キルヒホッフの法則の例題を、電験三種 理論の公式問題4問(令和8年度上期・令和6年度下期など)で解説。第1法則・第2法則の式の立て方、電源が2つある回路、電流源がある回路を、枝電流法と網目電流法の2通りで解き、答えが一致することを確かめます。
目次
結論:キルヒホッフの第1法則(電流則)は「1つの点に流れ込む電流の和=流れ出る電流の和」、第2法則(電圧則)は「閉じた経路を1周したとき、起電力の和=電圧降下(抵抗×電流)の和」です。電源が2つある回路は、①電流の向きを仮定し、②第1法則で電流の関係を、③閉路ごとに第2法則の式を立て、④連立方程式を解きます。答えがマイナスなら、仮定と逆向きに流れているという意味です。
| 解き方 | 未知数 | 立てる式 | 向いている問題 |
|---|---|---|---|
| 枝電流法 | 各枝(抵抗)の電流 | 第1法則(点の数-1本)+第2法則(窓のように区切られた閉路の数) | 各抵抗の電流を聞く問題 |
| 網目電流法 | 閉路ごとに1周する電流 | 第2法則だけ(閉路の数) | 閉路が2つ程度で、式を少なくしたい問題 |
| 検算に使う方法 | 点の電位、重ね合わせ、電力の収支 | 1つの点の電流の釣り合い など | 出た答えを別の道筋で確かめる |
合格ナビの電験三種「理論」の問題には、電気技術者試験センターが公表した令和4年度上期〜令和7年度下期のうち7回分の本試験問題を87問収録しています。そのうち電源(電圧源・電流源)が2つ以上ある直流回路の問題は、令和6年度上期 問5・問6、令和5年度下期 問6、令和5年度上期 問6の4問です(2026-10-02 集計)。この記事では、このうち令和5年度下期 問6と令和5年度上期 問6に、収録していない令和6年度下期 問6と、公表されている最新回の令和8年度上期 問5を加えた4問を、公式の問題PDF(第三種電気主任技術者試験の問題と解答に掲載)で確かめて解きます。
キルヒホッフの第1法則(電流則)とは
回路の中の1つの点(電線が3本以上つながる点)では、流れ込む電流の合計と流れ出る電流の合計が等しくなります。電流は途中で消えたり増えたりしないためです。
例えば、ある点に左から3Aが流れ込み、下へ1Aが流れ出ているなら、右へは3-1=2Aが流れ出ます。式では「I1=I2+I3」のように書きます。点が3つ以上ある回路では、第1法則の式は「点の数-1本」まで立てられます(最後の1本は他の式から出てくるので不要です)。
キルヒホッフの第2法則(電圧則)の公式と符号の決め方
閉じた経路(閉路)を1周すると、元の点に戻るので電位の上がり下がりの合計は0になります。これを「起電力の和=電圧降下の和」の形で書いたのが第2法則です。
ΣE=ΣRI(閉路を1周したときの起電力の和=抵抗×電流の和)
式を立てるときは、1周する向きを先に決め、次の約束で符号をつけます。
| 通るもの | 符号のつけ方 |
|---|---|
| 電池(電圧源) | 1周する向きに通ったとき、-極から+極へ抜けるなら+E、+極から-極へ抜けるなら-E |
| 抵抗 | 1周する向きと仮定した電流の向きが同じなら+RI、逆なら-RI |
電池の図記号は、長い線が+極、短い線が-極です。電源が2つある問題では、片方の電池だけ上下が逆に描かれていることがあり、ここを読み違えると答えが変わります(下の例題1)。
例題の解き方:枝電流法と網目電流法の手順
枝電流法(各枝の電流を未知数にする)
- ① 抵抗ごとに電流の向きを仮定して I1、I2、I3 と名前をつける
- ② 電線が3本以上つながる点で、第1法則の式を立てる
- ③ 閉路を選び、第2法則の式を立てる(未知数の数まで)
- ④ 連立方程式を解く。マイナスの電流は向きを読み替える
網目電流法(閉路ごとに1周する電流を未知数にする)
- ① 窓のように区切られた閉路ごとに、時計回りの電流Ia、Ibを仮定する
- ② 2つの閉路が共有する抵抗には、Ia-Ib(または Ib-Ia)が流れるとして扱う
- ③ 閉路ごとに第2法則の式を立てて解く
- ④ 枝の電流は、閉路の電流の組み合わせで求める(共有する枝はIa-Ibなど)
どちらも第2法則を使う点は同じで、未知数の選び方だけが違います。連立方程式の本数は、網目電流法のほうが少なくなります。
例題1:電源2つ・電池の向きに注意(令和6年度下期 問6)
