 問15(複素インピーダンス)の1問。直列回路のインピーダンスの大きさ √(R²+X²) は令和7年度下期 問9で使う | 理論 令和7年度上期 問15 |
| 指数・対数 | 理論の過渡現象で「自然対数の底は2.718とする」と問題文に示される(令和5年度下期 問10・令和8年度上期 問10)。法規 令和7年度下期 問11は自然対数を含む式だが、値は図2から読み取る | 理論 令和8年度上期 問10 |
| 微分・積分 | 語は機械の2問だけで、どちらも制御の用語。コイルの電圧は電流のグラフの傾きから求める形で出る | 理論 令和5年度上期 問10 |
| 2進数・16進数 | 機械の情報処理で出る | 機械 令和8年度上期 問14 |
| 対数軸 | ボード線図の横軸が対数軸(20 dB/dec)。ゲイン特性の形を選ぶ | 機械 令和7年度下期 問18 |
例題で検算する:sin・連立方程式・図の傾き
sin・平方根・連立方程式・微分の考え方のそれぞれを、実際の問題で検算します。
例題1:sin45°を使う(令和7年度上期 理論 問8)
ある回路に,i=4√2 sin120πt [A]の電流が流れている。この電流の瞬時値が,時刻t=0 s以降に初めて4Aとなるのは,時刻t=t₁[s]である。t₁[s]の値として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 1/120 (2) 1/160 (3) 1/240 (4) 1/360 (5) 1/480
出典:令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論 問8(一般財団法人電気技術者試験センター)
解き方1(sinの値から)
- 4√2 sin120πt=4 より、sin120πt=4÷(4√2)=1/√2
- sinが1/√2になる最初の角度は45°(π/4)なので、120πt=π/4
- t=(π/4)÷(120π)=1/480 s
答えは(5)です。公式の解答も(5)です(令和7年度上期 解答)。
解き方2(周期から):角周波数が120π rad/s なので、周波数は60 Hz、周期は T=1/60 s です。瞬時値が最大値4√2 Aの1/√2倍(=4 A)になる最初の角度は45°で、これは周期の1/8にあたります。T/8=1/60÷8=1/480 s で、解き方1と一致します。
検算:t=1/480 を代入すると、4√2×sin(120π/480)=4√2×sin(π/4)=4√2×(1/√2)=4 A で、問題文に戻ります。
この問題で必要だったのは、sin45°=1/√2 という値だけで、関数電卓は要りません。
例題2:連立方程式と平方(令和7年度下期 理論 問9)
図1のような抵抗R[Ω]と誘導性リアクタンスX[Ω]との直列回路がある。この回路に正弦波交流電圧E=100 Vを加えたとき,回路に流れる電流は10 Aであった。この回路に図2のように,更に抵抗11 Ωを直列接続したところ,回路に流れる電流は5 Aになった。抵抗R[Ω]の値として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 16.7 (2) 5.5 (3) 11.4 (4) 8.6 (5) 8.1
出典:令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験 理論 問9(一般財団法人電気技術者試験センター)。図1・図2は省略しました。
解き方1(二乗の連立方程式)
- 図1のインピーダンスの大きさは 100÷10=10 Ω なので、R²+X²=10²=100
- 図2は 100÷5=20 Ω なので、(R+11)²+X²=20²=400
- 2式を引くと、(R+11)²−R²=300、つまり 22R+121=300
- R=179÷22≒8.14 Ω
答えは(5) 8.1です。公式の解答も(5)です。
解き方2(求めたRで逆算):X²=100−8.136²≒33.8、X≒5.81 Ω。図2の大きさは √((8.136+11)²+33.8)=√(366.2+33.8)=√400=20 Ω で、問題文の5 Aに戻ります。
この問題で使った数学は、二乗・引き算・分数と、検算の√だけです。複素数の記号j(虚数単位)を使わなくても、インピーダンスの大きさ √(R²+X²) が分かれば解けます。
例題3:微分の考え方は図の傾き(令和5年度上期 理論 問10)
図1のように,インダクタンスL=5 Hのコイルに直流電流源Jが電流i[mA]を供給している回路がある。電流i[mA]は図2のような時間変化をしている。このとき,コイルの端子間に現れる電圧の大きさ|v|の最大値[V]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 0.25 (2) 0.5 (3) 1 (4) 1.25 (5) 1.5
出典:令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論 問10(一般財団法人電気技術者試験センター)。図1・図2は省略しました。
