電験三種

火力発電の仕組みと熱効率ランキンサイクル・汽力発電を電験三種の電力で

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

火力発電は、燃料の熱でつくった蒸気でタービンを回して発電する方式です。ボイラ・タービン・復水器の流れ、ランキンサイクル、熱効率(発電端効率)の式と計算例を整理し、電験三種の電力で問われた汽力発電の問題(令和4〜8年度)を、公式の解答と照らして解説します。

目次
  1. 火力発電の仕組み:ボイラからタービン・復水器まで
  2. ランキンサイクル:水と蒸気の循環
  3. 熱効率の向上策(令和6年度下期 問2)
  4. 熱効率の式と計算(令和4年度上期・令和6年度下期・令和7年度)
  5. 試験での問われ方:令和4年度上期〜令和8年度上期の電力
  6. 間違えやすいポイント
  7. まとめ
結論:火力発電とは、石炭・石油・ガスなどの燃料を燃やした熱で蒸気(または燃焼ガス)をつくり、その力でタービンを回して発電する方式です(当サイトの説明)。蒸気を使う方式を汽力発電といい、ボイラ→タービン→復水器→給水ポンプ→ボイラ、と水が蒸気と水に姿を変えながら循環します。この基本のサイクルをランキンサイクルと呼びます(当サイトの説明)。熱効率は、発電した電力量を、燃料の持つ熱量で割った値です(発電端効率は、発電機の出力で見た値。当サイトの説明)。電験三種の電力では、汽力発電の設備の順序・復水器・熱効率の向上・熱効率の計算が出題されています(後半の表)。

この記事は、「火力発電の仕組み」を調べている方にも、電験三種の準備をしている方にも読めるように、はじめに仕組みと用語を整理し、後半で試験の問われ方を扱います。発電所の運転や設備の判断を当サイトが行うことはできません。電力科目全体の範囲は電験三種 電力 攻略法にまとめています。

試験センター非提携:本サイトは一般財団法人 電気技術者試験センターと一切関係ありません。試験の出題・資料は、出典を示して内容を紹介しています。製品名やメーカーは扱いません。
電力の試験科目の内容:電気技術者試験センターの第三種電気主任技術者の試験概要は、電力の科目の内容を「発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気材料」と示しています。最終確認日:2026-10-09。出典:電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者の試験概要。

火力発電の仕組み:ボイラからタービン・復水器まで

汽力発電所の水と蒸気は、次の順に流れます(当サイトの説明。設備の構成は発電所によって異なります)。

順設備はたらき
1給水ポンプ水の圧力を上げてボイラへ送る
2節炭器煙道に出ていく燃焼ガスの余熱で、ボイラへの給水を加熱する
3ボイラ(火炉・蒸気ドラム)燃料を燃やした熱で、水を蒸気にする
4過熱器蒸気をさらに加熱し、高温の蒸気にする
5蒸気タービン蒸気の力で回転する。発電機につながる
6復水器タービンから出た蒸気を冷却水で冷やして水に戻す

燃焼ガスの側にも順序があります。令和7年度上期 電力 問3は、水・蒸気・燃焼ガスがボイラとタービンの主要設備を通る一般的な順序の記述のうち、誤っているものを選ぶ問題で、センターの解答は(5)でした。正しいものとして並んでいたのは、水が給水ポンプ→節炭器→蒸気ドラム、蒸気が蒸気ドラム→過熱器→高圧タービン、蒸気が再熱器→低圧タービン→復水器、燃焼ガスが火炉→過熱器→節炭器、です。誤りの(5)は、燃焼ガスが節炭器→電気集じん装置→空気予熱器、という並びでした。空気予熱器は、燃焼ガスの余熱をボイラへの燃焼用空気に回収する装置です(令和5年度上期 問3、解答は(5))。燃焼ガスは、節炭器・空気予熱器で熱を回収してから、集じん装置へ向かいます(当サイトの説明)。出典:令和7年度上期 電力 問3、解答、令和5年度上期 電力 問3、解答。

蒸気タービンの分類(令和6年度下期 問3)

令和6年度下期 電力 問3は、蒸気タービンの分類の空欄補充で、センターの解答は(5)でした。衝動タービンは、ノズルを通る間に蒸気の圧力が降下して高速になり、羽根の出入口の蒸気の圧力は等しく、高圧の蒸気に適する、反動タービンは、ランナの内部で蒸気を膨張させて反動力を利用し、中低圧の蒸気に適する、という内容です。出典:令和6年度下期 電力 問3、解答。