図のように,二つの直流電源と三つの抵抗からなる回路がある。各抵抗に流れる電流を図に示す向きに定義するとき,電流I1,I2,I3の値[A]の組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) I1=-1,I2=-1,I3=0 (2) I1=-1,I2=1,I3=-2 (3) I1=2,I2=1,I3=1 (4) I1=1,I2=1,I3=0 (5) I1=1,I2=-1,I3=2
出典:令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験 理論 問6(一般財団法人電気技術者試験センター)
※選択肢は問題PDFの表を1行ずつ書き出したものです。図は公式の問題PDF(令和6年度下期 理論)の問6にあります。
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| 左の枝 | 4Vの電池(+極が上)、上の線に4Ω。I1は左から右へ |
| 中央の枝 | 5Ω。I3は上から下へ |
| 右の枝 | 上の線に2Ω(I2は左から右へ)、右側に2Vの電池(+極が下、上が-極) |
| 下の線 | 3つの枝に共通 |
解き方1(枝電流法):下の線を基準(0V)とし、上の中央の点をPとします。
- 第1法則(点P):I1=I2+I3
- 第2法則(左の閉路:4Vの電池→4Ω→5Ω):4=4I1+5I3
- 第2法則(右の閉路:点P→2Ω→2Vの電池→下の線→5Ω→点P):2Ωを右へ進み、2Vの電池を上から下へ通ると-極から+極へ抜けるので起電力は+2。5Ωは下から上へ(I3と逆向き)なので-5I3。よって 2=2I2-5I3
3本を解くと、I1=1A、I2=1A、I3=0A。答えは(4)です。公式の解答も(4)です。
解き方2(網目電流法):左の閉路に時計回りのIa、右の閉路に時計回りのIbを仮定します。5Ωには下向きにIa-Ibが流れます。
- 左の閉路:4=4Ia+5(Ia-Ib) → 9Ia-5Ib=4
- 右の閉路:2=2Ib+5(Ib-Ia) → -5Ia+7Ib=2
解くとIa=1A、Ib=1A。I1=Ia=1A、I2=Ib=1A、I3=Ia-Ib=0Aで、枝電流法と一致します。
検算(点の電位):点Pの電位をVとすると、点Pに流れ込む電流の釣り合いから (4-V)/4=V/5+(V-(-2))/2。右の電池の上は下の線より2V低い(-2V)点です。整理すると V(1/4+1/5+1/2)=4/4+(-2)/2=0 で、V=0V。5Ωの両端の電位差が0なのでI3=0Aとなり、ここでも一致します。
もし右の電池を「+極が上」と読み違えると、I1≒0.47A、I2≒0.05A、I3≒0.42Aとなり、どの選択肢にも合いません。電池の向きは最初に図で確かめます。
例題2:電源2つで中央の電圧を求める(令和5年度下期 問6)
図のような直流回路において,抵抗6 Ωの端子間電圧の大きさVの値[V]として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 2 (2) 5 (3) 7 (4) 12 (5) 15
出典:令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験 理論 問6(一般財団法人電気技術者試験センター)
図は公式の問題PDF(令和5年度下期 理論)の問6です。
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| 左の枝 | 21Vの電池(+極が上)、上の線に5Ω |
| 中央の枝 | 6Ω。両端の電圧がV |
| 右の枝 | 上の線に10Ω、右側に14Vの電池(+極が上) |
解き方1(枝電流法):左の電池から5Ωを通って中央へ流れる電流をI1、右の電池から10Ωを通って中央へ流れる電流をI2、6Ωを上から下へ流れる電流をI3とします。
- 第1法則:I1+I2=I3
- 第2法則(左の閉路):21=5I1+6I3
- 第2法則(右の閉路):14=10I2+6I3
解くとI1=1.8A、I2=0.2A、I3=2.0A。V=6×2.0=12V。答えは(4)です。公式の解答も(4)です。
解き方2(網目電流法):左の閉路に時計回りのIa、右の閉路に時計回りのIbを仮定します。右の閉路を時計回りに回ると、14Vの電池を+極から-極へ通るので起電力は-14です。
- 左の閉路:21=5Ia+6(Ia-Ib) → 11Ia-6Ib=21
- 右の閉路:-14=10Ib+6(Ib-Ia) → -6Ia+16Ib=-14