図2の電流は、0→1.0 mAに5 msで増え、1.0 mAを5 ms保ち、1.0→0.5 mAに5 msで減り、0.5 mAを5 ms保ち、0.5→0 mAに2 msで減ります(図2の読み取りは合格ナビ編集部)。
解き方1(傾きから)
- コイルの電圧は v=L×(電流の変化÷時間)。電流が一定の区間は電圧が0
- 各区間の傾き:0.2 mA/ms、0.1 mA/ms、0.25 mA/ms(mA/ms=A/s)
- 電圧:5×0.2=1.0 V、5×0.1=0.5 V、5×0.25=1.25 V
- 最大は最後の区間の1.25 V
答えは(4)です。公式の解答も(4)です(令和5年度上期 解答)。
解き方2(単位と大小で確かめる):傾きが最も急な区間で電圧が最大になります。最後の区間は 0.5 mA を 2 ms で減らすので、傾きは0.5÷2=0.25 mA/ms=0.25 A/s で、他の2区間(0.2、0.1)より急です。v=5 H×0.25 A/s=1.25 V(H×A/s=V)で、単位も合います。
微分と言っても、計算は引き算と割り算だけです。
この論点の問題を解く:
つまずきやすい分野と最短の補い方
どの分野でつまずくかは人によって違い、受験者ごとの正答率は本記事では扱っていません。ここでは、関数電卓が使えないため電卓では補えない作業を基準に、補い方を並べます。
| 電卓で補えない作業 | 補い方 | 出た問題 |
|---|---|---|
| sin・cosの値 | 30°・45°・60°の値を表で覚える(下の表) | 理論 令和7年度上期 問8 |
| 指数・自然対数の値 | 問題文や選択肢に与えられる値を使う(e=2.718など) | 理論 令和5年度下期 問10・令和8年度上期 問10 |
| 対数を含む式の値 | 図から値を読み取る | 法規 令和7年度下期 問11 |
| 円周率π | 3.14で足りる場合がある(下の例) | 機械 令和8年度上期 問2 |
| 微分の計算 | 図の傾き(変化量÷時間)で読む | 理論 令和5年度上期 問10 |
| 2進数・16進数の変換 | 16進数の1桁は2進数の4桁(下の例) | 機械 令和8年度上期 問14 |
| 角度 | sin | cos |
|---|---|---|
| 30° | 1/2 | √3/2 |
| 45° | 1/√2 | 1/√2 |
| 60° | √3/2 | 1/2 |
平方根が出る力率の例(令和5年度上期 理論 問9):抵抗Rと誘導性リアクタンスXLの直列回路で R/XL=1/√2 のとき、XL=√2 R なので、インピーダンスの大きさは √(R²+2R²)=√3 R、力率は cosφ=R÷(√3 R)=1/√3≒0.577 です。選択肢の0.58が最も近く、公式の解答も(3)の0.58です。
円周率の例(令和8年度上期 機械 問2):直径0.5 m、導体の有効長0.5 m、磁束密度0.4 T、回転速度1,500 min⁻¹の直流発電機の1巻きのコイルの起電力は、周速 v=πDn/60=π×0.5×1500/60≒39.3 m/s、e=2Blv=2×0.4×0.5×39.3≒15.7 V です。πを3.14としても15.70 Vで、選択肢の15.7が最も近く、公式の解答も(4)です。
16進数の例(令和8年度上期 機械 問14):選択肢の「(3D)16を2進数に変換すると(111011)2になる」は、3=0011、D(13)=1101 なので(111101)2が正しく、この記述が誤りです。公式の解答も(5)です。(57)16=5×16+7=87は(1010101)2=85より大きく、(2)は正しい記述です。
この論点の問題を解く:
- ビットパターンの排他的論理和・否定論理和と16進数(令和6年度上期 問14)
- フィードバック制御系のボード線図(令和5年度下期 問13)
- コンデンサのスイッチ切換後の電圧・電流の記述(令和5年度下期 問10)
- 抵抗とリアクタンスの直列回路で、力率と電力を求める(令和5年度上期 問9)
- 接地極の接地抵抗と補助接地極の配置(令和7年度下期 法規 問11)
数学が苦手な人の科目別の戦い方
科目ごとの数学の比重は、本記事の集計では次のように違います。
| 科目 | 「最も近い」の割合 | sin・cos | 対数・微分積分の語 |
|---|---|---|---|
| 理論 | 80/162問(49.4%) | 7問 | 対数2問 |
| 機械 | 75/162問(46.3%) | 3問 | 対数2問、微分・積分の語2問(制御の用語) |
| 電力 | 45/153問(29.4%) | 4問 | なし |
| 法規 | 24/117問(20.5%) | 0問 | 自然対数1問(値は図から読む) |
この表から言えることと、一案としての進め方は次のとおりです。
- ① 数学の比重は科目で違う。数値で答える問題は、理論と機械で4割を超え、電力と法規は2〜3割です。法規は、問題文のテキストにsin・cosが出る問題がなく、対数も図から値を読む形でした