復水器のはたらき(令和8年度上期 問3)

令和8年度上期 電力 問3は、火力発電所の復水器について、タービンの排気を冷却水で冷やして凝縮させ、水に戻して復水を回収する装置であり、内部の真空度を保持することで、タービンの入口蒸気と出口蒸気の圧力差を大きくし、蒸気タービンの効率を高めている、という内容の空欄補充で、センターの解答は(1)でした。出典:令和8年度上期 電力 問3、解答。

ランキンサイクル:水と蒸気の循環

ランキンサイクルは、汽力発電の基本となる熱サイクルです(当サイトの説明)。

過程設備水・蒸気の変化
① 加圧給水ポンプ水の圧力を上げる
② 加熱・蒸発・過熱ボイラ(節炭器・過熱器を含む)水が蒸気になり、さらに高温になる
③ 膨張蒸気タービン蒸気が膨張して仕事をする(発電機を回す)
④ 凝縮復水器蒸気が冷やされて水に戻る

熱効率を高める方法として、このサイクルに「再熱」や「給水加熱(再生)」を加える方式があります(当サイトの説明。再熱サイクルの利用は、令和6年度下期 問2で熱効率の向上策として正しい選択肢でした)。電気技術者試験センターが公表した令和4年度上期〜令和8年度上期の電力の問題文には、「ランキンサイクル」の記載がありません(2026-10-09 時点)。この期間の問題では、各設備のはたらきと順序、熱効率の向上策が問われています。

熱効率の向上策(令和6年度下期 問2)

令和6年度下期 電力 問2は、汽力発電において熱効率の向上を図る方法のうち、誤っているものを選ぶ問題で、センターの解答は(4)でした。選択肢は、次の5つです。

  • 高温高圧の蒸気を使用する
  • 復水器の真空度を高める
  • 再熱サイクルを利用する
  • 給水加熱器で抽気温度を上げる(センターの解答が示す誤りの選択肢)
  • 節炭器で排ガス温度を下げる

誤りの(4)以外の4つは、センターの解答に照らして、熱効率の向上策として適切な記述です。出典:令和6年度下期 電力 問2、解答。復水器の真空度を保つ理由は、令和8年度上期 問3で問われています(前の見出し)。

コンバインドサイクルとの比較

ガスタービンと汽力を組み合わせたコンバインドサイクル発電は、汽力発電と比べる問題が複数回出ています。令和6年度上期 問3の内容は、よくある質問の欄にまとめています。令和4年度下期 問3と令和5年度上期 問2にも、同じ形式の比較問題があります。

熱効率の式と計算(令和4年度上期・令和6年度下期・令和7年度)

火力発電の熱効率(発電端効率)は、次の式で表されます(当サイトの説明)。

η = 発電した電力量[kJ] ÷ 燃料の持つ熱量[kJ] = 3 600 × P ÷ (B × H)

P は発電出力[kW]、B は1時間の燃料消費量[kg/h]、H は燃料の発熱量[kJ/kg]です(1 kW・h = 3 600 kJ)。発熱量が kcal/kg で与えられる場合の式は、電験三種 電力 攻略法の公式の欄にあります。

当サイトの作例:発電端効率(2通りの検算)

次の数値は、当サイトが作った例です。出力300 MWで24時間運転し、重油を1 500 t使った場合(発熱量42 000 kJ/kg)の発電端効率を求めます。

1. 発電電力量:300 MW × 24 h = 7 200 MW・h = 7 200 × 3 600 MJ = 2.592×10¹⁰ kJ

2. 燃料の持つ熱量:1 500 t = 1.5×10⁶ kg、1.5×10⁶ kg × 42 000 kJ/kg = 6.3×10¹⁰ kJ

3. 発電端効率:2.592×10¹⁰ ÷ 6.3×10¹⁰ ≒ 0.4114 → 41.1 %

検算(式 η = 3 600P ÷ (BH) で計算):P = 300 000 kW、B = 1.5×10⁶ kg ÷ 24 h = 62 500 kg/h、H = 42 000 kJ/kg。3 600 × 300 000 = 1.08×10⁹、62 500 × 42 000 = 2.625×10⁹、その比は約0.4114 → 41.1 %で一致します。