解くとIa=1.8A、Ib=-0.2A。6Ωの電流はIa-Ib=2.0Aで、V=12Vと一致します。Ibがマイナスなのは、右の閉路の電流が実際には反時計回り(右の電池から中央へ0.2A)だという意味で、枝電流法のI2=0.2Aと同じです。
検算(電力の収支):電池が出す電力は21×1.8+14×0.2=37.8+2.8=40.6W。抵抗で消費する電力は5×1.8²+10×0.2²+6×2.0²=16.2+0.4+24=40.6Wで一致します。中央の電圧を一度に出すミルマンの定理(各枝のE/Rの和÷各枝の1/Rの和)でも、(21/5+14/10)÷(1/5+1/10+1/6)=12Vになります。
例題3:電流源がある回路(令和5年度上期 問6)
図のような直流回路において,3 Ωの抵抗を流れる電流の値[A]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 0.35 (2) 0.45 (3) 0.55 (4) 0.65 (5) 0.75
出典:令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論 問6(一般財団法人電気技術者試験センター)
図は公式の問題PDF(令和5年度上期 理論)の問6です。
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| 左の枝 | 4Vの電池(+極が上) |
| 上の線 | 左から3Ω、点P、5Ωの順 |
| 中央の枝 | 2Aの電流源。下の線から点Pへ向かって(上向きに)2Aを流す |
| 右の枝 | 5Ωの右端から下の線へ戻る |
電流源は「決まった電流を流し続ける電源」で、その両端の電圧は回路で決まります。電流源の枝には第2法則の式を立てにくいので、電流源を含まない閉路で式を立てます。
解き方1(枝電流法):3Ωを左から右へ流れる電流をI1、5Ωを左から右へ流れる電流をI2とします。
- 第1法則(点P):I1+2=I2
- 第2法則(電流源を通らない外側の閉路:4Vの電池→3Ω→5Ω→下の線):4=3I1+5I2
I2=I1+2を代入すると 4=3I1+5I1+10、8I1=-6、I1=-0.75A。マイナスなので、3Ωには点Pから電池の方へ0.75Aが流れています。大きさは0.75Aで、答えは(5)です。公式の解答も(5)です。
解き方2(網目電流法):左の閉路に時計回りのIa、右の閉路に時計回りのIbを仮定します。中央の電流源の枝では、上向きに流れる電流がIb-Iaで、これが電流源の2Aに等しくなります(Ib-Ia=2)。2つの閉路をまとめた外周で第2法則を立てると 4=3Ia+5Ib。これを解くとIa=-0.75A、Ib=1.25Aで、3Ωの電流はIa=-0.75Aと一致します。
検算(重ね合わせの理):電源を1つずつ働かせて足し合わせます。4Vの電池だけのとき(電流源は取り去って開放)、3Ωと5Ωの直列に4÷8=0.5Aが電池から点Pの向きに流れます。2Aの電流源だけのとき(電池は短絡)、2Aは3Ωと5Ωに抵抗の逆比で分かれ、3Ωには2×5÷8=1.25Aが点Pから電池の向きに流れます。合計は0.5-1.25=-0.75Aで一致します。
例題4:電池4個の並列(令和8年度上期 問5)
図のように,内部抵抗r=0.1 Ω,起電力E=9 Vの電池4個を並列に接続した電源に抵抗R=0.5 Ωの負荷を接続した回路がある。この回路において,抵抗R=0.5 Ωで消費される電力の値[W]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 820 (2) 4 050 (3) 253 (4) 50 (5) 147
出典:令和8年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論 問5(一般財団法人電気技術者試験センター)
図は公式の問題PDF(令和8年度上期 理論)の問5で、4個の電池(それぞれ内部抵抗0.1Ωと直列)が同じ向きで並列につながり、その両端に0.5Ωの負荷がつながっています。
解き方1(枝電流法・対称性を使う):4個の電池は同じ起電力・同じ内部抵抗・同じ向きなので、負荷電流Iを4等分してI/4ずつ流します(第1法則)。1個の電池と負荷を通る閉路で第2法則を立てると 9=0.1×(I/4)+0.5I。I=9÷0.525≒17.14A、電力P=I²R=17.14²×0.5≒147W。答えは(5)です。公式の解答も(5)です。
