単位円は半径1の円で、円周上の点の座標が(cosθ, sinθ)になります。サイン・コサイン・タンジェントの意味、度とラジアンの換算、サインカーブの値の表を示し、交流の瞬時値 v=Vm sin ωt や力率 cosθ との関係を、電験三種の例題の検算つきで説明します。
目次
結論:単位円とは、半径が1の円のことです。原点から角θだけ回った円周上の点の座標が (cosθ, sinθ) になるので、単位円を見れば、サイン・コサイン・タンジェントの意味、角度が大きくなったときの符号、sin²θ+cos²θ=1 が目で確かめられます。電験三種では、この円上を一定の速さで回る点の「高さ」が、交流の瞬時値 v=Vm sin ωt にあたります。力率 cosθ は、電圧と電流の位相差θの cos です。度(°)とラジアン(rad)は、半円=180°=π rad で換算します。
単位円とは:座標が cosθ と sinθ になる円
単位円は、原点を中心とする半径1の円(x²+y²=1)です。x軸の正の向きから反時計回りに角θだけ回った円周上の点Pを考えます。
| 量 | 単位円での意味 |
|---|---|
| cosθ(コサイン) | 点Pのx座標(横の位置) |
| sinθ(サイン) | 点Pのy座標(高さ) |
| tanθ(タンジェント) | y座標÷x座標=sinθ÷cosθ(原点とPを結ぶ線の傾き) |
| 半径 | 1(だから座標がそのままcos・sinの値になる) |
半径が1なので、x座標とy座標が、そのままcosθとsinθの値になります。点Pは円周上にあるので、x²+y²=1、つまり次の関係が成り立ちます。
sin²θ+cos²θ=1
検算(当サイトの計算):θ=30° のとき、0.5²+0.866²=0.25+0.75=1。θ=45° のとき、0.707²+0.707²=0.5+0.5=1。
三角比の定義と、よく使う角度の値の表
直角三角形では、斜辺に対する辺の比として三角比を定義します。角θに対し、斜辺をr、θの向かい側の辺をy、隣の辺をxとすると、sinθ=y÷r、cosθ=x÷r、tanθ=y÷x です。単位円はr=1の場合にあたり、定義が座標と一致します。
0°から180°までの代表的な角度の値を表にします(当サイトの計算。小数は小数第3位まで)。
| 角度 | ラジアン | sin | cos | tan |
|---|---|---|---|---|
| 0° | 0 | 0 | 1 | 0 |
| 30° | π/6 | 1/2=0.5 | √3/2=0.866 | 1/√3=0.577 |
| 45° | π/4 | 1/√2=0.707 | 1/√2=0.707 | 1 |
| 60° | π/3 | √3/2=0.866 | 1/2=0.5 | √3=1.732 |
| 90° | π/2 | 1 | 0 | 値なし(cosが0) |
| 120° | 2π/3 | √3/2=0.866 | −1/2=−0.5 | −√3=−1.732 |
| 180° | π | 0 | −1 | 0 |
覚え方は、30°・45°・60°の3つの三角形の辺の比から作れます。
- 30°・60°・90°の直角三角形:辺の比 1:√3:2
- 45°・45°・90°の直角三角形:辺の比 1:1:√2
たとえば30°では、向かい側が1、斜辺が2、隣が√3 なので、sin30°=1÷2、cos30°=√3÷2、tan30°=1÷√3 です。
検算:tanθ=sinθ÷cosθ で確かめます。60°:0.866÷0.5=1.732 で表の√3と一致。120°:0.866÷(−0.5)=−1.732 で一致。
象限と符号
単位円を4つの区画(象限)に分けると、sin・cosの符号が決まります。
| 角度 | 点の位置 | sin | cos |
|---|---|---|---|
| 0°〜90° | 第1象限(右上) | + | + |
| 90°〜180° | 第2象限(左上) | + | − |
| 180°〜270° | 第3象限(左下) | − | − |
| 270°〜360° | 第4象限(右下) | − | + |
90°を超えた角度の値は、単位円の対称性で、表の鋭角(0〜90°)の値から作れます。
- 180°−θ:sin(180°−θ)=sinθ、cos(180°−θ)=−cosθ(例:sin120°=sin60°=0.866、cos120°=−cos60°=−0.5)