公式の問題で確かめる:令和7年度下期 問15・令和6年度下期 問15

令和7年度下期 電力 問15は、最大出力600 MWの重油専焼火力発電所(重油の発熱量44 000 kJ/kg)についての(a)(b)です。

  • (a) 45 000 MW・hの電力量を発生するのに重油9.1×10³ tを使ったときの発電端効率。センターの解答は(4)の40.5%。当サイトの計算は、4.004×10¹¹ kJ(燃料)に対して1.62×10¹¹ kJ(電力量)で約40.5%。検算:1.62×10¹¹ ÷ 44 000 ≒ 3.68×10⁶ kg の燃料が熱量換算で必要で、実際の9.1×10⁶ kg の約40.5%にあたる
  • (b) 最大出力で24時間運転し、発電端効率が45.0%のときの二酸化炭素の発生量。センターの解答は(3)の8.16×10³ t。当サイトの計算は、電力量14 400 MW・h = 5.184×10¹⁰ kJ、燃料の熱量 = 5.184×10¹⁰ ÷ 0.45 = 1.152×10¹¹ kJ、燃料 = 1.152×10¹¹ ÷ 44 000 ≒ 2 618 t、炭素85.0%で約2 225 t、CO₂は炭素1に対して44/12倍なので約8 160 t。検算:燃料1 kgあたりのCO₂ = 0.85 × 44/12 ≒ 3.117 kg なので、2 618 t × 3.117 ≒ 8 160 t

令和6年度下期 電力 問15は、出力1 000 MW・発電端効率41%・発熱量44 000 kJ/kgの重油専焼火力発電所で、(a)の重油消費量の解答は(4)の200 t/h、(b)の1日のCO₂発生量の解答は(3)の15.0×10³ tでした(炭素85%・水素15%)。当サイトの計算は、(a) 1 000 MW ÷ 0.41 ≒ 2 439 MW = 2.439×10⁶ kJ/s、これを44 000 kJ/kg で割ると約55.4 kg/s ≒ 199.6 t/h、(b) 199.6 t/h × 24 h × 0.85 × 44/12 ≒ 14 930 t ≒ 15.0×10³ t です。

令和7年度上期 電力 問2は、タービン出力175 MW、タービン効率92%、タービン入口と復水器入口の蒸気のエンタルピーが32 500 kJ/kgと30 800 kJ/kgのときの使用蒸気量を求める問題で、センターの解答は(5)の403 t/hでした。当サイトの計算は、エンタルピー差1 700 kJ/kg × 0.92 = 1 564 kJ/kg、175 000 kJ/s ÷ 1 564 kJ/kg ≒ 111.9 kg/s × 3.6 ≒ 403 t/h です。令和4年度上期 問3(発電機出力19 MW・使用蒸気量80 t/h・発電機効率95%)のタービン効率は、センターの解答が(4)の86%で、当サイトの計算では、19 MW ÷ 0.95 = 20 MW = 20 000 kJ/s、蒸気側は80 t/h ≒ 22.2 kg/s × 1 050 kJ/kg ≒ 23 333 kJ/s、20 000 ÷ 23 333 ≒ 0.857 → 86% です。

出典:令和7年度下期 電力、解答、令和6年度下期 電力、解答、令和7年度上期 電力、解答、令和4年度上期 電力、解答。

試験での問われ方:令和4年度上期〜令和8年度上期の電力

次の表は、センターが公表した令和4年度上期〜令和8年度上期の電力の問題(9回分)のうち、火力発電(汽力発電・コンバインドサイクル)に関する問題を、当サイトが拾ったものです(当サイトの整理。ここに挙げたもの以外にも、火力に関連する問題があります)。

回問内容(要点)
令和4年度上期問2・問3タービン発電機の記述/タービン効率の計算
令和4年度下期問3・問15コンバインドサイクルと汽力の比較/復水器の海水冷却(放出熱量・タービン室効率の計算)
令和5年度上期問2・問3・問15コンバインドサイクルと汽力の比較/節炭器・空気予熱器/石炭火力の計算
令和5年度下期問3・問15復水器の記述/水力発電所と重油専焼汽力発電所で供給する場合の、汽力発電所の年間の重油消費量の計算((b))
令和6年度上期問3コンバインドサイクルと汽力の比較
令和6年度下期問2・問3・問15熱効率の向上策/蒸気タービンの分類/重油専焼火力の計算
令和7年度上期問2・問3使用蒸気量の計算/ボイラ・タービンの設備の順序
令和7年度下期問3・問15汽力発電所の保護装置/重油専焼火力の発電端効率とCO₂
令和8年度上期問3復水器の記述