- ② 理論の主な出番は、sin・cos、連立方程式、過渡現象で与えられる指数の値。例題1〜3のように、テキストで見つかった数学は種類が絞られていました。問題番号ごとの分野は電験三種 理論のコツと出題傾向にまとめています
- ③ 機械の電気機器の計算は、例題では比や割合の式で解けました。誘導機の滑りや変圧器の効率は、別の式で検算できます。2進数・16進数や論理回路は、変換のルールを覚える範囲です。範囲と分野別の例題は電験三種 機械の範囲・難易度・勉強法にあります
- ④ 電力・法規は、「最も近い」の割合が2〜3割(電力29.4%・法規20.5%)。電力でsin・cosが出る問題は4問、法規は0問でした。科目ごとの出題は電験三種 電力の攻略にまとめています
- ⑤ 科目合格を使う。最初に合格した試験以降、申請により最大で連続して5回まで当該科目の試験が免除されます。数学の比重が高い科目に時間をかけたい場合は、他の科目を先に合格しておく進め方があります。4科目の合格率の比較は電験三種の科目合格にあります
電卓の規定と、使える電卓の選び方は電験3種の電卓で整理しています。単位円・ラジアン・サインカーブの値の表は電験三種の三角関数・単位円の記事に、対数・指数・デシベルの計算は電験三種の対数・指数の記事にまとめています。
まとめ
電験三種の数学は、センターが範囲を示していないため、過去の問題で使われた数学から確かめる方法があります。問題冊子9回分では、sin・cosが出る問題は594問中14問、微分・積分の語は機械の2問(制御の用語)で(いずれも問題文のテキストで数えた下限)、テキストで数えた範囲では、出番のある数学は三角関数の値・平方根・連立方程式・与えられた指数の値・図の傾き・2進数と16進数が中心でした。関数電卓が使えない分は、値を覚えるか、問題文や図から読み取る形で補えます。
よくある質問
Q電験三種に微分・積分の計算は必要ですか?
令和4年度上期〜令和8年度上期の問題冊子9回分(理論・電力・機械・法規の594問)の問題文で数えると、「微分」「積分」の語が出る問題は機械の2問だけでした。令和5年度下期 問18は比例プラス積分要素の記述、令和6年度下期 問13はPID制御の積分動作・微分動作の穴埋めで、どちらも制御の用語を答える問題です。微分の考え方は、コイルの電圧を電流の変化の傾きから求める問題(令和5年度上期 問10)のように、図の傾きを読む形で出ます。PDFのテキスト抽出では数式記号が欠けるため、件数は下限です(2026-10-04 集計)。
Q電験三種の数学は、どのレベルまで必要ですか?
電気技術者試験センターの試験概要・問題と解答のページ・令和8年度上期の受験案内には、数学の範囲を示した記載がありません。本記事では、問題冊子9回分で実際に使われた数学を示します。三角関数の値(sin45°=1/√2など)、平方根、連立方程式、複素インピーダンスの大きさ、2進数と16進数の変換、与えられた指数・対数の値の利用などです。出典:電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者の試験概要。
Q関数電卓が使えないと、sinやcosはどうしますか?
試験で使える電卓は四則演算と開平計算(√)を行うためのもので、関数電卓は使用できません。このため、30°・45°・60°のsin・cosの値(1/2、1/√2、√3/2)は覚えておく必要があります。令和7年度上期 理論 問8は、4√2 sin120πt=4 から sin120πt=1/√2 とし、45°を使って t=1/480 s と求める問題でした。電卓の規定は電験3種の電卓で整理しています。
Q数学が苦手な場合、どの科目から手をつけるとよいですか?
一案として、数値で答える問題の割合が低い科目から始める方法があります。問題文に「最も近いもの」と書かれた問題は、9回分で理論が162問中80問(49.4%)、機械が162問中75問(46.3%)、電力が153問中45問(29.4%)、法規が117問中24問(20.5%)でした(問題文のテキストで数えた件数)。科目合格は、最初に合格した試験以降、申請により最大で連続して5回まで当該科目の試験が免除されます。詳しくは電験三種の科目合格にまとめています。出典:電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者の試験概要。
Q電験三種の試験で使える電卓は何ですか?
センターの試験概要では、四則演算、開平計算(√)を行うための電卓を使用できるとされています。数式が記憶できる電卓、関数電卓、印字機能を有する電卓は使用できません。また「試験問題によっては、開平計算(√)が必要になります」として、開平機能付きの電卓の使用を求めています。電卓の貸与はありません。出典:電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者の試験概要。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月8日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

