電験三種 理論の直流回路で使う回路の定理を一覧にしました。分圧の法則・分流の法則・重ね合わせの理・ミルマンの定理・Y-Δ変換(スターデルタ変換)・ブリッジの平衡条件を、単位つきの公式と当サイトの計算による例題で解説。テブナンの定理とキルヒホッフの法則は専用記事へ。
目次
結論:電験三種 理論の直流回路は、回路を丸ごと連立方程式で解く前に、6つの定理で「回路の形」を簡単にできないかを見ると速く解けます。分圧の法則(直列の電圧の配分)・分流の法則(並列の電流の配分)・重ね合わせの理(電源を1つずつ働かせて足す)・ミルマンの定理(並列につないだ電源つきの枝の電圧を1回の分数で出す)・Y-Δ変換(三角形と星形の置き換え)・ブリッジの平衡条件(対辺の積が等しければ中央の電流は0)の式と使いどころを、例題で確かめます。
| 定理 | 式(単位) | 使う場面 |
|---|---|---|
| 分圧の法則 | V1=V×R1÷(R1+R2) [V] | 直列に並んだ抵抗の1つの電圧を知りたい |
| 分流の法則 | I1=I×R2÷(R1+R2) [A] | 並列に並んだ抵抗の1つの電流を知りたい |
| 重ね合わせの理 | 全体の電圧・電流=電源ごとの結果の和 | 電源が2つ以上で、1か所の電圧・電流を聞かれる |
| ミルマンの定理 | V=(ΣE÷R)÷(Σ1÷R) [V] | 電源つきの枝が並列につながっている |
| Y-Δ変換 | R(Y)=隣り合う2辺の積÷3辺の和 | 抵抗が三角形(Δ)や星形(Y)に並び、直列・並列でまとめられない |
| ブリッジの平衡 | R1×R4=R2×R3 | ひし形の回路で、真ん中の抵抗の電流を聞かれる |
電気技術者試験センターの試験科目のページでは、理論の内容が「電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測」と示されています(第三種電気主任技術者試験 試験概要)。この記事の定理はそのうちの電気理論の直流回路にあたります。テブナンの定理はテブナンの定理の記事、キルヒホッフの法則はキルヒホッフの法則の例題で扱っているので、ここでは触れません。公式の一覧は電験3種の公式一覧、理論全体の問題の並び方は電験三種 理論の攻略にまとめています。
分圧の法則と分流の法則(等価回路の基本)
分圧の法則は、直列につないだ抵抗に電圧が抵抗の大きさに比例して配分されることを表します。R1とR2の直列に電圧V[V]を加えるとき、直列の電流は I=V÷(R1+R2) で共通なので、各抵抗の電圧は次のとおりです。
- V1=R1×I=V×R1÷(R1+R2) [V]
- V2=R2×I=V×R2÷(R1+R2) [V]
分流の法則は、並列につないだ抵抗に電流が抵抗の大きさに反比例して配分されることを表します。R1とR2の並列に全体の電流I[A]が流れるとき、両方の抵抗の電圧は共通で V=I×R1R2÷(R1+R2) です。各抵抗の電流は次のとおりです。
- I1=V÷R1=I×R2÷(R1+R2) [A]
- I2=V÷R2=I×R1÷(R1+R2) [A]
分流の式は、分子が「もう一方の抵抗」になる点が分圧と逆です。「電流は流れやすいほう(抵抗の小さいほう)に多く流れる」と考えれば、書き間違えに気づけます。3本以上の並列では、コンダクタンスG=1÷R [S]を使うと、In=I×Gn÷(G1+G2+G3) と分圧と同じ形で書けます。
回路を「等価回路」に置き換えるとは、外から見た電圧と電流の関係を変えずに、中身を簡単な形にまとめることです。直列は足す、並列は逆数の和の逆数、という合成抵抗の計算も、等価回路の一種です。以降の定理も、すべて「外から見た関係を変えずに回路を簡単にする」道具として並べて考えられます。
例題1(当サイトの計算):100Vの電源に20Ωと30Ωを直列につないだとき、30Ωの電圧と、10Aを20Ωと30Ωの並列に流したときの20Ωの電流を求めます。
- 分圧:V(30Ω)=100×30÷(20+30)=60V
- 分流:I(20Ω)=10×30÷(20+30)=6A、I(30Ω)=10×20÷(20+30)=4A