出典:センター公表の電力の問題と解答(令和4年度上期、令和4年度下期、令和5年度上期、令和5年度下期、令和6年度上期、令和6年度下期、令和7年度上期、令和7年度下期、令和8年度上期)。

出題の型は、(1)設備の順序・はたらきの記述(節炭器・空気予熱器・復水器・タービン)、(2)他の発電方式との比較(コンバインドサイクル)、(3)熱効率・燃料消費量・CO₂発生量などの計算、の3つに分けられます(当サイトの整理)。計算問題は、1 kW・h = 3 600 kJ と、発熱量・効率の関係を使います。電力の問題は電力の問題一覧から解けます。

間違えやすいポイント

  • 単位の換算を忘れない。 電力量[kW・h]に3 600を掛けて[kJ]にします。MW・hなら3 600 MJです。
  • 効率は、何を分子・分母にするかで名前が変わります。 発電端効率は発電機の出力で見た効率で、令和4年度下期 問15の「タービン室効率」のように、別の名前の効率を求める問題もあります。発電機効率などの条件は問題文に示されるので、問題文の指定をよく読みます。
  • コンバインドサイクルが有利な点(熱効率・始動停止・追従性)と、外気温の影響を受けやすい点を分けて覚えます。 令和6年度上期 問3の誤りは、外気温の影響を小さいとした記述でした。
  • CO₂の計算は、炭素の重量比と、44/12(CO₂の分子量44とCの原子量12の比)を使います。 水素は燃焼してもCO₂にはならず、水になります(当サイトの説明。令和6年度下期・令和7年度下期の問15は、重油の成分を炭素と水素の重量比で示しています)。

まとめ

  • 火力発電は、燃料の熱でつくった蒸気でタービンを回して発電する方式。汽力発電は、給水ポンプ→節炭器→ボイラ→過熱器→タービン→復水器の順に水と蒸気が循環する(ランキンサイクル)
  • 熱効率(発電端効率)= 3 600P ÷ (B × H)。電力量[kW・h]を3 600倍して[kJ]にそろえる
  • 復水器の真空度を保つことでタービンの入口と出口の圧力差を大きくし、効率を高める(令和8年度上期 問3)
  • 令和4年度上期〜令和8年度上期の電力の問題文に、「ランキン」の記載はなく、設備の順序・復水器・熱効率の向上策・計算が問われている

よくある質問

Q火力発電の「発電端効率」は、どう計算しますか?

発電した電力量を、使った燃料が持つ熱量で割った値です(当サイトの説明)。令和7年度下期 電力 問15(a)は、45 000 MW・hの電力量を発生するのに重油9.1×10³ t(発熱量44 000 kJ/kg)を使ったときの発電端効率を求める問題で、センターの解答は(4)の40.5%でした。1 kW・hは3 600 kJなので、45 000 MW・h = 1.62×10¹¹ kJ、燃料の熱量は9.1×10⁶ kg × 44 000 kJ/kg = 4.004×10¹¹ kJ、その比は約0.4046(当サイトの計算)です。出典:令和7年度下期 電力、解答。

Q節炭器と空気予熱器は、どちらも排ガスの熱を使う装置ですか?

はい。令和5年度上期 電力 問3は、煙道に出ていく燃焼ガスの余熱を、ボイラへの給水に回収する装置が節炭器、ボイラへの燃焼用空気に回収する装置が空気予熱器、という内容で、センターの解答は(5)でした。出典:令和5年度上期 電力、解答。

Qコンバインドサイクル発電は、汽力発電より熱効率が高いのですか?

令和6年度上期 電力 問3は、排熱回収方式のガスタービンコンバインドサイクル発電を、同一出力の汽力発電と比較した記述のうち誤っているものを選ぶ問題で、センターの解答は(4)でした。正しい記述として並んでいたのは、始動・停止時間が短い、負荷変化に対する追従性が高い、熱効率が高い、温排水量が少ない、です。誤りの(4)は、外気温の最大出力に与える影響が小さい、という記述でした。出典:令和6年度上期 電力、解答。

Qランキンサイクルという言葉は、電験三種の問題文に出てきますか?

電気技術者試験センターが公表した令和4年度上期〜令和8年度上期の電力の問題文(2026-10-09 時点)には、「ランキン」の記載がありません。ただし、ボイラ・タービン・復水器・給水ポンプを蒸気と水が循環する流れ(汽力発電の基本のサイクル)は、令和7年度上期 問3などで問われています。出典:令和7年度上期 電力。

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