- 180°+θ:sin(180°+θ)=−sinθ、cos(180°+θ)=−cosθ(例:sin210°=−sin30°=−0.5)
- −θ:sin(−θ)=−sinθ、cos(−θ)=cosθ(例:sin(−30°)=−0.5、cos(−30°)=0.866)
弧度法:度とラジアンの換算
角度は「度(°)」のほかに、ラジアン(rad)で表せます。弧度法(こどほう)とも呼ばれ、単位円の円周上で測った弧の長さを、そのまま角度とする考え方です。半径が1のとき、角θ[rad]に対する弧の長さはθになります。
円周の長さは2π×半径なので、1周(360°)は 2π rad、半周(180°)は π rad です。
| 度 | ラジアン | 約何rad(小数) |
|---|---|---|
| 30° | π/6 | 0.5236 |
| 45° | π/4 | 0.7854 |
| 60° | π/3 | 1.0472 |
| 90° | π/2 | 1.5708 |
| 180° | π | 3.1416 |
| 270° | 3π/2 | 4.7124 |
| 360° | 2π | 6.2832 |
換算式は次のとおりです。
- ラジアン=度×π÷180
- 度=ラジアン×180÷π(1 rad=57.296°)
例(当サイトの計算):45°をラジアンにすると、45×π÷180=π÷4=0.7854 rad。逆に、0.5236 rad を度にすると 0.5236×180÷3.1416=30.0° です。
検算:π÷6=3.1416÷6=0.5236 で、30°の表の値と一致します。
交流の sin と単位円:回る点の高さが瞬時値になる
家庭の電気のような交流の電圧は、v=Vm sin(ωt) と書けます。この式は、単位円の考え方で次のように読めます。
- 半径Vmの円の上を、点が反時計回りに一定の速さで回る
- 回る速さが 角周波数 ω [rad/s](1秒間に進む角度)
- 時刻tのときの角度は ωt [rad]
- 点の高さが、その時刻の電圧(瞬時値)v
1周(2π rad)にかかる時間が周期Tなので、ω=2π÷T=2πf です(fは周波数)。周波数50 Hzなら、ω=2π×50=100π≒314 rad/s、60 Hzなら ω=120π≒377 rad/s になります。
下の表は、v=Vm sinθ の値を、30°ごとに最大値Vmに対する割合で示したものです(サインカーブの値の表。当サイトの計算)。
| 角度θ | 0° | 30° | 60° | 90° | 120° | 150° | 180° |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| sinθ | 0 | 0.5 | 0.866 | 1 | 0.866 | 0.5 | 0 |
| 角度θ | 210° | 240° | 270° | 300° | 330° | 360° |
|---|---|---|---|---|---|---|
| sinθ | −0.5 | −0.866 | −1 | −0.866 | −0.5 | 0 |
0°から上がって90°で最大、180°で0に戻り、270°で最小(−Vm)になる波形が、サインカーブです。
例題(当サイトの作例):e=100√2 sin(100πt) [V] の電圧がある。t=1/600 s のときの瞬時値は何Vか。
- 解き方1(角度から):ωt=100π×(1/600)=π/6=30°。e=100√2×sin30°=141.4×0.5=70.7 V
- 解き方2(周期から):周波数 f=100π÷2π=50 Hz、周期 T=1÷50=0.02 s。1/600 s は 0.02 s の1/12 で、360°×(1/12)=30° と一致。sin30°=0.5 で、e=70.7 V
最大値は 100√2=141.4 V、実効値は100 Vです。波形の量(最大値・実効値・位相など)は電験3種の交流の基本で詳しく整理しています。
sin と cos のずれ:cosθ=sin(θ+90°)
cosθのグラフは、sinθのグラフを90°(π/2 rad)左へずらした形です。式で書くと cosθ=sin(θ+90°) です。単位円では、点が90°先にいるとき、その高さ(sin)が現在のx座標(cos)と同じ値になる、と読めます。
| θ | 0° | 30° | 60° | 90° |
|---|---|---|---|---|