- 検算(直列):電流は100÷50=2A。30Ωの電圧は2×30=60Vで一致
- 検算(並列):20Ωの電圧は6×20=120V、30Ωの電圧は4×30=120Vで等しく、電流の和も6+4=10Aで一致
重ね合わせの理(電源を1つずつ働かせて足す)
重ね合わせの理は、「電源が複数ある回路の電圧や電流は、電源を1つずつ単独で働かせたときの結果を足し合わせたものに等しい」という定理です。電源以外の部分が抵抗・コイル・コンデンサのような線形の素子(電圧と電流が比例する素子)だけでできた回路で成り立ちます。
- 働かせない電圧源は短絡する(電圧0Vの電源は導線と同じ)
- 働かせない電流源は開放する(電流0Aの電源は断線と同じ)
- 電圧・電流の向きに気をつけて、符号つきで足す
- 電力は足せない(P=RI²は電流の2乗なので、比例しない)
電源が2つの回路で、2つの電源をまとめて解くには連立方程式が必要ですが、重ね合わせでは、毎回「電源が1つだけの回路」を解くだけで済みます。使いどころの目安は、電源が2〜3個で、聞かれているのが1か所の電圧・電流のときです。各枝の電流をすべて求めるなら、キルヒホッフの法則のほうが速い場合が多くなります。重ね合わせとテブナンの定理の違いは、テブナンの定理の記事の「重ね合わせの理との違いと例題」に本試験の問題を使った計算があります。
重ね合わせの理の具体例は、次の節のミルマンの定理の例題で、同じ回路を両方の方法で解いて確かめます。
ミルマンの定理(並列の電源の電圧を1回で出す)
ミルマンの定理は、「電圧源と抵抗の直列」の枝がいくつも並列につながり、その共通の2点(節点)の電圧を求めたいときの定理です。各枝の電圧源をEk[V]、抵抗をRk[Ω]とすると、節点の電圧Vは次のとおりです。
V=(E1÷R1+E2÷R2+…)÷(1÷R1+1÷R2+…) [V]
- 分子の E÷R は、その枝の電圧源を短絡したときに流れ出す電流(単位はアンペア[A])にあたります
- 分母の 1÷R はコンダクタンス[S]で、枝を全部並列にしたときの合成コンダクタンスです
- 分子の向き:電圧源の正極が節点側を向く枝は+、逆向きなら−をつけます
- 電源のない枝(抵抗だけ)は、分子に0を加え、分母に1÷Rだけを加えます
- 電流源の枝は、分子に電流源の電流(節点に向かって流れ込む向きが+)を加え、分母には何も加えません
例題2(当サイトの計算):節点Pと基準点Oの間に、3つの枝が並列につながっています。枝1は12Vの電源と2Ωの直列、枝2は6Vの電源と3Ωの直列、枝3は6Ωの抵抗だけです(2つの電源は、正極が節点P側)。節点Pの電圧Vを求めます。
解き方1(ミルマンの定理):
- 分子:12÷2+6÷3+0=6+2=8 [A]
- 分母:1÷2+1÷3+1÷6=3÷6+2÷6+1÷6=1 [S]
- V=8÷1=8V
各枝の電流は、枝1が(12−8)÷2=2A、枝2が(6−8)÷3≒−0.667A(逆向き)、枝3が8÷6≒1.333Aです。電源側から流れ込む合計は 2−0.667=1.333A で、枝3へ流れ出す電流と一致します。
解き方2(重ね合わせの理で確かめる):
- 12Vだけを働かせる(6Vは短絡):3Ωと6Ωの並列は3×6÷(3+6)=2Ω。分圧で V′=12×2÷(2+2)=6V
- 6Vだけを働かせる(12Vは短絡):2Ωと6Ωの並列は2×6÷(2+6)=1.5Ω。分圧で V″=6×1.5÷(3+1.5)=2V
- 合計:V=6+2=8V
ミルマンの定理と同じ答えになりました。ミルマンの定理は、電源つきの枝がそろって並列の形のとき、連立方程式も重ね合わせも使わずに分数1回で出せる点が強みです。
Y-Δ変換(スターデルタ変換・デルタスター変換)
3つの抵抗が三角形(Δ)に並んだ部分や星形(Y、スター)に並んだ部分は、直列・並列の合成だけではまとめられないことがあります。そのときは、Δ形とY形を置き換えて、直列・並列の形に直します。置き換えても、3つの端子のどの2つの間から見た抵抗も変わらないのが条件です。