解き方2(網目電流法):隣り合う電池どうしで3つの閉路、4個目の電池と負荷で1つの閉路、合わせて4つの閉路電流を仮定して第2法則の式を4本立てます。隣り合う電池どうしの閉路では起電力が打ち消し合うので右辺は0です。4本を解くと負荷の電流は約17.14Aとなり、枝電流法と一致します。
検算(点の電位):負荷の両端の電圧をVとすると、4個の電池から流れ出る電流の合計が負荷電流に等しいので 4×(9-V)/0.1=V/0.5。V≒8.57V、P=V²÷R=8.57²÷0.5≒147Wで一致します。
キルヒホッフの法則はいつ使う?(合成抵抗との使い分け)
抵抗の直列・並列の置き換え(合成抵抗)だけで1本にまとめられる回路は、キルヒホッフの法則を使わなくても解けます。キルヒホッフの法則が必要になるのは、次のように置き換えだけでは解けない回路です。
- 電源が2つ以上あり、それぞれが別の枝に入っている回路(例題1・2)
- 電流源と電圧源が混ざっている回路(例題3)
- 平衡していないブリッジ回路のように、直列にも並列にもまとめられない抵抗がある回路
逆に、電源が1つで直列・並列にまとめられる回路は、合成抵抗とオームの法則で解いたほうが速く済みます。ブリッジが平衡しているかどうかを先に確かめる問題もあります。電源が2つある回路の別の解き方は、テブナンの定理をわかりやすくで紹介しています。
この論点の問題を解く:
- 電源2つの回路で6Ωの電圧を求める(令和5年度下期 問6)
- 電圧源と電流源がある回路で3Ωの電流を求める(令和5年度上期 問6)
- ブリッジ回路と3Ωの直列で電源電圧を求める(令和4年度下期 問5)
- 直列と並列が混ざった回路で抵抗Rの消費電力を求める(令和5年度下期 問5)
- 電池の内部抵抗と起電力を2つの条件から求める(令和7年度下期 問6)
よくある間違い3つと見直しの方法
- 電池の向きの読み違い:長い線が+極です。例題1のように片方だけ上下が逆の問題では、最初に「+極はどちらか」を図に書き込みます
- 符号の約束が途中で変わる:1周する向きと電流の向きが同じなら+RI、逆なら-RI。閉路ごとに1周する向きを矢印で書いてから式を立てます
- 共有する枝の電流:網目電流法では、2つの閉路が共有する抵抗にはIa-Ibが流れます。Iaだけ、Ibだけで計算しないようにします
見直しは「別の方法でもう一度解く」のが確実です。枝電流法で解いたら網目電流法か点の電位で、どちらも時間がなければ電力の収支(電源の出す電力=抵抗で消費する電力の合計)で確かめます。
第2法則の考え方そのものは、合格ナビの第二種電気工事士の問題(直列回路の独自問題)でも確かめられます。
キルヒホッフの法則の問題を続けて解く
電源が2つある回路は、例題で使った手順をそのまま当てはめられます。理論科目の直流回路の問題を続けて解き、枝電流法と網目電流法のどちらでも同じ答えが出るか確かめてみましょう。理論科目全体の出題傾向は電験三種 理論のコツと出題傾向で確認できます。
よくある質問
Q求めた電流がマイナスになったら間違いですか?
間違いではありません。最初に仮定した向きと、実際に流れる向きが逆だったという意味です。大きさはそのままで、向きだけを反対に読み替えます。電験三種の令和5年度上期 理論 問6でも、3Ωの電流は仮定の向きでは-0.75Aになり、実際には電源の方へ0.75A流れます。
Q電流の向きはどう仮定すればよいですか?
どの向きに仮定してもかまいません。式の立て方を最後まで同じ向きの約束で通せば、正しい大きさと符号が出ます。問題文や図で電流の向きが定義されている場合(令和6年度下期 理論 問6のI1・I2・I3など)は、その向きに合わせて仮定すると、答えをそのまま選択肢と比べられます。
Q枝電流法と網目電流法はどちらを使えばよいですか?
どちらでも同じ答えになります。網目電流法は未知数が閉路の数だけになるので、閉路が2つの回路なら連立方程式が2本で済みます。枝電流法は各抵抗の電流をそのまま未知数にするので、問題が各枝の電流を聞いているときに選択肢と比べやすい方法です。本番で1つの方法で解き、時間があればもう1つで確かめるのが確実です。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月2日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