| cosθ | 1 | 0.866 | 0.5 | 0 |
| sin(θ+90°) | 1 | 0.866 | 0.5 | 0 |
(θ+90°が 90°・120°・150°・180° のときの sin は、1・0.866・0.5・0 で、上の cosθ の行と一致します。当サイトの計算)
位相の考え方(進み・遅れ)は、電圧と電流の関係で重要になります。
| 回路素子 | 電流と電圧の位相 | 式の形の例 |
|---|---|---|
| 抵抗 | 同じ(位相差0°) | v=V sin ωt のとき i=I sin ωt |
| コイル(誘導性) | 電流が電圧より90°遅れる | i=I sin(ωt−90°)=−I cos ωt |
| コンデンサ(容量性) | 電流が電圧より90°進む | i=I sin(ωt+90°)=I cos ωt |
例(当サイトの作例):v=100 sin ωt [V] に対して i=5 cos ωt [A] のとき、cos ωt=sin(ωt+90°) なので、電流は電圧より90°進んでいます。90°進みはコンデンサの特徴です。最大値の比から、容量性リアクタンスの大きさは 100÷5=20 Ω と分かります。
進み・遅れの図の描き方は、電験3種のベクトル図で手順を示しています。
力率 cosθ と三角形:有効電力・無効電力・皮相電力
交流回路で、電圧と電流の位相差をθとすると、力率は cosθ です。電力の三角形(直角三角形)で、斜辺が皮相電力S [V·A]、底辺が有効電力P [W]、高さが無効電力Q [var] になります。
| 量 | 式 | 三角形での位置 |
|---|---|---|
| 有効電力 P | S cosθ | 底辺(隣の辺) |
| 無効電力 Q | S sinθ | 高さ(向かい側の辺) |
| 皮相電力 S | √(P²+Q²) | 斜辺 |
| 力率 cosθ | P÷S | 斜辺に対する底辺の比 |
例題(当サイトの作例):力率0.8(遅れ)の負荷が、有効電力8 kWを消費している。皮相電力と無効電力を求めよ。
- 解き方1(三角比から):S=P÷cosθ=8÷0.8=10 kV·A。sinθ=√(1−0.8²)=√0.36=0.6 なので、Q=S sinθ=10×0.6=6 kvar
- 解き方2(三平方の定理から):S=10 kV·A とすると、Q=√(S²−P²)=√(100−64)=√36=6 kvar で一致
検算:P²+Q²=64+36=100=S² で、斜辺と2辺が整合します。tanθ=Q÷P=6÷8=0.75 で、sinθ÷cosθ=0.6÷0.8=0.75 とも一致。この三角形は辺の比が 3:4:5 で、cosθ=0.8 のとき角θは約36.9°です。
力率が0.6なら、sinθ=√(1−0.36)=0.8 です。力率cosθと sinθ は、sin²θ+cos²θ=1 で必ず入れ替えて使えます。
電験三種での出題の型
関数電卓が使えない試験なので、sin・cosの値は代表角(30°・45°・60°など)の値から組み立てる形で使います。公表された問題冊子から、三角関数・位相・力率が関わる出題の例を、問題文の引用は避けて整理します。
| 型 | 内容 | 出題の例(問題冊子) |
|---|---|---|
| 瞬時値が決まった値になる時刻 | 交流電流の式から、瞬時値が初めて指定の値になる時刻を、代表角の値で求める | 理論 令和7年度上期 問8 |
| 電圧・電流の式から電力を求める | 基本波と第3調波を含む電圧と電流の式から、電力を求める(同じ周波数どうしの電圧と電流の位相差のcosが関わる) | 理論 令和6年度上期 問9 |
| sinの電圧とcosの電流から素子を判定する | 電圧が sin、電流が cos で与えられ、コイルかコンデンサかと素子の値を求める | 理論 令和6年度上期 問15 |
| 力率 cosθ を含む送電の式 | 力率cosθの負荷に電力を供給する三相送電線で、電力損失率を式で表す | 電力 令和6年度下期 問12 |
| 力率改善 | 力率cosθを0.6から0.8へ改善するときの負荷や皮相電力を求める | 電力 令和7年度下期 問13 |
出典:令和7年度上期 理論、令和6年度上期 理論、令和6年度下期 電力、令和7年度下期 電力(電気技術者試験センター)。