端子a・b・cのΔ形の抵抗を Rab・Rbc・Rca [Ω]、Y形の抵抗を Ra・Rb・Rc [Ω](それぞれ端子a・b・cにつながる抵抗)とします。
| 変換 | 式 | 覚え方 |
|---|---|---|
| Δ→Y | Ra=Rab×Rca÷(Rab+Rbc+Rca)、Rb=Rab×Rbc÷(Rab+Rbc+Rca)、Rc=Rbc×Rca÷(Rab+Rbc+Rca) | その端子に隣り合う2辺の積÷3辺の和 |
| Y→Δ | Rab=(RaRb+RbRc+RcRa)÷Rc、Rbc=(RaRb+RbRc+RcRa)÷Ra、Rca=(RaRb+RbRc+RcRa)÷Rb | 3つの積の和÷向かい側のY抵抗 |
3つの抵抗がすべて等しいときは、Δ側の抵抗R(Δ)とY側の抵抗R(Y)に R(Δ)=3R(Y) の関係があります。Δ→Yは3分の1、Y→Δは3倍です。三相交流のΔ結線とY結線の等価な置き換えでも、同じ関係を使います。
例題3(当サイトの計算):Rab=6Ω、Rbc=3Ω、Rca=3ΩのΔをYに変換し、端子aとbの間の抵抗を2通りで求めます。
- 3辺の和:6+3+3=12Ω
- Ra=6×3÷12=1.5Ω、Rb=6×3÷12=1.5Ω、Rc=3×3÷12=0.75Ω
- 端子a-b間(Y側):Ra+Rb=1.5+1.5=3Ω
- 端子a-b間(Δ側):Rab(6Ω)と、Rbc+Rca(3+3=6Ω)の並列で 6×6÷(6+6)=3Ω。Y側と一致
- Y→Δに戻す検算:RaRb+RbRc+RcRa=2.25+1.125+1.125=4.5。Rab=4.5÷0.75=6Ω、Rbc=4.5÷1.5=3Ω、Rca=4.5÷1.5=3Ωで、元のΔに戻る
変換の効果が出る典型は、ブリッジ回路の真ん中の抵抗を含む三角形を星形に直し、全体を直列・並列の組み合わせにする使い方です。
ブリッジ回路の平衡条件
ブリッジ回路は、4つの抵抗をひし形に並べ、その対角の2点(中央の端子)の間に別の抵抗や検流計を入れた回路です。電源は、もう一方の対角の2点につなぎます。
電源の正側の端子Pから、R1を通って中央の点a、R2を通って電源の負側の端子Qにつながる経路と、R3を通って中央の点b、R4を通ってQにつながる経路があるとします。このとき、中央のa-b間の電圧が0Vになる(平衡する)条件は、次のとおりです。
R1÷R2=R3÷R4、すなわち R1×R4=R2×R3(向かい合う辺の積が等しい)
平衡のとき、a-b間をつなぐ抵抗には電流が流れません。a-b間の抵抗の値は答えに関係しないので、取り除いても短絡しても、全体の電流は変わりません。抵抗が求められている問題では、平衡を見抜けると計算が一気に短くなります。
例題4(当サイトの計算):R1=12Ω、R2=8Ω、R3=18Ω、R4=12Ωのブリッジに、PQ間に100Vを加えます。a-b間の電圧と、電源から流れ出る電流を求めます。
- 平衡の確認:R1×R4=12×12=144、R2×R3=8×18=144で等しい。平衡している
- 電位の確認:Qを0Vとすると、a点は100×8÷(12+8)=40V、b点は100×12÷(18+12)=40V。a-b間の電圧は0V
- 全体の電流:上の経路は12+8=20Ωで100÷20=5A、下の経路は18+12=30Ωで100÷30≒3.333A。合計 約8.33A
- 検算:全体の抵抗は20×30÷(20+30)=12Ωで、100÷12≒8.33Aと一致
電験三種 理論での問われ方(出題の型)
電気技術者試験センターが過去の試験問題を公表しているので、過去の試験問題で問われ方の型を確かめられます。回路の定理は、定理の名前ではなく、「抵抗を追加したときの電圧・電流の変化から未知の抵抗や電源電圧を逆算する」「電源が2つの回路で、ある抵抗の電圧を求める」「ブリッジ回路の電源電流や中央の抵抗の電流を求める」といった形で問われます。次の型を知っておくと、どの定理を使うかを選びやすくなります。
| 問題の形 | まず考える定理 |
|---|---|
| 抵抗の直列・並列で、1つの電圧や電流を求める | 分圧の法則・分流の法則 |
| 電源が2つ以上あり、1か所の電圧・電流を求める | 重ね合わせの理、電源つきの枝が並列ならミルマンの定理 |
| 1か所の抵抗をつなぎ替える・短絡する | テブナンの定理 |
| 三角形や星形が含まれて直列・並列にまとまらない | Y-Δ変換 |
| ひし形の回路で、中央の電流・全体の電流を求める | 平衡条件を確認し、平衡していなければテブナンの定理かY-Δ変換 |
| すべての枝の電流を求める | キルヒホッフの法則 |
選ぶ順番の目安は、①直列・並列で素直にまとまるか、②まとまらなければ回路の形(並列の電源か、ひし形か、Δか)を見る、③それでも決まらなければキルヒホッフの法則、です。どの方法でも答えは同じなので、時間があれば別の方法で検算します(この記事の例題2も、ミルマンと重ね合わせで検算しました)。
理論の直流回路の問題を続けて解いて、定理を選ぶ順番を身につけましょう。
間違えやすいポイント
- 分流の式の分子を、自分側の抵抗にしてしまう:I1の分子は「もう一方の抵抗R2」です。抵抗が小さいほど電流は多いので、答えの大小で見直せます
- 重ね合わせで、電流源を短絡してしまう:働かせない電流源は開放、電圧源は短絡です。逆にすると別の回路になります
- 重ね合わせで電力を足す:電力は電流の2乗なので足せません。先に電圧・電流を重ね合わせで求めます
- ミルマンの定理で、電源の向きを無視する:正極が節点側の枝は+、逆向きは−です。符号は分子の E÷R につけ、分母(1÷R)は常に+です
- Y-Δ変換で、辺と端子の対応を取り違える:Δ→Yでは、端子aにつながるY抵抗Raは、端子aに隣り合う2辺(RabとRca)の積を使います。3辺の和は共通です
- ブリッジの平衡条件を、隣り合う辺の積で比べる:比べるのは向かい合う辺です。R1×R4とR2×R3の対応を、図に書き込んで確かめます
まとめ
回路の定理は、「外から見た電圧と電流を変えずに、回路を簡単にする」道具です。分圧・分流は直列・並列の基本、重ね合わせの理は電源ごとに分けて足す方法(電力は足せない)、ミルマンの定理は並列の電源つきの枝の節点電圧を分数1回で出す方法、Y-Δ変換は三角形と星形の置き換え(等しいときは3倍・3分の1)、ブリッジは向かい合う辺の積が等しければ中央の電流は0です。テブナンの定理とキルヒホッフの法則と合わせ、どれを使うかを問題の形で選べるようにしておきましょう。
よくある質問
Q重ね合わせの理で、電力も電源ごとに計算して足してよいですか?
足せません。重ね合わせの理が成り立つのは、電圧と電流のように、電源の大きさに比例して増減する量だけです。電力は電流の2乗(P=RI²)なので、電源ごとの電力を足した値は全体の電力と一致しません。電力を求めるときは、電圧や電流を重ね合わせで求めてから、最後にP=RI²などで計算します。
Qミルマンの定理は、電源が1つの回路でも使えますか?
使えます。電圧源と抵抗の直列が並列につながる形であれば、電源の数は関係ありません。電源のない枝(抵抗だけの枝)は、分子に0を加えて分母に1/Rだけを加えます。ただし、枝と枝の間に別の抵抗が入って網目ができる回路には使えないので、その場合はキルヒホッフの法則やテブナンの定理を選びます。
QY-Δ変換は、3つの抵抗が違う値でも使えますか?
使えます。3つが等しいときの「Y側=Δ側の3分の1」は特別な場合で、一般には、Δ→Yは「隣り合う2辺の積÷3辺の和」、Y→Δは「3つの積の和÷向かい側のY抵抗」で変換します。この記事の例題2では、6Ω・3Ω・3Ωのように値が違うΔを変換して、端子間の抵抗が変わらないことを確かめています。
Qブリッジが平衡しているか調べるには、何を比べればよいですか?
向かい合う辺の抵抗の積を比べます。電源をつなぐ2端子から見て、片側の上下の比と、もう片側の上下の比が等しければ平衡で、中央の端子間の電圧は0Vになり、中央の抵抗には電流が流れません。平衡していなければ、Y-Δ変換で直列・並列の形に直すか、テブナンの定理で解きます。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