試験で使える電卓は、電気技術者試験センターの試験概要によると、四則演算と開平計算(√)のものだけで、関数電卓は使えません。sin・cosのキーに頼らず、単位円の対称性で値を作る練習が有効です。三角関数以外の数学(連立方程式・複素数・2進数)は、電験三種の数学レベルにまとめています。
間違えやすいポイント
- cosとsinの取り違え:x座標がcos、y座標がsinです。「横がコサイン、縦がサイン」と、座標の順番(x, y)と、cos・sinの順番を結びつけると覚えやすくなります。
- 度とラジアンを混ぜて代入する:ωt はラジアンです。ωt=100π×(1/600)=π/6 を「30」と読み間違えたり、ラジアンの値に度の公式を使ったりしないよう、必ず単位を書き添えます。
- cos120°を+0.5と書く:第2象限(90°〜180°)では cos が負です。cos120°=−cos60°=−0.5。
- tan90°を計算してしまう:90°では cosが0なので、tanθ=sinθ÷cosθ の分母が0になり、値は決まりません。
- 力率と位相差の関係をあいまいにする:力率は cosθ(位相差θのcos)で、sinθ ではありません。力率0.8なら位相差は約36.9°、sinθは0.6です。
- 有効電力・無効電力を取り違える:P=S cosθ(底辺)、Q=S sinθ(高さ)です。
- 「進み」「遅れ」を式の符号から逆に読む:ωt+φ の φ が正なら、基準より φ だけ進んでいます(先に山が来る)。i=I sin(ωt−90°) はコイルの遅れ電流です。
まとめ
- 単位円は半径1の円。円周上の点の座標が (cosθ, sinθ) で、tanθ=sinθ÷cosθ、sin²θ+cos²θ=1 が成り立ちます
- 0°・30°・45°・60°・90° の値(0、1/2、1/√2、√3/2、1)を表で覚え、90°を超える角度は象限の符号と対称性で作ります
- 度とラジアンは 180°=π rad で換算。1 rad=約57.3°、周期が1周で2π rad、ω=2πf です
- 交流の瞬時値 v=Vm sin(ωt+φ) は、半径Vmの円を回る点の高さです。cosθ=sin(θ+90°) で、sinとcosは90°ずれた同じ形の波です
- 力率 cosθ は位相差θのcos。P=S cosθ、Q=S sinθ、S=√(P²+Q²) の三角形で、力率0.8なら sinθ=0.6 になります
- 関数電卓は使えないので、代表角の値と対称性を手で使えるようにしておきます
対数や指数(過渡現象の e^(−t/τ)、デシベル)は、電験三種の対数・指数の記事で整理しています。
よくある質問
Qサイン・コサイン・タンジェントは、単位円でどう読みますか?
単位円(半径1の円)の中心から、x軸の正の向きを基準に角θだけ回った円周上の点を考えます。その点のx座標がcosθ、y座標がsinθで、tanθはy座標÷x座標(sinθ÷cosθ)です。θ=30°なら点は(0.866, 0.5)で、cos30°=0.866、sin30°=0.5、tan30°=0.5÷0.866=0.577 です(当サイトの計算)。
Q1ラジアンは何度ですか?
1 rad=180÷π=57.296°(約57.3°)です。逆に、1°=π÷180=0.01745 rad です。半円の180°がπ rad、1周の360°が2π rad にあたります。θ[rad]=θ[°]×π÷180 で換算し、90°なら π÷2=1.5708 rad です(当サイトの計算)。
Qsinθとcosθの値が分かれば、力率から無効電力も出せますか?
出せます。力率 cosθ が分かれば、sinθ=√(1−cos²θ) です。有効電力 P、皮相電力 S、無効電力 Q の関係は P=S cosθ、Q=S sinθ です。力率0.8・有効電力8 kWなら、S=8÷0.8=10 kV·A、sinθ=0.6、Q=10×0.6=6 kvar になります(当サイトの計算)。
Qtan90°の値はいくつですか?
tan90°の値は決まりません。単位円で90°の点は(0, 1)で、tanθ=sinθ÷cosθ=1÷0 となり、分母が0になるためです。90°に近づくほど tanθ は大きくなり、たとえば tan89°≒57.3 です(当サイトの計算)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月8日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

